FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 痔の日帰り手術が適応できないのはどんな症例?

痔の日帰り手術が適応できないのはどんな症例?

 更新日:2023/03/27

ベッドのない医療機関でもおこなえる痔の日帰り手術。では逆に、入院を要するのはどのような症例なのでしょうか。痔の種類によるのか、それとも重篤度によるのかが気になるところです。今回は、痔の手術の入院要件について「鎌倉逗子胃腸肛門内視鏡クリニック」の道躰先生を取材しました。

道躰先生

監修医師
道躰 幸二朗(鎌倉逗子胃腸肛門内視鏡クリニック 院長)

プロフィールをもっと見る

東邦大学医学部卒業。東邦大学医療センター大橋病院などで内視鏡・肛門診療を中心に臨床経験を積む。2021年、神奈川県鎌倉市に「鎌倉逗子胃腸肛門内視鏡クリニック」を開院。幅広い診療科目で地域医療に尽くしている。日本外科学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。日本臨床肛門病学会会員。

痔の日帰り手術の適応について

痔の日帰り手術の適応について

編集部編集部

痔の日帰り手術ができないケースはあるのでしょうか?

道躰先生道躰先生

原則として、日帰り手術のできない痔は「ない」と考えています。ただし、お尻の中にトンネルのできる「痔ろう」で大きな傷を伴う場合などは入院が望ましいと思います。痔ろうの場合は、術後の患部を清潔に保つ必要があるため、ご自宅でのケアよりも入院して処置を受ける方が安全です。

編集部編集部

入院するかどうかは、手術の難しさというより予後管理の難しさで決まるということですか?

道躰先生道躰先生

そうかもしれませんね。術後の出血リスクが高い人の場合も、入院して予後観察する方が安全だと思います。仮に術後、出血してクリニックレベルでの対処が難しくて救急搬送したら、もはや日帰り手術とは言えませんし、実際に起こり得る話です。

編集部編集部

予後管理を問うとしたら、痛みは出るのでしょうか?

道躰先生道躰先生

術後の痛みはもちろんありますが、ご自宅で安静にして痛み止めを服用していただくことで、概ねコントロールできます。痛みの緩和のために入院するケースもありますが、必ずしも必要ではないと考えています。総じて、「複雑な痔ろう」以外は日帰り手術で対応できると考えています。

あえて手術をしないという選択

行動面の注意点や喫煙の是非

編集部編集部

手術しない場合はどうするのでしょうか?

道躰先生道躰先生

薬などで治療する「保存療法」がメインとなります。また、ここでは詳しく話しませんが、切らずに治す注射療法もあります。ただし、薬や注射だけで「根治」できるかというとそうではありません。その一方、肛門はおならと便の違いを判別して排泄ができてしまうほど敏感な器官です。この「機能性」を重視するとしたら、「幹部をねこそぎ取り去る」という考えがなじみません。つまり、手術をせずに保存療法で「痔を生活に支障が出ない範囲で抑え込めておければいい」という考え方もできます。

編集部編集部

なるほど。手術を要する場合以外は保存療法でも対処できるのですね。

道躰先生道躰先生

そうです。ただし、腫れを抑えたり引かせたりしているだけで、厳密な意味で「治している」わけではありません。本当に「根治」させるとしたら、やはり手術が必要となります。

編集部編集部

根治か機能か、どう判断すればいいのでしょうか?

道躰先生道躰先生

まずは保存療法で進めておいて、「生活に支障が出てきたら手術をする」という進め方もアリだと思います。他方、希望次第で「根治」のために手術優先という選択肢も考えられます。手術を受けても必ずしも機能に支障が出るわけではないからです。結局のところ、「どういう治療選択肢があるかを知り、自分の生活スタイルに合った方法を選ぶ」のがベターではないでしょうか。

手術をして終わりとは言いきれない

手術をして終わりとは言いきれない

編集部編集部

単に「治す・治さない」という切り口ではないのですね。

道躰先生道躰先生

そうです。痔は生活習慣病の一種なので、手術をしても時間が経つと再発する可能性があります。病気というより「体質」のようなイメージの方が近いかもしれません。そして、うまく折り合いを付けて暮らしていくことも、痔の治療のゴールに含まれます。

編集部編集部

難しいですね。「早く治したいから手術がいい」と考える患者さんはどうすればいいのでしょうか?

道躰先生道躰先生

その場合は手術ですね。冒頭でお話しした「痔ろう」を除くと、明確に適応が決まっているのではなく、患者さんの考え方次第で後からどうするのかを相談して決めていく流れです。

編集部編集部

総じて「症例ありき」ではなく、「どう治したいか」が問われるということですか?

道躰先生道躰先生

そうですね。「痔ろう」であれば手術するべきですが、他方で「切れ痔」は手術による傷が「別の切れ痔」を作りかねないので、手術の適応は慎重になります。いぼ痔の場合でも術後の痛みや一定期間の生活制限が出ますので、生活スタイルや希望に合わせた治療法の選択を医師と患者さんでよく相談をして決めていくのが理想だと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

道躰先生道躰先生

繰り返しますが、痔は生活習慣病の一種です。ですから、「どういう付き合い方をしていくのか」に加えて、「再発しないための工夫」も生活の中に取り入れていきましょう。わからないことがあったら、近くの肛門専門医にご相談ください。

編集部まとめ

「複雑な痔ろう」などの症例を除けば、基本的に日帰り手術ができない痔はないということでした。このとき、「根治」を目指すのか、「痔と共に生活していくのか」は患者さんの価値観や考え方で変わってきます。痔が生活習慣病であることを考えると、保存療法による進め方も選択肢に入れていいのではないかと思います。

医院情報

鎌倉逗子胃腸肛門内視鏡クリニック

鎌倉逗子胃腸肛門内視鏡クリニック
所在地 〒248-0006 神奈川県鎌倉市小町2-14-10鎌倉メディカルサプライビル2・3F
アクセス JR「鎌倉駅」 徒歩5分

診療科目 内科、消化器内科、内視鏡内科、循環器内科、呼吸器内科、肛門外科、アレルギー科、泌尿器科、皮膚科

この記事の監修医師