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血液検査「AST(GOT)の基準値」は?数値が高いと肝臓がどのような状態なのか医師が解説!

 公開日:2025/07/17
血液検査「AST(GOT)の基準値」は?数値が高いと肝臓がどのような状態なのか医師が解説!

AST(GOT)の基準値はどれくらい?Medical DOC監修医がAST(GOT)の基準値や高くなる原因・発症しやすい病気・数値を下げる生活習慣などを解説します。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は消化器外科、消化器内科、産業医を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、永仁会病院に勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

AST(GOT)とは?

AST(GOT)はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼという酵素のことで、以前はGOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)と呼ばれていました。主に肝臓の細胞内に存在していますが、心臓や骨格筋、腎臓などにも含まれています。これらの細胞が損傷を受けると、AST(GOT)が血液中に流れ出し、血中濃度が上昇します。そのため、AST(GOT)の値を調べることで、肝臓をはじめとする臓器の細胞がダメージを受けていないかを確認することが可能です。

AST(GOT)の基準値

AST(GOT)の基準値は、検査機関や測定方法によって若干異なりますが、成人10~40 U/Lの範囲です。

男女別・AST(GOT)の基準値

AST(GOT)の基準値は、男女で大きな差はありません。

小児・AST(GOT)の基準値

小児の場合は、成人と比べてAST(GOT)の基準値が高くなる傾向があります。これは、成長過程において肝臓の細胞が活発に活動しているためです。年齢や検査機関によって基準値は異なりますので、検査結果については医師に相談するようにしましょう。

AST(GOT)が高くなる原因

AST(GOT)が高くなる原因は、主に肝臓の細胞が損傷を受けることにあります。考えられる原因としては、以下のようなものが挙げられます。

ウイルス性肝炎

A型、B型、C型などのウイルス性肝炎に感染すると、肝臓に炎症が起こり、AST(GOT)が上昇します。ウイルス性肝炎は、それぞれの型に応じた治療法があります。医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。

アルコール性肝障害/肝炎

過度なアルコール摂取は、肝臓に負担をかけ、脂肪肝やアルコール性肝炎、ひいてはアルコール性肝硬変まで進行することがあります。1日あたり、純アルコール換算で男性では1日30g以上、女性では20g以上のお酒を毎日飲み続けるとアルコール性の肝障害を起こすとされています。特にアルコール分解能が低い方では少ないアルコール量でも肝障害を起こしやすいので注意が必要です。アルコールによって肝細胞が損傷すると、AST(GOT)が上昇します。アルコール性肝炎の症状としては食欲不振やだるさ、黄疸、腹痛が出る場合があります。アルコール性肝障害/肝炎を改善するためには、禁酒が最も重要です。また、栄養バランスの取れた食事を心がけ、肝臓の回復を促すようにしましょう。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

お酒をあまり飲まない人でも肥満や糖尿病、高脂血症などが原因で、肝臓に脂肪が蓄積し脂肪肝になることも少なくありません。脂肪肝が原因となり、AST(GOT)が上昇します。アルコール摂取量が少ないにもかかわらず、肝炎や肝硬変まで進行してしまうことがあります。このように非アルコール性の原因で起こる脂肪肝を総称して「非アルコール性脂肪性肝疾患」英語の頭文字をとってNAFLD(ナッフルディー)といいます。NAFLDの方の8割〜9割は脂肪肝のままで、進行はしません。NAFLDの改善には、食事療法と運動療法が重要です。適度な運動を継続し、体重を減らすように心がけましょう。また、バランスの取れた食事を心がけ、糖質や脂質の過剰摂取を控えることが勧められます。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

前述の通り、NAFLDの方の8割〜9割は脂肪肝のままで、進行はしませんが、残りの1,2割の人は進行して、肝硬変や肝臓がんを発症することがあります。この脂肪肝から徐々に進行する肝臓病のことを「非アルコール性脂肪肝炎」英語の頭文字をとってNASH(ナッシュ)といいます。NASHは肝臓の組織を採取して調べる肝生検をしないと診断がつきません。NASHの改善もNAFLDと同様、運動と食事が重要です。減量と食事管理を行いましょう。

薬剤性肝障害

特定の薬剤の服用によって、肝臓に障害が起こり、AST(GOT)が上昇することがあります。原因となる薬剤の服用を中止することで、AST(GOT)は低下することが期待できます。自己判断で薬の服用を中止せず、必ず医師に相談するようにしましょう。

胆道・膵臓疾患/

胆道系の疾患:胆嚢炎、胆管炎、胆石症、胆管がん 膵臓疾患:膵炎、膵臓がん などでもASTが上昇することがあります。臓器に炎症が起こる疾患では発熱があったり、黄疸がでたりする場合があります。これらの症状がでたらすぐに医療機関を受診しましょう。時には入院の治療や手術が必要になる場合があります。

心・肺疾患

一見関係なさそうに見える心臓や肺の病気でもAST(GOT)が上昇することがあります。例えば、うっ血性心不全や心筋梗塞、心タンポナーデなどの心疾患や、肺血栓塞栓症などの肺疾患です。これらの病気では心臓が血液を送り出すポンプの役割が破綻した結果、肝臓がうっ血し肝機能障害を起こすことがAST上昇の原因です。まずは心臓や血管内の治療が優先されます。心臓の機能が回復すれば、肝機能障害は改善に向かいます。

血液検査の「AST(GOT)」の見方と再検査が必要な「AST(GOT)」に関する数値・結果

ここまではAST(GOT)の基準値について基本的なことを紹介しました。再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。 以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

「AST(GOT)」の基準値

基準値:10~40 U/L 特に危険な数値:100 U/L以上 AST(GOT)が100 U/Lを超える場合は、肝臓に何らかの異常が起こっている可能性が高いと考えられます。特に、500 U/Lを超える場合は、重症の肝障害が疑われます。

「AST(GOT)」の再検査内容

AST(GOT)の数値が高い場合は、以下の検査が行われることがあります。 ・血液検査:肝機能検査(ALT、γ-GTPなど)、ウイルス性肝炎検査、腫瘍マーカーなど ・画像検査:腹部超音波検査、CT検査、MRI検査など ・病理検査:肝生検など これらの検査費用は、医療機関や検査内容によって異なりますが、数千円から数万円程度が目安となります。AST(GOT)の数値やその他の検査結果によって異なりますが、AST(GOT)が100~300U/Lを超える場合には一般的には1週間以内に再検査を受けることが勧められます。その後の治療は原因疾患に応じて、薬物療法、食事療法、運動療法などです。

AST(GOT)が高いとどんな病気を発症しやすい?

ここではMedical DOC監修医が、「AST(GOT)が高い」に関する病気を紹介します。 どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

肝硬変

肝臓の細胞が破壊され、線維化が進むことで、肝臓が硬くなってしまう病気です。進行すると、肝不全や肝臓がんになる可能性が高まります。肝硬変の原因はアルコール性、非アルコール性、肝炎ウイルス感染などによる慢性的な肝臓の炎症によって引き起こされます。治療法は原因疾患の治療、食事療法、薬物療法、腹水のコントールなどです。AST(GOT)が持続的に高い場合や倦怠感、食欲不振、黄疸、腹水による腹部膨満などの症状が現れた場合は消化器内科を受診しましょう。

肝臓がん

肝臓にできる悪性腫瘍です。肝硬変から発生することが多く、進行すると命に関わります。肝臓がんの原因はアルコール性肝炎、肝硬変、ウイルス性肝炎、NASHなどがあります。治療法は手術療法、血管内治療、放射線療法、化学療法などです。AST(GOT)が持続的に高い場合、腹部膨満感、体重減少、黄疸などの症状が現れた場合は消化器内科を受診しましょう。

AST(GOT)を下げるための生活習慣

バランスの取れた食事

どんな効果があるか:肝臓の負担を軽減し、機能回復を助けます。 食事・生活習慣で気をつけるポイント: ・たんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取する。 ・特に、肝臓の再生を助けるたんぱく質を積極的に摂取する。 ・過剰な糖質や脂質の摂取は控える。 ・食物繊維を豊富に含む食品を摂取する

適度な運動

どんな効果があるか:脂肪肝の予防・改善、肥満の解消に役立ちます。食事・生活習慣で気をつけるポイント:毎日30分程度の有酸素運動を行う。無理のない範囲で、継続することが大切です。

禁酒・節酒

どんな効果があるか:アルコールによる肝臓への負担を軽減します。 食事・生活習慣で気をつけるポイント:禁酒する。飲酒する場合は、適量を守り、休肝日を設ける。

十分な睡眠

どんな効果があるか:肝臓の修復を促し、機能を維持します。 食事・生活習慣で気をつけるポイント:毎日同じ時間に寝起きし、睡眠リズムを整える。睡眠時間は7時間程度を目安にする。寝る前にカフェインを摂取するのは控える。睡眠の質を高めるために、リラックスできる環境を作る。

ストレスを溜めない

どんな効果があるか:ストレスによる肝臓への負担を軽減します。 食事・生活習慣で気をつけるポイント:自分に合ったストレス解消法を見つけること。趣味や運動を楽しむ、十分な睡眠をとるなど、自分にあったやり方を探しましょう。

「AST(GOT)の基準値」についてよくある質問

ここまでAST(GOT)の基準値について紹介しました。ここでは「AST(GOT)の基準値」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

AST(GOT)の基準値で危険な数値について教えてください。

 齋藤 雄佑 齋藤 雄佑 医師

AST(GOT)の基準値は、検査機関や測定方法によって若干異なりますが、一般的には10〜40 U/Lです。100 U/Lを超える場合は、肝臓の疾患の可能性があります。特に、500 U/Lを超える場合は、入院の上、必要な医療や看護を要する重症の病態が疑われますので速やかに医療機関を受診してください。

まとめ AST(GOT)の基準値は10〜40 U/L

この記事では、AST(GOT)の基準値や高くなる原因、発症しやすい病気、数値を下げるための生活習慣などについて解説しました。AST(GOT)は肝臓の健康状態を知る上で重要な指標です。定期的な血液検査でAST(GOT)の数値をチェックし、異常があれば早めに医療機関を受診するようにしましょう。また、日頃からバランスの取れた食事、適度な運動、禁酒・節酒など、肝臓に優しい生活習慣を心がけることが大切です。

「AST(GOT)」の異常で考えられる病気

「AST(GOT)」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器系の病気

その他の病気

  • 薬剤性肝障害
AST(GOT)は、肝臓だけでなく、心臓や筋肉など、様々な臓器の細胞が損傷を受けた際に上昇する可能性があります。数値が高い場合は、必ず医療機関を受診し、原因を特定することが大切です。

参考文献

この記事の監修医師