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「血圧の薬と飲んではいけない薬」は何かご存じですか?飲んだ時の対処法も医師が解説!

 公開日:2025/10/16
「血圧の薬と飲んではいけない薬」は何かご存じですか?飲んだ時の対処法も医師が解説!

血圧の薬と飲んではいけない薬があるのをご存じですか?メディカルドック監修医が主な原因や誤って飲んでしまったときの対処法などを解説します。

大沼 善正

監修医師
大沼 善正(医師)

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昭和大学医学部卒業。昭和大学病院、関東労災病院を経て、現在はイムス富士見総合病院勤務。総合内科専門医、循環器専門医、不整脈専門医、医学博士。

血圧とは?

血圧とは、心臓が血液を全身に送り出すときに、動脈にかかる圧力のことです。医学的には上の血圧を「収縮期血圧」、下の血圧を「拡張期血圧」といいます。
収縮期血圧:心臓が収縮して血液を送り出すときに、動脈にかかる圧力。 拡張期血圧:心臓が拡張して休んでいるときに、動脈にかかる圧力。

血圧の治療薬にはどんな種類がある?

血圧の薬には血圧を下げる薬と上げる薬があります。高血圧に対しては血圧を下げる薬を使い、低血圧に対しては血圧を上げる薬を使います。普段血圧の薬として使われるのは、血圧を下げる薬(降圧薬)です。

高血圧の治療で服用する薬の例

1.利尿薬
尿として余分な塩分や水を排泄して血圧を下げます。むくみの改善としても使われます。
例:フロセミド、スピロノラクトン、ヒドロクロロチアジド
2.血管を広げる薬
血圧を上げるホルモンの働きを阻害する薬(ACE阻害薬、ARB)
血管を締め付けるホルモンの働きをブロックし、血管を拡張させます。
例:エナラプリル(ACE阻害薬)、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、オルメサルタン、アジルサルタン(ARB)
血管を直接拡張させる薬(Ca拮抗薬)
 血管平滑筋にカルシウムイオンが流入するのを抑え、血管収縮を抑制します。
 例:アムロジピン、ニフェジピン
3.心臓や神経に作用する薬
交感神経のβ受容体を遮断し、心臓を休ませる薬(β遮断薬)
 例:カルベジロール、ビソプロロール
交感神経のα1受容体を遮断し、血管を広げる薬(α遮断薬 前立腺肥大の薬としても使われます)
 例:ドキサゾシン
点滴薬
主に救急で使います。血管を広げ、血圧を下げます。
例:ニトログリセリン、ニカルジピン

低血圧の治療で服用する薬の例

1. 血管を収縮させる薬
 血管を収縮させ、血圧を上げます(α-アドレナリン受容体作動薬)
 例:ミドドリン
2.点滴薬
 交感神経のα受容体やβ受容体を刺激し、血管を収縮させたり、心臓の収縮を強めたりします。ショックや重症の低血圧に使います。
例:ノルアドレナリン、アドレナリン、ドパミン、ドブタミン

血圧の薬と飲んではいけない薬とは?

高血圧の薬は、一緒に飲んだ薬の影響で降圧作用が強くなったり、弱くなったりします。そのため飲み合わせに注意が必要な薬や食品があります。 特に、一部の風邪薬、解熱鎮痛薬、漢方薬などは注意が必要です。

エフェドリン類が含まれる風邪薬

血圧を下げる薬の効果を弱める可能性があります。エフェドリン類(プソイドエフェドリン、dl-メチルエフェドリン、フェニレフリンなどの交感神経刺激成分)は交感神経を刺激し、血管を収縮させ、心拍数や心収縮を増強するため、血圧を上昇させ、心拍数を増加させます。そのため、高血圧を悪化させる恐れがあります。 また、β遮断薬を服用中の方では作用が打ち消されるため、血圧や脈拍の変動が大きくなることもあります。

NSAIDs配合の鎮痛剤

血圧を下げる薬の効果を弱める可能性があります。NSAIDsは解熱鎮痛剤として用いられる薬ですが、薬の作用に「シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害して、プロスタグランジンの産生を抑える」があります。それにより、腎血流が低下し、塩分や水分をため込みやすくなるため、RAAS(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)が活性化して、血圧が上がりやすくなります。特にACE阻害薬やARBと利尿薬を同時に使うと、腎機能の悪化や電解質異常を起こしやすくなるため、注意が必要です。

葛根湯など甘草を含む漢方薬

血圧を下げる薬の効果を弱める可能性があります。甘草に含まれる グリチルリチン酸 は、コルチゾール(ホルモンの一種)をコルチゾンに分解する酵素を阻害します。すると、コルチゾールの作用が強まり、腎臓の受容体に作用して、ナトリウムを再吸収してカリウムを排泄します。その結果水分や塩分が体にたまり、血圧が上昇します。また低カリウム血症により、不整脈などを起こすリスクがあります。

血圧を下げる薬

利尿薬とACE阻害薬またはARBを組み合わせることで、より血圧を下げる作用が強くなります。利尿薬で体の水分が減ると、体は元に戻そうと水をため込もうとするため、 RAASが活性化します。ACE阻害薬またはARBはこのメカニズムを阻害する薬なので、より血圧を下げる効果を持続することができるため、より血圧を下げたいときに用いられます。ただし、過度に血圧が下がったり腎機能や電解質に影響が出たりする可能性もあるので、注意深い管理が必要です。

血圧の薬と飲んではいけない飲み物・食品とは?

特定の食品では、血圧の薬を増強させたり、弱めたりすることがあります。多くの食事では問題ありませんが、ご自身が血圧の薬を飲んでいる場合には、飲み合わせについて覚えておくとよいかと思われます。

グレープフルーツ

血圧を下げる薬(Ca拮抗薬)の効果が強まる可能性があります。グレープフルーツには「フラノクマリン類」という成分が含まれており、この成分が腸や肝臓にある薬を分解する酵素を阻害します。そのため、本来なら分解されるはずの薬が分解されにくくなり、血液中の薬物濃度が上がってしまい、血圧を下げる薬の効果が強く出る可能性があります。 ただし、ACE阻害薬やARB、利尿薬では、臨床的に意味ある相互作用は報告されていないため、グレープフルーツを避ける必要はないと思われます。

高血圧の薬を服用中に別の薬を服用する場合は医師・薬剤師に相談を

市販薬を購入する際、可能でしたら添付文書を確認し、高血圧の人が避けるべき成分が入っていないかを確認しましょう。市販薬を使用するときや、別の症状で薬をもらった場合には、かかりつけ薬局で普段の薬との飲み合わせを確認してもらいましょう。医師・薬剤師から指示を受ける場合には、市販で使っている薬やサプリメントなどもしっかり伝えるとよいでしょう。

「血圧」の異常で気をつけたい病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「血圧」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

高血圧

血圧が、繰り返し測っても基準値より高い状態が続く病気です。多くは本態性といわれ、とくに明らかな原因はなく起こります。塩分過多の食事や、遺伝的要因、生活習慣、加齢などが影響します。二次性高血圧といって、腎臓や内分泌の異常によって二次的に引き起こされる高血圧もあります。 本態性高血圧の場合には、まず食事や運動を見直します。それでも改善が見られない場合には、血圧を下げる薬を内服することになります。二次性高血圧に対しては、原因となっている疾患を治療することが第一です。 病院や診療所で血圧が140/90mmHg、家庭で血圧が135/85mmHgを超えるようなら、自覚症状がなくても内科を受診しましょう。

低血圧

血圧が低いことにより、めまい、ふらつき、立ちくらみなどが生じる病気です。明らかな原因のない本態性低血圧と、内分泌などの異常から起きる二次性低血圧があります。本態性低血圧の場合には、適度な食事、運動にて改善を図り、効果が乏しい場合には血圧を上げる薬を内服します。二次性低血圧に対しては、原因となる疾患を治療します。血圧が90/60mmHg以下であり、さらにめまい、ふらつき、立ちくらみがある場合には、内科を受診しましょう。血圧が低いだけで、日常生活に全く支障がない場合には、病院を受診しなくても大丈夫です。

脳卒中

脳卒中は医学的に脳血管障害といわれます。大きく3つに分けられ、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が出血する脳出血、脳を包む膜同士の間(くも膜と軟膜の間)に出血がたまるくも膜下出血があります。症状としては、突然の頭痛、意識障害、手足の麻痺、しゃべれない・言葉が出ない、めまい・ふらつきなどがあります。 いずれも緊急を要する病気であるため、夜間でも救急要請をし、脳卒中を治療できる病院を受診する必要があります。

心筋梗塞

心臓を栄養している冠動脈という動脈が、突然詰まってしまう病気です。冠動脈内にあったプラーク(コレステロールの塊)が破綻したり、流れてきた血栓(血の塊)が詰まったりすることで起こります。 突然の胸痛、胸部絞扼感が生じ、改善しない場合にはすぐに医療機関を受診しましょう。循環器内科にて専門的な治療を行うことが必要となります。

慢性腎臓病

腎臓の働きが徐々に低下していく病気です。原因としては、高血圧や糖尿病などの生活習慣病や加齢による変化、腎炎、遺伝的疾患などがあります。高血圧や糖尿病の治療をしっかり行うことや、減塩などの食事療法を行います。悪化すると人工透析が必要となることがあります。 健康診断で腎臓の悪化や尿タンパクを指摘された場合や、尿が少ない、むくみやすいなどがあれば腎臓内科を受診しましょう。

「血圧の薬と飲んではいけない薬」を服用してしまった場合の正しい対処法・改善法は?

血圧が低くなった場合には、楽な姿勢で横になり、安静を保ちます。めまいやふらつきが強い場合には医療機関を受診します。また、血圧が高くなった場合には、安静を保ち、血圧を繰り返し測定し、血圧が下がってくれば様子を見ることもできますが、動悸や胸苦しさが続く場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。水分をしっかりとることが大切です。避けるものとして、アルコールやカフェインは摂取しないようにしましょう。 早く治すためには、飲んではいけない薬の種類や量を、正確に医師や薬剤師に伝えることが必要です。

「血圧の薬と飲んではいけない薬」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「血圧の薬と飲んではいけない薬」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

血圧の薬はオレンジジュースと一緒に飲んでも大丈夫ですか?

大沼 善正 医師大沼 善正 医師

オレンジジュースにはフラノクマリン類が含まれていないため、血圧の薬(Ca拮抗薬)と飲んでも問題ありません。ただし、ダイダイ、ぶんたん、はっさくなど一部の柑橘類にはフラノクマリン類が含まれているため、注意しましょう。また、Ca拮抗薬とグレープフルーツの飲み合わせは注意が必要ですが、ACE阻害薬・ARB、利尿薬など他の血圧の薬との相互作用は少ないとされております。

グレープフルーツを食べてどれくらい時間を開けたら血圧の薬を飲んでも問題ないですか?

大沼 善正 医師大沼 善正 医師

個人差はありますが、グレープフルーツジュースの摂取後24時間は酵素活性が抑えられるとされています。そのため、最低でも24時間空けるのが望ましいと思われます。より安全をとるには、48~72時間空けるのがよいでしょう。

まとめ 血圧の薬と飲んではいけない薬はかかりつけ医や薬局で確認を

血圧の薬は飲み合わせにより効果が弱くなったり、強くなったりします。市販の薬と血圧の薬も注意が必要なため、分からない場合にはかかりつけの病院、診療所、薬局で確認するようにしましょう。また、いつも内服している薬が分かるように、お薬手帳を携帯するようにしましょう。血圧の薬と飲んではいけない薬は正しい知識で予防しましょう。

「血圧」の異常で考えられる病気

「血圧」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

脳神経系の病気

腎臓系の病気

高血圧は自覚症状がないですが、そのままにしておくと心筋梗塞、脳卒中、慢性腎臓病などの病気を引き起こすため、健康診断で指摘された場合や自宅血圧が高い場合には医療機関を受診するようにしましょう。

「血圧」と関連する症状・関連する症状

「血圧」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 心臓の鼓動を強く感じる
  • 目がチカチカする
  • こめかみの血管が浮き出る
  • 体が熱いが熱はない
  • ふらつく
  • 立ちくらみ
一般的に血圧が高い場合には心臓や脳の病気をはじめとした多くの病気の原因になるため注意ですが、血圧が低すぎる場合にもいろいろな症状が出現することがあります。適正な血圧の値で安定していることを目標に生活習慣改善を進めていくことが重要です。

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