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健康診断で「血圧が高い」と言われたら?医師が病気のリスクなど徹底解説!

 公開日:2023/07/28
健康診断で「血圧が高い」と言われたら?医師が病気のリスクなど徹底解説!

健康診断で血圧が高いと言われたらどうすべき?Medical DOC監修医が数値の見方や基準値・主な原因と病気のリスク・対処法などを解説します。

村上 友太

監修医師
村上 友太(東京予防クリニック)

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医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。

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健康診断・病院で「血圧が高い」と診断されたときに考えられる原因と対処法

健康診断などで血圧が高いことを指摘されても、「症状がないのでまあ良いかな」と軽く考えてこれまでの生活と何も変わらず過ごしている方は多いのではないでしょうか。血圧は日々変動しますし、1日の中でも変動するので、一時的な血圧の値だけで判断し切れるものでもありません。しかし、平均して血圧が高い状態が続くことは、さまざまな病気の発症率を高めるため、望ましくありません。この記事では、高血圧の原因や、高血圧によって発症しやすい病気、日常生活での気を付けるべきポイントなどについて解説していきます。

血圧が高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

高血圧はいわゆる「生活習慣病」の一つです。
高血圧には、本態性高血圧と二次性高血圧があります。
本態性高血圧は食塩の過剰摂取、肥満、喫煙、運動不足、ストレス、更には体質といった要因が組み合わさって起こります。
二次性高血圧は、心血管病や腎臓疾患、甲状腺異常、副腎の病気などが原因で起こります。
高血圧の予防に最も有効なのは食塩摂取量を制限することです。日本高血圧学会は、高血圧患者における減塩目標を1日6g未満にすることを推奨しています。野菜や果物、大豆類などに多く含まれるカリウムは腎臓からの食塩排泄を促す効果があります。牛乳や乳製品に多く含まれるカルシウムも血圧を安定させる効果があります。日頃から食生活に気を付けることが高血圧の予防につながります。適度な運動、十分な睡眠、過剰の飲酒を避ける、ストレス軽減に努めることが大事です。

40代で血圧が高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

中年層である40代にみられる高血圧の原因の多くは、肥満、運動不足、ストレス、食塩の過剰摂取、節度を超えた飲酒などの本態性高血圧が考えられます。
特に、男性では肥満を伴う高血圧が多く、加えて内臓肥満型である例も増加してきます。このような高血圧は血糖値、尿酸値にも影響が出やすく、メタボリックシンドロームへ進行する原因ともなります。睡眠時無呼吸症候群もこの年代から増加してきます。日常生活を見直し、適度な運動やダイエット、ストレス軽減に努め、食生活にも注意しましょう。
女性では、閉経期である40代以降エストロゲンなどの女性ホルモンの減少が影響して高血圧傾向となります。女性ホルモンの補充により改善することもあるので、心当たりがある場合は医療機関を受診することも検討しましょう。

高齢者で血圧が高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

加齢によって血圧は上がりやすいため、高齢者では高血圧である割合が高くなります。年齢とともに全身の血管の動脈硬化が進み、血管の弾力性が低下します。この弾力性が失われると血流が悪くなって、血管壁にかかる圧力が高くなるということが高血圧の原因です。
また、加齢により自律神経の機能が低下すると血圧を一定に保つ機能も低下し、高血圧傾向のみならず血圧変動が大きくなり時に血圧低下を招くこともあります。この血圧の変動が大きい状態は、脳卒中や心筋梗塞などの命に関わる病気のリスクが高くなります。
規則正しい生活とバランスの整った食生活を心がけ、習慣的に適度な運動を行うことも効果的です。血圧を日々測定して、高血圧が続く、または変動が激しい場合は早めに医療機関を受診しましょう。

10代や20代で血圧が高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

10代や20代の若年者にも血圧が高い場合があります。この場合の多くは、腎疾患や甲状腺、副腎の病気による二次性高血圧です。考えられる病気には、腎実質性高血圧、原発性アルドステロン症、腎血管性高血圧、甲状腺機能亢進症、睡眠時無呼吸症候群などがあります。特に慢性腎臓病では半数以上が高血圧を合併すると言われています。
二次性高血圧の特徴として、重症であることが多い、降圧剤の効果が出にくい、急激に高血圧を発症する、血圧の変動が激しいなどが挙げられます。血圧を下げる薬を内服してもなかなか血圧が下がらない場合などは、あらためて医師に相談してみてください。

産後に血圧が高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

産後の産褥期は血圧が上がりやすい状態がしばらく続きます。出産時の出血、赤ちゃんのお世話という生活環境の変化、眠れない、疲労、食生活の乱れなどが原因です。通常は産後1か月を経過すれば血圧は落ち着いていきます。産後の血圧を下げる方法としては、まず食生活の工夫が必要です。過剰な塩分摂取を控えること、野菜やフルーツなどカリウム、食物繊維を多く含むものを摂ることが大事です。生活習慣の改善、特にウォーキングなどの軽い有酸素運動は効果的です。むくみを伴う場合はマッサージを受けることなども有効です。

健康診断の「血圧」の見方と精密検査・再検査が必要な「高血圧」に関する数値・結果

ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

「血圧」の基準値

正常血圧の定義は、診察室では120/80mmHg以下、家庭血圧では115/75mmHg以下とされています。
高血圧は、140/90mmHg以上、自宅で測定する家庭血圧では、それより低い135/85mmHg以上とされています。
140/90mmHg以上の高血圧状態が長く続くと、脳卒中や腎不全、心筋梗塞、更には認知症の発症率も上がると言われています。

判定 血圧
正常値 診察室:120/80mmHg以下
家庭血圧:115/75mmHg以下
高血圧 診察室:140/90mmHg以上
家庭血圧:135/85mmHg以上
脳卒中・腎不全・心筋梗塞・認知症の発症率上昇 140/90mmHg以上

「血圧が高い」ときの再検査内容

高血圧と診断された場合、まず行うのは、血液検査や尿検査、心電図検査、胸部レントゲン検査などです。
血液検査では、糖尿病や脂質異常症、腎機能低下、ホルモン異常の有無などを評価し、尿検査では、腎臓病やホルモン異常、感染症の有無などを評価します。
心電図検査では、心筋梗塞や不整脈、心肥大などの有無などを評価し、胸部レントゲン検査では、心肥大、心不全などの胸部病変の有無などを評価します。
これらの検査に加えて、心エコー検査(心臓のポンプ機能、弁膜症や心肥大などの異常の有無の評価)や全身のCT、MRI検査(ホルモン異常をきたすような腫瘍性病変の有無の評価)を行うこともあります。
高血圧を指摘されたとしても、通常は緊急で医療機関を受診する必要はありませんが、高血圧状態が長く続くとさまざまな合併症を引き起こすので、なるべく早めの内科への受診を心がけましょう。明らかな原因疾患がなく、本態性高血圧と診断されれば生活習慣、食生活の見直しを行い、必要があれば血圧を下げる薬が処方されます。二次性高血圧と診断された場合は血圧を下げる薬を使いながらその原因疾患に対する治療が行われます。

「血圧が高い」で考えられる病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「血圧が高い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

高血圧症

本態性高血圧症は前述の通り、食塩の過剰摂取、肥満、喫煙、運動不足、ストレス、更には体質といった要因が組み合わさって起こります。特に日本人の約40%は食塩感受性高血圧であり、塩分の過剰摂取に敏感に反応して血圧が上がりやすい傾向にあります。減塩食は血圧管理に大変重要ですので、日ごろから注意しましょう。その他の原因は基本的に生活習慣を見直し、適度な運動、禁煙、ストレス緩和による体質改善が効果的です。このような対策を行っても血圧が140/90mmHgを下回らない場合は、内科や循環器内科に相談することを検討しましょう。

脳卒中

脳卒中とは、脳の血管が詰まる(閉塞する)詰まってしまう病態(脳梗塞)と脳の血管が破れてしまう病態(脳出血やくも膜下出血)との両方をまとめた病名です。
高血圧が長く続くと、動脈硬化が進行しやがて血管が細くなります。その結果、脳の血管が閉塞すると脳梗塞を、血管が破れると脳出血、脳血管に袋状のコブができ、これが破裂するとくも膜下出血を発症する危険性が高くなります。
脳卒中を発症すると、手足の麻痺やしびれ、言語障害、重篤な場合は意識を失い、命に関わることもあります。通常、これらの症状は突然発症するため、そのような場合は脳神経内科や脳神経外科のある病院を受診することが大事です。症状が改善するかどうかは時間との勝負になるので、脳卒中を疑う場合には救急車を呼んで受診してください。特に脳梗塞は発症から治療までの4.5時間以内であれば、詰まった血栓を溶かす強力な血栓溶解薬を使用できますし、脳血内カテーテル治療で詰まった血管を再開通させることも可能です。
まずは、血圧を下げて発症リスクを少しでも下げることが重要です。また、動脈硬化を進ませる脂質異常症や糖尿病といった生活習慣病の予防も大切です。

心筋梗塞

心筋梗塞とは、心臓に栄養分を運ぶ血管(冠動脈)が詰まり血流が滞ることで、心筋細胞が壊死してしまう病気です。
高血圧状態が長く続くことにより動脈硬化が進行し、冠動脈が徐々に細くなった結果、心臓への血流が一時的に悪くなって狭心症を発症します。さらに進行して冠動脈が完全に閉塞すると心筋梗塞を発症します。
心筋梗塞はひとたび起こるときわめて危険な状態となりますので、一刻も早く循環器内科のある病院を受診してください。発症から治療開始までの時間が早ければ心臓カテーテル治療で閉塞した冠動脈を再び開通させることができ、壊死に陥る心臓の組織を最小限に留めることができます。

「血圧が高い」ときの正しい対処法・改善法は?

血圧の値は、運動時など体を動かすときにはもちろんのこと、安静時にも日々変動するので、その時の値によって一喜一憂する必要はありません。

血圧が一時的に高い時は、心身ともにゆっくり休んでリラックスすると良いでしょう。ゆっくり深呼吸をすることも効果的です。
少し血圧が高いからといって、病院を緊急受診する必要はありませんが、頭痛やめまい、ふらつき、動悸など自覚症状を伴う場合には、なるべく早く病院を受診するのが良いと思います。自分で歩くことができない場合は迷わず救急車を呼んでください。

食事療法において欠かせないのは減塩で、1日の摂取量は6g未満にすることが推奨されています。そこで大切になるのが、塩分の少ない食べ物を選んで食べることですが、同時に塩分を体外へ排出する効果のあるカリウム、血管が収縮して血圧が高くなるのを防ぐカルシウム、マグネシウムといったミネラルを含む食材を食べると血圧が下がりやすくなります。野菜や果物、豆・大豆加工品はカリウムをはじめ多くのミネラルを含むと同時に、食物繊維も多く含むため、動脈硬化の進行を防ぐ効果が期待できます。ヨーグルトはカルシウムを多く含み、塩分無添加のナッツはミネラル、食物繊維に加えて動脈硬化を防ぐビタミンEと不飽和脂肪酸も多く含まれており、高血圧予防にとても効果的です。

十分な睡眠をとることやストレスを緩和してリラックスできる環境を整えることも血圧低下に効果的です。特に中年期の男性では、睡眠時にいびきの症状が進み、呼吸が低下、あるいは一時的に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群の有病率も高く、高血圧の一因となっています。日本における有病者は300万人以上で決して珍しい病気ではありません。心当たりがあれば一度内科や耳鼻咽喉科、睡眠科などで相談すると良いでしょう。ストレス過多の状態では、自律神経の調節障害から交感神経が過度に興奮した状態となり、血圧が上昇します。自分に合ったストレスを発散する方法を試しましょう。深呼吸やストレッチで緊張をほぐす、親しい人との会話などで楽しく笑うのも効果的です。

「血圧が高い」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「血圧が高い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

健康診断で高血圧を指摘されたらどんな健康リスクがありますか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

高血圧が長期間持続すると動脈硬化が進み、脳では脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳卒中、心臓では狭心症や心筋梗塞の発症リスクが上がります。また、脳血管障害は将来的な認知症のリスクも上がると言われています。

血圧140以上はどのくらい高いと危険な状態でしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

高血圧を放置すると脳卒中の発症率が高まります。血圧が140/90mmHgを超えると3倍に、180/110mmHgを超えると8倍にまで増加するといわれています。

血圧が高いのですがおすすめの食事や飲み物はありますか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

カリウム、マグネシウム、カルシウム、ビタミン類、食物繊維を多く含む食事が効果的です。野菜やキノコ、海藻類、大豆類を使った食事がお勧めです。反対に練り製品、佃煮、漬物は食塩を多く含むためなるべく控えましょう。

ストレスが原因で血圧が高くなることはありますか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

ストレスで血圧が高くなることがあります。緊張状態では交感神経という自律神経系の過度の緊張を引き起こし、血管が収縮して血圧が上がります。

血圧が高いときはお風呂に入らない方がいいですか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

お湯の温度が42度を超えると、交感神経系が有意になり、更に血圧が上昇しやすくなるので、高血圧の方は熱すぎるお湯は避けることをお勧めします。38度~40度くらいのぬるめのお湯に10~15分程度つかり、副交感神経系を優位にすることで血管が拡張して血流が増え、血圧が下がります。

まとめ 健康診断で血圧が高いと言われたら塩分の摂取量を気にする食習慣を!

健康診断で高血圧を指摘されたら、まずは生活習慣や食生活を見直しましょう。生活習慣病、メタボリックシンドロームを防ぐことが高血圧の改善に効果があります。
食生活では特に塩分制限が重要ですが、減塩食、いわゆる薄味には一般的に10日間程度で慣れてしまうので、ぜひ実践してください。
高血圧に加えて、頭痛、めまい、ふらつき、動悸、更には手足のしびれなどが出現した場合は、脳や心臓の病気も疑われるので、迷わず医療機関を受診しましょう。

「血圧が高い」で考えられる病気

「血圧が高い」から医師が考えられる病気は15個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器内科の病気

婦人科の病気

  • 更年期高血圧
  • 妊娠高血圧
  • 産褥期高血圧

内分泌内科の病気

脳神経内科の病気

  • 薬剤誘発性高血圧(消炎鎮痛薬、甘草、ステロイド、交感神経刺激薬など)

本態性高血圧の場合には生活習慣の見直しなどが重要ですが、二次性高血圧の場合には背景にある病気の治療が必要となるので、どちらの高血圧に該当するのか、一度検査をしておくと良いでしょう。

この記事の監修医師