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健康診断で「赤血球が多い」と診断される原因はご存知ですか?医師が解説!

 公開日:2024/02/14
健康診断で「赤血球が多い」と診断される原因はご存知ですか?医師が解説!

健康診断で赤血球が多いと言われたらどうすべき?Medical DOC監修医が血液検査の見方や基準値・主な原因と病気のリスク・対処法などを解説します。

中川 龍太郎

監修医師
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)

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奈良県立医科大学卒業。臨床研修を経て、医療法人やわらぎ会、医療法人資生会南川医院に勤務。生活習慣病や肥満治療、予防医学、ヘルスメンテナンスに注力すると同時に、訪問診療にも従事している。日本プライマリ・ケア連合学会、日本在宅医療連合学会、日本旅行医学会の各会員。オンライン診療研修受講。

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健康診断・血液検査で「赤血球が多い」と診断されたときに考えられる原因と対処法

健康診断や血液検査で赤血球が多いと指摘されたことはありませんか。
赤血球が少ないと貧血、というのはよく知られたことですが、多い場合にどのような問題が考えられるのか具体的に解説いたします。

赤血球が多いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

赤血球が多くなる状態は多血症と呼ばれ、さまざまな原因があります。赤血球数だけでなく他の検査項目の結果から考えられる疾患が変わりますので、以下で解説いたします。

赤血球と白血球が多いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

赤血球と白血球がともに多い場合、原因として脱水が考えられます。
血液は溶質にあたる血球成分と、溶媒にあたる血漿(水分)に分かれます。この際に脱水が起こることによって溶媒にあたる血漿部分のみが減少し、見かけ上血球成分が増えたかのように判定されます。
なぜかというとすべての血球数を数えることは不可能なので、血球数は濃度表示になっており、この濃度が上昇するために検査項目上も「赤血球が増加している」というように見えるためです。この場合は、脱水を補正することで基準値に戻ります。
また他の原因として真性多血症というものがあります。これはその名の通り、「真に血球成分が多い状態」となります。骨髄増殖性腫瘍というものに分類され、遺伝子変異によって骨髄の造血細胞に異常が起こり、赤血球だけでなく全種類の血球成分が過剰に産生される病気です。
診断のためには血液検査だけでなく、遺伝子変異の有無を調べる特別な検査も要します。治療は瀉血(しゃけつ)と言って、血を一定量抜くことで適正量に保つ方法が選択されます。
専門の診療科は血液内科です。ご自身でできる対処法はありませんので、早めに医療機関を受診しましょう。

赤血球が多く白血球が少ないと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

赤血球が多く白血球が少ないと診断された場合、二次性赤血球増多症の可能性が考えられます。二次性赤血球増多症とは上述の真性多血症と違い、他に疾患があってそこから二次的に赤血球増加が引き起こされた状態で、白血球数は増加しません。
後に詳しく説明しますが、原因としては喫煙や慢性の低酸素状態が挙げられます。大元の要因を解決することで血液検査のデータも改善が見込まれます。

赤血球が多くMCHが低いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

MCHは赤血球一つ一つに含まれるヘモグロビンの平均量を表します。
赤血球が多くMCHが低い場合、慢性疾患に関連した貧血(Anemia of Chronic Disease:ACD)の可能性が考えられます。
この病態では、感染症や炎症性腸疾患、自己免疫疾患、がんなどの慢性疾患が原因で、炎症性サイトカインという物質が体内に増加することで、鉄の利用が低下しヘモグロビン合成が妨げられます。その結果、赤血球数に比較してMCHの数値が低い状態になります。
この病態に対しての対処法は、原因となっている慢性疾患の治療です。感染症が原因なら感染症を治療することで貧血も改善が見込めます。
受診すべき診療科は総合内科や血液内科です。貧血を引き起こす原疾患があるため、複数の診療科で治療にあたることもあります。

赤血球が多くヘモグロビンが少ないと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

赤血球が多くヘモグロビンが少ない場合、鉄欠乏性貧血の可能性があります。
基本的に赤血球数とヘモグロビンの数値は連動することが多いですが、鉄欠乏性貧血においてはヘモグロビン生成に重要な鉄分が不足するために、ヘモグロビンやヘマトクリットが大幅に減少しているのに赤血球数の減少は乏しい、という検査データになることがあります。
先述のACDと同様にヘモグロビン生成が阻害されるので、鑑別は難しいこともあります。
ご自身でできる対応は、食事からの鉄分摂取を多くすることです。具体的には赤身肉(牛肉や羊肉)、レバー、魚介類(貝、牡蠣)には鉄分が多く含まれています。また豆類(ひよこ豆、黒豆、そら豆など)、全粒穀物(大麦、玄米など)、緑葉野菜( ほうれん草、ケールなど)、ナッツ類(アーモンドやカシューナッツ)、ドライフルーツ(干しぶどう、干しプルーン、干しイチジクなど)も鉄分が豊富なことで知られています。
鉄分を多く含む食品を摂る際は、カフェインやカルシウムが多い食品と同時に摂ると鉄の吸収が阻害されることに注意してください。
これらの対応を行なっても検査で鉄欠乏性貧血が改善しない場合は、医師の診断のもと鉄剤の内服を行いましょう。

男性で赤血球が多いと診断されたときに考えられる主な原因と病気のリスク・対処法

男性で赤血球が多いと診断された場合、二次性の赤血球増加症の可能性が考えられます。二次性とは、他に要因があってそれを代償するように赤血球が増加した状態です。多いパターンとしては喫煙によって慢性的な低酸素状態が続き、それを補うように赤血球が増加するというものがあります。
すぐにできる対応は禁煙です。禁煙だけでも改善する可能性があります。
受診すべき診療科は血液内科です。緊急性はありませんので日中に受診してください。

女性で赤血球が多いと診断されたときに考えられる主な原因と病気のリスク・対処法

女性で赤血球が多いと診断された場合、いくつかの原因が考えられます。まず、二次性の赤血球増加症の可能性があります。これは、低酸素状態やホルモン異常など他の要因によって赤血球が増加している状態を指します。先述の喫煙による低酸素状態というのは男性だけでなく女性でも起こります。
また高地に住んでいる、脱水状態が続く、運動選手に見られるような極度のフィジカルトレーニングも赤血球数を増加させる可能性があります。
加えて先述の鉄欠乏性貧血も女性に多い疾患で、赤血球数が多く出る場合もあります。
対処法としては、まずは原因となる要因を取り除くことが大切です。例えば、禁煙を試みる、適切な水分摂取を心がける、トレーニング強度を抑える、鉄分を多く摂取する、などがあります。受診すべき診療科とタイミングは同様です。

健康診断の「血液検査」の見方と再検査が必要な「赤血球が多い」に関する数値・結果

ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

健康診断・血液検査の「赤血球」の基準値と結果の見方

赤血球とヘモグロビンの正常値の基準値を示します。数値には個人差や性差があり、多少の値の差は問題ありません。

 

男性 女性
赤血球数 427-570×104(/μL) 376-500×104(/μL)
ヘモグロビン 13.5-17.6(g/dL) 11.3-15.2(g/dL)

健康診断・血液検査の「赤血球」の異常値・再検査基準と内容

赤血球の値が異常値と出た場合、これまでご紹介したように他に血球成分(白血球)やヘモグロビン、MCH、ヘマトクリットなども参考にしながら原因を探ります。
健康診断などで一度引っかかった場合は、もう一度血液検査を受けることが多いです。これは脱水などによる相対的な赤血球増多症の可能性を排除するためです。この再検査に関しては一般内科など血液検査ができるところであれば問題ありません。
この再検査でも同様の指摘がされた場合は、血液内科に紹介され精査を進めることになります。

健康診断・血液検査の「赤血球が多い」ときに気をつけたい病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「赤血球が多い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

多血症(赤血球増多症)

多血症とは、血液中の赤血球数、Hb濃度、Ht値が正常より高い状態を指します。
多血症は絶対的赤血球増多症と相対的赤血球増多症に分かれます。
絶対的赤血球増多症の原因は、慢性骨髄増殖性疾患に分類される真性多血症と、他の疾患のために生じる二次性の赤血球増多症があります。
相対的赤血球増多症では、脱水や下痢、嘔吐など急激な水分の喪失によって血液中の水分が減少するため、相対的に血球成分の濃度が上昇し、本来の血球数は変わっていなくても増加しているように見える状態です。
一方、絶対的赤血球増多症では血球の絶対数が増加しています。
特徴的な症状は、顔面が紅くなる、高血圧、頭痛、めまい、入浴後のかゆみといったものがあります。ただし無症状で全く気づかず、健康診断でたまたま指摘される場合もあります。
まず他の疾患による二次性赤血球増多症の場合では、元の病気に対しての治療を行います。そして真性多血症では、瀉血(しゃけつ)といって血を抜いて、体内の血液量を減らす治療法もあります。血液はあまりにも濃度が濃いと粘稠度が高くなり(ドロドロになり)固まりやすくなるため、血栓症予防を目的に行います。
受診すべき専門科は血液内科です。
緊急性の高い状態ではありませんが、手足が麻痺する、呂律が回らないといった、脳卒中を疑うような症状や、胸の痛み・息苦しさなどの狭心症を疑う症状が見られた際は、すでに血栓症を起こしている可能性があります。その際はすぐに救急外来を受診しましょう。

「赤血球が多い」ときの正しい対処法・改善法は?

ご自身でできる対応は限られていますが以下に列挙します。

  • 水分を多く摂取する
  • 禁煙する
  • 高強度のトレーニングは控える
  • 鉄分を摂取する

これらの行動は日常生活の中でも実施可能かと思います。ただし、これで解決するわけではありません。しっかりと検査を受け、赤血球数を含めた検査データの推移を把握し、必要に応じて精査を行うことが重要です。

「赤血球が多い」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「赤血球が多い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

健康診断で赤血球が多い、血が濃いと診断されたら多血症なのですか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

定義上は多血症、ということになります。

血液検査で赤血球が多く赤血球増加症の疑いがあるとどんな危険がありますか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

上述の通り、赤血球増多症といっても分類がさまざまです。その中でより管理や治療に専門性が必要になるのは真性多血症です。真性多血症では血栓症のリスクがあります。

血液検査のヘマトクリット・MCV・MCHとは赤血球の何を測る数値ですか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

ヘマトクリット(Hct)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)の内容は以下に解説します。
ヘマトクリット(Hematocrit, Hct)は血液中の赤血球が占める割合をパーセンテージで示します。具体的には、血液を遠心分離した際に、赤血球が全血液体積に対してどれだけの割合を占めているかを測定します。
平均赤血球容積(Mean Corpuscular Volume, MCV)は赤血球一つあたりの平均的な大きさ、つまり体積を示します。この値は、貧血の分類(小球性、正球性、大球性)に役立ちます。
平均赤血球ヘモグロビン量(Mean Corpuscular Hemoglobin, MCH)は、一つの赤血球に含まれる平均的なヘモグロビンの重量を示します。MCHは赤血球の色素量を評価するのに用いられ、ヘモグロビンの平均的な量を反映します。

赤血球が多くなる原因を教えてください。

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

遺伝子変異、脱水、慢性的な低酸素状態、喫煙などがあります。詳細は上述の項目をご覧ください。

赤血球が多いときの対策方法や改善方法はありますか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

水分摂取、鉄分摂取、禁煙する、高強度のトレーニングは控える、といった方法があります。

赤血球が多いと言われたら何科の病院を受診すればいいですか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

血液内科を受診してください。

赤血球が多いと診断されたのですが食事や食べ物で対策できますか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

多くの場合、特定の食事では改善できません。

まとめ 健康診断で「赤血球が多い」と言われたら血液内科を受診!

今回は赤血球が多いと言われるパターンについて解説しました。上記の通り、考えられる病気も幅広く、ご自身で対応するのは難しい疾患も多いです。
検査で引っかかった場合は自己判断せず、早めに専門の医療機関を受診しましょう。

「赤血球が多い」で考えられる病気

「赤血球が多い」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

血液内科の病気

  • 真性多血症
  • 慢性疾患に関連した貧血(Anemia of Chronic Disease:ACD)
  • 二次性赤血球増多症

一般内科の病気

赤血球が多い、という検査項目から考えられる疾患は上記が挙げられます。何度も検査で指摘される場合は、脱水による可能性は低く、何らかの疾患が隠れている可能性がありますので、病院で相談してみましょう。

この記事の監修医師