「バリウム検査ができない人」の特徴はご存知ですか?原因や対処法も医師が解説!
健康診断で胃のバリウム検査が出来ない人の特徴とは?Medical DOC監修医が高血圧・アレルギーや妊娠中等受診できない条件や対処法を解説します。
監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
胃のバリウム検査・胃部X線検査とは?
胃のバリウム検査を受けた経験のある方は多いのではないしょうか。
どのような目的で胃バリウム検査を行うのか、どういったメリット・デメリットがあるのかなどについて解説します。
健康診断の胃バリウム検査の目的
健康診断で胃のバリウム検査を行うのは、食道や胃、十二指腸潰瘍などに疾患が隠れていないかを確認するためです。正式には、上部消化管X線検査と呼ばれています。バリウムは、胃の形や凸凹をうつすための造影剤です。発泡剤で胃をふくらませ、バリウムを飲んでX線を照射することで、病変がないかをチェックします。
胃のバリウム検査・レントゲン検査の流れ
胃のバリウム検査は、次のような流れで行われます。
- 発泡剤を飲む(ゲップは検査終了まで我慢する)
- バリウムを飲む
- 検査台に立ち、指示に従って体位を変える
- X線を照射する
発泡剤は粉状の薬剤です。医療機関によっては、バリウムに発泡剤を混ぜてあるところもあります。発泡剤を飲むと胃が膨らんでゲップが出やすくなりますが、検査終了までゲップは我慢してください。検査台に立ったら、バリウムを胃壁全体に行き渡らせるために指示に従って体位を変え、X線を照射します。体位を変える必要があるため、体位変換が難しい方は検査を受けられません。
バリウム検査のメリット・デメリット
バリウム検査にはメリットとデメリットの両方があります。
〈メリット〉
- 胃の全体像や動きを見られる
- 胃潰瘍や胃炎、ポリープを発見しやすい
- 撮影にかかる時間が約10分と短い
バリウム検査は、胃の全体像を把握するのに適した検査です。胃の動きをリアルタイムで観察できます。胃潰瘍や胃炎、ポリープなどの発見に有効です。撮影にかかる時間は約10分しかかかりません。費用は胃カメラよりも安価です。
〈デメリット〉
- X線による被爆がある
- 小さな病変の発見には向いていない
- 検査後に下剤を飲む必要がある
- 体重制限がある
バリウム検査はX線を照射するため、被爆してしまいます。胃潰瘍や胃炎などを見つけることはできますが、小さな病変の発見には向いていません。また、バリウムを飲むと便秘しやすくなります。便が詰まって腸閉塞や腸穿孔を起こすことがあるため、検査後には下剤を飲むことが一般的です。検査機器に重量制限があるため、体重が135kg以上の方は検査を受けられないことがあります。
バリウム検査が出来ない人一覧と対処法
短時間で胃の状態を観察できるバリウム検査は、非常に便利な検査です。しかし、すべての人にバリウム検査が適しているわけではありません。ここでは、バリウム検査ができない人の一覧と対処法を紹介します。
妊娠中でバリウム検査ができない原因と対処法
妊娠中の人はバリウム検査を受けられません。X線によって被爆してしまうためです。被爆量を考えると、バリウム検査を受けても胎児に大きな影響が出ることはないと言われています。そのため、妊娠に気が付かずにバリウム検査を受けてしまったとしても過度な心配は不要です。妊娠が分かっている場合は、医師に相談しておきましょう。妊娠中は胃カメラも受けられないことがほとんどです。特別な理由がなければ、出産後6か月ほど経ってから検査を受けるようにしてください。
アレルギーでバリウム検査ができない原因と対処法
バリウムや処方剤、添加剤に対してアレルギーがある人は、バリウム検査を受けられません。過去にバリウム検査で蕁麻疹や息苦しさなどの症状が出た人は、バリウム検査を受けないようにしてください。アレルギーがあるのにバリウム検査を行うと、過敏症の症状が強く出る恐れがあります。バリウム検査ではなく胃カメラなどの検査に切り替えましょう。
胃や腸の病気でバリウム検査ができない原因と対処法
下記のような病気がある人は、バリウム検査を受けられません。
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 虚血性腸炎
- 腸閉塞
- 腸捻転
- 大腸憩室炎
- 大腸憩室出血
これらの病気がある人がバリウム検査を受けると、症状が悪化する可能性があります。該当の方は、検査前に必ず医師に相談してください。また、一年以内に鼠径ヘルニアなどの手術を受けた方もバリウム検査は行えません。代わりに受けられる検査としては、胃カメラがあります。
便秘でバリウム検査ができない原因と対処法
バリウム検査の当日までに3日間以上排便がない人は、バリウム検査を受けられません。便秘の人がバリウム検査を行うと、検査後にバリウムが排出されず腸閉塞や消化管穿孔など重篤な症状を起こす恐れがあります。健康な人でもバリウム検査の副作用によって便秘になり、このような症状を起こすことがあるため、便秘しやすい方は注意してください。また、以前のバリウム検査でバリウムがなかなか排泄されなかった方も要注意です。検査の当日までに排便がない人は、医師に相談しましょう。胃カメラであれば便秘の恐れがないため、排便がしばらくない人でも受けられます。
むせやすくてバリウム検査ができない原因と対処法
むせやすい人はバリウム検査を受けられません。高齢になると、気管の入り口が細くなるためむせやすくなります。ものを飲み込みにくいと感じる人、以前のバリウム検査でむせてしまった人などはバリウム検査を避けてください。むせるということは、バリウムが食道ではなく隣の気道に入っている証拠です。誤嚥すると、気管支の末梢までバリウムが到達して肺炎を起こすことがあります。バリウムをゆっくり飲んだり粘度の高いバリウムを飲んだりすることが有効だとされていますが、むせやすい人は胃カメラなど他の検査を受けることも検討しましょう。
バリウム検査でわかる病気・疾患は?
ここではMedical DOC監修医がバリウム検査でわかる病気・疾患について解説します。
胃がん
胃がんとは、胃の粘膜でがん細胞が増えていくことで発症するものです。胃は内側から粘膜、粘膜筋板、粘膜下層、筋層、漿膜の順に層が並んでおり、がん細胞が粘膜や粘膜下層にとどまっているものを早期胃がん、粘膜下層をこえて筋層より深くまで到達しているものを進行胃がんと言います。胃がんになっても早期の段階では自覚症状がほとんどありません。人によっては、ある程度進行しても症状が出ない場合もあります。胃がんの原因としてまず挙げられるのが、ピロリ菌の感染です。ピロリ菌に感染して胃粘膜に慢性的な炎症が起こった状態が続くと、がん化しやすいとされています。この他、塩分の多い食事や喫煙、過度な飲酒、ストレスなども胃がんの原因です。胃がんの治療は、がん細胞がどこまで到達しているかによって方法が異なります。内視鏡治療や薬物療法、放射線治療や胃切除などの治療法が代表的です。自覚症状が出にくいため、定期的にがん検診や健康診断を受けることで早期発見につながります。胃の痛みや不快感、違和感や胸焼けなどの症状が出ることもあるため、これらの症状が続く場合は内科や消化器内科を受診しましょう。
食道がん
食道がんとは、食道の内面にある粘膜にがん細胞が発生したものです。多くは、食道の中央あたりに発生します。初期の段階では、ほとんど自覚症状がありません。食道がんが進行すると、飲食時の胸の違和感、咳、声のかすれなどが見られます。食道がんの発生と大きく関係しているのが、喫煙と飲酒です。飲酒すると、アルコールが代謝されて発がん物質のアセトアルデヒドができます。アセトアルデヒドを代謝しにくい人は食道がんのリスクが高まるので注意が必要です。治療法としては、内視鏡的切除や化学療法、放射線治療などが行われます。初期症状がほとんどないため、定期的にがん検診や健康診断を受けることが重要です。胸の違和感や咳などの症状が気になるときは、消化器内科を受診しましょう。
ポリープ
胃ポリープとは、胃の粘膜上皮が部分的に盛り上がった状態のことです。ポリープができても自覚症状が出ることはほとんどありません。ポリープには、良性のものと悪性のものがあります。悪性のポリープは、いわゆるがんです。ポリープは慢性胃炎を合併することもあり、合併した場合は胃もたれや胃痛などの症状が見られます。胃ポリープの原因は、加齢やピロリ菌の感染、遺伝、ストレスや暴飲暴食などが代表的です。原因がよく分からないポリープもあります。ほとんどのポリープは良性の場合が多く、経過観察ですみますががん化の可能性があるポリープや貧血の原因となる様な出血をきたしているポリープは切除を検討します。ポリープを指摘された場合は、消化器内科や胃腸科を受診しましょう。
胃潰瘍
胃潰瘍とは、胃の粘膜がただれている状態のことです。消化性潰瘍とも呼ばれています。通常は胃の粘膜を守る防御因子と、粘膜に刺激を与える攻撃因子(胃酸)のバランスが取れているため、大きな害が出ることはありません。しかし、バランスが崩れてしまうと胃の粘膜が刺激を受けて潰瘍ができてしまうことがあるのです。胃潰瘍ができる原因としては、ストレスやピロリ菌の感染、長期にわたる解熱鎮痛剤の服用、喫煙、飲酒などが挙げられます。胃潰瘍になった場合は、食事療法や薬物療法などを行うことが基本です。食事をする際は、胃を刺激しないよう消化に良いものを少量ずつ食べましょう。薬物療法では、胃酸の分泌を抑えるPPI(プロトンポンプ阻害薬)、P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)や、H2ブロッカーなどが良く用いられます。胃の痛みや不快感、吐血や黒色便、下血などが見られる場合は胃潰瘍の可能性があるため、消化器内科や胃腸科を受診しましょう。
「バリウム検査できない人」についてよくある質問
ここまでバリウム検査ができない人について紹介しました。ここでは「バリウム検査ができない人」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
バリウム検査が出来ない人がバリウム検査の代わりになる検査はありますか?
和田 蔵人 医師
バリウム検査の代わりになる検査に、胃カメラがあります。ただし、胃壁を這うように病巣が広がるスキルス胃がんは、バリウム検査のほうが見つけやすいと言われています。
高血圧だと健康診断でバリウム検査ができないのはなぜですか?
和田 蔵人 医師
検査当日に血圧が高い人は、検査中に血圧が上がると脳卒中や心筋梗塞などを起こす危険性があるのでバリウム検査をできないことがあります。高血圧で治療を受けていても、良好に血圧がコントロールされている場合にはバリウム検査を受けることは可能であると考えられます。
バリウムアレルギーがある場合、胃の検査は受けられませんか?
和田 蔵人 医師
バリウムアレルギーがある場合、バリウム検査は受けられません。ただし、胃カメラならバリウムを飲む必要がないので受けられます。
バリウムを飲むのが苦手な場合バリウム検査は拒否できますか?
和田 蔵人 医師
健康診断におけるバリウム検査は、法定項目ではありません。そのため、受けるかどうかは自分の意志で決められます。
以前検査後のバリウム便が出ず便秘になった人は検査が難しいですか?
和田 蔵人 医師
以前のバリウム検査で便秘になった人は、検査を受けられない可能性があります。検査を受けても問題ないかどうかについては、担当の医師に相談してください。
妊娠の可能性がある場合バリウム検査はNGでしょうか?
和田 蔵人 医師
バリウム検査は被爆するため、妊娠の可能性がある場合は避けるのが無難です。ただし、妊娠中に受けたとしても大きな影響は出ないとされています。
風邪をひいている人はバリウム検査できないですか?
和田 蔵人 医師
風邪をひいていてもバリウム検査を受けて問題ありません。ただし、風邪をひいた状態で健康診断を受けると検査結果に影響が出る恐れがあります。できれば、風邪が治った後に健康診断を受けたほうがよいでしょう。
まとめ 妊娠中・便秘の人はバリウム検査が受けられないので注意
バリウム検査は短時間で終わるため、病気が隠れていないかを確認するのに便利な検査です。しかし、妊娠している人、バリウムにアレルギーがある人、胃や腸の病気がある人、便秘の人は受けられないことがあるので注意してください。代わりになる検査として、胃カメラがあります。医師に相談したうえで適切な検査を受けるようにしましょう。
「バリウム検査できない人」の異常で考えられる病気
「バリウム検査できない人」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
腸閉塞や潰瘍性大腸炎などがある人は、バリウム検査を受けられません。胃カメラなど、ほかの検査方法を受けるようにしてください。