バナナは肝臓に悪い食べ物って本当? 専門家が科学的根拠を徹底解説

「バナナは肝臓に悪いって聞いたけど本当?」「脂肪肝でも食べて大丈夫?」そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。バナナは手軽で栄養価の高い果物ですが、糖質を多く含むため、肝臓への影響が気になるという声もあります。特に脂肪肝や肝硬変など、肝臓に不安を抱えている方にとっては摂取量や食べ方が重要になることも。今回は「バナナは肝臓に悪い食べ物なのか?」について、「SUGAR」の佐藤将人先生に詳しく解説していただきました。
目次 -INDEX-

監修医師:
佐藤 将人(SUGAR LLC)
バナナの糖質と肝臓への影響:過剰摂取のリスクとは?

編集部
「バナナは肝臓に悪い食べ物」と聞いたことがあります。本当なのでしょうか?
佐藤先生
バナナは食べすぎた場合、肝臓に悪い食べ物になることがあります。しかし、適量を守るなど賢くバナナを食べればむしろ脂肪肝を改善するかもしれない食べ物でもあります。
編集部
バナナを食べ過ぎると、肝臓にどのような影響があるのですか?
佐藤先生
バナナを過剰に摂取すると、含まれる糖質によって体脂肪が増加し、肝臓に脂肪が蓄積するリスクがあります(1,2)。これが続くと、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症や進行のリスク因子となる可能性があります(3)。特に、バナナだけで食事を済ませたり、一度に大量に食べたりすると、脂肪肝を引き起こしやすいとされています(4)。
編集部
バナナに含まれる食物繊維は、糖の吸収にどのような影響を与えますか?
佐藤先生
バナナには食物繊維も含まれており糖の吸収速度を緩やかにし、血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できます(5,6)。成熟したバナナ(約100g)あたりには約1.1gの食物繊維が含まれています。しかし、食物繊維が含まれているからといって、大量に摂取すれば血糖値を急上昇させる可能性も否定できません。
肝疾患がある場合のバナナ摂取:脂肪肝や肝硬変ではどうする?

編集部
脂肪肝(NAFLD/NASH)と診断された場合、バナナは食べてもよいのでしょうか?
佐藤先生
脂肪肝だからといって、バナナが完全に禁止されるわけではありません。しかし、摂取量には注意が必要です。脂肪肝の人がバナナを食べる場合、1日に1〜2本程度に留め、食べすぎないように気をつけることが推奨されています(7)。1日1〜2本に留めたほうがいい理由は、バナナに含まれる糖質が肝臓で脂肪に変換されやすく、過剰摂取がさらなる脂肪蓄積を招く可能性があるためです。
編集部
肝硬変の場合、バナナは食事に取り入れても問題ありませんか?
佐藤先生
肝硬変の患者さんの食事においても、バナナは適量であればバランスの取れた食事の一部として普段の食事に取り入れても問題ありません(7)。ただし、これは腎機能障害によるカリウム制限など、ほかの禁止されている事項がない場合に限ります。ある肝硬変の患者さんに向けた献立例では、1日の果物摂取目安量約150gの中に「バナナ1本またはみかん2個」が含まれており、管理された範囲内なら問題ないとされています。
編集部
ウイルス性肝炎(B型肝炎やC型肝炎)の場合、バナナ摂取で気をつけることはありますか?
佐藤先生
B型肝炎やC型肝炎といったウイルス性肝炎の場合も、一般的には肝硬変と同様に、適度な量のバナナ摂取が許容されます。あるB型肝炎管理に関する資料の献立例には「バナナ1本(100g程度)」が含まれています。重要なのは、個々の状態や全体的な食事計画、併存疾患を考慮し、専門家の指導のもとで摂取することです。
バナナを賢く摂取するコツ:適量と日中の摂取、グリーンバナナがおすすめ

編集部
健康な人がバナナを食べる場合、1日の適量はどのくらいですか?
佐藤先生
健康な肝臓および腎臓機能を持つ人にとって、適量や上限の量は定義されていません。しかし、一般的な目安として、バランスの取れた食事の一部として1日に小さめから中くらいのバナナ1本程度が妥当と考えられます。重要なのは、バナナを含むあらゆる単一の食品源からの過剰なカロリーや糖質の摂取を避けることです。
編集部
バナナを食べるタイミングは、いつがよいのでしょうか?
佐藤先生
血糖値を特に気にしている人の場合などでは、身体活動が活発な朝や日中にバナナを摂取することが望ましいです。理由は、活動量の多い朝食や昼食に取り入れることで、摂取した糖質がエネルギーとして利用されやすく、脂肪として蓄積されにくいとされているためです。夜間など活動量が少ない時間帯に摂取すると、消費されなかった糖質が体脂肪として蓄積されやすくなる可能性が考えられます(8)。
編集部
バナナの適量や食べるタイミング以外に、賢くバナナを摂取するコツはありますか?
佐藤先生
バナナの熟度に着目することも、賢い摂取方法の一つです。特に、まだ青みが残っているグリーンバナナには、「レジスタントスターチ(難消化性デンプン)」という成分が豊富に含まれていて脂肪肝の予防に役立つ可能性が注目されています(9)。完熟したバナナに比べて糖質が少なく、食後の血糖値の上昇も穏やかにする傾向があります。もし、食感や風味が苦手でなければ、完熟バナナの代わりにグリーンバナナを選んでみるのもおすすめです。
編集部まとめ
「バナナは肝臓に悪い」という主張は過度の単純化であり、健康な人がバランスの取れた食事の一環として適量を摂取する場合には一般的に正確ではありません。バナナはカリウムやビタミンB6などの貴重な栄養素の供給源ですが、糖質も含むため過剰摂取には注意が必要です。特に肝疾患や腎機能に懸念がある場合は、医師や管理栄養士に相談し、個別の状況に合わせた摂取を心がけてみてください。
参考文献:
[1] Englyst HN, Kingman SM, Cummings JH. Classification and measurement of nutritionally important starch fractions. Eur J Clin Nutr. 1992;46 Suppl 2:S33-50. PMID: 1330528.
[2] Tappy L, Lê KA. Metabolic effects of fructose and the worldwide increase in obesity. Physiol Rev. 2010;90(1):23-46. doi:10.1152/physrev.00019.2009
[3] Jensen T, Abdelmalek MF, Sullivan S, et al. Fructose and sugar: A major mediator of non-alcoholic fatty liver disease. J Hepatol. 2018;68(5):1063-1075. doi:10.1016/j.jhep.2018.01.019
[4] Bhaswant M, Fanning K, Netzel M, et al. Cyanidin 3-glucoside improves diet-induced metabolic syndrome in rats. Pharmacol Res. 2015;102:208-217. doi:10.1016/j.phrs.2015.10.006
[5] Menezes EW, Dan MC, Cardenette GH, et al. In vitro colonic fermentation and glycemic response of different kinds of unripe banana flour. Plant Foods Hum Nutr. 2010;65(4):379-385. doi:10.1007/s11130-010-0190-4
[6] Falcomer AL, Riquette RFR, de Lima BR, et al. Health benefits of green banana consumption: A systematic review. Nutrients. 2019;11(6):1222. doi:10.3390/nu11061222
[7] Zelber-Sagi S, Salomone F, Mlynarsky L. The Mediterranean dietary pattern as the diet of choice for non-alcoholic fatty liver disease: Evidence and plausible mechanisms. Liver Int. 2017;37(7):936-949. doi:10.1111/liv.13435
[8] Wolever TM, Jenkins DJ, Ocana AM, et al. Second-meal effect: low-glycemic-index foods eaten at dinner improve subsequent breakfast glycemic response. Am J Clin Nutr. 1988;48(4):1041-1047. doi:10.1093/ajcn/48.4.1041
[9] Rosado CP, Rosa VHC, Martins BC, et al. Resistant starch from green banana (Musa sp.) attenuates non-alcoholic fat liver accumulation and increases short-chain fatty acids production in high-fat diet-induced obesity in mice. International Journal of Biological Macromolecules. 2020 Feb;145:1066-1072. DOI: 10.1016/j.ijbiomac.2019.09.199. PMID: 31730978.



