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血液検査「総ビリルビン」が基準値より高いとどうなる?原因や発見できる病気も解説!

 公開日:2025/08/12
血液検査「総ビリルビン」が基準値より高いとどうなる?原因や発見できる病気も解説!

総ビリルビンの基準値はどれくらい?Medical DOC監修医が総ビリルビンの年齢別の基準値や発症しやすい病気や日常生活で気をつけるポイントなどを解説します。

岡本 彩那

監修医師
岡本 彩那(淀川キリスト教病院)

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兵庫医科大学医学部医学科卒業後、沖縄県浦添総合病院にて2年間研修 / 兵庫医科大学救命センターで3年半三次救命に従事、近大病院消化器内科にて勤務 /その後、現在は淀川キリスト教病院消化器内科に勤務 / 専門は消化器内科胆膵分野

ビリルビンとは?

健康診断などを受けた時、「ビリルビン」というものを見たことはないでしょうか。ビリルビンとは、もとは赤血球の中にある物質であり、肝臓から作られる胆汁という消化液の中に含まれる成分です。 ここではビリルビンがどのようなものか、ビリルビンが高いとどんな病気を疑うのかなどを解説していきます。

胆汁の色素成分、ビリルビンとは?

胆汁は黄色い色をしていますが、この色はこの「ビリルビン」という成分の色で、血液の赤血球という血球が壊れることによって出てきます。通常は肝臓に取り込まれ、胆汁という消化液の中に排出されます。ちなみに便の色が茶色~黄色になるのは、この胆汁の色によるものです。 そのため、ビリルビンが高いということは
  • 赤血球が何らかの原因で壊れすぎている⇒血液系の異常
  • 肝臓でうまくビリルビンを処理できていない⇒肝臓の異常
  • 肝臓からうまく胆汁が排出できていない⇒胆道系の異常
  • 元々何らかの原因で生まれつきビリルビンが高い⇒体質性
などが考えられます。

総ビリルビンの直接ビリルビンと間接ビリルビンの違いは?

ビリルビンには、「総ビリルビン」「直接ビリルビン」「関節ビリルビン」という値があります。ビリルビンは肝臓で取り込まれ、処理された後で胆汁中に排泄されます。 この肝臓で処理される前のビリルビンを「間接ビリルビン」、処理された後のビリルビンを「直接ビリルビン」と言います。そしてそれらの合計を「総ビリルビン」と言います。通常血液検査では総ビリルビンを確認しますが、それぞれの値を知りたいときは直接ビリルビンの値を測定し、総ビリルビンから直接ビリルビンの数値を引いたものを関節ビリルビンとして計算します。 総ビリルビン-直接ビリルビン=間接ビリルビン となります。

血液検査の総ビリルビンの基準値

実際に血液検査を行った時、ビリルビンの値はどの程度になるのでしょうか。 一般的には血液検査でビリルビンを測定するときは総ビリルビン(T-Bil)を測定します。総ビリルビンの値は一般的に0.2-1.2mg/dLを基準値としているところが多く、総ビリルビンの値が2.0mg/dLをこえてくると徐々に白眼の部分が黄色くなってきます(眼球黄染)。また、総ビリルビンの値が3.0~3.5mg/dLをこえてくると、皮膚が徐々に黄色くなってきます(黄疸)。黄疸が出てくると身体のあちこちに痒みが出現することもあります。ビリルビンが高くなる場合、消化管にビリルビンがうまく排泄できなくなるためビリルビンが尿に出てくる(ビリルビン尿)ため、尿が黄色くなる、濃くなると感じることもあります。 ビリルビンは年齢により基準値が異なることもあります。ここでは年齢別の総ビリルビンの値について解説します。 ビリルビン基準値一覧(成人)
下限 上限 単位
総ビリルビン 0.2 1.2 mg/dL
直接ビリルビン 0 0.4以下 mg/dL

新生児の総ビリルビンの基準値

新生児の時期、総ビリルビンは高めで推移します。胎児では出生後と異なるタイプの赤血球を使っているため、新生児は出生後に赤血球を入れ替えます。それにより、一時的にビリルビンが増加してしまいます。また、新生児の赤血球は寿命が短く、成人に比べて壊れやすいこと、代謝も十分でないことなども理由の一つです。新生児のビリルビンの数値については何週で出生したか、何グラムで出生したかなどにより基準も異なります。一般的には出生後徐々にビリルビンが増加し、生後2、3日で黄疸が出現、生後4、5日ごろにピークを迎え、その後は徐々に低下してきます。ビリルビンが高すぎると脳に影響を与える(核黄疸)ことがあるため、治療(光光線療法、交換輸血など)が必要となることもあります。一般的に正期産児の場合、生後4、5日目のピーク時に18mg/dL以上であれば注意が必要と言われています。

乳児の総ビリルビンの基準値

総ビリルビンの値は新生児期にビリルビンが上昇し、その後減少、数か月~1年程度で成人と同じ値まで落ち着いてきます。母乳での育児を行っている場合、母乳性黄疸が数か月にわたり続くこともあります。この場合は母乳育児を中止する必要はないのですが、黄疸が長引く場合は他の病気が原因であることもあります。一度病院で検査を受けましょう。

高齢者の総ビリルビンの基準値

総ビリルビンの基準値は、高齢になったからと言って変わるわけではありません。成人の基準値である0.2~1.2mg/dLです。これよりビリルビンの数値が高くなるようであれば、何らかの異常が起こっている可能性が高いと判断されます。

総ビリルビンの数値が高いとどんな病気が考えられる?

急性肝炎

肝炎とは何らかの原因で肝臓に炎症を起こしている状態です。原因としては肝炎ウイルス(特にB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなど)やそのほかのウイルス(EBウイルスなど)、アルコール、自己免疫性、薬剤性など様々です。 肝炎になった場合、急性肝炎では全身倦怠感や発熱、黄疸などの症状が起こります。症状がそこまでひどくない場合はしっかりと食事をとり(場合によっては点滴なども)ひどくならないか慎重に観察していきます。肝臓は再生能力に富むため、急性肝炎になっても自然と治っていくことが大半です。しかしながら急性肝炎の一部では、短期間、急速に肝臓の細胞が死んでしまい、急激な肝機能の低下、意識障害(肝性脳症)、出血傾向など肝不全症状が短期間で出てしまう「劇症肝炎」になることがあります。そのため、急性肝炎になった人は特に肝臓の数値が高い場合などでは入院で慎重に経過を見ていくことになる場合があります。

慢性肝炎

慢性肝炎は慢性的に肝臓の炎症が起こっている状態です。原因としては急性肝炎と同様に肝炎ウイルス(特にB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなど)やそのほかのウイルス(EBウイルスなど)、アルコール、自己免疫性、薬剤性、脂肪肝などと様々です。一部では急性肝炎後に慢性肝炎に移行する場合もあります。慢性肝炎の場合は肝機能障害や黄疸、出血傾向など様々な症状が出ますが、全く自覚症状がない人もいます。そのため、なかなか慢性肝炎になっていると気づかれずに過ごしてしまい、気づいたときには肝硬変や肝臓がんになってしまっていたということもあります。 急性肝炎後であったり、健診で肝機能障害を指摘された、倦怠感や黄疸などを認めたなどの場合は消化器内科を受診しましょう。

肝硬変

肝硬変は長期間肝臓にダメージを与えることで炎症が持続し、肝臓が硬くなってしまう病気です。肝硬変の原因としては、ウイルス、自己免疫性、アルコール、脂肪肝など様々です。肝硬変は初期の段階では一部で機能が障害されても他の部分で補ってしまう(代償)ため自覚症状が出にくく、慢性肝炎と同様になかなか気づかれません(代償期)。しかしながらある一定のラインを超えると、他の部分で機能が補い切れなくなってしまい(非代償期)、様々な症状(黄疸、腹水、出血傾向、食道静脈瘤による吐血、倦怠感、意識障害など)が起こります。 肝硬変になってしまうと、肝硬変自体を改善させ、元の状態の肝臓に戻すということは困難です。そのため、少しでも早くに発見し、代償期から非代償期に移行しないようにすることが肝要です。 健診で肝機能障害を指摘されたり、腹部エコー検査で異常を指摘されたり、全身のだるさが続いたり、お腹が張ってきたなどの症状がある場合などは一度病院を受診しましょう。

肝臓がん(肝細胞がん)

肝臓がんは肝臓の細胞からできる癌です。癌により肝臓が徐々に侵されていくと、徐々に肝臓の機能が落ち、ビリルビンの処理が上手くできなくなるためビリルビンの数値があがります。 肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、肝臓のある程度が癌に占められていてもなかなか症状も出にくい臓器です。しかしながら、ある一定のところまで肝臓が侵されると、突然症状が出ることもあります。症状としては腹痛、腹水、倦怠感、掻痒感、黄疸などがありますが、症状が出たときには既にかなりの部分まで癌ができてしまっていたということもありえます。肝がんの場合、肝臓の機能がどの程度残っているか、癌の大きさ、個数などにより治療が異なってきます。小さめ、少な目(3cm以内、3個以内など)であればエコー見ながら癌だけを焼いたり、手術で取り切ってしまったりという治療が可能です。しかしながら癌が大きかったり、肝臓の機能が十分に残らない、個数が多いなど癌が進行してしまっている状態であれば、治療法が限られ、根治を目指せなくなってしまいます。年1回など腹部エコー検査を含めた健診を受けるようにしましょう。異常が指摘されたならば、詳しい検査を行うために消化器内科を受診しましょう。

総胆管結石

総胆管とは、肝臓と十二指腸を繋ぐ管のことです。肝臓から作られた胆汁はここを通って十二指腸に出ていきます。ここが結石などで詰まってしまうと胆汁が十二指腸に流れなくなり、肝臓、胆道の酵素、ビリルビンが上昇します。この場合のビリルビンは肝臓で処理されたものが腸に流れずに溜まってしまうので、直接ビリルビンです。 総胆管結石は胆管の中で石ができることもありますが、胆嚢(総胆管に繋がっている胆汁を溜めておく袋)にある石が総胆管に落ちてくることでも発症します。総胆管に石がある場合なら大丈夫なのですが、石で管を詰めてしまった場合、胆汁が流れないことで肝機能障害、黄疸が出現したり、細菌感染や膵炎を起こすこともあります。 黄疸の出現や発熱、腹痛(特に右上の痛み)、背部痛などがあれば病院を消化器内科、救急を受診しましょう。

悪性胆道狭窄(膵癌、胆管癌など)

胆管腫瘍、膵癌などにより、総胆管が狭くなる、詰まってしまうことがあれば胆汁が流れなくなり、肝胆道系酵素、ビリルビンが上昇します。癌などで胆管が詰まってしまった場合、多くは自然に閉塞が解除されることはありません。そのため、内視鏡での処置を行い、胆管の閉塞を解除しに行く必要があります。また、癌自体に対する治療も必要となります。 癌の場合はどの癌によるものかによって症状や進行速度など様々です。なかなか症状が出にくく、気づいたときにはかなり進行していたという場合もあります。定期的な健診を受け早期発見できるようにしましょう。

その他

その他、ビリルビンが上昇する病気としては赤血球が壊れるような病気や生まれつきの病気(体質性)などが挙げられます。

総ビリルビンの基準値についてよくある質問

血液検査で総ビリルビンの数値が上がる原因は何ですか?

岡本 彩那岡本 彩那 医師

総ビリルビンの数値が上がる原因としては、赤血球が多く壊れてしまうなど血液の病気であったり、肝臓がビリルビンを処理できない状態であるなど肝臓の病気であることがあります。また、胆汁をうまく腸に排泄できない状態(胆道系の病気)であることもあります。

総ビリルビンの危険な数値はいくつですか?

岡本 彩那岡本 彩那 医師

新生児の場合、総ビリルビンが18mg/dLより高いと治療検討になります。成人の場合は総ビリルビンの数値が上昇すると何らかの病気を示唆します。しかしながら総ビリルビンがかなり高い場合でも、ビリルビンが高いこと自体で危険になるというよりも、ビリルビンの数値が高くなる原因により命の危険が起こります。例えば胆道閉塞によるものであれば数値が高くても感染を起こさなければ緊急ではない場合もありますが、数値が低くても胆管炎などを発症してしまうと緊急処置が必要となることもあります。

総ビリルビンの数値が高い場合、何科を受診すればよろしいでしょうか?

岡本 彩那岡本 彩那 医師

ビリルビンが高くなる原因としては肝臓や胆道の病気が多くを占めてきます。他にも血液の病気などがありますが、明らかに血液に異常があるとわかっている場合以外であれば、まずは消化器内科を受診しましょう。

健診結果で総ビリルビンが3mg/dl以上だとどんな健康リスクがありますか?

岡本 彩那岡本 彩那 医師

ビリルビンが3.0mg/dL以上になってくると高ビリルビンということによって眼球横線や黄疸が出てくることがあります。また、それに伴い全身の痒み(掻痒感)も出てくることがあります。一方、ビリルビンが高いこと自体での症状だけでなく、ビリルビンが高くなる原因となる病気での症状も出てきます。早めに病院受診をしましょう。

健康診断で総ビリルビンが基準値より高い人はどんな治療が必要ですか?

岡本 彩那岡本 彩那 医師

ビリルビンが高い方については何らかの病気を発症している可能性があります。赤血球が壊れやすくなっているのであればそれに対する治療、肝炎を起こしているのであれば栄養価の高い食事や点滴での保存的加療とそれ以上ひどくならないかを慎重に観察する必要があります。また、胆道系の病気であれば内視鏡治療を含めた治療が必要となることもあります。

まとめ 総ビリルビンの基準値1.2より高いときは消化器内科を受診!

成人でビリルビンの数値が高いと何らかの病気にかかっていることが示唆されます。そのため、ビリルビンの数値が高いと言われた場合は一度病院受診、特に消化器内科を受診するようにしましょう。

「総ビリルビン」の異常で考えられる病気

「総ビリルビン」から医師が考えられる病気は17個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

血液系の病気

消化器系の病気

  • 慢性肝炎
  • 肝細胞癌
  • 総胆管結石
  • 悪性胆道狭窄(膵癌など)
  • 胆管癌
  • 肝内胆管癌
  • 原発性硬化性胆管炎

循環器系の病気

遺伝性、体質性の病気

  • Gilbert症候群
  • Crigler-Najjar症候群
  • Dubin-Johnson症候群
  • Rotor症候群
ビリルビンは、人間ドックや内科受診の際の血液検査で測定する検査項目の一つです。異常値を指摘されたら、医療機関を受診して相談することをお勧めいたします。

この記事の監修医師