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「運動後の血圧」はどうなるかご存じですか?運動中の注意点も医師が解説!

 公開日:2025/10/22
「運動後の血圧」はどうなるかご存じですか?運動中の注意点も医師が解説!

運動後の血圧はどうなっているかご存じですか?メディカルドック監修医が運動後の血圧のメカニズムや運動中の注意点について解説します。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

運動は血圧にどう影響を与えるのか?

一般的に、運動によって心臓の動きが活発になると血圧は上昇しますが、適度な運動を続けると血圧は低下してきます。ここでは、運動直後に起こりうる血圧の変化と、上がる理由・下がる理由を説明します。

運動直後の血圧が高くなる時

運動直後の収縮期血圧が高くなる現象は、一時的なものであれば正常な生理反応です。運動中は筋肉に多くの酸素や栄養を運ぶため、心拍数は増加し、血管の収縮力が強くなって交感神経が緊張するためです。
低・中強度の運動は収縮期血圧の上昇はわずかですが、高強度の運動は著明な血圧上昇を認めるため、もともと高血圧の人には勧められません。

また、運動負荷により著明な高血圧がみられる状態を「運動誘発性高血圧(EIH)」と呼び、注意が必要です。
EIHは、運動負荷時に収縮期血圧が男性で210mmHg以上、女性で190mmHgに達する病態です。このEIHはアスリートや健康な大人に見られます。EIHは将来的に高血圧を発症するリスクとなっている、心血管系の病気の発症のリスクとなっている可能性が報告されています。このため、EIHを指摘された場合循環器内科を受診して相談をすることをお勧めします。

普段高血圧に当てはまらなくても、運動後に血圧が急激に上昇する場合には将来高血圧に移行する可能性が高いとも言われています。なるべく早く気がついて、対策を取ることが望ましいでしょう。

運動直後の血圧が下がる時

運動を中止すると、筋肉のポンプ作用が働かず心臓へ戻る血流が減ります。また、運動後は収縮した血管が元に戻り、血圧を上げようとする交感神経の緊張が解けて血圧が安静時の状態まで下がっていきます。急に運動をやめたときには心拍数の低下、一回の拍出量の低下、静脈還流量の減少が急激に起こり、血圧が下がりやすくなるため5〜10分ほど徐々に運動を減らすクールダウンを行うことがすすめられます。

生理現象のほか、運動前の安静時血圧よりも運動直後の血圧が低下する運動後低血圧がみられることもあります。これは起立性低血圧の一種で、心拍数が減少しても血管が拡張したままになり、静脈で心臓に戻ってくる血液量が減少し血圧が下がります。

急に立ち上がったりすると、立ちくらみや気分が悪くなることがあるのはこの現象のためです。水分摂取で予防できる、という研究結果もありますので、意識して行いましょう。

運動後どのくらいで血圧は戻る?

運動直後に上昇した血圧が安静時の血圧に戻る時間は、一般的に運動終了してから約5〜15分ほどだと言われています。軽〜中等度の強度の運動では、血圧は運動終了後5分でかなり低下し、10〜15分ほどで安静時の値に戻ることが多いでしょう。回復するまでにかかる時間は、年齢・基礎疾患・日頃の運動習慣などによって個人差があります。血圧を気にされる方は、ご自身の血圧がどの程度で元に戻るか目安を知っておくといいでしょう。

血圧を測定するのは運動後どれくらい経過した後が良い?

運動直後の血圧測定では、運動による一過性の高値が反映されてしまうため、正確に行えません。運動後の血圧測定について、運動後に血圧が安定するまでは少なくとも15分以上、場合によっては20分程度かかった、という報告もあります。できれば15〜20分以上の安静時間を設けることが望ましいでしょう。

運動を長期的に行った場合、血圧は下がる?上がる?

一般的に、長期的な運動は血圧を下げる効果があります。実際に高血圧の治療法として「運動療法」も推奨されています。運動療法の中でも有酸素運動が推奨されており、有酸素運動を行うことで収縮期血圧を平均2〜5mmHg、拡張期血圧を平均1〜4mmHg低下させると報告されています。運動の種類としては、水泳、ウォーキング、ジョギングなどの有酸素運動などを定期的に(できれば毎日30分以上持続)行うことがおすすめです。運動を1回につき少なくとも10分以上持続し、合計して1日40分以上行うことが推奨されています。
運動は血管内皮機能を改善し、血管の柔軟性を高めるため、長期的に高血圧を含めた心血管疾患のリスクを下げます。高血圧そのものの改善効果に加え、肥満の改善やストレスの軽減など、血圧以外の心血管リスクの軽減にもつながります。
一方で、高血圧で運動療法の対象となるのは、Ⅱ度高血圧以下(自宅での収縮期血圧が160mmHg以下かつ/または拡張期血圧が100mmHg以下)かつ脳疾患血管ではない高血圧です。運動前に血圧を測定するようにしましょう。これより高い血圧の場合には、循環器内科を受診して相談をしてからとしましょう。
血圧が高い方は、運動を行う前に心血管疾患の合併がないことと、運動療法を行ってもいいかどうか医師に確認しましょう。

運動後、動悸や頭痛の症状が出たら注意

運動後に、動悸や胸痛などの胸部症状、頭痛、めまいなどのいつもと異なる症状が現れたら注意しましょう。運動直後には、通常運動前の血圧より上昇するため脳血管や心臓への負担がかかっている可能性が考えられます。運動後にこれらの症状に気がついたら、運動を中止し安静にし、それでも症状が治まらない場合には早急に医療機関を受診してください。

運動時の注意点

高血圧の人は、特に激しい運動で急激に血圧が上がることがあります。心臓に負荷がかかりすぎないように、準備・整理運動は十分に行うこと、メディカルチェックを受けて虚血性心疾患・心不全などの心血管合併症がないことを確認しましょう。
その上で、個人の基礎体力・年齢・体重・健康状態などを踏まえて運動量を設定します。
一方、低血圧の人は、運動後の血圧低下でめまいや失神が起こるリスクがあります。無理のない運動を選び、運動中や運動後の体調変化に注意しましょう。

運動後、息切れや胸痛などの症状が出たら循環器内科へ

運動後に胸痛や息切れ、めまい、強い頭痛、動悸などの症状が現れた場合は、循環器内科を受診しましょう。
高血圧の人は、特に激しい運動やトレーニングで急激に血圧が上がることがあります。心臓や血管などの循環器系に強い負担がかかるおそれがありますので、運動前に血圧を測り、異常があれば強度を調整するなどの対策をしてから運動を開始しましょう。

「運動後の血圧」で気をつけたい病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「運動後の血圧」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

運動誘発性高血圧

運動誘発性高血圧とは、運動すると血圧が異常に高くなる状態です。原因として、交感神経過剰刺激や血管の過剰収縮、血管内皮機能障害などが考えられています。
診断は運動負荷試験によって行われます。収縮期血圧が男性で210mmHg以上、女性で190mmHg以上が続くのが目安です。
治療として、生活習慣の改善と、必要に応じた降圧薬の使用が推奨されています。運動後に頭痛やめまいなどの症状を経験するなど、発症が疑われる場合は循環器内科もしくはかかりつけの内科を受診してください。

運動誘発性高血圧にならないためには

運動誘発性高血圧の予防には、適度な強度の有酸素運動を続けながらも、やりすぎて過度な負荷がかかることは避けることが大切です。日常的な運動習慣を持つことに加えて、ストレスの管理や適切な体重の維持も効果的です。また、高血圧や心血管疾患のリスク因子を持っている場合は、運動を始める前に医師と相談して強度や頻度を決めるといいでしょう。

「運動後の血圧」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「運動後の血圧」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

運動後の血圧は上がるのでしょうか?下がるのでしょうか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

運動直後には血圧が高値になりやすいため、避けましょう。15分〜20分以上安静にした後に測定することが望ましいでしょう。

血圧が高くて運動不足の人はどんな運動をどれくらいするべきですか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

定期的に、できれば毎日30分以上の運動を行いましょう。または1回につき少なくとも10分以上続け、合計して1日40分以上運動の実施が推奨されます。医師と相談しながら進めましょう。ウォーキングや水泳などがおすすめですが、時間が取れない場合、日常的に階段を使うことを心がける、といったことでもいいでしょう。

低血圧の人におすすめの運動習慣と注意点を教えてください。

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

軽いウォーキングやストレッチなどの有酸素運動がおすすめです。急に立ち上がる動作は避け、無理せずに続けられるものを選びましょう。運動後は心拍数の変動を和らげるためにクールダウンやゆっくりした動作を心がけましょう。水分補給も忘れずに行ってください。

まとめ 運動後の血圧が気になるときは循環器内科を受診!

運動後に血圧が上がるのは、一過性であれば正常な生理的反応です。しかし、運動後に過剰に血圧が上昇する場合は 運動誘発性高血圧の可能性があります。高血圧のリスクとなったり、心血管障害のリスクとなる事が報告されているため、運動中に過剰に血圧が上昇したり、頭痛や動悸、胸痛などの症状がある場合には循環器内科を受診して検査・治療を受けましょう。
また、血圧以外の健康状態の改善のためにも日頃から適度な運動を続けることも大切です。医師と相談しながら、無理のない範囲で運動習慣をつけましょう。

「運動後の血圧」の異常で考えられる病気

「運動後の血圧」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

  • 虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)
  • 動脈硬化症
  • 肺性心疾患

内分泌内科の病気

脳神経内科の病気

心療内科系の病気

  • 自律神経障害

運動後の血圧異常は、上記の病気以外にも生活習慣病や心身の状態による影響で起こることがあり、多岐にわたります。運動中、運動後に体調不良を感じる場合には循環器内科でまず相談をしてみましょう。

「血圧」と関連する症状・関連する症状

「血圧」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 息切れ、動悸
  • 頭痛
  • 視野のかすみ
  • 倦怠感
  • 気分不快

高血圧そのものには自覚症状が出にくいものの、血圧の急激な変動や合併症発症時に現れることが多いです。上記以外の症状がみられることもありますので、気になる症状がある場合、医療機関の受診をおすすめします。

この記事の監修医師