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薬剤師からの質問には多くの理由があった! 安全に薬を服用できるように薬剤師は何を調べているのか

 更新日:2023/03/27
薬局で薬剤師から細かく質問されるのはなぜ?

薬局に処方せんを持っていくと、薬剤師にいろいろと質問を受けることがあります。医薬品と全然関係のないことを質問されていると感じている方もいるかもしれません。今回は、薬剤師が患者さんにいろんなことを質問する理由について、鈴鹿医療科学大学薬学部准教授で薬剤師の榎屋さんに解説していただきました。

榎屋 友幸

監修薬剤師
榎屋 友幸(薬剤師)

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東邦大学薬学部薬学科卒業、横浜市立大学大学院総合理学研究科博士前期課程を修了。その後、三重大学医学部附属病院薬剤部に入局し、薬剤師として勤務しながら、研究を行い、2015年に医学博士を取得。2018年から鈴鹿医療科学大学薬学部の医薬品情報学研究室の准教授に着任。日本医療薬学会指導薬剤師、日本病院薬剤師会感染制御専門薬剤師、日本中毒学会クリニカルトキシコロジスト。

処方せんの用法用量が患者さんにとって適切であるかを確認している

処方せんの用法用量が患者さんにとって適切であるかを確認している

編集部編集部

用法用量が適切であるかを確認するために、どのようなことを患者さんに伺っているのでしょうか?

榎屋 友幸さん榎屋さん

用法用量が適切であるかを確認するために、体重や検査値を確認することがあります。医薬品の中には、体重に応じて細かく用量が決められている医薬品があり、成人であっても体格が小さい方では、通常よりも少ない用量で処方することがあります。特に小児であれば、体重に応じて用量を計算します。これらの理由から、体重を伺って処方せんに記載されている用量がその患者さんにとって適切であるかを確認しているわけです。

編集部編集部

検査値を確認する理由についても教えてください。

榎屋 友幸さん榎屋さん

検査値を確認する理由は、肝臓や腎臓の機能を確認するためです。服用して体の中に吸収された薬は、肝臓で代謝されたり、腎臓で排泄されたりして体内からなくなっていきます。そのため、肝臓や腎臓が悪いと、その機能に応じて用法用量を調整する必要があります。肝臓や腎臓の機能は、血液検査で推測できますので、病院で行われた検査結果を確認することがあります。

編集部編集部

肝臓や腎臓の機能が悪い場合は、どのような対応をするのでしょうか?

榎屋 友幸さん榎屋さん

1回で服用する量を減らしたり、1日2回服用するのを、1回の服用にしたりするなど、血液中の薬の濃度が高くならないようにして、副作用が起こらないように調節します。肝臓の機能を検査値だけで推測することは難しいこともあるため、肝臓で代謝されることで体内からなくなっていく薬は、血液中の薬の濃度を調べて用量を調整することがあります。ただし、検査で血液中の濃度を調べることができる医薬品は決められています。血液中の濃度を調べることができないけど、肝臓で代謝される医薬品もあるわけですが、そのような医薬品を肝臓の機能が悪い方が服用する場合、少ない用量から服用を開始して、副作用に一層注意しながら、慎重に経過を見ていくことになります。

編集部編集部

腎臓の機能はどのようにして推測しているのでしょうか?

榎屋 友幸さん榎屋さん

腎臓の機能は、性別、年齢、体重と血清クレアチニン値という血液検査の結果から計算することができます。計算で求められた値に応じて、用量が決められている医薬品があり、その場合は薬をお渡しする前に腎臓の機能を計算して、用法用量が適切であるかを確認します。腎臓の機能を確認するためにも年齢や体重を確認する必要があるわけです。

患者さんが安全に服用できるかを確認している

患者さんが安全に服用できるかを確認している

編集部編集部

安全に服用できるかどうかを確認するために、具体的にはどのようなことを確認しているのでしょうか?

榎屋 友幸さん榎屋さん

これから服用する医薬品で副作用やアレルギーが起こるかどうかを確認するために、これまでに経験した副作用歴、アレルギー歴を確認します。また、医薬品によっては、服用する上で注意が必要な病気があるため、既往歴や現在診断されている病気にどのようなものがあるかを確認します。女性の場合、妊娠していたり、授乳していたりする可能性があるため、妊娠の有無や授乳状況を確認します。医薬品によっては、同時に服用することで副作用を起こしやすくしたり、効果を弱めたりする医薬品や健康食品、食べ物などがあります。そのため、現在服用している医薬品だけでなく、積極的に摂取している健康食品や食べ物などを確認することもあります。

編集部編集部

医薬品によるアレルギーを経験した場合、異なる名前の医薬品を服用したときでもアレルギーを起こすことがあるのですか?

榎屋 友幸さん榎屋さん

名前が異なっていても、種類が同じ医薬品であれば、同じようにアレルギーを起こす可能性があります。特に抗菌薬では、名前が異なっていても種類が同じ医薬品が多く販売されています。抗菌薬には系統があり、同じような化学構造を持っている抗菌薬で、「ペニシリン系」などのようにグループが作られています。あるペニシリン系の抗菌薬でアレルギーを起こした場合、ほかのペニシリン系の抗菌薬を服用するとアレルギーが起こる可能性が高くなります。そのため、ペニリシン系の抗菌薬でアレルギーを起こした方は、違うペニシリン系の抗菌薬を服用する場合、できる限りほかの系統の抗菌薬に変更することを検討します。

編集部編集部

薬と飲み合わせが悪い健康食品や食品を一緒に服用することで、具体的にはどのようなことが起こるのでしょうか?

榎屋 友幸さん榎屋さん

例えば、セントジョーンズワートというハーブは、いくつかの薬の肝臓での代謝を早めることで、薬の効果を弱めてしまうことがあります。ほかにも、ビタミンKを摂取することで効きにくくなるため、ビタミンKを多く含有する健康食品や食べ物を控える必要がある医薬品もあります。このように医薬品の効果を弱めてしまった場合、必要以上に薬の量を増やしてしまい、副作用を誘発してしまったり、医薬品の効果が弱まることで病気が悪化したりすることがあり、非常に危険性が高いと考えられます。

患者さんの性格や生活状況などを伺い、医薬品を適切に服用できるかどうかを確認している

患者さんの性格や生活状況などを伺い、医薬品を適切に服用できるかどうかを確認している

編集部編集部

医薬品を適切に服用できるかどうかを確認するために、患者の性格について、どのようなことを確認するのでしょうか?

榎屋 友幸さん榎屋さん

患者さんが、これから服用する医薬品に対して、どのくらい関心があるかは重要な確認事項です。また、患者さん自身の病気について、どのくらい理解しているかも重要です。医薬品を服用するのは患者さん自身であり、患者さんが自分で病気を治していくことに意欲を持つことは、医薬品による治療がスムーズに進むかどうかの重要な要因となります。また、いくら意欲を持っていても、説明に対する理解が不十分であると、誤解が生じる可能性があります。薬剤師は、患者さんがどれくらい理解できているか、話を伺いながら確認しています。

編集部編集部

患者さんが薬を服用することに対して意欲を持っていなかったり、理解が不十分であったりする場合、どのような対応をするのでしょうか?

榎屋 友幸さん榎屋さん

患者さんに意欲を持たせるのは、非常に難しいことではありますが、自身の病気を治すうえで、処方された薬がどのような役目を持っているかを分かりやすく説明します。薬を飲まなかった場合、病気はどのように身体を悪くしていくのかを説明することもあります。何回も飲み忘れてしまうような患者さんには、ご家族の方などに協力していただくこともあります。

編集部編集部

生活状況についてはどのようなことを確認しているのでしょうか?

榎屋 友幸さん榎屋さん

患者さんの毎日の生活リズムを確認しています。また、仕事の内容によっては、生活リズムが不規則になったり夜型の生活習慣になったりすることもあると思いますので、仕事の内容についても確認することがあります。生活状況を確認することで、患者さんの生活リズムに合わせて、できる限り無理なく服用できるように用法を変更したり、違う薬に変更したりできる可能性があります。一番大事なことは、定期的に忘れることのないように、医薬品を適切に服用してもらうことですので、状況によっては医師と処方内容について再検討することもあります。また、服用後に眠気などを起こすことで自動車の運転や危険を伴う機械の操作を控える必要がある医薬品もありますので、そのような医薬品をこれから服用する患者さんには、特に注意して仕事の内容を確認することがあります。

編集部まとめ

薬剤師は、薬をお渡しする前に多くのことを確認していることが分りました。私たちには、薬剤師からの質問がどのような理由で薬に関係しているのか分からないこともあるかもしれませんが、薬を服用するうえで必要なことを質問していますので、安全に薬を服用するために、質問にしっかりと答えることが大切であると考えられます。

この記事の監修薬剤師