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血圧測定で「下の血圧が100を超えたら」どうなる?医師がリスクや対処法を解説!

 公開日:2025/12/16
血圧測定で「下の血圧が100を超えたら」どうなる?医師がリスクや対処法を解説!

下の血圧が100を超えたらどうすべき?メディカルドック監修医が主な原因や考えられる病気・対処法などを解説します。

大沼 善正

監修医師
大沼 善正(医師)

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昭和大学医学部卒業。昭和大学病院、関東労災病院を経て、現在はイムス富士見総合病院勤務。総合内科専門医、循環器専門医、不整脈専門医、医学博士。

血圧の上(収縮期血圧)と下(拡張期血圧)の違いは?

動脈には、心臓から血液が送り出されることで、常にある程度の圧力がかかっています。
これを「血圧」といいます。

  • 収縮期血圧(上の血圧):心臓がギュッと収縮して血液を押し出すときの最も高い圧
  • 拡張期血圧(下の血圧):心臓が拡張して休んでいる間の最も低い圧

「上」と「下」は心臓の拍動サイクルの中の最大値と最小値の違いです。

血圧の下(拡張期血圧)の基準値・正常値は?

下の血圧(拡張期血圧)の正常値
診察室血圧:80mmHg未満
家庭血圧:75mmHg未満

高血圧と診断される基準(拡張期血圧)
診察室血圧:90mmHg以上(80–89は「高値血圧」)
家庭血圧:85mmHg以上(75–84は「高値血圧」)

下の血圧が100を超えたときに考えられるリスク

下の血圧が100mmHgを超えると、診察室血圧の分類ではⅡ度(中等度)高血圧、110mmHgを超えるとⅢ度(重度)高血圧に相当します。
これは、上の血圧が正常でも、下の血圧だけでこの重症度分類に入るという意味です。
高血圧を放置すると、次のような病気を引き起こす可能性があります。

  • ・脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血 )
  • ・心筋梗塞・狭心症
  • ・心不全
  • ・大動脈解離
  • ・慢性腎障害
  • ・網膜出血 など

そのため、自覚症状がない場合でも、下の血圧が100mmHgを繰り返し超えるようであれば、早めに医療機関を受診しましょう。

さらに、

  • ・突然の激しい頭痛
  • ・ろれつが回らない
  • ・手足の麻痺がある
  • ・胸痛や息苦しさがある
  • ・片目・両目が見えづらい

といった症状を伴う場合は、高血圧緊急症にあたる可能性があるため、ためらわず救急外来を受診することが必要です。

高血圧

高血圧の基準
家庭血圧:135/85mmHg以上
Ⅰ度 135–144/85–89mmHg
Ⅱ度 145–159/90–99mmHg
Ⅲ度 160/100mmHg以上

診察室:140/90mmHg以上
Ⅰ度 140–159/90–99mmHg
Ⅱ度 160–179/100–109mmHg
Ⅲ度 180/110mmHg以上

診察室血圧は1回だけでなく、数回測定した結果をもとに判定します。上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)のどちらか一方でも高血圧の基準に当てはまれば「高血圧」と診断されます。また、家庭血圧は5~7日程度の平均値で評価し、どちらか一方でも135/85mmHg以上であれば、高血圧と判断されます。高血圧の診断では、家庭血圧のほうを優先して総合的に判断します。

動脈硬化が進んでいる

下の血圧が高くなる背景には、末梢血管抵抗(血液の流れにくさ)の上昇があります。末梢血管抵抗が上昇する主な理由を以下に示します。
① 交感神経の亢進:ストレスや緊張などで交感神経が高ぶると、血管が収縮し、血圧が上がりやすくなります。
② 肥満・メタボリックシンドローム:細い動脈(細小動脈)の壁が厚くなり、内腔が狭くなることで血流が悪くなります。
③ 内分泌・腎臓病・薬物による二次性高血圧:ホルモンの異常や腎臓病、薬物(NSAIDs、甘草製剤、交感神経刺激薬、グルココルチコイド(ステロイド)、シクロスポリンなどのカルシニューリン阻害薬、エストロゲン製剤、一部のがん分子標的薬など)で血管抵抗が上がり、血圧が高くなります。

下の血圧の高い状態が続くと、動脈硬化が徐々に進行し、

  • ・脳血管障害(脳梗塞・脳出血など)
  • ・心疾患(狭心症・心筋梗塞・心不全など)
  • ・腎臓病

の発症リスクが上昇します。

拡張期高血圧

拡張期高血圧とは、下の血圧が常に高い状態にある高血圧をいいます。
そのままにしておくと、動脈硬化が進行し以下のような病気を発症する可能性が高まります。

  • 脳:脳梗塞・脳出血
  • 心臓:心筋梗塞・狭心症・心不全
  • 腎臓:慢性腎臓病
  • 眼:網膜症

下の血圧が100を超えたときに考えられる原因

下の血圧が高いとは、心臓が休んでいる拡張期にも血管に高い圧が続く、ということです。とくに末梢血管抵抗が上昇することで、下の血圧が高くなります。末梢血管抵抗が上昇する理由を以下に示します。

末梢血管抹消血管の硬化

体に張り巡らされている細い動脈(細小動脈)の壁が厚くなったり、血管のしなやかさが落ちて内径が狭くなったりすると、血液が流れにくくなります。
その結果、拡張期の圧が下がりにくく、高いままが続くようになります。

生活習慣の乱れ

交感神経が亢進することで、血管を収縮させる方向に働きます。
長く続くと末梢血管が硬くなり、末梢血管抵抗が上がることで、下の血圧が高くなります。

自律神経の乱れ

生活習慣の乱れと同様に、自律神経のバランスが崩れるとレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(血圧や体液量を調節するホルモン系)が活性化されます。
そのため、血管が収縮し、血圧の上昇を来たします。

腎臓や甲状腺の病気

二次性高血圧といわれるタイプのことで、以下のような原因があります。

  • ・腎実質疾患・腎動脈狭窄
  • ・甲状腺機能異常
  • ・原発性アルドステロン症
  • ・褐色細胞腫

これらの病気では、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(血圧や体液量を調節するホルモン系)が活性化することで、

  • ・体の水分量が増える
  • ・血管収縮する

ことにより、下の血圧が上昇します。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは、夜間に何度も無呼吸を繰り返す病気です。
無呼吸になると血液中の酸素が少なくなり、それを補おうとして交感神経が亢進し、血圧が高くなります。
この状態が続くと、拡張期血圧が高くなりやすいとされています。

血圧測定で下の血圧が100を超えた場合に気をつけたい病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「下の血圧が100を超えた」場合に気を付けたい病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

高血圧

血圧が高い状態が持続している病気です。高血圧は、以下の基準のいずれかを満たすと診断されます。

  • 診察室血圧:140/90mmHg以上
  • 家庭血圧 :135/85mmHg以上

上下どちらか片方だけでも「高血圧」と診断されます。
原因
多くの場合、明らかな原因はありませんが、以下の要因が複合的に関与して発症します。

  • 塩分過多の食事
  • 遺伝的要因
  • 生活習慣(運動不足・喫煙・飲酒など)
  • 加齢

一方、二次性高血圧といって、以下のものが原因となるタイプもあります。

  • 腎臓の病気
  • ホルモンの異常(内分泌疾患)
  • 薬剤(NSAIDs、甘草製剤、交感神経刺激薬、グルココルチコイド(ステロイド)、シクロスポリンなどのカルシニューリン阻害薬、エストロゲン製剤、一部のがん分子標的薬など)

治療と受診
治療の基本は、食事(減塩、低脂質など)、運動といった生活習慣の見直しです。それでも改善が不十分な場合や、動脈硬化リスクが高い場合には、血圧を下げる薬による治療(降圧薬)を行います。
二次性高血圧では、原因となる病気の治療が第一になります。高血圧は自分で気づかないうちに進行する可能性があるため、症状がなくても、内科の受診が勧められます。

脳卒中

脳卒中は、以下の3つに大きく分けることができます。

  • 脳の血管が詰まる:脳梗塞
  • 脳の血管が破れて出血する:脳出血
  • 脳を包む膜の間(くも膜と軟膜の間)に血液がたまる:くも膜下出血

主な症状
共通して見られやすい症状は、以下の通りです。

  • 意識障害
  • 手足の麻痺
  • ろれつが回らない・言葉が出ない
  • めまい・ふらつき

とくにくも膜下出血では、突然の今までにない激しい頭痛が特徴的です。
緊急時の対応
脳卒中は一刻を争う病気なので、症状があれば以下の対応が必要です。

  • 夜間、休日であっても救急車の要請
  • 脳神経内科・脳神経外科のある専門病院を救急受診

心筋梗塞

心臓を栄養している動脈(冠動脈)が突然詰まってしまう病気です。以下のプロセスで発症します。

  • 冠動脈内のプラーク(コレステロールのかたまり)が破綻
  • 破綻したところに、血栓(血のかたまり)が付着して血管を塞ぐ

発症の背景
動脈硬化を起こすような、以下の背景があると起こりやすいとされています。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 喫煙
  • 家族歴

主な症状と受診
症状としては、以下のものが典型的です。

  • 突然の胸痛・胸の締めつけ感(絞扼感)
  • 数分〜15分以上続く痛み

数分でよくならない突然の胸痛があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。循環器内科で、カテーテル検査・治療などの専門的治療が必要になります。

慢性腎臓病(CKD)

腎臓の働きが徐々に低下していく病気です。
主な原因

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 加齢による変化
  • 腎炎
  • 遺伝性の腎疾患

治療と進行
高血圧や糖尿病をきちんとコントロールし、減塩を中心とした食事療法を行うことで、腎機能低下の進行を遅らせることができます。
悪化すると人工透析が必要になることもあるため、早めの予防と治療が重要です。
受診の目安
以下のいずれかに該当する場合は、腎臓内科の受診を検討しましょう。

  • 健康診断で:腎機能の悪化や尿たんぱくを指摘された場合
  • 症状として:尿が少ない、むくみやすいがある場合

血圧測定で下の血圧が100を超えた場合の正しい対処法・改善法は?

医療機関へ相談

まずは内科、できれば循環器内科を受診しましょう。

以下の場合には救急車の要請が必要です。

  • 突然の激しい頭痛
  • ろれつが回らない
  • 手足の麻痺
  • 胸痛や息苦しさ
  • 視野が欠ける・見えづらい

症状がない場合には、

  • まず生活習慣の見直し
  • それでも高血圧が続けば、血圧を下げる薬による治療(降圧薬)

という流れで治療が行われます。

血圧を定期的に測定
血圧は、以下の影響を大きく受けます。

  • 不安・緊張
  • ストレス
  • 食事内容
  • 飲酒
  • 睡眠不足

そのため、1回血圧が高いだけで高血圧とは判断しません。
とくに「診察室でのみ高血圧になる」人もいるため、家庭血圧が非常に重要です。

測り方の目安

  • 期間:5~7日程度測り、平均をとります。
  • 朝:起床後、排尿をすませ、朝食前・薬を飲む前
  • 夕方:食事や入浴の前

このような条件で測定し、家庭血圧の平均値が135/85mmHg以上であれば、医療機関の受診が勧められます。

生活習慣の改善

高血圧は、生活習慣の改善が治療の土台です。

  • 適度な運動
  • 食生活の改善
  • 肥満の解消

薬でも血圧は下げられますが、生活習慣を整えることで、

  • 薬の開始を遅らせられる
  • 必要な薬の量を減らせる

という可能性があります。
運動に関して

  • 理想は1日30分程度の有酸素運動(散歩・速歩など)
  • 難しければ、一駅分歩く、エスカレーターではなく階段を選ぶ

など、「今より少しだけ増やす」ところから始めると続けやすくなります。
食事に関しては以下の通りです。

  • 減塩(目安は1日6g未満を意識)を心がける
  • 飽和脂肪酸やコレステロールを控える
  • 食物繊維を多めにとる(野菜・海藻・豆類など)

肥満の解消に関しては以下の通りです。

  • 運動や食事に気をつけることで、肥満の解消にもつながります
  • 体重が減ること自体にも、血圧を下げる効果があります

つまり、生活習慣の改善は、

  • 「血圧の低下、脂質や糖代謝の改善」
  • 「体重の減少」

に同時に効いてくるので、まさに一石二鳥といえます。

「下の血圧が100を超えたら」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「下の血圧が100を超えたら」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

血圧の下が100の場合、どのような症状が出てきますか?

大沼 善正大沼 善正 医師

下の血圧が100を超えただけで、すぐに症状を来すことはほとんどありません。ただし、
・頭痛がする
・ろれつが回らない
・手足の麻痺がある
・胸の痛みや息苦しさがある
・目が見えづらい
などがある場合には、高血圧緊急症といわれる状態に該当する可能性が高く、早期に医療機関を受診する必要があります。

血圧の上が基準値でも下が100の場合、高血圧なのでしょうか?

大沼 善正大沼 善正 医師

はい、その通りです。上の血圧・下の血圧のどちらか一方が高血圧の基準に当てはまっていれば、「高血圧」と診断されます。
ただし、1回だけの数値では判断せず、時間を空けて複数回測定し評価します。

血圧の下が100の場合、医療機関に受診を検討した方が良いでしょうか?

大沼 善正大沼 善正 医師

下の血圧が100であれば、症状がなくても早めに医療機関を受診しましょう。
厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム」でも、未治療の方で収縮期血圧が160mmHg以上、または拡張期血圧が100mmHg以上の場合には、すぐに医療機関を受診するように推奨されています。また、血圧の数値にかかわらず、突然の激しい頭痛、手足の麻痺、ろれつが回らない、胸痛や強い息苦しさ、急に目が見えにくいといった症状を伴う場合は、高血圧緊急症など危険な状態の可能性があります。こうした症状があるときは、迷わず救急外来を受診しましょう。

まとめ 血圧測定で下の血圧が100を超えたら循環器内科に受診!

高血圧は自覚症状がほとんどないことが多い一方で、放置すると動脈硬化が静かに進行して以下のような病気を起こす可能性があります。
・脳血管障害(脳梗塞・脳出血など)
・冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)
・腎臓病
「血圧の薬は一度飲むとやめられないから、病院に行きたくない」という声もありますが、
・薬を開始するかどうか
・どのような治療を行うか
は、医師と相談しながら決めることができます。高血圧が続く場合や、症状(頭痛・めまい・ふらつき・胸痛など)がある場合には、重症になる前に、ためらわずに医療機関を受診することが大切です。

「血圧」の異常で考えられる病気

「血圧」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

脳神経系の病気

腎臓系の病気

高血圧は自覚症状がないため、そのままにされることが多い病気です。しかし心筋梗塞、脳卒中、慢性腎臓病などの病気となった場合には治療が大変となることがあります。早期発見・早期治療が大切です。健康診断で指摘されたり、自宅血圧が高かったりしたときには、医療機関を受診するようにしましょう。

「血圧」の異常で考えられる症状

「血圧」から医師が考えられる症状は6個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 心臓の鼓動を強く感じる
  • 目がチカチカする
  • こめかみの血管が浮き出る
  • 体が熱いが熱はない
  • ふらつく
  • 立ちくらみ

高血圧があり、ふらつき、めまい、動悸などがある場合には、ためらわず医療機関を受診するようにしましょう。

この記事の監修医師