「クレアチニン」とは?医師が病気のリスク・改善方法などを徹底解説!
腎機能のクレアチニンとは?Medical DOC監修医が血液検査・尿検査結果の見方や基準値・主な原因と数値が高い場合の病気のリスク・対処法等を解説します。
監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
クレアチニンとは?
筋肉を動かすためのエネルギーを蓄える物質であるクレアチンリン酸が、代謝されてできる老廃物がクレアチニンです。血液検査では、Cre、CRE、CREAなどの略語で記載されることもあります。クレアチニンは、体にとって不要なものであるため腎臓から排出されますが、腎機能が低下すると体内に残ってしまいます。このため、腎機能の評価をする際の指標として使用します。しかし、クレアチニンが高値を示す時は、すでに腎機能が正常の半分程度となっているという問題点があり、近年では腎機能の指標としてクレアチニンから算出される推算糸球体濾過量(eGFR)も合わせて評価することが多いです。
クレアチニンが高い場合のリスクと対策
クレアチニンが高い場合には、腎機能の低下が考えられますが、さまざまな条件によって高めに数値が出てしまうことがあります。クレアチニンを評価する際の注意点についてお話しします。
クレアチニンが基準値より高いとどうなる?
クレアチニンが高くなった時にまず考えるのは、腎機能の低下です。しかし、採血時に脱水があると高い値が出る場合があります。また、筋トレを多く行っている人は筋肉量が多いため、クレアチニン値が高くなります。女性の方が、筋肉量が少ないため、基準値も低めです。女性でも大柄で、筋肉量が多い場合には、腎機能が正常でも基準値より少し高めとなることもあります。なお、食事には影響されません。
腎機能が低下している場合でも、クレアチニンが少し高いだけでは、自覚症状はほとんどありません。腎機能が進行し、末期となるまで症状が出ないため、検査で異常があれば早めに治療をすることが非常に大切です。
健康診断でクレアチニンが高いと言われたら?
健康診断でクレアチニン値が高かった場合、早めに再検査を行いましょう。水分不足があり一時的に高値となっていることも少なくありません。しかし、本当に高値であった場合でも腎障害は自覚症状がほとんどなく、知らない間に進行している可能性もあるため注意が必要です。
クレアチニンを下げる方法は?
クレアチニンの上昇が脱水によるものであれば、水分摂取が効果的です。しかし、そのほかの場合には、精密検査を行い、クレアチニンが高い原因に対する治療が必要です。一般的に、急激に腎機能が悪化した場合、その原因(腎炎や薬剤性など理由はさまざまです)に沿って治療をすれば改善します。しかし、慢性的に腎機能が進行した場合、腎機能を元に戻すことは難しく、腎機能がこれ以上悪化しないための治療が主体です。そのため、腎障害が早期に発見できるほど、末期腎不全への進行を予防できるのです。慢性的に腎障害が進行する原因もさまざまであり、高血圧や糖尿病、腎炎など多岐にわたります。
クレアチニンが低い場合のリスクと対策
クレアチニンが低い場合には問題ないのでしょうか?クレアチニンは筋肉量に影響されるため、筋肉の疾患の合併が考えられます。低い原因にも、気をつけなければなりません。
クレアチニンが基準値より低いとどうなる?
クレアチニンが低くなる原因には、筋肉量の低下が挙げられます。長期臥床の方や、運動量が減っている高齢者ではクレアチニンが低くなることがあります。小柄な方はもともと筋肉量が少ないため、低めとなりがちです。また、筋肉の病気である筋ジストロフィーなどでは筋力低下をきたし、クレアチニン値が低くなります。
健康診断でクレアチニンが低いと言われたら?
クレアチニンが低い場合、多くは筋肉量が少ない可能性があります。運動不足がある場合には、普段の生活に運動を取り入れましょう。しかし、立ち上がりにくい、運動しづらさなどがある場合には筋肉疾患の可能性もあります。脳神経内科を受診しましょう。
クレアチニンを上げる方法は?
運動量が少ないために、筋肉量が減っている場合には運動が有効です。体格が小さいなど、通常の運動量でも筋肉量が標準より少ない人は、無理にクレアチニン値を上げる必要はありません。
健康診断のクレアチニンの見方と基準値・再検査が必要な数値・診断結果
ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
健康診断・血液検査の「クレアチニン・血清クレアチニン値・eGFR」の基準値と結果の見方
クレアチニンの基準値は、以下のようになっています。
基準範囲 | 要注意 | 異常 | |
---|---|---|---|
男性 | 1.00以下 | 1.01-1.29 | 1.30以上 |
女性 | 0.70以下 | 0.71-0.99 | 1.00以上 |
(単位 mg/dl)
クレアチニンは男女により基準値が異なります。上記の基準をふまえて異常値の場合には、病院を受診しましょう。
クレアチニンのみでは、軽度の腎機能低下が見逃されてしまうため、eGFRでも評価します。
eGFRの基準値は以下のようになっています。
基準範囲 | 要注意 | 異常 |
---|---|---|
60.0以上 | 45.0-59.9 | 44.9以下 |
(単位 mL/分/1.73㎡)
eGFRはクレアチニン値を性別や年齢別に補正し、計算します。数値が低いほど腎機能が低下していることを示します。クレアチニン値と比較し、より精度が高いとされています。クレアチニンが基準値内であってもeGFRで60 mL/分/1.73㎡未満となる場合には腎機能が低下している可能性が高いため、一度内科を受診しましょう。しかし、このeGFR値もその年齢での平均値での補正のため、筋肉量が極端に異なる人では正確な値が出ません。この場合には、畜尿して検査をするクレアチニンクリアランスやシスタチンCなどの検査で腎機能を評価することもあります。
健康診断・血液検査の「クレアチニン・血清クレアチニン値・eGFR」の異常値・再検査基準と内容
クレアチニン、eGFRの項目で異常が出た場合は、再度クレアチニン、eGFRを測定し直します。これは、腎機能低下が一時的なものか、進行性のものなのかを見極めるためです。再検査は、結果が異常であればなるべく早く受診した方が良いでしょう。受診すべき科は腎臓内科ですが、まず一般内科で再検査をし、異常があれば腎臓内科を紹介してもらうこともできます。
再検査で異常があれば、腎機能低下の原因を精査します。腹部エコーで腎臓の形態(結石、のう胞などの合併の有無、腎臓が萎縮していないかなど)をチェックし、尿検査で腎炎の合併がないか、採血検査で腎炎を起こす疾患がないか、腎機能に影響する病気が隠れていないかをさらに詳しく検査します。
検査費用はおおむね下のようになります。(内容により異なることもあります。)
尿検査・沈査 約160円程度
腹部エコー 約1,600円程度
採血検査 約1,400円程度
健康診断・血液検査の「クレアチニン」の異常で気をつけたい病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「クレアチニン」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病とは、尿蛋白異常や糸球体濾過量60mL/min/1.73㎡未満が3か月以上持続している状態を指します。日本の慢性腎臓病罹患率は成人で8人に1人と言われ、高齢者ほど高率になります。原因としては、腎炎を含め多岐にわたりますが、近年は糖尿病、高血圧、喫煙、高尿酸血症など生活習慣病に伴うものが多いです。治療法としては、原因を治療することが大切であり、高血圧や糖尿病をしっかりコントロールすることで進行を防ぐことができます。健康診断などの採血でeGFRが60mL/min/1.73㎡未満となった場合には腎臓病が疑われます。早めに病院を受診しましょう。慢性腎臓病は腎臓内科の受診をお勧めしますが、まずは内科を受診し、再検査でも腎臓病が疑われたら、腎臓内科へ紹介してもらうこともできます。
筋ジストロフィー
筋ジストロフィーとは、骨格筋の構造や機能の維持に必要な蛋白質の遺伝子に変異が生じたことにより起こる遺伝性の病気です。筋肉が障害され、筋力低下や、機能障害が起こります。現時点でこの病気に対する根本的な治療薬はなく、新しい治療薬の開発が行われています。筋ジストロフィーは単に筋肉の障害のみではなく、筋肉が障害されることによって症状が進行すると、嚥下機能や心機能、呼吸機能など、多岐にわたる障害がみられます。クレアチニン値が低い、筋肉の障害に伴いクレアチニンキナーゼが高値、筋力低下、転びやすいなど筋肉の症状がある場合には、脳神経内科への受診をお勧めします。
「クレアチニン」が高い時、低い時の正しい対処法・改善法は?
クレアチニンが高い時には、腎臓病が疑われ、受診した上で原因に対する治療が必要になります。一般的に腎不全に対しての食事は、減塩・低蛋白食が勧められます。しかし、食事制限の必要性や、生活の制限などは腎臓病の原因、進行具合により異なります。安易に、「腎臓に良い」「クレアチニンを下げる」というような食事やレシピに飛びつかないようにしましょう。いずれの病態にしても、ストレスをためず、睡眠を良く取り生活リズムを整えることは非常に大切です。
一方、クレアチニンが低い時には、筋肉量が低下している可能性があります。筋肉疾患がない場合には、食事や運動で筋肉量を増やすことが勧められます。特に高齢者は、「サルコペニア」という全身の筋力低下による身体機能の低下が起こりやすいと言われています。これは、適切な運動と充分な蛋白摂取が勧められます。サルコペニアを合併すると認知症も進行しやすくなります。食事、運動の見直しを行いましょう。
「クレアチニン」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「クレアチニン」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
健康診断でクレアチニンが高い人は腎臓病の危険性がありますか?
伊藤 陽子 医師
クレアチニンが高い場合、腎臓病の可能性があります。自覚症状がなくとも、早めに再検査を受けましょう。
クレアチニンを下げる食事はありますか?
伊藤 陽子 医師
クレアチニンを下げる食事やサプリは、残念ながらありません。クレアチニンが上がって、腎障害があるのであればその原因に沿った治療をしましょう。
クレアチニンとクレアチニンクリアランスの違いはなんですか?
伊藤 陽子 医師
クレアチニン値は単純に血液中のクレアチニンの値を示し、腎臓機能の評価として用います。しかし、腎機能が半分以下程度に悪化するまで上昇しないため、初期の腎障害の評価としては不十分です。
一方、クレアチニンクリアランスとは、クレアチニンの腎臓での排泄能力を計算するものでより正確に腎機能を評価できます。しかし、一定時間の畜尿が必要であり、なかなか外来で行うことが困難です。
クレアチニンクリアランスの計算方法を教えてください。
伊藤 陽子 医師
クレアチニンクリアランス(mL/min/1.73㎡)=(尿Cr(mg/dL)×24時間尿量(mL))/(血清Cr(mg/dL)×1440(min))×1.73/体表面積(㎡)
となります。正常値はおおよそ100mL/min/1.73㎡です。
クレアチニンが高いのは水分不足でしょうか?
伊藤 陽子 医師
クレアチニンが高い場合には、水分不足の可能性もあります。しかし、腎機能の低下による場合もあり必ず再検査をしましょう。
まとめ 「クレアチニン」の異常は腎臓病に注意!
クレアチニンの異常は腎臓の病気のサインであることが多いです。腎臓は『沈黙の臓器』と呼ばれ、末期腎不全まで症状が出ないため注意が必要です。腎臓の病気を放置すると、元に戻りづらく進行して透析が必要となることもあります。早期発見、治療が非常に重要です。クレアチニンの異常が出たら、早めに受診して治療をしましょう。
「クレアチニン」の異常で考えられる病気
「クレアチニン」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器系の病気
腎臓循環器系の病気
- 腎臓病
クレアチニン値が高い時には腎臓病が最も疑われます。早めに病院を受診して精密検査を受けましょう。