「経腟超音波検査」で何がわかる?痛みや検査でわかる病気について医師が解説!
経腟超音波検査とは?Medical DOC監修医が健康診断や婦人科の経腟エコー検査で発見できる病気や検査結果の見方と所見、経腹エコーとの違い等詳しく解説します。
監修医師:
武田 美貴(医師)
目次 -INDEX-
経腟超音波検査(経腟エコー検査)とは?
経腟超音波検査とは、膣の中に細長いエコーの機械を挿入して、子宮や卵巣の状態を超音波で観察する検査です。特に産婦人科でよく行われています。この記事では経膣超音波検査で知ることができる病気やその費用、検査時の注意点などについて解説していきます。
婦人科検診の経腟超音波検査(経腟エコー)とはどんな検査?
婦人科での経腟超音波検査のやり方ですが、内診台に座り、プローブという細長い棒のような機械を膣の中に挿入します。プローブから超音波が出て、子宮や卵巣の様子を観察します。超音波検査の画像はリアルタイムでモニターを通して患者さん自身も見ることができる医療機関もあります。観察するために膣の中でプローブを動かしますが、一般的に痛みが少ない検査です。
経腟超音波検査(経腟エコー)で女性の体の何がわかる?
経腟超音波検査でわかることは、子宮や卵巣の様子です。プローブと子宮・卵巣までの距離が近いために、お腹の上から検査をする腹部超音波検査よりも、より詳しく検査ができます。そのため自覚症状のない子宮や卵巣の病変を映し出すことができるため、病気の早期発見に有用な検査とされています。また、子宮の中を詳しく観察することができるため、初期でも妊娠が分かります。
経腟超音波検査の費用は?
健康診断が目的で行う場合と、症状の自覚があって受診する場合で費用は異なりますが、一般的に人間ドッグなど自費検査の場合で5,000円程度です。
経腟超音波検査前日や当日の注意点
検査前日に控えたほうがいいことは、経腟超音波検査に関してはありませんが、経腟超音波検査は他の検査と同日に行うことが多いので、性交は控えるようにします。
当日は丈が長すぎないワンピースや裾の広いスカートがおすすめです。ストッキングやタイツは脱ぐのに手間がかかるので、避けた方が良いでしょう。検査の前は、排尿をしないように指示があった場合は、できるだけトイレを我慢してください。
経腟超音波検査を受ける健康リスクはある?
経腟超音波検査は超音波を使った検査なので、妊娠していても行うことができます。ただしプローブを膣に入れるので、性交経験がない場合は避けられる検査です。また衛生面では、プローブにカバーをかけるので安心です。
経腟超音波検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは経腟超音波検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
経腟超音波検査の結果の見方・分類と主な所見
経腟超音波検査では、子宮の大きさや子宮内膜の厚さ、卵巣の様子を観察します。また妊婦検診で行う場合には、赤ちゃんの様子を観察します。赤ちゃんの頭臀長(頭の先からおしりまでの長さ)を測定して、妊娠週数や出産予定日を割り出したります。妊娠12週以降では、児頭大横径(頭の左右の幅)で妊娠週数や出産予定日を割り出します。
子宮の異常では、しこりの大きさや位置を見ます。卵巣の異常では、大きさや、内部の状態、充実成分といって悪性が疑われる所見があるかを見ていきます。
経腟超音波検査の結果で精密検査が必要な基準と内容
経腟超音波検査では子宮や卵巣の状態を観察しますが、子宮内膜が厚い場合や子宮体部に腫瘍が見られる場合、卵巣が大きい・腫れている場合に、精密検査を行います。精密検査では、異常が見られた部位が子宮内膜のときは、細胞診と言って内膜の細胞をとって検査をします。卵巣や子宮体部の場合は、MRI検査を行うことが多いです。特にMRI検査は、MRI機器がある大きな病院の産婦人科を受診するようにお話されることが多いです。費用は、精密検査の内容にもよりますが、1万円程度であることが多いです。
無症状のこともあるので、精密検査のお話があっても受診を先延ばしにしがちですが、放っておくと出血が多くなったり、下腹部が痛くなったりすることがあるので、できるだけ早く受診するようにします。
経腟超音波検査でわかる疾患で多いのが、子宮筋腫です。子宮筋腫の大きさによりますが、小さい場合は経過観察になることも多いです。しかし生理の量が多い場合は、子宮筋腫核出術など、外科的な治療が考慮されることもあります。子宮内膜が厚くなる子宮体がんや卵巣腫瘍は、外科的に切除して治療を行います。悪性度が高い場合は、抗がん剤による化学療法が追加されることもあります。
「経腟超音波検査」で発見できる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「経腟超音波検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
子宮がん
子宮がんには、がんが見られる部位によって子宮頸がん、子宮体がんに分類されます。また子宮体部の悪性腫瘍で子宮肉腫と呼ばれる腫瘍の場合もあります。
経腟超音波検査が最も有用であるのは、子宮体がんの検査においてです。子宮内膜は、内診では見えない子宮の奥にあるので、経膣超音波検査で子宮内膜の厚さや子宮内膜の異常に関して、詳しく検査ができます。40代後半から徐々に増え始め、50~60代の閉経前後に多くなります。また一部遺伝性要素が関与しており、家族などに子宮体がんの発症歴がある女性は、年齢が若くても子宮体がんになることが知られています。
子宮頚がんは、内診検査で直接見ることができるので、経腟超音波検査の重要性はそれほど高くありません。
経腟超音波検査で子宮内膜に異常が見られた場合は、子宮内膜の細胞を直接採取して、病理検査をします。細胞診でがんと診断された場合は、基本的には子宮摘出術を行います。病状が進行した状態でも、可能であれば子宮を摘出し、抗がん剤治療などが考慮されます。
婦人科検診で子宮内膜に異常が指摘された場合は、なるべく早く精密検査を受けましょう。また出血が止まらないなどの症状がある場合も、子宮体がんの可能性もありますので、できるだけ早く婦人科を受診します。
卵巣がん
卵巣は、子宮の左右脇にあり内診では見ることができません。この卵巣にできる悪性腫瘍が卵巣がんです。排卵は卵巣がんの原因の一つとされ、排卵する期間が長いほど、卵巣がんのリスクが高くなります。ですから妊娠・出産の経験がない、不妊治療による排卵誘発剤を複数回使った人のほうが、卵巣がんを発症する可能性が高いとされています。また子宮内膜症からも、卵巣がんが発生する場合があります。卵巣がんは自覚症状が出にくく、初期の状態で発見されにくいがんです。進行すると、おなかが張ったり、下腹部にしこりを感じたりします。
卵巣がんを見つけるには、内診のほかに経腟超音波検査が有用です。特にお腹が張っている原因が腹水の場合、お腹の上から行う経腹超音波検査では卵巣は見えなくなるため、経腟超音波検査で卵巣の状態を観察します。
卵巣がんの治療は、外科的切除です。子宮を同時に摘出することが多いです。その後状態に合わせて抗がん剤治療を行います。
卵巣がんは、初期の状態で見つけるのはとても難しいがんです。婦人科検診の時は、経腟超音波検査を追加したり、お腹が張ったりした時は、婦人科を受診して早期発見に務めましょう。
子宮内膜症
子宮内膜症とは、子宮の内側にだけあるはずの子宮内膜が、本来の場所以外にできてしまう病気です。本来の場所以外にできた内膜も、生理と同じ周期で増殖や出血を繰り返すため、いろいろな症状が出てきます。出血するたびに周囲に炎症が起こるので、炎症の結果周囲組織が癒着して、痛みがでてきます。子宮内膜症が重たい生理痛の原因の一つである理由です。子宮内膜症が卵巣にできると、チョコレートのう胞という状態になります。このチョコレートのう胞は、卵巣がんの原因となることが知られています。子宮内膜症の原因は不明ですが、過去に妊娠・出産の経験がない人や、初潮が早く閉経が遅い人、月経周期が長い人などにリスクがあります。治療は、痛みには鎮痛剤が処方されます。鎮痛剤で効果がない場合は、ホルモン量の少ないピルや偽閉経療法、黄体ホルモンのように働いて子宮内膜症細胞の増殖を抑える薬を使ったりします。チョコレートのう胞の場合は、手術を検討します。チョコレートのう胞は、妊娠を希望する年齢に多いため、病気の部分のみ摘出する方法も検討されます。
子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮の壁を作る筋肉にできる良性のしこりです。30歳代以降の女性であればよく見られる病気です。しかし、しこりが大きくなると、月経過多や貧血、不妊症の原因となったりします。子宮筋腫は女性ホルモンの影響をうけて大きくなります。逆に、閉経を迎えると小さくなります。多発することが多く、できる場所により子宮の外側(漿膜下)、子宮の壁の中(筋層内)、子宮の内側(粘膜下)に分けられます。無症状であれば治療の必要はありませんが、月経の量が多い場合や月経痛がひどい場合は、治療を考慮します。
治療は、投薬と手術があります。薬の治療では、月経を止める治療(偽妊娠療法)が一般的です。しかし、骨粗しょう症になりやすくなるため、長期間の治療はできません。
手術は、子宮筋腫の大きさや数、年齢により異なりますが、妊娠を希望される場合は筋腫の部分のみを取り除く手術(子宮筋腫核出術)が行われます。一方で妊娠の予定がない、数が多い場合は、子宮全摘術が行われます。
「経腟超音波検査」で引っかかる理由は子宮がん・卵巣がん以外にもある?
経腟超音波検査では、主に子宮と卵巣を観察しますが、子宮の周囲にある臓器を観察することもできます。一番よく見えるのは膀胱で、経腟超音波検査を受けるときは排尿を我慢するように言われることが多いので、膀胱の中も詳しく観察できます。初期の膀胱がんが見つかることもあります。不正出血のような症状がある場合、まず婦人科を受診しますが、尿道と膣は非常に近くにあるため、尿道からの出血を見ている場合もあります。婦人科で大きな異常がない場合、泌尿器科を紹介されることもあります。
「経腟超音波検査」についてよくある質問
ここまで検査でわかる可能性のある病気や診断結果の見方などを紹介しました。ここでは「経腟超音波検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
婦人科の経腟超音波検査で妊娠はわかりますか?
武田 美貴 医師
経腟超音波検査は、子宮の中をより詳しく観察することができます。初期の妊娠では、胎嚢は非常に小さいのですが、経腟超音波検査では観察することができます。妊娠初期のころは胎児も小さいので、経腟超音波検査が中心の検査になります。いつまで経腟で検査をするのかは個人差が大きいですが、胎児が大きくなって経腟超音波検査では全体が見えなくなる妊娠中期から、経腹超音波検査に切り替わることが多いです。
経腟超音波検査は生理中でも受けることができますか?
武田 美貴 医師
できれば、避けることが好ましいです。超音波自体は生理の影響を受けにくいですが、ほかの検査に支障があることがあります。月経周期を把握して、生理にぶつかりそうであれば、調整することを考えましょう。
経腟エコー・経腟超音波検査の費用は保険適用になりますか?
武田 美貴 医師
婦人科検診の場合は、病気ではないので保険適応対象外ですが、月経痛や月経過多など、自覚症状があって婦人科を受診した場合は、保険適応の検査となります。
経腟超音波検査(経腹エコー検査)を受けるときは痛いですか?
武田 美貴 医師
痛みはあまり感じませんが、性交の経験があまりない場合は、痛みを感じることもあるかもしれません。膣に挿入する時は、機械に滑りをよくするゼリーを塗りますので、痛みの心配はないと思います。検査で痛かったときは、遠慮なく医師に話されるといいと思います。
経腟超音波検査の痛みが心配なのですが別の検査方法はありますか?
武田 美貴 医師
子宮や卵巣をより詳しく観察できる経腟超音波検査ですが、痛みが心配な場合や、性交の経験がない場合は、MRI検査で詳しく検査することができます。痛みなどが心配であれば、受診時に医師と相談してください。
まとめ「経腟超音波検査」で子宮がんを早期発見!
経腟超音波検査は、子宮や卵巣をより詳しく観察できる検査ですが、膣に機械を入れて行う検査ですので、痛みなどが不安に感じるかもしれません。しかし簡単にできる検査で、小さな病変も描出できる検査ですので、婦人科を受診して経腟超音波検査を勧められたら、リラックスして受けてみることをお勧めします。
「経腟超音波検査」の異常で考えられる病気
「経腟超音波検査」の検査結果から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器系の病気
- 大腸腫瘍
泌尿器系の病気
経腟超音波検査は、子宮や卵巣など婦人科領域の異常を検出する検査ですが、子宮や卵巣の近くにある臓器も詳しく見ることができます。婦人科の症状は、周囲臓器が原因となる症状と似ていることもあります。婦人科を受診して違う臓器が原因である可能性を指摘されたら、早めに紹介された病院を受診してください。