失明を防ぐための「眼科ドック」とはどんな検査? 40代から必要な理由を医師が解説

人間ドックやがん検診など、日本では「命を守る健診」が広く普及してきました。一方で、日常生活の質(QOL)を大きく左右する「視覚」の健康は、後回しにされがちです。視覚は私たちが得る情報の80%以上を占める重要な感覚であり、失われると人生そのものが大きく変わります。失明リスクのある病気を早期に見つけ、「見える未来」を守るため、昨今注目されているのが「眼科ドック」です。今回は、眼科ドックの必要性と役割について、眼科ドック東京品川の眞鍋先生にお話を伺いました。

監修医師:
眞鍋 洋一(眼科ドック東京品川(presented by Mayo eye clinic))
眼科ドックとは? 人間ドックでは見逃されやすい「視覚」の検査

編集部
はじめに「眼科ドック」とはどのようなものか教えてください。
眞鍋先生
前提として、日本には「人間ドック」という独自の健診文化があります。じつは人間ドックは1954年に始まり、70年以上の歴史があるのですが、この仕組みは世界的に見ても日本特有のものなのです。その間に人間ドックは、脳ドックやがんドックなど、より専門的な分野へと細分化・進化してきました。現在では、保険診療の健診だけでなく、自由診療による高度なスクリーニング検査や画像診断も数多く存在しています。日本は、まさに世界でも類を見ない“健診大国”と言えるでしょう。
編集部
人間ドックなど、自由診療の検査ではどのような点が重視されてきたのでしょう?
眞鍋先生
これまで重視されてきたのは、やはり「命に直結する病気」ですね。脳やがん、心臓血管疾患など、生命に関わる分野が中心でした。日本人は命や健康に対する意識が非常に高く、こうした分野の知識も世界的に見て高水準です。しかし、重要なのは「命に関わるかどうか」だけでなく、「その病気が人生や生活にどれほど大きな影響を与えるか」です。
編集部
具体的には、どのような影響でしょうか?
眞鍋先生
人間の体は大きく分けて、「生命維持に関わる器官」「外部からの信号を受け取る器官」「体を動かす器官」に分類できます。これまで注目されてきたのは生命維持に関わる器官ですが、外部からの信号を受け取る「感覚器官」も、生活の質に直結します。
編集部
感覚器官というと五感ですね。
眞鍋先生
はい。視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚といった五感の中でも、じつは視覚が占める割合は非常に大きく、情報の80%以上を視覚から得ているとされています。視覚を失うということは、それまで当たり前だった日常の80%が大きく変わってしまうことを意味します。生命維持には直結しなくても、人生への影響は計り知れません。
編集部
そこで眼科ドックが重要になるのですね。
眞鍋先生
その通りです。感覚の中でも圧倒的に重要な「視覚」を守るための専門的な検査が眼科ドックです。一般的な人間ドックでは、眼科検査は入口部分にとどまり、詳細な評価まではおこなえません。しかし、眼科ドックでは多岐にわたる精密検査を通じて、視覚を長期的に守ることを目的としています。
眼科ドックでは何を調べる?検査内容と流れを解説

編集部
眼科ドックでは、具体的にどのような検査をおこなうのでしょうか?
眞鍋先生
眼科ドックは、一般の眼科で通常診療と並行しておこなわれる場合もありますが、検査内容は施設によって異なります。一般的には、緑内障や網膜疾患、白内障など、代表的な病気を調べる検査が中心です。施設によっては、より全方位的で精密な検査をおこないます。
編集部
眼科ドックを受けた後、日常生活の注意点はありますか?
眞鍋先生
施設によっては眼底を詳しく見るために「散瞳」という処置をおこなうこともあります。瞳孔を強制的に開くことで、まぶしさやピントが合わないといった症状が出ます。数時間で回復しますが、その間は車の運転ができず、細かい作業も困難になります。
編集部
検査の負担は大きいのでしょうか?
眞鍋先生
眼科検査は非常に進歩しており、短時間かつ低負担で高精度な検査が可能です。視力検査のような自覚的検査だけでなく、構造的な検査や、組織レベルを可視化する先進的な画像検査もおこないます。
編集部
眼の病気は失明につながるものも多いのでしょうか?
眞鍋先生
そうですね。緑内障や白内障だけでなく、角膜や網膜の病気でも失明は起こり得ます。また、失明に至らなくても、視力低下を招く病気は非常に多いです。眼をはじめ、感覚器官の病気は、初期には自覚症状がないことがほとんどです。眼も同様で、早期に発見できれば、進行を止めたり抑えたりできる病気が多くあります。「見えていること」を当たり前だと思わず、その状態を守ることが、人生を長く豊かにすることにつながります。
代表的な失明リスク「緑内障」と「白内障」

編集部
日本で最も多い失明原因について教えてください。
眞鍋先生
日本の失明原因で一番多いのは緑内障です。名前から誤解されがちですが、眼が緑になる病気ではありません。視野の一部が欠けていく病気で、隅角と呼ばれる部分の異常によって眼圧が変化し、視神経が障害されることで発症します。40代以降から増え始め、70歳以上では10%程度、80歳以上では11%程度の方が発症しているとされています。進行すると視野は元に戻らないため、早期発見が非常に重要です。
編集部
緑内障の治療は可能なのでしょうか?
眞鍋先生
失われた視野を回復させることはできませんが、点眼治療で進行を抑えることは可能です。最近は目薬の進歩が著しく、初期に見つかれば良好にコントロールできます。しかし、緑内障は自覚症状がほとんどないことが特徴で、多くの方は健診など「偶然の受診」で発見されます。だからこそ、眼科ドックのような専門的な検査が重要なのです。
編集部
ほかにも眼科ドックで早期発見が重要な病気はありますか?
眞鍋先生
ほかには白内障があります。多くは加齢によって発症しますが、早ければ40代で発症することもあります。80歳ではほぼ100%の方に何らかの白内障が認められます。白内障手術は非常に進歩して確立されているため、日本での白内障による失明率は低いですが、世界的には今でも失明原因の第1位とされています。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
眞鍋先生
白内障や緑内障は、進行がゆっくりで見え方に慣れてしまうことが多く、違和感があっても「歳のせい」「疲れ目」と思い込み、受診が遅れがちになります。白内障も緑内障も、早く見つけるほど価値があります。40歳を過ぎたら、症状がなくても定期的な眼科ドックを受け、「見える未来」を守っていきましょう。
編集部まとめ
日本では命に関わる病気の健診が重視されてきましたが、人生の質(QOL)を大きく左右する「視覚」の健康は後回しにされがちです。緑内障や白内障は自覚症状がほとんどないまま進行し、気づいたときには視機能が損なわれていることも少なくありません。眼科ドックは、こうした目の病気を早期に発見し、将来の「見える生活」を守るための有効な手段です。40歳を過ぎたら、症状がなくても定期的なチェックを検討してみてはいかがでしょうか。
医院情報
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| 診療科目 | 眼科 |



