健康診断で「クレアチニンが高い」と言われたら腎臓病の可能性?医師が解説!
健康診断でクレアチニンが高いと言われたらどうすべき?Medical DOC監修医が血液検査の見方や基準値・主な原因と病気のリスク・対処法などを解説します。
監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
健康診断・血液検査で「クレアチニンが高い」と診断されたときに考えられる原因と対処法
健康診断や血液検査でクレアチニンが高かった場合、どのようなことが考えられるでしょうか?考えられる原因、病気について詳しくお話しします。
クレアチニンが高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
クレアチニンが高い場合、腎機能が低下していることが考えられます。腎機能が少し低下している程度では症状はありません。まずは、内科を受診し原因を調べ、その原因に対する治療をすることが大切です。腎炎や生活習慣病等が原因として考えられます。腎機能は一度低下すると、改善が難しいです。早めに治療を始めましょう。
クレアチニンが高い時は、すでに腎機能が正常の半分程度となっています。より精密に腎機能を評価するために、近年ではクレアチニンから算出される推算糸球体濾過量(eGFR)も合わせて評価します。
また、脱水がある場合には一時的にクレアチニンが上昇します。水分を充分摂取することでクレアチニンが改善します。普段から水分を充分にとり、脱水に気を付けましょう。
筋トレを多くし、筋肉量が多い方では、腎機能が正常であってもクレアチニンが高くなることもあります。この場合、クレアチニンクリアランスやシスタチンCなどクレアチニン値以外の評価方法で腎機能を評価することをお勧めします。橋本病などで甲状腺機能が低下している場合にもクレアチニンが高くなります。だるさなどの症状がある場合には、甲状腺機能の低下が合併している可能性もあります。病院で相談してみましょう。
高齢者でクレアチニンが高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
高齢者では脱水が起こりやすいため、脱水によるクレアチニンの上昇が考えられます。水分摂取が不十分であった場合には、まず水分を摂取しましょう。また、高齢の女性では、膀胱炎が起こりやすく、慢性化したり、悪化したりすることで腎盂腎炎となることもあります。何度も腎盂腎炎を繰り返すと腎機能が低下し、クレアチニンが高くなります。膀胱炎の予防にも水分摂取は有効です。また、男性では、前立腺肥大の合併が膀胱炎の原因となり得ます。尿が出にくい症状がある場合には、泌尿器科を受診しましょう。
小児(子供)でクレアチニンが高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
小児のクレアチニン値の基準値は出生直後は母親と同程度ですが、数日後には0.4mg/dL程度となり、一歳代で0.2mg/dL程度となった後に、成長に伴い徐々に上昇し、思春期あたりの急激な筋肉量の増加と合わせて急上昇して、成人と同じ値となります。このように年齢による変化があり、また男女差が大きいためクレアチニン値の異常が判断しづらいです。クレアチニンの上昇が認められた場合には、腎機能の低下が考えられますが、小児専門医での診断が不可欠です。小児の腎臓病の原疾患は、先天性の腎尿路異常が多いですが、腎炎が原因となる可能性もあります。腎臓病が疑われる場合には、早期に小児科を受診し、原因に沿った治療を受ける必要があります。
更年期の女性でクレアチニンが高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
更年期が直接の原因でクレアチニンが上昇することはありません。クレアチニンが高い場合、一番考えられる病気は腎臓病です。更年期の女性の場合、女性ホルモンの低下に伴い脂質異常症が起こりやすくなります。脂質異常症が持続することで動脈硬化が進行し、腎臓血管の動脈硬化による腎障害の進行も起こります。この動脈硬化による腎障害はすぐに起こるわけではありませんが、脂質異常症を放置することで年齢とともに進行するため注意が必要です。女性では片頭痛や生理痛などで鎮痛剤を頻回に使用する方もいます。鎮痛剤は腎障害の原因となるため、頻回の使用は控えましょう。また、女性は甲状腺疾患の合併も多いです。甲状腺機能の低下に伴いクレアチニンが少し上昇することもあります。女性の腎臓病の原因は、腎炎、生活習慣病、薬剤性、妊娠中毒症の既往などさまざまです。原因特定のためには、腎臓内科を受診し、精密検査を行いましょう。
健康診断の「クレアチニン」の数値の見方と再検査が必要なクレアチニンが高い診断結果
ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
「クレアチニン」の基準値
クレアチニンの基準値は下記のようになっています。
基準値 | 要注意 | 異常 | |
---|---|---|---|
男性 | 1.00以下 | 1.01-1.29 | 1.30以上 |
女性 | 0.70以下 | 0.71-0.99 | 1.00以上 |
クレアチニンは筋肉量により変わるため、男女で基準値が異なります。上記の基準値を超え異常に高い場合には早めに病院を受診しましょう。
「クレアチニンが高い」ときの数値と再検査内容
腎臓病はかなり進行するまで症状が出にくい病気です。また、腎臓病は一旦進行してしまうと改善が難しい病気でもあります。このため、症状がなかったとしても早めに受診し、治療をはじめることが大切です。
クレアチニンが高く、腎臓病が考えられた場合には、なぜ腎臓病が起こったか原因を調べる検査を追加して行います。尿検査で腎炎の合併がないか、採血で腎機能に影響するような病気がないか、腹部超音波検査で腎臓の形態チェック(結石や腎のう胞の有無、腎臓の萎縮がないかなど)を行います。
蛋白尿なし、採血検査、腹部エコーでも異常なしで原因不明であることもあります。過去の病気や薬剤、妊娠・出産時の影響による腎障害が残っていることもあります。進行性の腎障害がない場合には、現在の腎機能を保つための治療を行います。
検査の費用は3割負担で下記のようになります。(内容により異なることもあります。)
尿検査・沈査:約160円程度
腹部エコー:約1,600円程度
採血検査:約1,400円程度
健康診断・血液検査の「クレアチニンが高い」診断で気をつけたい病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「クレアチニンが高い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病(CKD)とは、尿蛋白異常や糸球体濾過量60mL/min/1.73m2未満が3か月以上持続している状態を指します。日本のCKDは成人で8人に1人と言われます。原因としては、腎炎を含め多岐にわたりますが、近年は糖尿病、高血圧、喫煙、高尿酸血症など生活習慣病に伴うものが多いです。治療法としては、原因を治療することが大切であり、高血圧や糖尿病をしっかりコントロールすることで進行を防ぐことができます。慢性腎臓病が進行すると透析療法が必要となります。腎臓病は一度進行すると回復が難しい病気です。このため、早期に治療を開始することが非常に大切です。早めに病院を受診しましょう。慢性腎臓病は腎臓内科の受診をお勧めしますが、まずは内科を受診し、再検査でも腎臓病が疑われたら、腎臓内科へ紹介してもらうこともできます。
ネフローゼ症候群
腎臓の中で、血液中の老廃物をろ過し、尿として体の外に排泄する働きをしているのが「糸球体」です。この糸球体で炎症が起き、蛋白尿や血尿が認められるようになった病気を糸球体腎炎といいます。糸球体腎炎の原因はさまざまで、上気道感染後に起こる急性糸球体腎炎や、IgA腎症や膜性腎症などの慢性糸球体腎炎、膠原病や血管炎など全身の病気に合併して症状が現れる続発性腎炎などがあります。これらのどの疾患でも、糸球体での炎症が強く尿中に大量の尿蛋白が漏れ出てしまい、血液中の蛋白量が減少しむくみが起こっている状態をネフローゼ症候群といいます。腎炎の原因を腎生検で確認をした上で、治療を選択します。通常、早期であればクレアチニンまで上昇することは少ないですが、放置したり、腎炎の活動性が強かったりすると、腎機能が低下することもあります。尿蛋白がある場合には、早めに腎臓内科を受診しましょう。
腎臓がん
腎臓がんは、腎臓にできた悪性腫瘍です。腎臓がんのうち最も多いものが、腎細胞がんです。腎細胞がんは、喫煙者や肥満、高血圧の人にできやすいと報告されています。また、腎細胞がんが発生しやすい遺伝子変異も報告されています。治療としては、手術が第一選択ですが、手術で取り除くことが難しい場合には、薬物療法や放射線療法などを行います。初期には自覚症状はないことが多く、健康診断などでの超音波検査やCT検査で見つかることが多いです。進行すると、血尿、腹部のしこりや痛みなどが出ることもあります。通常、腎がん初期でクレアチニンが上昇することは少ないですが、がんが進行すると腎機能も低下する可能性があります。血尿など気になる症状が出現した場合には、泌尿器科を受診しましょう。
「クレアチニンが高い」ときの正しい対処法・改善法は?
クレアチニンが高い場合には、早期に病院を受診し、再検査を行いましょう。再検査でも高い状態が持続している場合には、何かしらの腎機能を低下させる原因があると考えられ、理由を調べます。そして、腎臓が悪くなった原因に対する治療を進めていきます。クレアチニンが高い原因が、脱水によるものであれば水分摂取が有効です。また、食事では一日6g未満程度の減塩食が勧められます。腎機能の低下が進んだ場合には蛋白制限を行う場合もありますが、年齢や体の状態により変わるため病院で相談してから行いましょう。普段の生活では、体に負担をかけないように充分な睡眠や、適度の運動が勧められます。腎臓病は進行すると、改善することが難しいです。早期に腎臓内科を受診しましょう。
「クレアチニンが高い」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「クレアチニンが高い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
健康診断でクレアチニンが高いと言われたら何科の病院を受診したらよいですか?
伊藤 陽子 医師
クレアチニンが高いと言われた場合には、腎臓病の可能性が高いため、腎臓内科が専門となります。しかし、脱水などで一時的に高いこともあるため何科かわからない場合には、まず内科を受診し、再検査の上、高い状態が持続している場合には腎臓内科を紹介してもらうと良いでしょう。
クレアチニンが高いと言われたのですが食事で改善できますか?
伊藤 陽子 医師
クレアチニンが高い原因が腎臓病であった場合、そして慢性的に進行したものの場合には残念ながら食事で改善することはできません。必要であれば減塩や蛋白制限食で腎臓病の進行を抑えることはできます。
クレアチニンの上昇が一時的なもので、脱水の影響が考えられる場合には水分摂取により改善することもあります。
クレアチニン・eGFRが高いのは水分不足なのでしょうか?
伊藤 陽子 医師
クレアチニンが高い、eGFRが低くなる原因の一つに脱水があります。この場合には水分不足があるため、水分を充分にとることで改善します。
しかし、クレアチニンの上昇、eGFRの低下は脱水だけではなく、腎機能の低下でも起こります。この場合には、いくら水分摂取をしても改善しません。原因を調べるために、病院を受診しましょう。
クレアチニンの危険な数値を教えてください。
伊藤 陽子 医師
年齢や性別、体格により一概には言えませんが、クレアチニン2mg/dLを超えるような状態はおおむね正常な腎機能の1/3程度まで低下していることが考えられます。この程度となると、だるさやむくみなどの自覚症状が出て来ます。将来的に透析が必要な状態を避けるためにもできれば、ここまで症状が悪化する前に治療を開始することが勧められます。
クレアチニンを下げるにはどうしたらいいですか?
伊藤 陽子 医師
脱水によりクレアチニンが上がっている場合には、水分摂取が効果的です。しかし、腎臓の機能が低下しているためにクレアチニンが高い場合には、まず原因を調べ、原因に対する治療をする必要があります。病院を受診し、早めに原因を調べ、治療をしましょう。
まとめ 健康診断で「クレアチニンが高い」と言われたら早期に内科受診を!
クレアチニンが高い場合には、腎臓病が考えられます。内科で再検査を受けましょう。一時的なものであれば、脱水による可能性が考えられます。夏場は、特に脱水に気を付けて過ごしましょう。腎臓病は症状が出づらい病気です。腎不全の末期になるまで症状が出ないこともあります。また、腎臓病は一度病気が進行してしまうと改善しづらく、早期の治療が必要な病気でもあります。健康診断などでのクレアチニン値が高い場合には、症状がなくとも、早めに病院を受診しましょう。
「クレアチニンが高い」ときに考えられる病気
「クレアチニンが高い」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器系の病気
腎・泌尿器系の病気
- 腎臓病
- 糸球体腎炎
- 腎がん
- 腎盂腎炎
内分泌系の病気
- 甲状腺機能低下症(橋本病)
そのほかの病気
- 脱水
クレアチニンが高い場合には、まずは腎臓病を考えます。脱水が疑われる場合には、水分摂取で改善する場合もあります。そのほかには、甲状腺機能低下症や心不全でもクレアチニンが上がることもあります。腎臓病の場合には早期の原因精査、治療が必要です。早めに、病院を受診しましょう。