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「ヘモグロビンA1cの年齢別正常値」とは?高くなると現れる症状などを徹底解説!

 公開日:2025/08/22
「ヘモグロビンA1cの年齢別正常値」とは?高くなると現れる症状などを徹底解説!

ヘモグロビンA1cの年齢別正常値とは?Medical DOC監修医がヘモグロビンA1cが高くなる原因・高くなると現れる症状・考えられる病気・対処法などを解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

ヘモグロビンA1cとは?

「血糖値を測る前日だけ食べ物を節制して、血糖値を良く見せよう」と考えたことがある方は少なくないでしょう。空腹時血糖値は良い数値になるかもしれませんが、これでは正しい血糖値の指標になりません。しかし血中のヘモグロビンA1C(HbA1c)を使うと、過去1~2ヶ月前の平均的な血糖値を測ることができます。空腹時血糖値とヘモグロビンA1cをどちらも測ることで、糖尿病の確定診断が行えます。ヘモグロビンは、体内に酸素と栄養を運ぶ赤血球の主成分です。血中にブドウ糖が多いと、ヘモグロビンの一部が糖化して「糖化ヘモグロビン」という成分に変わります。血中糖度が高ければ高いほど糖化ヘモグロビンは増え、一度糖化したヘモグロビンは元に戻りません。赤血球の寿命は約120日あり、たとえ前日に血中の糖を減らしてもヘモグロビンA1cは変化しません。そのため1〜2か月前の血中糖度の平均を知るために欠かせません。ヘモグロビンA1cは、血中に糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかをパーセントで表したものです。

ヘモグロビンA1cの正常値

ヘモグロビンA1cの正常値は5.6%未満です。日本においては日本独自の基準だったHbAic(JDS)と、国際基準のHbAic(NGSP)があります。国際標準の基準では、日本独自の基準よりも正常値の範囲がやや高めに設定されています。5.6〜5.9%は要注意、6.0〜6.4%以上は糖尿病の疑いがあり、6.5%以上は糖尿病の可能性が高いと判断され、精密検査が行われます。

ヘモグロビンA1cの正常値は年齢別で分類されてる?

ヘモグロビンA1cの正常値は年齢別では分類されていません。 しかし、65歳以上の高齢になると「低血糖」リスクが上がります。そのため65歳未満よりも高いヘモグロビンA1cが正常値とされています。高齢者は低血糖が重症化しやすいことがあるため、厳格な血糖コントロールが推奨されない場合があります。日本糖尿病学会のガイドラインでの目標は、65歳以上の方で自立している場合はHbA1c値7.0%未満とされています。また、複数の持病や生活能力が低下した方は7.0〜8.0%未満、要介護者は8.0%未満とされています。

ヘモグロビンA1cが高くなる原因

血中のグルコース濃度(血糖値)が高い状態が続くと、ヘモグロビンA1cが高くなります。以下のような要因が考えられます。

肥満

血糖コントロールが悪くなる要因として、まず肥満が挙げられます。 体脂肪が増えると、特に内臓脂肪からインスリンの働きを妨げる物質が分泌され、インスリンが効きにくくなります。この状態を「インスリン抵抗性」といい、血糖を効率よく細胞に取り込めなくなり、血糖値が高くなります。食事の改善や適度な運動を行うことで、内臓脂肪を減らし、インスリンの効きを良くすることが大切です。

加齢

年齢とともに筋肉量が減少し、基礎代謝が低下すると、糖の利用が減り、血糖値が上がりやすくなります。また、加齢によってインスリン抵抗性が増すことも知られています。

運動不足

運動不足もまた、血糖値を上げる要因となります。 運動によって筋肉はブドウ糖を消費しますが、運動不足の状態が続くと、糖を消費しにくい身体になり、血糖値が上がりやすくなります。加えて、運動をしないと筋肉量が減少し、インスリンの効きも低下します。日常生活の中で意識的に体を動かすことが、血糖コントロールの改善につながります。

インスリン分泌不足

膵臓のβ細胞からのインスリン分泌が不足すると血糖値が上昇し、ヘモグロビンA1cも高くなります。原因としては自己免疫反応で膵臓のβ細胞が破壊される(1型糖尿病)、膵炎など膵臓の病気などがあります。糖尿病と診断された場合には、適切な治療で血糖値をコントロールすることが大切です。

ストレス・感染症など

ストレスや感染症も血糖コントロールを乱す要因になります。 強いストレスを感じると、副腎からコルチゾールが分泌されます。このホルモンは血糖値を上げる作用を持ちます。また、感染症による炎症反応が高まると、インスリンの働きが低下することがあります。日常的にストレスを適度に発散し、感染症予防を心がけることが血糖値管理の一助となります。

ヘモグロビンA1cが高くなると現れる症状

ヘモグロビンA1cが高くなる=血中にブドウ糖が多い状態が続くと、さまざまな症状が現れます。なんとなく体調が優れないのに加え、「のどの渇き」「多尿」は分かりやすい症状が続きます。これらの症状が何日も続く場合は、早めに内科を受診しましょう。 しかし初期症状が表れにくいこともあります。定期健診を受けてヘモグロビンA1cや空腹時血糖値を確認しましょう。

口渇(のどの渇き)

血中にブドウ糖が多いと、浸透圧の影響で腎臓が余分な水分を排出しようとするため、体内の水分が不足しやすくなります。そのため体内の水分が常に不足し、強い渇きに悩まされます。

多飲・多尿

喉の渇きが止まらず大量の水分摂取をするので、尿の回数や量が増えます。10分ごとにトイレに行ってしまう、外出中に失禁しそうになるなど、日常生活に支障が出ることがあります。

体重減少

高血糖状態が続くと体内のエネルギー代謝が乱れ、体重減少が起こることがあります。また、急激な体重減少は悪性腫瘍や甲状腺機能亢進症などの病気でも起こります。持病がなく、ダイエットをしていないのに急激に痩せる場合には病的な体重減少の可能性があります。半年から1年で体重が4.5kg、もしくは5%以上減少した場合、医療機関の受診を検討しましょう。

易疲労感(疲れやすさ)

血糖値のコントロールが不十分な場合、全身の倦怠感や疲れやすさを感じることがあります。血糖を細胞が受け取り、エネルギーに替えることで人体は動くことができます。高血糖の状態では細胞に十分な血糖が渡らず、慢性的にエネルギー不足になり疲れやすくなります。どれだけ休んでも疲れが抜けない、多尿やのどの渇きなど他の症状を併発する場合は、内科を受診しましょう。

性機能障害

ヘモグロビンA1cが高いまま放置して糖尿病になると、血流や神経障害が始まります。男性では勃起不全、女性では性的感度の低下などが起こることがあります。性機能障害の治療は、男性は泌尿器科、女性は婦人科で行いますが、原因が高いヘモグロビンA1cの場合は内科での治療も必要です。まずは泌尿器科/婦人科の受診をおすすめします。

「ヘモグロビンA1cが高い」と発症する可能性のある病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「ヘモグロビンA1cが高い」に関する病気を紹介します。どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

糖尿病

ヘモグロビンA1c値の高さは、糖尿病の診断指標の一つになります。必ずしもHbA1cが高い=糖尿病とは限りませんが、ほぼ確実に糖尿病と考え、対処するべきです。 糖尿病は万病の元です。放置すると動脈硬化を起こし、失明、腎不全、手足の壊死、神経障害、筋肉量の減少(サルコぺニア)、寝たきりなど、さまざまな病気リスクが上がります。 日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」では、HbA1c値が6.5%以上で糖尿病が強く疑われるとされています。健康診断で血糖値異常を指摘されたら、ただちに内科(可能なら内分泌内科か糖尿病科)を受診しましょう。

心血管疾患

ヘモグロビンA1cが高い状態が続くと、血管がダメージを受け、動脈硬化を進行させる原因となります。結果として、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患のリスクが高まります。 また、高血糖により体内で「終末糖化産物(AGE)」が増加すると、血管の炎症や硬化を引き起こします。さらに、インスリンが効きにくくなることで血管を広げる作用も低下し、血流障害が進むため、心血管疾患を発症しやすくなります。

骨粗しょう症

HbA1cが高いと酸化ストレスで骨質が劣化し、骨密度が低下します。骨密度の低下が進むと、骨粗しょう症になり、骨折リスクが増加します。HbA1cが7.5%以上の2型糖尿病患者は、糖尿病のない人に比べて骨折リスクが1.47倍高いとされています。一方で、HbA1cが7.5%未満の2型糖尿病患者の骨折リスクは、糖尿病のない人とほぼ同じだったとの報告があります。

脂質異常症

血糖値が高い状態が続くと、インスリンが効きにくくなります(インスリン抵抗性)。そのため、脂質代謝にも影響を及ぼし、脂質異常症を悪化させます。特に脂っこい食事を続けると脂質異常症になりやすく、糖尿病も悪化させます。食生活を見直しましょう。

感染症にかかりやすくなる

高血糖が続くと免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。特に好中球の貪食能や殺菌能が低下し、免疫応答が鈍くなることが知られています。また、高血糖環境では尿や皮膚の創傷部位に糖が多く存在するため、細菌が増殖しやすく、尿路感染症や皮膚感染症のリスクが高まります。

「ヘモグロビンA1cが高い」ときの正しい対処法・改善法は?

ヘモグロビンA1cは、適正な運動や食事制限などを続けると徐々に低下します。まずは「食事と運動」がヘモグロビンA1cの改善策です。「薬を飲んでいるから」と不摂生を続けると、いつまでも改善しません。 しかし自己流で食事制限をすると栄養の偏りで、かえって食欲が増してリバウンドしかねません。医療機関の指導に従い、長期的に、無理のない程度に続けていきましょう。

食事療法

適正体重まで減量することでヘモグロビンA1cが大幅に改善することがあります。 減量の基本は規則正しい時間に、バランスの良い低カロリーの食事を、ゆっくり食べることです。 カロリー換算で炭水化物40〜60%、タンパク質20%、脂質25%以下を目指し、食物繊維を1日20g以上、野菜350gほど、海藻類や貝などミネラルも十分に摂取しましょう。 2型糖尿病の場合、糖質制限は6~12ヶ月の短期間なら効果が期待できるとされています。 糖尿病と診断されると医師、看護師、管理栄養士から食事指導を受けます。近年は無理なく続けられる献立や、外食やコンビニ食でも賄えるような工夫を指導されます。「日本糖尿病学会がすすめる健康食ハンドブック」などを参考にして実践しましょう。

運動療法

食事療法に併せ、有酸素運動や筋力トレーニングを続けましょう。適度な運動はインスリン感受性を高め、血糖値の改善に役立ちます。有酸素運動を週に3日以上、合計150分以上行うことが推奨されています。できれば、2日以上休まないで続けるとよいでしょう。 血糖値を下げるインスリンは、適正な量を分泌しても体が反応しにくくなることがあります(インスリン抵抗性)。脂肪細胞が放出するTNF-α、MCP-1などの妨害物質が、インスリンの効きを悪化させると考えられています。 適度な運動で脂肪細胞を小さくすると妨害物質が減り、インスリンが十分に効くようになります。そうなれば血糖値が下がり、ヘモグロビンA1cも徐々に低下する効果が期待できます。

薬物療法(適正な治療薬の使用)

食事療法、運動療法を2〜3ヵ月続けても十分な効果が出ない場合は、適切な治療薬を使います。糖尿病の原因は多く、原因に合う薬を処方します。代表的な薬剤は以下の通りです。
  • 肝臓での糖の生成や腎臓での再吸収を抑える薬(ビグアナイド薬、SGLT2阻害薬)
  • インスリンの働きを改善する薬(チアゾリジン薬)
  • 糖の吸収を遅らせる薬(α-グルコシターゼ阻害薬)
  • インスリンの分泌を促す薬(SU薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬)
これらに加え、必要に応じてインスリン療法を行うこともあります。薬の選択は、血糖コントロールの状態や副作用のリスクを考慮して決定されます。

定期的な血糖値のモニタリング

糖尿病まで症状が進んだ場合は、定期的に血糖値を測る血糖管理が必要です。ヘモグロビンA1cを定期的に医療機関で測り、治療が適切か判断します。 自己血糖測定を行い、血糖値の変動を把握することもあります。

ストレス解消

人体はストレスを受けると、コルチゾールというホルモンが分泌されます。ストレスと戦うために欠かせないホルモンですが、インスリンの効きが悪くなり、血糖値が上がる作用があります。ストレスを適度に発散することでコルチゾール分泌を抑え、血糖値を改善することができます。

「ヘモグロビンA1cの年齢別正常値」についてよくある質問

ここまでヘモグロビンA1cの年齢別正常値について紹介しました。ここでは「ヘモグロビンA1cの年齢別正常値」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

高齢者のヘモグロビンA1cの正常値について教えてください。

木村 香菜木村 香菜 医師

ヘモグロビンA1cの正常値は全年齢共通であり、年齢によって変わることはありません。5.6%未満が正常値です。

糖尿病のヘモグロビンA1cの基準値はどれくらいなのでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

6.5%以上の場合は糖尿病の疑いがあり、精密検査を行います。糖尿病合併症を予防するためには、HbA1c値を7.0%未満に維持することが推奨されています。しかし、患者さんの年齢、既往症などにより目標値は異なります。65歳以上の高齢者の糖尿病の場合、自立している高齢者は他の世代と同様、ヘモグロビンA1c値を7.0%未満に維持することが推奨されます。複数の持病がある方や生活に支障がある方は7.0〜8.0%未満、要介護状態の方は8.0%未満が目安です。

まとめ

ヘモグロビンA1cが高い状態でも、自覚症状が表れにくいことがあります。ぜひ毎年定期健診を受けて、血液検査でヘモグロビンA1cを測りましょう。基準値以上になった場合は、できるだけ早く内科を受診しましょう。肥満や運動不足はヘモグロビンA1cを上げる主な原因です。血糖コントロールのためには、健康的な生活習慣を送る自己管理は欠かせません。ぜひ今日から軽い運動と、脂肪を抑えたバランスの良い食事を始めましょう。

「ヘモグロビンA1c」の異常で考えられる病気

「ヘモグロビンA1c」から医師が考えられる病気は3個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内分泌内科・糖尿病科の病気

血液内科の病気

  • 異常ヘモグロビン症
  • 鉄欠乏貧血
ヘモグロビンA1cが高い代表的な原因は糖尿病です。鉄欠乏性貧血、異常ヘモグロビン症では、正常な血糖値を反映せず、高い値が出ることがあります。

この記事の監修医師