健康診断で「血圧が上90/下50」は低血圧?対処法や考えられる病気を医師が解説!

健康診断で血圧が上90、下50だった場合、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?メディカルドック監修医が主な原因、考えられる病気や対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
血圧とは?
血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の壁を押す圧力を示した値です。心臓が押し出す力や血液量、血管の拡張、弾力性などが関係しています。 血圧の正常値は診察室での血圧で120/80mmHg未満、家庭血圧で115/75mmHg未満とされています。なぜ健康診断で血圧を測定するのか?
健康診断の項目では、血圧が入っていることが一般的です。血圧の測定は診察室で簡単に測定でき、体にも侵襲がなくできる検査であること、血圧の測定によりいろいろな体の状態が分かる有益な検査である事が理由として考えられます。 血圧が異常である場合、生活習慣病の合併や心臓疾患、腎臓病、内分泌疾患などが関係している可能性を発見することができます。健康診断で「血圧が上90 下50」だと低血圧?
低血圧の明確な基準はありません。しかし、一般的に収縮期血圧が100mmHg以下、拡張期血圧が60mmHg以下を低血圧と呼ぶことが多いです。 そのため、健康診断で90/50mmHgと言われた場合、低血圧である可能性があります。しかし、血圧が低いからと言ってすぐに治療をしなければいけないわけではありません。立ちくらみやめまいなど症状が強くでたり、何か他に原因があり血圧が低下している場合には原因を精査し、治療を行います。健康診断で血圧が上90、下50だった時に考えられる原因と病気のリスク・対処法
健康診断で症状がなく、測定した血圧が90/50mmHgである場合、特に異常がない本態性低血圧症の可能性が高いです。特に自覚症状がない場合には問題がありません。やせ型で虚弱体質の女性でよくみられることが多いです。このような場合には、バランスよく食事をしっかりと取り、適度な運動、規則正しい生活を行うことで改善することも多いです。 しかし、立ちくらみやめまい、動悸や息苦しいなど症状がある場合には循環器内科を受診しましょう。高齢者で血圧が上90、下50だった時に考えられる原因と病気のリスク・対処法
高齢者で血圧が低い場合、食事がとれていなかったリ、何かの病気に伴い脱水を起こしている可能性があります。まず水分を補給してみると良いでしょう。また、降圧剤の治療中であったり、服用している薬剤の副作用で血圧が下がりすぎていることも少なくありません。このような場合には、かかりつけ医に相談をしましょう。 高齢者では立ち上がる時に血圧が低下する起立性低血圧を起こすことも多いです。立ち上がる時にはゆっくりと立ち上がるようにしましょう。10代で血圧が上90、下50だった時に考えられる原因と病気のリスク・対処法
10代では血圧が低めであることも多いです。本態性低血圧であることが多く、症状が無ければ様子を見ても良いでしょう。立ちくらみがよく起こったり、めまいなど生活に支障が出る場合には小児科や内科を受診しましょう。20代・30代・40代・50代で血圧が上90、下50だった時に考えられる原因と病気のリスク・対処法
20代、30代、40代、50代で低血圧がみられる場合にも、症状が無ければ本態性低血圧の可能性が高いです。しかし、めまいや動悸などの症状がみられる場合には、ほかの病気に伴う低血圧の可能性もあります。心臓病や内分泌疾患、栄養障害に伴うこともあります。症状が続く場合には、まず循環器内科を受診して相談をしましょう。健康診断で測定する血圧の基準値・異常値
ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。健康診断での血圧の基準値
健康診断でも血圧の基準は同じく、診察室で120/80mmHg未満が正常と診断されます。 140/90mmHg以上の場合、高血圧と診断されます。低血圧の基準としては特にありませんが、100/60mmHg以下の場合には低いと判断されることが多いです。健康診断での血圧の異常値・再検査基準
健康診断での異常値としては140/90mmHg以上の高血圧である場合には再検査、受診を勧められることが多いです。また、130/80mmHg以上の場合、高値血圧と診断され家庭血圧の測定や高めが持続する場合には受診を勧められることもあります。 通常、内科や循環器内科を受診していただくと良いでしょう。 低血圧に関しては、特に基準はありませんが、100/60mmHg以下でふらつきやめまいなどの症状を伴う場合には、同じく循環器内科を受診することがすすめられます。健康診断で「血圧が上90、下50」だった時に気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、血圧が上90、下50の場合に気をつけたい病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。低血圧
低血圧は一般的に100/60mmHg以下の状態を言います。低血圧の多くは本態性低血圧であり、特別な原因疾患がないと言われています。 本態性低血圧の場合、症状が無ければ治療の必要はありません。低血圧の症状として見られやすいものは、立ちくらみ、めまい、朝が起きにくい、頭痛、疲労感などです。本態性低血圧は、男性より女性に多く、やせ型で虚弱な方に多いと言われています。規則正しい生活、バランスの良い食事や運動などを取り入れることで改善することもあります。 二次性低血圧は、心臓疾患やホルモン異常、出血や脱水による影響などが考えられます。二次性低血圧の場合には、まず原因を調べこの治療をすることが優先されます。 低血圧があり、日常生活に支障が出る場合には、内科・循環器内科を受診して相談をすると良いでしょう。糖尿病
糖尿病とは、インスリンの作用不足により血糖値が高い状態が続く病気です。高血糖が何年も続くと、血管が傷つき糖尿病の合併症がみられるようになります。高血糖により細い血管が傷つき生じる合併症で代表的なものは、糖尿病性神経障害・糖尿病網膜症・糖尿病性腎症です。このうち、糖尿病性神経障害が生じると自律神経障害がみられることもあります。この、自律神経障害の症状として、起立性低血圧などがみられることもあり、注意が必要です。副腎機能不全
副腎からはいろいろなホルモンが分泌されており、副腎の機能が低下すると、これらのホルモンの分泌が低下するために、さまざまな症状がみられるようになります。副腎機能不全は、副腎自体に病変がある原発性副腎不全(アジソン病)と下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌不全による続発性に分けられます。また、アジソン病は先天性のものと感染症などが原因となる後天性のものに分かれます。アジソン病の患者数は約1000人と推定されており、それほど患者数は多くありません。 アジソン病の症状としては、全身倦怠感、筋力低下、体重減少、食欲不振、悪心、精神症状(無気力、うつ)などです。また、低血圧がみられることも少なくありません。治療は、副腎ホルモンを補充することです。副腎不全の症状は、特徴的なものがなくわかりにくいことも多いです。気になる症状が続く場合には、内科・内分泌内科を受診すると良いでしょう。心筋症
心筋症は、心機能障害を伴う心筋疾患と定義されています。心筋症には、拡張型心筋症、肥大型心筋症と拘束型心筋症などがあります。拡張型心筋症は心筋が薄く拡大し、肥大型心筋症は心筋が厚くなり、拘束型心筋症は心筋が硬くなる特徴があります。これらの心筋症は、遺伝子異常がある事が少しずつ分かってきましたが、未だ原因がはっきりと分かっていないことが多いです。また、このほかにも感染症や自己免疫疾患、内分泌疾患、心筋炎などに伴い心筋症がみられることもあります。心筋症の初期は症状がみられないことも多いです。病状が進行すると、息切れや足のむくみなど心不全に伴うさまざまな症状がみられます。また、心不全に伴う低血圧を伴うこともあるため注意が必要です。 動悸や息切れなどの症状、また健康診断などで心電図異常や胸部レントゲンで心拡大などを認めた場合には、循環器内科を受診して相談してみましょう。心臓弁膜症
心臓は4つの部屋に分かれており、これらの部屋を血液が流れる際に逆流しないように4つの弁があります。弁はそれぞれ、大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁と呼ばれ、それぞれの弁に不具合がおこったものが弁膜症です。弁が障害されると、弁の通過障害(狭窄症)と弁の逆流(閉鎖不全症)が起こります。これらの弁の機能不全が進行すると、心臓の中の血行動態に異常が起こり、重度となると心臓の動きも悪くなり心不全を起こします。 弁膜症が軽度である場合には、通常症状はありません。しかし、進行して心不全を起こすと動悸や息切れ、呼吸苦などみられ浮腫などを伴うこともあります。また、心不全に伴い血圧が低くなり低血圧がみられることもあります。健康診断などで心雑音を指摘されたり、胸部レントゲンでの心拡大などがみられる場合には循環器内科で相談をしましょう。「血圧検査で上が90、下が50」だった時の正しい対処法・改善法は?
低血圧で運動しても大丈夫?
低血圧であっても、症状がない場合には運動をしても問題はありません。しかし、運動をすると息切れ、動悸、苦しいなどの症状がある場合には心不全など他の原因に伴い低血圧が起こっている可能性もあるため、循環器内科を受診しましょう。血圧を上げるおすすめ食べ物はある?
血圧は塩分摂取をすると上がる可能性はありますが、過剰な塩分摂取はお勧めできません。日本人の食事摂取基準(2025年版)では塩分の1日の摂取目標として男性で7.5g女性で6.5gとしています。この程度の塩分の摂取とし、バランスよく食事をすることが大切です。特に虚弱体質の方での低血圧がみられやすいため、タンパク質を適量とり、適度な運動、規則正しい生活をすることがすすめられます。低血圧で具合が悪くなった場合の対応は?
低血圧で立ちくらみやめまいなど具合が悪くなった場合には、まず横になって休みましょう。安静にすることで症状がすぐに落ち着く場合には、問題がないことが多いですが、動悸や息苦しい症状が長く続いたり、少し動いただけでも何度も具合が悪くなる場合には循環器内科で相談をしましょう。「血圧が上90、下50だった場合」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「血圧が上90、下50だった場合」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
高血圧は放置すると危ないと聞きますが、低血圧も放置すると危ないのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
高血圧とは異なり、症状がない場合には、低血圧は様子を見ても問題がないことが多いです。しかし、動悸、めまい、息苦しいなどの症状が出る場合には低血圧以外に問題がある事もあるため循環器内科を受診することをお勧めします。
低血圧ですぐに受診した方が良い数値はいくつですか?
伊藤 陽子(医師)
低血圧ですぐに受診した方が良い数値は特にありません。自覚症状がない場合には様子を見ても良いでしょう。しかし、動悸やめまい、息苦しいなどの症状があれば早めに循環器内科を受診しましょう。
男女で低血圧の基準は異なりますか?
伊藤 陽子(医師)
男女で低血圧の基準の差はありません。明確な基準はありませんが100/60mmHg以下の場合に低血圧と呼ぶことが多いです。
倦怠感やめまいなど、血圧が低い人に多い症状を教えてください。
伊藤 陽子(医師)
血圧が低い人では、倦怠感、めまいの他に、立ちくらみ、頭痛、朝に起床しづらいなどの症状がある事があります。また、動悸や息苦しさなどの症状がある場合もあります。
まとめ 健康診断で「血圧が上90、下50」だった場合症状があれば循環器内科を受診しよう
低血圧であっても、元気であれば慌てて受診をする必要はありません。まず、めまい、動悸、立ちくらみ、失神などの症状があるかを考えてみましょう。症状がない場合には、本態性低血圧の可能性が高いです。この場合には、痩せていたり、虚弱体質による影響も考えられます。バランスよい食事、適度な運動、規則正しい生活を心がけましょう。 症状がある場合には、心臓疾患などの病気がある事もあるため、まず循環器内科を受診すると良いでしょう。「低血圧」の異常で考えられる病気
「低血圧」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。循環器系の病気
- 心筋症
- 心不全
- 心臓弁膜症
内分泌疾患の病気
- 副腎機能不全
- 甲状腺機能低下症
内科系の病気
- 脱水
- 出血
- 栄養不良
「低血圧」に似ている症状・関連する症状
「低血圧」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。関連する病気
- めまい
- 立ちくらみ
- 朝に起きづらい
- 頭痛
- 倦怠感
- 動悸
- 息苦しい
- 失神
- 悪心




