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「貧血の男女別の基準値」はご存知ですか?数値別の症状も医師が徹底解説!

 公開日:2024/12/11
「貧血の男女別の基準値」はご存知ですか?数値別の症状も医師が徹底解説!

貧血の基準値や危険な数値はどれくらい?Medical DOC監修医がヘモグロビン値別の症状と貧血のタイプ・予防法などを解説します。

鎌田 百合

監修医師
鎌田 百合(医師)

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千葉大学医学部卒業。血液内科を専門とし、貧血から血液悪性腫瘍まで幅広く診療。大学病院をはじめとした県内数多くの病院で多数の研修を積んだ経験を活かし、現在は医療法人鎗田病院に勤務。プライマリケアに注力し、内科・血液内科医として地域に根ざした医療を行っている。血液内科専門医、内科認定医。

貧血とは?

貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンの量が正常よりも少ない状態を指します。
赤血球は酸素を体の各部分に運ぶ役割を果たしており、ヘモグロビンはその中で酸素を運ぶたんぱく質です。貧血になると頭痛、倦怠感、めまいなどの症状が現れるようになります。

貧血(ヘモグロビンが低い)の男女別の基準値

血液中のヘモグロビン濃度で貧血を診断します。WHOの基準では、以下のように貧血が定義されます。
成人男性13.0g/dl未満
成人女性、小児12.0g/dl未満

命の危険性がある貧血(ヘモグロビンが低い)の数値

ヘモグロビン値による貧血の重症度は次のように分類されます。

ヘモグロビン値 重症度
10~10.9g/dl 軽度の貧血
7~9.9g/dl 中等度の貧血
6.9g/dl以下 重度の貧血

ヘモグロビン濃度が6g/dl以下で息苦しさや胸の圧迫感などの心不全症状が現れる場合があります。体に酸素を運ぶことができず命の危険性が高まるため、輸血が必要な場合があります。症状が強い場合は入院が必要になる場合もあります。

貧血の主な原因

貧血の原因はさまざまです。代表的なものを解説します。

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血は貧血の原因で最も多く、貧血と診断されるおよそ60~80%が鉄欠乏性貧血です。ヘモグロビンの材料である鉄が体内で不足し、ヘモグロビンを十分量作れなくなるため貧血になります。
胃潰瘍やがんなどから慢性的に出血することで体内から鉄が流出すると、鉄欠乏性貧血になります。出血源を調べるために上部・下部内視鏡検査を行うことがあります。

ビタミンB12や葉酸の欠乏

赤血球は鉄だけでなくさまざまな材料から作られます。ビタミンB12、葉酸はいずれも赤血球の材料です。どちらが不足しても貧血になります。
極端な偏食でビタミンB12や葉酸を摂取しない場合や、胃を切除した患者さんでビタミンB12の吸収が悪くなると欠乏しやすくなります。アルコールの多飲は葉酸の吸収を妨げ、葉酸が欠乏します。

慢性腎臓病

腎臓からはエリスロポエチンという造血ホルモンが産生され、血液を作る骨髄に作用し赤血球の産生を促します。慢性腎臓病の患者さんはエリスロポエチンが減少するため、貧血を生じます。

血液の病気

血液の病気がある場合も貧血を生じます。急性白血病、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血などの血液の病気は、骨髄でなんらかの異常をきたし正常な赤血球を作れなくなるため、貧血になります。
貧血の指摘を受けた場合は、さまざまな原因が考えられ、原因を検査する必要があります。内科や血液内科を受診してください。

血液検査でわかる貧血のタイプ

貧血は、赤血球1個あたりの平均的な大きさを表すMCVを計算し、3つの種類に分類します。
MCVは、ヘマトクリット値(%)÷赤血球数(106/mm3)で計算し、85~102fLが基準値とされていますが、医療機関によって基準値はやや異なります。

小球性貧血

MCVが基準値よりも小さい場合、小球性貧血と診断します。
小球性貧血の原因は鉄欠乏性貧血が圧倒的に多いため、血清鉄や体の貯蔵鉄であるフェリチンを測定することで診断します。
自己免疫疾患などで慢性炎症があると、鉄がうまく利用できないことで小球性貧血を起こします。

大球性貧血

MCVが基準値よりも大きい場合、大球性貧血と診断します。
大球性貧血の場合、ビタミンB12や葉酸が欠乏している場合が多い傾向にあります。

正球性貧血

MCVは基準値でヘモグロビン値が低い場合、正球性貧血と診断します。
正球性貧血の原因は多岐にわたり、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などの血液疾患や、腎性貧血、溶血性貧血などさまざまです。

貧血のタイプ別・対処法

ここでは貧血のタイプ別にどのように対処すれば良いかを説明します。

小球性貧血の対処法

小球性貧血の原因は鉄欠乏性貧血が圧倒的に多いため、鉄分が多い食事を摂りましょう。鉄剤のサプリなどを使用しても良いかもしれません。
出血によって貧血が起こっている場合もあるため、上部・下部消化管内視鏡検査を行う場合もあります。

大球性貧血の対処法

大球性貧血はビタミンB12や葉酸が欠乏している場合があります。過度な偏食やアルコール多飲など、ビタミンB12や葉酸が不足する食生活を送っている場合はバランスの良い食事を摂りましょう。

正球性貧血の対処法

正球性貧血は原因がさまざまのため、内科を受診し適切な検査、診断を受けましょう。
再生不良性貧血などの血液疾患が疑われる場合は骨髄検査を行い、骨髄での赤血球の造血を確認します。腎性貧血や溶血性貧血の確認のための血液検査も行われます。

貧血の数値別・症状

ヘモグロビンの数値によって具体的にどのような症状が出るかを説明します。

ヘモグロビン値 10~12g/dlで起こる貧血の関連症状

正常よりやや低い、軽度の貧血です。疲労感やめまい、息切れ、集中力の低下などの異常が起こります。
いずれも症状は軽度のことが多く、自覚症状がない場合もあります。

ヘモグロビン値 7~9g/dlで起こる貧血の関連症状

中等度の貧血です。疲労感、めまい、息切れなどの症状が強くなり、強いだるさを感じます。血液が薄くなるため心拍数が高くなり、動悸が起こることもあります。

ヘモグロビン値 4~6g/dlで起こる貧血の関連症状

重度の貧血の状態で、緊急での治療が必要な場合があります。顔色が青白くなり、心不全徴候が出現します。悪化すると、全身に浮腫が生じることもあります。

「貧血」の特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「貧血」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

胃・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍とは、胃や十二指腸に深い傷ができる病気です。ピロリ菌や薬(非ステロイド系抗炎症薬)、ストレスなどで発症します。粘膜の損傷部位から出血すると貧血になります。
みぞおちの痛みがある場合は、消化器内科を受診しましょう。
消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)の症状・原因・治療方法について | メディカルドック

胃がん

胃がんは心窩部不快感などが出現する場合があります。胃がんから出血することで貧血になり、貧血が診断のきっかけとなる場合があります。
胃がんが疑われる場合は、消化器内科を受診し相談しましょう。
胃がん(胃腫瘍)の症状・原因・治療方法についてご案内 | メディカルドック

大腸がん

大腸がんは、健診で便潜血陽性を指摘されて発見される場合があります。大腸がんから出血すると貧血になります。進行すると便が細くなるなどの症状が出現します。
便潜血陽性を指摘された場合は、消化器内科を受診してください。
大腸がんの症状や検査方法、治療方法とは? | メディカルドック

子宮筋腫

子宮に筋腫という良性腫瘍ができる病気です。子宮の内膜側にできると子宮内膜を引き伸ばすことで過多月経となり、貧血になります。
月経量が多い場合は、婦人科を受診しましょう。
子宮筋腫の症状や原因、治療方法とは? | メディカルドック

白血病

血液を作る骨髄で芽球という悪性の細胞が無秩序に増殖する病気です。
正常な細胞を作れないため、血液の細胞の数が減ることで高熱、貧血、出血などが出現します。
白血病が疑われる場合は血液内科を受診してください。

貧血の予防法

ここでは貧血を予防する方法を紹介します。

鉄分の摂取

鉄欠乏性貧血は鉄分を摂取すると貧血が改善します。鉄分には、肉や魚などに多く含まれるヘム鉄と、野菜や海藻、穀物に多く含まれる非ヘム鉄の2種類があります。
ヘム鉄のほうが非ヘム鉄より吸収率が5~6倍高いことが知られています。
成人は1日に約10mgの鉄の摂取が推奨されています。食事で不足する場合は、鉄のサプリメントを摂取するのも良いでしょう。

食生活の見直し

鉄分を摂取するだけでなく、食生活全般の見直しも行いましょう。
無理なダイエットなどでヘモグロビンの材料のたんぱく質やビタミンB12、葉酸が不足していないかを確認しましょう。それぞれ多く含まれる食事は以下のようなものがあります。バランスよく食べることが重要です。

  • たんぱく質:牛肉、カツオなどの赤身の魚など
  • ビタミンB12:魚介類、チーズなど
  • 葉酸:ほうれん草、アスパラガス、納豆など

「貧血の数値」についてよくある質問

ここまで貧血の数値について紹介しました。ここでは「貧血の数値」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

貧血の数値で特に危険な数値はいくつからでしょうか?

鎌田 百合医師鎌田 百合(医師)

ヘモグロビンが6g/dl以下になると息切れや浮腫などの心不全症状が出現します。危険な数値でありすぐに治療を行う必要があります。

女性の貧血の基準値はどれくらいでしょうか?

鎌田 百合医師鎌田 百合(医師)

女性はヘモグロビン12g/dl未満で貧血と診断します。生理がある女性は貧血が起こりやすく、鉄欠乏性貧血の患者数は同年代の25%にも及びます。

妊娠中の女性はヘモグロビン値がいくつだと貧血気味ですか?

鎌田 百合医師鎌田 百合(医師)

妊娠中は生理的に血液が薄まるため基準値もやや低く、ヘモグロビン11g/dl未満を貧血と診断します。貧血が進行すると胎児に影響する場合もあるため、適切な治療が必要です。

血液検査でヘモグロビンが8以下の人は隠れ貧血ですか?

鎌田 百合医師鎌田 百合(医師)

ヘモグロビンが8以下の場合は、中等度~高度の貧血です。
いわゆる隠れ貧血とは潜在性鉄欠乏の状態をいい、ヘモグロビンが正常ですが貯蔵鉄のフェリチンが低い場合を指します。軽度のだるさなどが出ることがあるため、隠れ貧血の場合は鉄分を積極的に摂取しましょう。

貧血の数値はどんな治療で改善できるのでしょうか?

鎌田 百合医師鎌田 百合(医師)

貧血を指摘された場合は、鉄分を積極的に摂りましょう。鉄以外の赤血球の材料であるビタミンやたんぱく質を十分摂るため、バランス良く食事を摂りましょう。

まとめ 貧血の数値で異常があれば内科を受診!

貧血が進行するとだるさや心不全症状が出現し、放置すると危険な場合があります。
食生活を見直して鉄を十分に摂取しましょう。
また、貧血の原因は鉄欠乏性貧血だけではありません。医療機関を受診して原因を調べ、医師の診察を受けるようにしてください。

「貧血」の異常で考えられる病気

「貧血」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

婦人科の病気

血液の病気

貧血はさまざまな病気の初期症状である可能性があります。貧血を指摘された場合は、内科や血液内科を受診し医師に相談するようにしましょう。

この記事の監修医師

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