「肺がん検診」の検査内容や癌以外に発見できる病気など医師が徹底解説!
肺がん検診は癌以外もわかる?Medical DOC監修医が呼吸器内科や健康診断の肺がん検診で発見できる病気や検査結果の見方・再検査の内容などを解説します。
監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
肺がん検診とは?
肺がん検診は、肺がんを早期に発見することで、死亡リスクを下げることを目標としています。
この記事では、肺がん検診のやり方や費用などについて解説していきます。
肺がん検診とはどんな検査?
肺がん検診の内容には、問診、胸部X検査と喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)などの方法があります。
肺がん検診の費用・保険適用の有無
肺がん検診は、基本的には症状が特にない健康な方が受けるものなので、保険適用にはなりません。
市町村ではがん検診の費用の多くを公費で負担しており、一部の自己負担で検診を受けることができます。
肺がん検診はいつから・何歳からどれくらいの頻度で受けるべき?
肺がん検診は何歳から受けるべきかについては、肺がんになるリスクが高くなる40歳からといえます。また、頻度としては、年に1回、毎年受けることが厚生労働省から推奨されています。
肺がん検診の種類と違い
肺がん検診として肺がん検診ガイドラインで推奨されている検査は、胸部レントゲンと喀痰検査の二つがあります。ここからは、この二つの検査の違いについて解説していきます。
胸部X線検査による肺がん検診
胸部X線検査、つまり胸部レントゲンは、胸部に背後からX線を照射し、肺・心臓・両肺の間にある縦隔などの器官の異常を調べる検査です。
肺結核・肺炎などの肺の炎症、肺がん等の発見を主目的としています。
食事や内服薬の制限はありません。一方、胸部X線検査を受ける際の服装としては、ボタンや下着の金属が画像に写りこんでしまうのを防ぐため、ゆったりとしたTシャツなどを着ていくとスムーズに検査が受けられるでしょう。クリニックによっては検査着を用意している場合もあります。
喀痰細胞診による肺がん検診
ハイリスク群に属する方は、胸部X線検査と共に喀痰細胞診が行われます。
ハイリスク群とは、質問の結果、原則50歳以上で「喫煙指数」が600以上の場合を指します(過去における喫煙者含む)。喫煙指数は、「1日に吸うたばこの平均本数」×「喫煙年数」で計算されます。例えば、1日にたばこ20本を30年吸っている場合には喫煙指数が600となり、ハイリスク群に該当します。
肺がんの場合、がん細胞が痰の中に剥がれ落ちることがあるため、痰を調べてがん細胞を検出します。
痰の出し方としては、3日間、出来る限り起床時の早朝に採取した痰を検査します。また、痰が出ない場合には、深呼吸を何度か行い、勢いよく咳払いをするとうまく出ることもあります。
肺がん検診の結果の見方と要精密検査と言われたら
ここまでは肺がん検診について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
肺がん検診の結果・判定の見方
肺がん検診のうち、胸部X線検査のカテゴリー判定基準を以下に示します。
判定区分 (カテゴリー) |
X線所見 |
---|---|
A判定 | 読影不能 |
B判定 | 異常所見を認めない |
C判定 | 異常所見を認めるが精査不要 |
D判定 | 異常所見を認め肺がん以外の疾患で治療が必要 |
E判定 | 肺がん疑い |
また、喀痰細胞診でも判定基準が設けられています。簡単にまとめると以下のようになります。
判定区分 (カテゴリー) |
細胞所見、指導区分 |
---|---|
A判定 | 喀痰の中に細胞が含まれていないため、材料不適、再検査 |
B判定 | 正常 |
C判定 | 中等度異型扁平上皮細胞であり、6ヶ月以内に追加検査 |
D判定 | 高度の悪性細胞や悪性腫瘍の疑いがある細胞を認めるため、直ちに精密検査 |
E判定 | 悪性腫瘍細胞を認めるため、直ちに精密検査 |
肺がん検診の再検査・精密検査内容
肺がん検診の精密検査のやり方は、胸部CT検査や気管支鏡検査です。
肺がん検診で要精密検査となった場合には、呼吸器科があり、CT検査などの詳細な検査ができる医療機関を早急に受診するようにしましょう。
がん検診を受けた人で精密検査が勧められる確率が2%、実際にがんだと診断される確率が0.05%だったという調査結果もあります。
精密検査で異常なしでも、毎年肺がん検診は受けるようにしましょう。
肺がん検診の精密検査に関わる費用は、多くの場合医療保険が適応となります。
CT検査は3割負担の場合は6,000円程度です。
肺がん検診でわかる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「肺がん検診」で発見できる病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
肺がん
肺がんは、気管支や肺胞(はいほう)の細胞が何らかの原因でがん化したものです。
主な種類としては、腺(せん)がん、扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん、大細胞がん、小細胞がんの4つがあります。いずれのがんも発生要因の一つに喫煙があります。扁平上皮がんや小細胞がんは喫煙との関連が大きいがんですが、喫煙をしていない人でも肺がんになることがあります。
肺がんの治療は、小細胞がんとそれ以外の場合で大きく異なります。
小細胞がんの場合は薬物療法と放射線治療が主になります。
それ以外の肺がんの場合は、早期であれば手術が第一選択となり、進行した段階では放射線治療と薬物療法を組み合わせて治療を行っていきます。
肺がんは早期では無症状で、肺がん検診や健康診断で発見されることもあります。
咳や痰、血痰などの症状が続く場合には呼吸器内科を受診しましょう。
肺結核
肺結核は、結核菌群による感染症です。主に、感染した人の咳やくしゃみなどに含まれる飛沫核という小さな粒子に含まれる結核菌を吸い込むことで感染します。
健康な方であれば発病せずに済むこともありますが、乳幼児や高齢者、免疫力が低下する病気の方などでは症状が出る、つまり発病することがあります。
初期症状としては、咳や痰、微熱が典型的とされています。
治療は、数種類の薬を半年から1年ほど内服していくことが基本です。
長引く微熱や咳、痰などがある場合には、呼吸器内科を受診するようにしましょう。
肺炎
肺炎は、細菌やウイルス感染などのさまざまな理由で肺に炎症が起こっている状態です。
一般的には、急性の感染症の場合のことを指します。
喫煙は肺炎の危険因子となります。
症状としては、咳や鼻水など風邪のような症状が長引き、そのうちに38℃以上の高熱や、胸の痛み、呼吸のしづらさなども出現することもあります。
細菌性肺炎の場合には、湿った咳が黄色や緑色の痰とともに出てきます。
治療は、抗生物質の投与などが行われます。
症状が強い風邪と思っていたら肺炎になっていたということもありますので、「いつもと違うだるさや息苦しさを感じる」場合には、呼吸器内科を受診しましょう。
「肺がん検診」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「肺がん検診」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がん検診は何歳から受けた方がいいですか?
木村 香菜 医師
肺がん検診は40歳から受けた方がよいと推奨されています。
肺がん検診はどのくらいの頻度で受けるべきですか?
木村 香菜 医師
肺がん検診は、症状がなくとも毎年受けましょう。
肺がん検診は肺がん以外の病気もわかりますか?
木村 香菜 医師
肺がん検診で、慢性的な肺の炎症である結核や、心臓や大血管などの異常などについてもわかることがあります。
煙草を吸わない人は肺がん検診の必要性が低いでしょうか?
木村 香菜 医師
タバコを吸わなくても肺がんになるリスクはあります。また、身近にタバコを吸う人がいる、あるいは、タバコを吸う人がいた場合にも喫煙者と同様に肺がんのリスクが高まりますので、非喫煙者の方も肺がん検診を受けましょう。
肺がん検診は胸部X線検査と喀痰細胞診どちらも受けた方がいいですか?
木村 香菜 医師
胸部X線検査は40歳以上であれば受けた方がよいでしょう。喀痰細胞診は、50歳以上でタバコを多く吸うハイリスクの方が受けることが望ましいです。
肺がん検診の費用は保険適用されますか?
木村 香菜 医師
肺がん検診は、基本的には症状が何もない方が受けることが想定されますので、保険適用にはなりません。
まとめ 「肺がん検診」で肺がんを早期発見!
肺がんは、早期の段階では無症状のことも多く、場合によってはかなり進んだ段階でも症状が特にない、ということも珍しくありません。そのため、肺がん検診の必要性は非常に高いといえるでしょう。
肺がん検診では、肺がん以外の肺や胸の病気が見つかることもあります。
毎年1回は肺がん検診を受け、肺がんの早期発見・早期治療につなげられるようにしたいものです。
「肺がん検診」の異常で考えられる病気
「肺がん検診」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器の病気
- 胸部大動脈瘤
- 心不全
その他の病気
- 縦隔腫瘍
肺がん検診で発見される病気の中には、肺がんなどの腫瘍の他、肺炎などの感染性のもの、また大動脈や心臓の疾患もあります。
参考文献