「バリウム検査前日の食事」は何を食べたらいいの?医師が徹底解説!

バリウム検査前日の食事はどうすべき?Medical DOC監修医が前日の食事メニュー・消化の良い食べ物・悪い食べ物や発見できる病気などを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
バリウム検査前日の食事はどうしたらいい?
会社で行う健康診断で、バリウム検査が検査項目に組み込まれていることも多いでしょう。
正確な検査のために、前日から当日に至るまで守るべき注意事項があります。
この記事ではバリウム検査の前日にどのような食事を摂ればよいのかを解説していきます。ぜひ参考にしてください。
バリウム検査とは?
バリウム検査は胃部X線検査や上部消化管X線造影検査とも呼ばれ、上部消化管である食道、胃、十二指腸に病気がないかどうかを調べる検査です。
この検査では造影剤であるバリウムを飲み、発泡剤で胃を膨らませた後にX線を照射して上部消化管の様子を撮影します。
バリウム検査では、上部消化管のがんやポリープ、潰瘍の早期発見が目的であり、まだ症状が現れていない人の病気を見つけるスクリーニング検査として位置付けられています。
バリウム検査は厚生労働省が定める定期健康診断の法定項目には入っていないため、受診の義務はありません。
ですが、胃カメラ検査と比較すると短時間かつ安価で行うことができ、がんの診断精度も70~80%といわれており、胃がんの死亡率を減少させる検査として有効とされています。
バリウム検査前日の食事メニュー
バリウム検査の前日は、暴飲暴食を控え、消化の良いものを摂るようにしましょう。
バリウム検査では、バリウムを胃の粘膜に付着させ、その状態でレントゲン撮影することによって内部の状態を確認します。
そのため、食事の内容が胃に残っていると検査に支障が出る場合があります。
具体的には以下に挙げる食品を含んだメニュー構成を意識し、食べ過ぎないように注意しましょう。
●消化の良い食品
・主食:ごはん、うどん、パン、お粥
・主菜:脂肪の少ない肉、魚類(牛、豚、鳥、かれい、鮭、帆立など)
・副菜:キャベツ、ほうれん草、小松菜、白菜、大根、人参、南瓜、玉ねぎ、ジャガイモなど
・果物:りんご、メロン、バナナ、桃など
・その他:牛乳、乳製品、バター、マヨネーズ
バリウム検査の何時間前から食事は控えた方がいい?
バリウム検査の前は何時までに食事を済ませれば良いかの目安ですが、原則として12時間の絶食が必要です。前日の食事は検査の12時間前には終えるようにしてください。
ただし、医療機関ごとに前日何時までに食事を済ませるようにという指示があります。そちらを守るようにしましょう。
バリウム検査当日の食事メニュー
バリウム検査の当日は食事をしないようにしてください。
食事だけではなく、牛乳やコーヒー、飴、ガム、たばこなども控えてください。これらの飲食物は胃壁を刺激し、胃液の分泌を促します。そうなると胃壁にバリウムが付着しづらくなり、検査の精度が下がってしまいます。
検査の2時間前までであれば、200mlの水または白湯であればお召し上がりいただけます。
バリウム検査前に食事をしてしまった場合はどうしたらいい?
もしバリウム検査当日の検査前に食事を摂取してしまった場合は、医師や検査スタッフへ申告してください。
胃に内容物が残っていると正確な検査結果が出ない恐れがあるため、原則として検査を受けることができません。
ですが、食事の内容、量、また食後から検査までの時間がどのくらい空いているか、など個別の状態によっては検査が可能な場合もあります。
バリウム検査何時間後に食事はできるの?
バリウム検査後はなるべく早く普段通りの食事を摂るようにしてください。
これは食事を摂ることで腸の動きを活発にし、バリウムの排出を促すためです。
また、検査後すぐに食事を摂ることで食物とバリウムが混ざり、バリウムが固まりにくくなるという利点もあります。
バリウム検査後の食事メニュー
検査のために服用したバリウムが腸の中に長時間残ってしまうと、固まって排出されにくくなり、ごくまれに腸閉塞や消化管裂孔といった重篤な副作用を招くことがあります。
したがってバリウムを早めに排出するため、普段より水分を多めに摂り、食物繊維を多く含む野菜などを意識して多く摂るようにしてください。
また、アルコールは利尿作用があり、かえって腸内の水分を奪ってしまうため、バリウムが排出されるまでは摂取を控えてください。
バリウム検査前後に薬の服用や喫煙はしてもいいの?
検査の前日であれば、薬の服用や喫煙に制限はありません。
当日の検査前の喫煙は控えてください。これは喫煙により胃液の分泌が増え、検査に支障をきたすためです。検査の後であれば喫煙していただいてかまいません。
また、当日の検査前の薬の服用に関してですが、持病などで朝に薬を服用する必要がある場合、検査2時間前までにコップ1杯程度の水で服薬してください。
ただし、胃薬、糖尿病の薬およびインスリン注射は不可となります。
胃薬はバリウムの付着を妨げるため、糖尿病関連の薬は検査当日の絶食状態で服用すると低血糖の恐れがあるためです。
それ以外の薬は検査の後に服用してください。
不安や疑問がある場合は事前に主治医へ確認してください。
消化の良い食べ物
スムーズな検査のため、バリウム検査の前には消化の良い食べ物を摂ることが求められます。
この項目では消化の良い食べ物について具体的に紹介していきます。
ご飯やうどん
エネルギー源となる3大栄養素の中で、もっとも消化にかかる時間が少ないのが糖質(炭水化物)です。
ごはんやうどんはタンパク質や脂質の割合が少なく、糖質の占める割合が多いことから、消化に良いとされています。
ですが、コシのあるうどんは消化しにくい面もあるので、普段よりもよく煮込んで柔らかくする、よく噛んで食べるといった点を意識して召し上がるようにしてください。
脂肪の少ない肉や魚
検査前に摂りたい主菜としては脂肪分の少ない肉や魚、具体的には鶏肉、卵、白身魚などがおすすめです。
鶏肉であればささみ、むね肉が特に消化が良いとされる部位です。調理の際は脂肪分の多い皮を取り除いた方が良いでしょう。
食物繊維の少ない野菜
キャベツ、ほうれん草、大根、ジャガイモといった野菜は食物繊維が少なく、消化に優れています。
鍋やスープにして柔らかくすると、より消化吸収の効率が高まります。
消化の悪い食べ物
消化の悪い食べ物は、脂や食物繊維を多く含む食品です。以下に具体的な例をご紹介します。
玄米や中華麺
白米やうどんに対し、消化の悪い主食としては玄米のほか、ラーメンなどの中華麺が挙げられます。
玄米は食物繊維が多いことがその理由です。
また、ラーメンや焼きそばなどの中華麺の場合、調理過程で使われる油の影響により消化に時間にかかることがあります。
脂質の多い主菜
ベーコンやハムなどの加工肉や脂の多い肉、ブリ、サバ、サンマといった脂肪の多い魚は検査前の摂取を控えた方が良いでしょう。
脂肪は胃では一部しか分解されず、主に十二指腸で膵リパーゼと胆汁によって消化されます。脂肪が十二指腸に到達すると、消化を促進するホルモンであるコレシストキニン(CCK)が分泌されます。このCCKには、膵臓から消化酵素を分泌させるとともに、胃の内容物が十二指腸へ移動する速度を遅らせる作用があります。
食物繊維の多い副菜
食物繊維には整腸作用があるほか、脂質や糖などを吸着し、身体の外に排出する働きがあります。
通常時には積極的に摂取したい成分ですが、そもそも体内で消化されない物質のため、バリウム検査の前には控えた方が好ましいです。
ごぼうやさつまいも、とうもろこし、たけのこ、海藻類などが挙げられます。
「バリウム検査」で発見できる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「バリウム検査」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
胃がん
胃がんとは、胃壁の内側の細胞が何らかの理由でがん細胞となって起こる病気です。
主な原因として考えられているのは、ヘリコバクターピロリへの感染、喫煙、塩分濃度の高い食品の摂取などです。
その症状は胃の痛みや不快感、吐き気、胸やけなどですが、胃がんは病気が進行するまで自覚症状がない場合も多いです。症状が現れた時はすでに進行していることも多いため、定期的に検診を受けることが重要です。
治療法としては進行度に応じて手術治療での腫瘍の切除、抗がん剤治療、放射線治療、緩和ケアなどが選択されます。
検査で異常を指摘された、何らかの自覚症状がある、といった場合は消化器内科を受診してください。
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃酸および胃の内容物が食道に逆流することにより食道の粘膜が刺激され、結果として食道に炎症が起こる病気です。
主な症状としては胸やけ、口や喉に酸味や苦みが込み上げてくる(呑酸)、などです。
その原因には、不規則な生活や脂肪分の多い食事、暴飲暴食などの要因で食道と胃の境目の筋肉の力が弱まることのほか、便秘、肥満、妊娠中などで腹圧が高まり、胃酸が逆流しやすくなっている、といった点が挙げられます。
治療においては胃酸の分泌を抑える薬が処方されます。
また、食事内容や姿勢の見直しなどの生活習慣の改善が求められます。
胸やけ、呑酸、喉の違和感、咳き込み、声枯れなどの症状に思い当たる点があれば、消化器内科を受診してください。
食道がん
のどと胃をつなぐ食道にできるがんを食道がんと呼びます。
日常的な喫煙や飲酒が主な原因とされています。
他のがんと同様に、食道がんも初期の段階では自覚症状がないことがほとんどです。
がんが進行すると、飲食時に胸の違和感が生じたり、飲食物がつかえたりする感じが出たりするほか、咳、声のかすれ、胸や背中の痛みといった症状が見られるようになります。
治療では手術による腫瘍部分の切除、化学治療、放射線治療などが状況に応じて用いられます。
こちらも消化器内科が受診科として適しています。
胃・十二指腸ポリープ
ポリープとは「皮膚や粘膜などの面から突出する腫瘤」のことであり、その腫瘤が胃や十二指腸に生じる場合があります。
その原因としては加齢やヘリコバクターピロリへの感染、暴飲暴食やストレスによる粘膜の荒れ、遺伝などが挙げられます。
放置や経過観察で問題ない場合も多いですが、中にはがん化するケースもあります。そのため、ポリープが見つかった際は消化器内科などの診療科で適切な検査や治療を受けるようにしてください
胃・十二指腸潰瘍
粘膜や皮膚の表面が炎症を起こし、えぐれたような傷となる状態を潰瘍と呼びます。
この潰瘍が胃や十二指腸に生じると、お腹やみぞおちの痛み、吐き気、胸やけ、出血による血便(黒い便)が見られ、ひどくなると胃や十二指腸に穴が開くこともあります。
考えられる原因として、ヘリコバクターピロリへの感染、痛み止め薬の常用、飲酒、喫煙、刺激物の摂取、ストレスなどがあります。
胃潰瘍では食後3~4時間後に痛みが出ることが多く、反面、十二指腸潰瘍は空腹時に痛みが出るという特徴があります。
治療においてはヘリコバクターピロリの除菌、原因となる薬の摂取を止める、薬物治療などの方法が取られます。
上記のような症状があったり、他に思い当たることがあったりする場合は消化器内科を受診してください。
「バリウム検査前日の食事」についてよくある質問
ここまでバリウム検査の前日の食事について紹介しました。ここでは「バリウム検査前日の食事」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
バリウム検査前日の食事はどんなことに注意して摂取すればいいのでしょうか?
木村 香菜 医師
バリウム検査の前日は、検査の12時間前までに食事を終えてください。そして、食事の際はなるべく消化の良いものを摂るようにしてください。
また、水分の飲用は可能ですが、アルコール類は胃の粘膜を傷つけるおそれがありますので控えてください。
編集部まとめ
バリウム検査は、胃や消化管の異常を見つけるために有用な検査です。
正しい検査結果を得るためにも、この記事の注意事項を参考にして検査前の食事に注意し、ご自身の健康管理に役立ててください。
「バリウム検査」の異常で考えられる病気
「バリウム検査」から医師が考えられる病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの病気では総じて初期段階では自覚症状が出ないことが多く、症状が現れ、気づいた時にはかなり進行している恐れがあります。
早期に見つけることができれば、その後の治療の負担も軽く済みますので、目安として40代以降では年に1回の検査を受けることをおすすめします。