生理痛への対処法を詳しく解説|薬が効かない場合の対処法や考えられる病気もご紹介します
毎月訪れる生理ですが、その期間下腹部の痛み・腰痛・貧血・むくみなどの体調不良が起こる方は少なくありません。
生理痛には個人差があり、我慢できる軽い痛みから鎮痛剤が必要なほどの痛みまで様々です。
中には、吐き気を感じたり鎮痛剤を服用しても効果がイマイチ現れず、寝込んでしまう方もいらっしゃいます。
本記事では、生理痛への対処法を詳しく解説していきます。
さらに、薬が効かない場合の対処法や考えられる病気についてもご紹介しますので、生理痛に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
浅野 仁覚(医師)
目次 -INDEX-
生理痛の主な症状
生理痛は、剥がれ落ちた子宮内膜が血液とともに排出され、そのとき押し出すために子宮が収縮することで痛みが生じます。
子宮を収縮させる働きをしているプロスタグランジンが、必要以上に分泌されてしまうと子宮が強く収縮し痛みが増してしまうでしょう。
生理痛の症状は人によって異なりますが、身体の不調から心の不調まで様々な症状が出ています。生理痛の代表的な症状は下記の通りです。
- 下腹部痛
- 腰痛
- 頭痛
- 吐き気・むかつき
- 下痢
- 貧血
- むくみ
- 肌荒れ
- 気分の落ち込み
- イライラしてしまう
生理痛の症状は様々ですが、下腹部痛・腰痛・吐き気などは、多くの女性が一度は感じたことがある不調です。さらに、生理前から気分の落ち込みやイライラしてしまうなど、精神的な症状が現れる方もいます。
生理痛への対処法
生理痛の痛みやダルさには個人差があり、日常生活に支障が出るほどの痛みを訴える方も少なくありません。
生理中に不調を感じたら、原因に合わせた対処法を行うことが重要です。ここでは、ご自身で行える対処法について4つご紹介します。
身体を温める
生理痛がある場合は、身体を温めましょう。身体を温めることで血行が良くなり痛みを和らげてくれる効果があります。生理中は身体が冷えやすい状態になります。
そのため、下腹部痛や腰痛にはカイロや腹巻きなどでお腹を温め、入浴はシャワーだけでなく湯船にゆっくり浸かるようにしましょう。
生理痛の症状がひどいときは無理をせず、41〜42℃のお湯に15分程度足をつける足湯だけでも十分に身体を温められるのでおすすめです。
そして、生理痛を悪化させてしまう冷たい飲み物や食べ物は、控えるように心がけてください。
痛みを和らげる姿勢をとる
生理痛があるときは、どうしても姿勢が悪くなったり痛みがある部分をかばったりして身体が緊張してしまいます。
生理中、椅子に座るときは骨盤を立てて下腹部に負担をかけない座り方を意識しましょう。椅子に浅く腰掛けるのがポイントです。
寝るときの姿勢は、横向き寝をおすすめします。横向きになり身体と膝を少し丸めて、お腹周りが楽になるような姿勢にするのがポイントです。
生理中は身体が緊張しやすくなっているので、できるだけリラックスできる姿勢をとり、力を抜いて過ごしましょう。
適度な運動をする
生理中は軽いウォーキングやストレッチなど、適度に運動を取り入れるようにしましょう。
軽い運動を行うことで、全身の血流が良くなり生理痛を和らげてくれます。さらに、適度な運動はストレス解消の効果が期待できます。
しかし、生理中は貧血になりやすい身体になっているため、運動中や運動後は転倒や怪我に気をつけてください。
さらに、汗をかくときはムレによる肌トラブルにも注意してください。運動時でも、なるべくデリケートゾーンは清潔に保つことを心がけましょう。
アロマでリラックスする
アロマの香りには、リラックス効果やストレスを和らげる効果が期待できます。おすすめのアロマと効果は、次の通りです。
- ラベンダー(生理痛・貧血)
- ゼラニウム(生理痛・PMS)
- カモミール(生理痛・頭痛・冷え)
- ベルガモット(生理痛・ストレス)
- ローズ(血行促進)
アロマは、お風呂に入れて活用する方法がおすすめです。湯船に2〜3滴程垂らして浴槽に広がるアロマの香りでリラックスしましょう。
アロマは種類によっては、直接湯船に入れないほうが良いものもあるので、使用前にかならず確認してください。
生理痛を和らげたいときの食べ物での対処法
生理中は痛みや倦怠感の影響で、食事に気をつけることもめんどくさくなります。しかし、生理中の食事を工夫することで、徐々に生理痛を緩和してくれる効果が期待できるでしょう。
生理痛を少しでも緩和させるため、控えて欲しいもの・食べてほしいものをそれぞれ紹介していきます。
油っぽいものを避ける
生理のときは、チョコレート・ケーキ・揚げ物などの油っぽい食べ物を避けてください。
油っぽい食べ物には脂肪分が多く含まれており、女性ホルモンの代謝に関係している肝臓の機能を低下させる恐れがあります。
さらに、脂肪分を多く摂ることで痛みの原因であるプロスタグランジンの分泌を促すため、生理痛がひどくなってしまいます。
そのため、生理期間中は油っぽいものを避けるようにしましょう。
カフェインを控える
生理のときは、コーヒー・紅茶・ジュースなどに含まれているカフェインを控えるようにしましょう。
カフェインには血管を収縮させる作用があり、その影響で経血の排出をスムーズにできなくなり生理痛が悪化してしまいます。
さらに、カフェインにはマグネシウムを体の外に排出する働きがあり、イライラの原因にもなってしまうので注意しましょう。
少量のカフェインであれば、生理痛に大きく影響は与えないのでコーヒーなどが好きな方は、量に気をつけながら飲んでください。
塩分を控える
生理のときは、塩分の多い食事は控えるようにしましょう。生理中は、黄体ホルモンの影響で身体が水分を溜め込みやすい体質になっています。
この期間、塩分を摂りすぎてしまうと体内の塩分調整をするために、身体には水分を蓄えようとする働きが起こります。
結果、むくみの原因になってしまうので塩分を控えるように心がけましょう。
青魚を食べる
生理のときは、青魚を食べるようにしましょう。青魚には、オメガ3脂肪酸という良質な油が豊富に含まれています。
オメガ3脂肪酸は、血液をさらさらにしてくれる効果があり、子宮に溜まった血液がドロドロになるのを防いでくれます。
さらに、生理痛の原因であるプロスタグランジンの生成を抑え、生理痛を緩和してくれるので青魚は積極的に食べていただきたいです。
オメガ3脂肪酸が多く含まれる食材は次の通りです。
- アジ
- サバ
- イワシ
青魚は日常的に取り入れてほしい食材ですが、どうしてもそれが厳しい方は生理の約2週間前頃から摂取するようにしてください。
青魚が苦手という方には、サプリメントなどもあるのでご自身にあった方法で摂取をして、生理痛を和らげましょう。
ナッツ類を食べる
生理のときは、間食などにナッツ類を食べるようにしましょう。ナッツ類には生理痛を和らげてくれる栄養素が豊富に含まれています。
ナッツ類に含まれる、生理痛を和らげてくれる栄養素は次の通りです。
- マグネシウム
- オメガ3脂肪酸
- ビタミンE
- たんぱく質
- 鉄分
ナッツ類に含まれる栄養素には、血液をサラサラにして血行を良くしてくれる働きがあるので冷えからくる生理痛にも効果があります。
ナッツ類を選ぶときのポイントは、なるべく油や砂糖が使われていない素焼きナッツを選ぶようにしましょう。
生理痛への薬での対処法
生理痛がひどくなると頼りたくなるのが薬です。薬は服用するタイミングや用法用量を守って使用することが大切です。
しかし、「たくさん種類があってどれを選んだらいいのかわからない」という方も少なくありません。
ここでは、生理痛への薬での対処法を市販薬と漢方薬に分けて解説していきます。さらに、ピルについてもご紹介します。
生理痛に効果的な市販薬
生理痛には、様々な症状に合わせた市販薬を飲むことが効果的といわれています。症状に合わせて薬を選ぶことで効果が高くなります。
- 頭痛・腰痛を伴う生理痛:イブプロフェンと無水カフェインを含む、ロキソニンS・リングルアイビーα200・イブクイック頭痛DX
- 吐き気を伴う生理痛:イブプロフェンとロキソプロフェンを含む、ナロンエースロイヤル頭痛薬・ロキソニンSプラス・バファリンEX
- 胃への負担が気になる方:アセトアミノフェンを主成分とする、バファリンルナi・タイレノールA・エルペインコーワ
また15歳未満の方はアセトアミノフェンを主成分とするバファリンルナJ・小中学生用ノーシンピュアがおすすめです。
イブプロフェンやロキソプロフェンなどは、小児の身体には重い副作用が出る可能性があるため注意が必要です。一般的にロキソプロフェンは15歳以上からの服用とされています。
生理痛に効果的な漢方薬
漢方では症状の根本から原因を考えます。生理痛の原因は大きく分けて2つのタイプがあり、1つ目は滞り、2つ目は虚弱です。
漢方薬を処方するときは、痛みなどの症状だけではなくその人の体質などにも考慮しながら、その人に合った漢方を処方するようになっています。
生理痛に効果的な漢方薬は次の通りです。
- 桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
- 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
- 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
- 加味逍遙散(カミショウヨウサン)
- 温経湯(ウンケイトウ)
桃核承気湯の効能・効果は、生理痛・生理時の精神不安・腰痛・のぼせて便秘しがちな方の頭痛・めまい・肩こりなどです。
桂枝茯苓丸は、のぼせや冷えなどを感じる生理痛・生理不順・月経異常・めまい・頭痛肩こりに効果があります。
当帰芍薬散の効能・効果は、冷え性で貧血の傾向がある方の生理痛・生理不順・疲労倦怠感・めまい・むくみなどに効きます。
加味逍遙散の効能・効果は、生理痛・冷え症・肩こり・めまい・不眠症・頭痛・倦怠感・精神不安や苛立ちなどです。
温経湯は、冷えなどを感じる生理痛・下腹部の痛み・手足のほてり・生理不順・月経異常などに効果を認めます。
生理痛にも様々なタイプの痛みがあるので、ご自身の体質に合わせた漢方を選ぶようにしましょう。
生理痛が重い場合はピルの検討を
生理痛が重い場合は、ピルを検討しましょう。ピルは避妊薬の効果しかないと誤解を持っている方が多いですが、生理痛にも効果が期待できます。
ピルには、排卵を抑制する作用がありプロゲステロンの分泌が減少することで、子宮内膜が厚くならず生理痛が抑えられるでしょう。
生理痛をはじめ、生理不順など生理に関する悩みを解消できます。しかし、ピルはドラックストアなどで簡単に手にすることはできません。
一度、医師の診察を受けてからの処方になるので生理が来て、痛みに悩む前に診察を受けに行くことをおすすめします。
生理痛の薬が効かない場合の対処法
生理痛の薬が効かない場合、痛みがひどい場合は早めに病院を受診することをおすすめします。薬が効かない場合、日常生活にも支障が出てしまったり、何か病気が隠れていたりするからです。
どうしても病院に行けない場合は、次のことを試してみてください。
- 身体を温める
- 身体を締め付けない服装にする
- リラックスできる環境に行く
- 生理痛に効くツボを押す
生理痛に効くツボは、手にあります。親指と人差し指の骨が交わる部分よりも、少しだけ人差し指側にあるツボです。
ゆっくりと10秒程度、押して離すを繰り返してツボを刺激しましょう。
生理痛がおさまらない場合に考えられる病気
生理痛がおさまらない場合は、病気が潜んでいる可能性があります。
生理痛そのものは病気とはいいませんが、日常生活に支障をきたすほどの生理痛があるときは他の病気にかかっている危険性があるため注意が必要です。
どのような病気が潜んでいるのか、ここでは3つの病気について解説していきます。
子宮筋腫
生理痛がおさまらない場合に考えられる病気の1つ目は、子宮筋腫です。
子宮筋腫は、30代以上の女性20〜30%にみられるもので珍しい腫瘍ではありません。悪性の腫瘍ではありませんが、激しい生理痛・経血の量が増える・貧血・腰痛などの症状がみられます。
腫瘍の大きさは様々で、数も1つだけの人や複数個出来る人など個人差があるのが特徴です。閉経すると女性ホルモンが低下するため、腫瘍は小さくなります。
筋腫ができた場所や大きさによっては、治療の必要性がない場合もあるので覚えておくと良いでしょう。
子宮内膜症・子宮腺筋症
生理痛がおさまらない場合に考えられる病気の2つ目は、子宮内膜症・子宮腺筋症です。
生理がある女性の10人に1人が発症するといわれており、日常生活に支障をきたすほどの強い痛みが出るのが特徴になります。
本来あるべき子宮の内側以外の場所で、子宮内膜またはそれに似た組織が作られる病気が子宮内膜症です。
子宮内膜症は、女性ホルモンの影響で生理に合わせて進行し、周囲の組織と癒着し様々な痛みを起こします。また、不妊症の原因にもなるので注意が必要です。
子宮腺筋症は、病態は子宮内膜症とほぼ同様ですが、発生する場所が子宮の筋肉の中にできる点が異なっています。
この場合も、症状が重い場合は子宮内膜症と同様の対処が必要となります。
月経困難症
生理痛がおさまらない場合に考えられる病気の3つ目は、月経困難症です。月経困難症とは、生理に伴って日常生活に支障をきたすほどの病的な状態を指しています。
日本では約900万人の患者がいると推計されていますが、そのうち治療を受けている人は約55万人と全体の6%しかいません。
月経困難症には2つのタイプがあり、強い子宮収縮が原因の機能性月経困難症と子宮や卵巣の病気が原因の器質性月経困難症に分けられます。
月経困難症の主な痛みの症状は次の通りです。
- 下腹部痛
- 頭痛
- 腰痛
- お腹の張り
- 吐き気
- 疲労感・倦怠感
月経困難症は鎮痛剤やホルモン剤を用いて治療が行われます。まずは、原因を突き止めてもらうことが大切なので、症状がひどい場合は1度婦人科などの検査を受けることをおすすめします。
生理痛が強い場合は産婦人科を受診しよう
毎回、生理痛に悩まされていると「ただの生理痛だからなんとかなる」と考えてしまいます。
しかし、生理痛はときに大きな病気を知らせてくれています。その痛みを「いつものこと」と流すと大変なことになってしまう場合があるため注意しましょう。
現代では生理痛は、我慢するものではありません。痛みがさらに強くなってしまう前に、産婦人科を受診しましょう。できたら、生理が始まる前に受診してください。
編集部まとめ
ここまで生理痛への対処法や、薬が効かない場合の対処法や考えられる病気をご紹介してきました。
女性は生理と長く付き合っていかなければならないので、快適に過ごす方法を知っておくことで毎月の辛さから解放される可能性があります。
また、ただの生理痛だと思っていたら他の病気を発症している危険性もあるため、生理痛が気になる方は産婦人科を受診して不安を払拭しましょう。
参考文献
- 女性の病気について|一般社団法人 日本女性心身医学会
- 女の子のからだについて|SOKa University
- 生理の痛みに魚の効果?|東北大学・近畿大学
- 月経困難症について|東邦大学医療センター 大橋病院 産婦人科
- 運動が生理痛を和らげるかも
- 女性の健康|石川県・石川県医師会
- 第十回 月経前症候群(PMS)について知りたい!【食事編】|田村秀子婦人科医院
- 月経トラブルは漢方におまかせ-月経痛や月経不順で悩まない
- 子宮内膜症|公益社団法人 日本産科婦人科学会
- 低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン
- ロキソプロフェンナトリウム水和物のリスク区分について
- 子宮腺筋症Q&A Ver.3|独立行政法人国立病院機構 霞ヶ浦医療センター