「ストレスが原因で血小板が減少」するとどんな病気に罹るの?医師が徹底解説!
血液中の血小板減少はストレスも原因に?Medical DOC監修医が血小板が少ない原因と対策、病気のリスクを解説。気になる症状は迷わず病院受診を。
監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
血液中の血小板が減少する原因とは?
血小板減少の主な原因には、「(血球を生産する)骨髄にトラブルがある」「壊されるスピードが速すぎる」「血小板が臓器に集まりすぎて、血液中から減る」の3つが考えられますが、血小板が減少する原因は多く、病状やメカニズムも複雑です。
この記事では、血小板の減少に伴う症状や治療の目安などについてもご紹介します。
血小板とは何?
血小板は、出血した時に傷口を固め、出血を防ぐ細胞です。
出血などがあると傷口に張り付き、仲間を呼び、集団で傷を固めて出血を食い止めます。もし血小板が減少すると、傷口からの出血が止まらない、止まりにくいなどの症状が現れます。皮下出血やあざが出来やすい、すぐ出血するなどの症状が出ることもあります。
血小板は他の血球と同じく骨髄で生まれ、血流に乗って全身をめぐります。骨髄にいる巨核球という細胞のカケラから生まれ、いびつな形をしているのが特徴です。血小板は寿命が短い細胞で、わずか7〜10日ほどで脾臓に取り込まれ、マクロファージという白血球の一種に壊されて役目を終えます。
血小板が減少する原因は?
血小板が減少する主な原因は白血病などの血液疾患、HIVウイルスなどの感染症(HIV関連血小板減少性紫斑病(HIV-ITP)、ヘパリンとの反応、一部の抗がん剤などの副作用(薬剤性血球減少症)があります。
体内で血小板を攻撃する抗体が生まれ、血小板を壊してしまうこともあります(免疫性血小板減少症)。
血小板が減少する疾患は多く、白血病など骨髄の病気は血小板を造る能力が下がることが知られています。
ウイルス感染でも血小板が減少することがあります。HIVに感染すると同様のリスクがあります。また、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)という、マダニから感染する感染症でも血小板減少が見られます。SFTSは治療法がなく、致死率10~30%もある、非常に危険な感染症です。
近年社会問題になっている新型コロナウイルス(SARS-COV2)は血小板を過剰に増やし、血栓が造られやすくなることが知られています。ウイルス感染で血小板の数が正常値から外れやすくなることは、記憶の片隅に留めておいてほしい情報です。
肝臓の機能が悪化することも、血小板が減少する原因になります。肝硬変など、肝機能が低下すると肝臓の太い動脈(門脈)の血圧が上がり、肝臓のすぐ上にある脾臓が大きくなります。脾臓が大きくなると血小板が脾臓に過剰に集まり血中から減ってしまいます。さらに血小板を壊す能力が上がるため、血小板減少の原因になります。
血小板とストレスの関係は?
血小板とストレスの関係については、さまざまな研究が行われています。明確な結論が出ているわけではありません。しかし、ストレス状態が血小板の機能に影響を及ぼすということを示している研究があります。
例えば、若い男性を対象にした研究で、精神的なストレスが血小板の働きを変化させ、炎症を促進する生物活性を持つものへと変化させるという結果が見られたことが報告されています。また、この変化が長期にわたって持続する可能性があることも示唆されています。血小板は血液中の細胞で、主に血液が固まるのを助ける役割を持ちます。しかし、炎症を促進するような生物活性を持つと、体内での炎症反応が強まり、健康問題を引き起こす可能性があるということになります。
ストレスが原因で血小板が減少することはあるの?
ストレスが続いても、それがすぐに血小板減少に結びつくわけではありません。しかし間接的に関わるケースも考えられます。
肝硬変は、肝機能障害の最たるものです。これは不摂生な生活習慣や肝炎ウイルス感染が引き起こします。ストレスが原因で過剰な飲酒や不摂生な食事、運動不足などが引き金となり、肝機能が悪化することも考えられるのです。
血小板の基準値・異常値は?
血小板の基準値は14万~32.9万個/μLとなります。人間ドック学会の基準では、12.3~14.4、33.0~39.9万個/μLでは軽度異常、10.0~12.2万個/μLでは1年後などに再検査を勧められます。そして、9.9以下、40.0以上では要精密検査となります。
さらに、5万/μL以下が血小板減少の異常値で、治療の対象になります。2万/μL以下まで急激に下がる場合は入院し、緊急措置が必要です。
基準値は医療機関により異なるため、受診する病院の方針に従ってください。
ストレスが原因の血小板減少の対策・改善法
ストレスは万病の元です。ストレスが直接血小板減少を起こすわけではありませんが、肝臓機能低下などで発症することがあります。
血小板減少としては、避けるのが難しい血液疾患や感染症、先天性遺伝などです。これらを実行しても上記が原因の場合は効果があまり期待できませんが、肝臓トラブルの場合は改善することもあります。
飲酒、暴食はほどほどに
肝臓を傷める主な原因は暴飲暴食です。これを止めるだけでも肝臓のダメージを防ぎ、回復させることが期待できます。
脂肪肝は自覚症状がないことが多いため、定期健診で見つかることが多いと思われます。もし健診で脂肪肝と指摘されたら、まずは暴飲暴食を控えましょう。脂肪肝で血小板減少がある場合は肝硬変に移行している可能性があり、放置すると命にかかわります。
適正体重までダイエット
脂肪肝を改善する方法として重要なことは、適正体重までダイエットすることです。ダイエットには適切な栄養管理と、程よい運動が欠かせません。
しかし血小板が著しく減少しているときは、ケガをすると出血が止まらず重症化しかねません。運動の有無は病院の方針に従い、無理に運動することは控えましょう。
肝炎ウイルス、ピロリ菌などへの感染症対策を
肝炎の原因になるA型、E型肝炎ウイルスは、ジビエなど野生動物の生肉や生水などで感染します。「獣肉はしっかり火を通す」「生水は飲まない」ことを心がけましょう。
生水にはピロリ菌がいることがあるため、ピロリ菌感染が原因で血小板減少が起こることがあります。
B型、C型肝炎ウイルスは血液経由で感染します。歯ブラシの使い回しは絶対に止めましょう。入れ墨やタトゥーの針で感染することもあります。また、B型肝炎に対してはワクチン接種という予防法があります。また、健康診断や胃の調子が悪いことなどでピロリ菌の感染がわかっている場合には、適切に除菌治療などの対策をとりましょう。
ストレスが原因で血小板が減少したことでかかりやすい病気・疾患
血小板が減少する病気は国指定難病もあり、闘病生活が長引く可能性があります。ここでは血小板が減少する症状について説明します。
血小板減少症
血小板が一定数より減った状態を「血小板減少症」と呼びます。原因はウイルスや細菌感染、マダニ感染、薬の副作用、白血病など骨髄の病気など非常に多く、原因の特定と適切な治療が必要です。
血小板が減少すると出血しやすくなり、さまざまな症状が現れます。皮膚に点状の内出血(点状出血)、青あざが出やすくなる、歯ぐきから出血しやすくなるといったものがあります。その他、だるい、鼻血が出る、月経出血が多い、血便、血尿など、さまざまな症状が現れます。
血小板減少症は、原因を突き止めることで治療方針が決まります。血液検査で血小板の数と血液が固まる能力を測定して重症度を測り、同時にピロリ菌検査、脾臓の大きさを測る、発熱の有無、骨髄組織の採取と観察などを行います。
診断は内科(血液内科)で行います。
血小板減少性紫斑病
血小板減少性紫斑病(以下ITP)は国の難病に指定されている疾患です。血小板が減る症状の中で、疾患や服薬の副作用ではない場合、この症状が疑われます。
体内で血小板に対して攻撃する抗体が生まれ、血小板を攻撃して壊してしまう症状です。なぜこのような抗体が生まれるのかは分かっていませんが、ウイルス感染、ヘリコバクター・ピロリ菌感染などが原因で発症することがあります。
症状は血小板減少症と同じです。
血小板減少性紫斑病は急性と慢性があります。急性は子供に多く、ウイルス感染、予防接種の副作用などが原因で発生します。6か月ほどで血小板が正常値まで回復することが多い症状で、約75~80%の患者さんは回復します。慢性は大人に多く、原因はほとんど解明されていません。
血小板が2万/μL以下が治療対象で、ステロイド剤や血小板産生を促すトロンボポエチン(TPO)受容体作動薬、抗体を産生するリンパ球を減らす作用があるリツキシマブなどを投与します。血小板を壊す脾臓を手術で取り除くこともあります。
血小板数が3万/μL以上あり出血症状が軽度の場合は、経過観察だけで治療は行わないことが一般的です。
出産など緊急を要する場合は、血小板を輸血して一時的に血小板を補います。
診断、治療は内科(血液内科)で行います。できるだけ血液内科医のいる内科を受診して下さい。
再生不良性貧血
再生不良性貧血は、骨髄が十分な血液細胞を産生できなくなる疾患です。具体的には、赤血球、白血球、血小板の生産が不十分になり、それぞれに関連した症状が現れます。赤血球が不足すると貧血が、白血球が不足すると感染症にかかりやすくなり、血小板が不足すると出血しやすくなります。
再生不良性貧血の原因は多岐にわたりますが、大きく分けて先天性と後天性に分類されます。先天性は遺伝的な要因があり、後天性は免疫系の異常、特定の薬剤や化学物質への曝露、ウイルス感染症、または原因不明で発症する場合があります。
治療は症状の重さや原因によって異なりますが、以下の方法が一般的です。
・免疫抑制療法:体の免疫系が骨髄細胞を攻撃するのを抑えます。
・成長因子の投与:血液細胞の生産を刺激します。
・輸血:貧血や出血を管理します。
・骨髄移植:最も根本的な治療法で、成功すると完治する可能性があります。
以下のような症状が現れた場合には、病院を受診するべきです:
・慢性的な疲労感や息切れ
・容易に青アザができる、または出血が止まりにくい
・重い貧血に関連する症状としての頻繁な頭痛やめまい
・発熱や感染症が頻繁に起こる
再生不良性貧血の疑いがある場合、内科や血液内科、小児科の受診が勧められます。
医療機関によっては、血液内科がない場合もありますので、まずは内科で相談し、必要であれば専門の医師を紹介してもらう流れになります。症状や健康状態によっては、直接大学病院や専門病院を受診することも選択肢に入ります。
「血小板の減少とストレス」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「血小板の減少とストレス」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
血液検査で血小板の減少を指摘されました。ストレスも原因の一つでしょうか?
木村 香菜 医師
ストレスが直接、血小板を現象させるという報告は今のところありません。しかし肝硬変やピロリ菌感染など別の病気が引き金になり、間接的に血小板が減少することがあります。
健康診断で血小板が少ないと診断されたらストレス解消も大切ですか?
木村 香菜 医師
血小板減少とストレスは直接の関連性はありませんが、過剰なストレスは心身にダメージを与えるため、放置は良くありません。ストレスが原因で過食や過度な飲酒に走り、肝臓にダメージを与えると脾臓が肥大し、過剰に血小板を壊してしまいます。
ストレスは過度に発散させましょう。
血小板が減少している人がストレスを放置するとどんな健康リスクがありますか?
木村 香菜 医師
血小板が減少している原因によりますが、肝臓疾患が原因ならストレスを放置するとさらに血小板の数が減るおそれがあります。血小板の数値や症状によっては運動を制限されることもあり、ストレスが増えるかもしれません。きちんと治療を受け、改善を目指しましょう。
体がだるいのは、ストレスで血小板が減少したことが原因ですか?
木村 香菜 医師
血小板が減少することで、体がだるいと感じることに直接つながるという可能性は低いです。しかし、血小板が減少するような再生不良性貧血では、貧血も起こるためだるさが生じます。また、肝硬変ではその症状の一つとしてだるさが起こります。
休んでも改善しない体のだるさは血小板減少だけでなく、甲状腺ホルモンの分泌不足(橋本病)、うつ病、コロナ後遺症など様々な病気が隠れていることがあります。できるだけ早めに内科で血液検査を受けましょう。
冷え性は、ストレスで血小板が減少したことが原因ですか?
木村 香菜 医師
ストレスが血小板の数を減少させることと冷え性との間に直接的な因果関係が確立されているわけではありません。ストレスは血小板の活動に影響を与える可能性がありますが、冷え性は主に血流の問題や血管の障害と関連があります。ストレスが既存の状態を悪化させる可能性はありますが、通常は冷え性の直接の原因ではありません。具体的な診断や治療には医療提供者に相談するのが最善です。
まとめ ストレスを貯めると間接的に血小板減少の原因になることも!
ストレスは万病の元です。ストレスが続くと過度な飲酒や過食などで肝臓がダメージを受け、血小板減少の原因になることがあります。適度にストレスを発散させ、暴飲暴食を控えることで血小板減少を防ぐことができます。
皮膚に点々と小さなアザがたくさんできる、歯磨きするたびに歯茎から血が出る、血便や血尿がある場合は、早めに内科、できれば血液内科で血小板の数値を測りましょう。
ヘリコバクター・ピロリ菌や肝炎ウイルス、マダニ感染など、意外なものが原因になることもあります。感染症対策を怠らないことも必要です。
「血小板」の異常で考えられる病気
「血小板の減少とストレス」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
感染症内科の病気
- 重症熱性血小板減少症候群
- HIV関連血小板減少性紫斑病
消化器内科の病気
- 脾機能亢進症(肝硬変、門脈圧亢進症など)
血小板が減少する原因としては、血球を作る力が弱まる骨髄の疾患、門脈の血圧が上がりすぎて脾臓が肥大し、血小板を取り込みすぎる疾患、各種感染症など、様々な原因があります。