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「フレイル」とは何かご存知ですか?加齢によって起こる症状について医師が解説!

 公開日:2025/10/01

フレイルをご存知でしょうか?メディカルドック監修医が主な原因や症状、何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

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フレイルとは?加齢の前に知っておきたい心身の機能低下

フレイルとは、加齢に伴って心身の活力が低下し、健康な状態と要介護状態の中間にあたる状態を指します。英語の「frailty(虚弱・老衰)」に由来し、身体的な衰えだけでなく、気力や社会的なつながりの低下も含まれます。特徴的なのは、適切な対策を講じれば健康な状態に戻れる可能性がある点です。早期に気づき、対策を始めることが要介護予防に直結します。

身体に現れるフレイル

身体的フレイルでは、筋力低下や歩行速度の低下、疲れやすさ、意図しない体重減少などが見られます。これらはサルコペニア(加齢による筋肉量の減少)や生活習慣病と関係している場合があります。すぐにできる工夫としては、日常の散歩や軽い体操などの運動、タンパク質を意識した食事が有効です。

精神状態・気持ちやメンタル面に現れるフレイル

フレイルは心にも影響します。気分の落ち込み、意欲の低下、軽度の認知機能低下などが起こりやすく、うつ病や認知症の初期段階と区別が難しいこともあります。気分の変化を感じたら、睡眠の改善や趣味活動を通じた気分転換が助けになります。長引く場合は早めに医療機関へ相談してください。

その他・社会的な面で現れるフレイル

社会的フレイルでは、人との交流が減り、閉じこもりや孤立状態になることが特徴です。孤立は心身の健康悪化を加速させる要因となるため、地域活動やサークル、ボランティアなどに参加し、積極的に社会と関わることが重要です。

シニア層のフレイルとサルコペニアとの違いは?

フレイルとサルコペニアは、似たような部分もあります。以下で、それぞれについて解説します。

サルコペニアとは?

サルコペニアは、筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下する状態です。立ち上がりや歩行が難しくなり、転倒や骨折のリスクが高まります。高齢者に多く見られますが、栄養不足や運動不足でも起こるため注意が必要です。

サルコペニアとフレイルの違い

サルコペニアとフレイルの違いについて解説しましょう。 サルコペニアは「筋肉の減少」に焦点を当てた概念であるのに対し、フレイルは身体面だけでなく、精神的・社会的な要素も含む広い概念です。両者は密接に関連しており、サルコペニアがフレイルの一因となることも少なくありません。

フレイルを予防するには?

フレイルは、適切な生活習慣によって予防が可能と考えられています。以下のような習慣が効果的とされています。

フレイルを予防する運動はあるのか?

フレイルを予防するための運動としては、以下のようなものが挙げられます。
  • 散歩やウォーキング
  • スクワットやかかと上げなどの軽い筋トレ
  • ラジオ体操やストレッチ
無理なく続けられる運動が推奨されます。継続することで筋力維持や転倒予防につながります。

フレイルを予防する食事は?

栄養バランスを意識し、特にタンパク質(肉・魚・大豆製品・卵など)をしっかり摂取することが重要です。また、ビタミンDをとることも大切です。日光を浴びることで皮膚でも作られますが、サプリメントなどを上手に活用するなどの方法もあります。ビタミンDは干し椎茸などにも豊富に含まれています。

その他のフレイル予防法

定期的な健康診断、特に、自治体などで開催されている長寿健診などで、フレイルのリスクを定期的にチェックしましょう。また、歯科検診で口腔機能を維持(オーラルフレイル対策)することも大切です。 引きこもりにならないよう、趣味や地域活動を通じた社会参加も重要です。

フレイルの原因は?

フレイルの原因は一つではなく、以下のように多彩なものがあります。
  • 加齢
  • 栄養不足や偏った食事
  • 運動不足
  • 糖尿病や高血圧などの生活習慣病
  • 孤立や経済的困難
こうした要因が組み合わさり、フレイルが引き起こされると考えられています。

フレイルが気になる場合、何科を受診すべき?

フレイルかもしれないと思われた場合、もしかかりつけ医がいれば相談してみましょう。 もし特に主治医がいないとき、筋力低下などが目立つようであれば整形外科の受診も有効でしょう。老年内科やリハビリ科もよいですね。 また、最近ではフレイル外来を設けている医療機関もあります。お近くにそうした外来があれば、一度受診してみるとよいでしょう。

フレイルはどのように診断される?

フレイルの評価にはさまざまなものがありますが、身体的な評価を行う代用的な基準について以下で述べていきます。

フレイルの評価基準

代表的なのは「フリードの基準」です。以下の5項目のうち3つ以上当てはまるとフレイルとされます。
  • 体重減少
  • 疲労感
  • 握力低下
  • 歩行速度低下
  • 活動量低下
なお、1、または2つ当てはまる場合は、プレフレイル(前段階)とされます。

フレイルのチェックリスト

フレイルの早期発見には、いくつかの簡便なチェック方法が活用されています。特に厚生労働省が提唱する「基本チェックリスト」は、25項目から成り立ち、身体機能・栄養状態・口腔機能・閉じこもり傾向・認知機能・うつ傾向など幅広い観点から確認できます。 また、簡易的に評価する方法として以下が挙げられます。
指輪っかテスト:親指と人差し指で作った輪を利き足のふくらはぎに当て、隙間ができる場合は筋肉量が少ない可能性があります。
イレブンチェック:11の質問に「はい/いいえ」で答える方式で、生活習慣や体調の変化を把握できます。
これらの簡単な方法は、自宅でもセルフチェックが可能であり、気づきを得るきっかけになります。ただし「陽性=必ずフレイル」というわけではなく、あくまで早めに受診や相談を促すための目安です。

フレイルの総合チェック

フレイルは身体面だけでなく、精神的・社会的側面も含む複合的な概念です。そのため、総合チェックでは以下のような多面的な評価が行われます。
・身体的評価:筋力測定(握力)、歩行速度、体重変化、体組成測定など
・精神・認知的評価:うつ症状の有無、認知機能検査(MMSEなど)
・社会的評価:独居かどうか、交流頻度、社会活動の有無
これらを総合的に判断し、専門医(老年内科、総合診療科など)がフレイルかどうかを診断します。必要に応じてリハビリや栄養指導、地域支援サービスにつなげることができます。

フレイルの治療方法はあるのか?

フレイル自体は「治療する病気」ではなく、改善可能な状態です。悪循環をもたらすフレイルサイクルを断ち切ることが大切です。 まずは、フレイルかもしれないと感じた際は、かかりつけ医や地域包括支援センターなどで相談し、自分の状態を把握することが大切です。 その上で、以下のようなものが、フレイル対策となります。
  • 適度な運動習慣
  • 栄養指導やサプリメント補助
  • 社会参加の促進
  • 生活習慣病の治療
できることから始めていきましょう。

「フレイル」で気をつけたい病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「フレイル」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

ロコモティブシンドローム

運動器の障害により移動機能が低下する状態です。整形外科の受診が適切と考えられます。必要に応じて、運動療法やリハビリが行われます。 ロコモティブシンドロームとフレイルの予防方法はほぼ同じです。エネルギー摂取とタンパク質の適切な摂取が大切とされています。体重1kgあたり、1〜1.2gのタンパク質の摂取が予防のために勧められます。また、改善のためには1.2〜1.5gのタンパク質が必要とされています。

サルコペニア

サルコペニアとは、加齢や活動量の低下、栄養不足などを背景に、骨格筋量と筋力が低下する病気です。特に高齢者では、転倒や骨折のリスク増加、要介護状態への進行に直結します。主な原因は、加齢による筋肉細胞の減少に加え、タンパク質不足や慢性疾患、ホルモン分泌の低下などです。 対処法としては、適度な運動(筋トレや有酸素運動)とバランスの取れた栄養摂取が中心となります。 体重1kgあたり1〜1.2gのタンパク質を摂ることが予防につながり、改善目的では1.2〜1.5gが推奨されます。症状が進んで日常生活に支障をきたす場合は、内科や整形外科、リハビリ科を受診するとよいでしょう。

認知症

認知症は、記憶や判断力の低下によって日常生活に支障が生じる病気です。アルツハイマー病やレビー小体型認知症、血管性認知症などが代表的です。発症の背景には、加齢、動脈硬化、生活習慣病などが関与しています。 身体がフレイルの状態になっていることによって、特に血管性認知症発症のリスクが高まるとされています。逆に、認知症によって身体的なフレイルが進みやすくなることも知られています。 治療法は根治的なものはありませんが、薬物療法による進行抑制や、リハビリ・生活支援によるQOL改善が図られます。受診すべき目安は、物忘れが増えて日常生活に影響が出始めたときや、家族から指摘を受けたときです。対応する診療科は脳神経内科や精神科、認知症外来です。

体重減少

体重減少は、意図せず6か月間で5%以上の体重が落ちる場合に医学的に問題とされます。加齢やフレイルによる筋肉量低下のほか、消化器系疾患、がん、糖尿病、甲状腺疾患など多様な原因が隠れている可能性があります。 対処法としては、十分な栄養摂取(特にタンパク質やエネルギー源)を心がけること、体重の変化を定期的に記録することが大切です。短期間で急激に痩せる場合は重大な疾患の可能性もあるため、内科や消化器内科を早めに受診する必要があります。

食欲不振

食欲不振は、食事を摂りたいという身体の欲求が低下したり失われたりした状態です。 がんなどの治療による副作用や、不安や落ち込んだ気持ちになっているなどの精神的な要因などが考えられます。 一人暮らしの方や、高齢の方2人のみの家族の場合、食事の会話などが少なくなり、食欲低下や食事量の減少につながることがあります。また、外出が減り、運動不足になりお腹が空かないということにもつながります。 食欲が低下し、食事量が減少すると、筋肉量の低下が引き起こされることがあります。 そのため、きちんと食事をとるように気をつけることが大切です。例えば、3食とるようにする、さまざまな食材を取り入れる、食欲がどうしてもない場合はおかずを先に食べるようにする、などのポイントがあります。

「フレイル」の正しい対処法・改善法は?

フレイルは早めに気づいて生活を見直すことで改善が期待できます。ポイントは「食事・運動・睡眠・社会参加」の4つです。まずは食事です。筋肉維持のために肉や魚、卵、大豆製品などから十分なタンパク質を摂りましょう。野菜や果物でビタミン・ミネラルも補うことが大切です。 次に運動です。毎日の散歩や軽い筋トレを継続するだけでも効果があります。特に下半身の筋力維持は転倒予防に役立ちます。睡眠とストレス管理も重要です。生活リズムを整え、趣味や交流を通じて心をリフレッシュしましょう。最後に社会参加が挙げられます。家族や地域活動への関わりは孤立を防ぎ、心身の健康につながります。症状が進んでいる場合は、老年内科やリハビリ科での相談も検討してください。

「フレイル」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「フレイル」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

フレイルは何歳から発症しやすいのでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

一般的には65歳以上で増加すると考えられています。しかし、生活習慣次第で40〜50代から兆候が出ることもあります。

フレイルとロコモティブシンドロームの違いは何ですか?

木村 香菜木村 香菜 医師

ロコモティブシンドロームは運動器に限定された機能低下、フレイルは心身全体を含む広い概念です。

親が要介護になる前にフレイルを予防したいです。運動は効果的でしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

はい。筋力維持と社会参加を兼ねた運動が最も効果的です。

まとめ フレイルが気になるときはかかりつけ医や整形外科、内科、老年科を受診しよう

フレイルは誰にでも起こり得る「老いのサイン」です。 しかし、食事・運動・社会参加などの取り組みによって改善できる可能性があります。気になる症状があれば放置せず、まずは かかりつけ医に相談しましょう。いない場合は、目立つ症状に合わせ、整形外科や内科、老年内科などに相談しましょう。

「フレイル」で考えられる病気

「フレイル」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

内分泌・代謝系の病気

運動器系の病気

神経・精神系の病気

消化器系の病気

  • 胃がん・大腸がんなど悪性腫瘍
フレイルは単独で存在するのではなく、さまざまな病気の「入り口」となりやすいため、気になる症状があれば早めの受診が大切です。

「フレイル」と関連する症状・関連する症状

「フレイル」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 肩が痛い
  • 疲れやすい
  • 倦怠感が続く
  • 体重減少
  • 食欲不振
  • 足がだるい・重い
  • 言葉が出てこない
  • 肩や腰の痛み
一見「加齢のせい」と思われがちな症状も、実は病気のサインであることがあります。症状が続く場合は放置せず、医療機関に相談しましょう。

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