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世界中で使用されている子宮内避妊リング「ミレーナ」、避妊以外に病気予防の側面も

 更新日:2023/03/27

女性が使用する避妊具である子宮内避妊リング「ミレーナ」は、日本ではあまり知られていませんが、海外では非常にメジャーです。世界中の女性が使用しており、避妊目的以外にも、婦人科系疾患の予防や月経のコントロールなどにも役立てているそうです。今回は、ミレーナの効果や使用時の注意点などについて、「GYNメディカルグループ」代表の村上先生に解説していただきました。

村上 雄太医師

監修医師
村上 雄太(GYNメディカルグループ 代表)

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東邦大学医学部卒業。東邦大学医療センター大森病院産婦人科を経た2001年4月、東京都豊島区に位置する「池袋クリニック」院長に就任。2003年、「GYNメディカルグループ」設立。「ゆりかごから墓場まで」をモットーに患者目線の医療を提供して、女性が安心して仕事や家庭で活躍できるように心と体のケアをおこなっている。母体保護法指定医師。日本産科婦人科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。

子宮内避妊リング「ミレーナ」とは?

子宮内避妊リング「ミレーナ」とは?

編集部編集部

子宮内避妊リング「ミレーナ」について教えてください。

村上 雄太医師村上先生

ミレーナは、子宮内に装着する小さなT字型をしているプラスチック製の避妊具です。「避妊リング」や「IUS」という名前でも知られています。装着することで、「レボノルゲストレル」という合成黄体ホルモンがずっと出続ける状態になります。レボノルゲストレルは子宮内膜が厚くなるのを妨げる働きがあるため、内膜はずっと薄い状態となり、着床しにくくなるのです。

編集部編集部

避妊の効果はどれくらい持続するのでしょうか?

村上 雄太医師村上先生

ミレーナを装着すると、約5年間、レボノルゲストレルが分泌され続けます。その間は避妊の状態が続くとされています。

編集部編集部

5年間も続くとはすごいですね!

村上 雄太医師村上先生

もともとミレーナは避妊具として使われ、日本では2007年に承認されました。その後の2014年9月、過多月経と月経困難症(生理痛)の治療に対して有効なことがわかり、ミレーナが保険適用となりました。

編集部編集部

なぜ、ミレーナは過多月経や月経困難症にも効果的なのですか?

村上 雄太医師村上先生

そもそも過多月経が起きるのは、子宮の内膜が非常に厚くなることが原因です。それが月経血とともに排出されるため、結果的に出血量が増えてしまいます。ミレーナを装着することで、子宮内膜はずっと薄いままになるので出血量が減少するのです。

編集部編集部

月経困難症に対しては、いかがでしょうか?

村上 雄太医師村上先生

月経血を体の外へ押し出す働きをするものに「プロスタグランジン」という物質がありますが、これには痛みを感じさせる働きもあるため、月経の出血量が多くなるとプロスタグランジンも増え、生理痛がひどくなります。ミレーナで月経血量を減らすことによって、プロスタグランジンの量を減らして生理痛を抑えます。

ミレーナを使うことのメリットは?

ミレーナを使うことのメリットは?

編集部編集部

避妊もできるし、過多月経や月経困難症の緩和にもなる。ミレーナを使うことのメリットはたくさんあるのですね。

村上 雄太医師村上先生

はい。ほかにも、ミレーナは子宮内膜が分厚くなってしまう「子宮内膜増殖症」の予防効果があるということがわかっています。子宮内膜増殖症を放置すると、古い子宮内膜がいつまでも子宮内にとどまってしまうことがあり、ひどい場合は子宮体がんになってしまうこともあります。

編集部編集部

避妊だけでなく、病気の予防もできるのですね。

村上 雄太医師村上先生

そうですね。避妊具という点で考えれば、コンドームという選択肢があります。その一方で婦人科疾患も予防できるという点では、ミレーナは非常に有効であると言えるでしょう。もっとも欧米ではミレーナだけでなく、女性が使用する避妊器具は多数存在しており、日本人女性に比べて、欧米女性は積極的に自分の体をコントロールしているように思います。

編集部編集部

ミレーナの費用はどれくらいなのですか?

村上 雄太医師村上先生

避妊目的で使用する場合は自費診療になるので約5~7万円です。なお、一度装着すれば約5年間有効です。一方、過多月経や月経困難症で使用する場合は保険適用のため、3割負担で約1万円となります。

ミレーナを使用する際の注意点

ミレーナを使用する際の注意点

編集部編集部

女性の避妊方法としてピルが挙げられますが、ミレーナとの違いを教えてください。

村上 雄太医師村上先生

どちらも避妊や過多月経、月経困難症などに効果がありますが、避妊の失敗率はピルよりもミレーナの方が低いとされています。また、ピルの場合は飲み忘れの可能性があったり、ほかに服用している薬の影響を受けたりすることがありますが、ミレーナの場合はそうした心配がありません。ほかにも、40歳以上の女性や高血圧、肥満の場合は血栓症のリスクが高くなるため、ピルを服用することはできませんが、ミレーナにはそのような制限がないのも利点です。

編集部編集部

それでは、ミレーナを使えない人はいないのですか?

村上 雄太医師村上先生

ミレーナの成分に対して過敏症がある」「月経以外で性器の出血がある」、「子宮の形や位置に異常がある」、「過去3カ月以内に性感染症を発症した」、「妊娠中」などの場合は、使用を控えてもらっています。

編集部編集部

副作用についても聞いておきたいです。

村上 雄太医師村上先生

ミレーナを装着してから約3カ月間は不正出血が続くこともありますが、時間が経つと治っていきます。また、装着して数日間は、出血や下腹痛、腰痛、おりものなどがみられることがあります。

編集部編集部

ミレーナを使用するにはどうしたらいいでしょうか?

村上 雄太医師村上先生

まずは、婦人科を受診してください。装着前に検査があり、適応を確認します。なお、検査のタイミングはいつでも大丈夫ですが、装着の日付は考慮した方がいいと思います。理想的な装着タイミングは、月経終わりから直後となります。なぜなら、子宮内膜が薄い方が出血のリスクが低いからです。

編集部編集部

装着時に痛みはありませんか?

村上 雄太医師村上先生

腟分娩による出産の経験がない女性には、痛みを伴うかもしれません。そのため、「出産経験のない女性には、ミレーナを装着することはできません」とお断りしている医療機関があるのも事実です。その一方で、子宮頸管を広げるときに局所麻酔を使用して、出産経験がない人でもミレーナを適応できるクリニックもあります。痛みが心配であれば事前に相談しておくことをおすすめします。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

村上 雄太医師村上先生

たしかに、子宮の内部に異物を入れることに不安を感じたり、自然な月経がこなくなることを心配に思ったりする女性も少なくありません。しかし、月経は子宮にとって非常に負荷のかかる生理現象であり、自然な月経は必ずしも子宮にとって健康的ではないということを覚えておいてほしいです。とくに近年、高齢出産が増えていますが、様々な婦人科系疾患のリスクにつながっています。自分の健康を守るためにも、ミレーナなどで月経をコントロールする方法を検討してみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

日本に比べて、欧米では女性がピルやミレーナなどを使用して、自分の月経をコントロールするのは当たり前になっているとのことでした。日本でもそうした意識を持つ女性が少しずつ増えていますが、自分にとってどんな選択肢がベストか、わからない人も多いでしょう。そんなときは医師に相談してみると、年齢や家族構成、バックグラウンドなどを考慮して、最適な選択肢を提示してくれるはずです。

医院情報

池袋クリニック

GYNメディカルグループ 池袋クリニック
所在地 〒171-0021 東京都豊島区西池袋2-35-8
アクセス JR「池袋駅」 徒歩5分
診療科目 婦人科

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