いぼ痔の治し方は?いぼ痔の原因・種類や症状・受診の目安・病院での手術について詳しく解説
日本では痔に悩んでいる人が、実に3人に1人いるといわれています。排便時の痛みといった軽い症状から出血など、「もしかして…」と思っていても、なかなか人には聞きづらいのが肛門周辺のトラブルです。
いぼ痔・切れ痔・痔ろうなど、痔にはいろいろな種類がありますが、今回はその中でも1番多い「いぼ痔」について解説していきます。
いぼ痔には、症状に合わせた治療法を行うのが大切です。いぼ痔の原因と種類、治し方や症状・受診の目安・病院での手術方法まで解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
いぼ痔の治し方は?
いぼ痔の症状があっても、治し方が分からず不安に感じている方も多いと思います。
手軽に始めやすい市販薬によるセルフケアと、根本的な改善ができる病院での治し方を解説していきます。
どちらの治し方が合っているか、現れている症状に合わせて検討してみましょう。
市販薬によるセルフケア
いぼ痔の症状が現れた時、まず市販薬でのセルフケアを思いつく人も多いと思います。
薬局にも軟膏タイプをはじめ、たくさんの種類が並んでいるので手軽に始めやすい対処法です。
排便時のいきみで痔核が脱出しても自然に戻るような軽度な症状の場合、軟膏や座薬といった市販薬で出血や痛みを抑えられます。
注意が必要なのは、市販薬には痛みや出血を抑える効果はあるものの、根本的な治療ではないことです。
いぼ痔は慢性化しやすく、悪化しやすい病気です。症状によっては、効果を感じられないものもあります。
根本的な改善のためには、肛門科の専門医に診断してもらい、正しい治療を受けることが必要です。
肛門科での治療
椎骨や椎間板が加齢などの影響で変性したり、異常な骨の突起(骨棘)が形成されたりすると、神経が通っている脊柱管が狭くなって脊髄神経根を圧迫します。
この状態では、少し歩くと痛みを感じ、その後前かがみになって休むとまた歩ける(間欠跛行)症状が特徴です。
また、臀部や足にしびれや痛みを感じる場合もあります。
肛門科での治療
いぼ痔の治療には肛門科、または肛門外科を受診しましょう。専門医による診断のあと、いぼ痔の種類と症状の度合いによって治療法が決まります。
どのような診察を受けるのか不安に感じている人のために、診察の流れを紹介します。
- 受付・問診
- 個室に入って診察の準備
- 肛門の診察
- 医師の診断・説明
医師の診察では、視診での観察と内部の触診を行います。
次に肛門鏡という細い筒状の器具を使った検査を行います。触診にも肛門鏡検査にも医療用ゼリーを十分に用い、痛みに配慮した検査が行われているので安心してください。
最近では、プライバシーに配慮して診察室が個室になっている病院も増えています。それでも、恥ずかしさや痛みが不安という人にはオンライン診療をしているクリニックがおすすめです。
いぼ痔の原因は?
いぼ痔の治し方について説明してきましたが、そもそも、なぜいぼ痔になってしまうのでしょうか?
いぼ痔の原因は主に4つあります。
- 便秘や下痢
- 長時間座り続ける
- 冷え
- 重い物を持つ
いぼ痔の原因を知ることで、予防や悪化するのを防ぐことができます。
便秘や下痢
いぼ痔の原因の1つが便秘や下痢などの排泄時の刺激です。肛門の周りには「肛門クッション」という、弾力性の高い部分があり、便やガスが漏れるのを防ぐ働きをしています。
いぼ痔の原因は、なんらかの原因で固くなった肛門クッションに、便秘や下痢で無理にいきみ刺激を加えてしまうことです。
肛門クッションのある直腸粘膜は、非常に柔らかく排便時の摩擦などによって傷がつくことがあります。そのため、内痔核から出血しやすいのも特徴です。
便秘になる原因には、野菜不足・運動不足・トイレを我慢してしまうなどがあります。食生活の改善が1番ですが、朝食をしっかりとり、腸の動きを活発にすることも大切です。
便が固くなると排便時、肛門に負担がかかります。水分を小まめにとり、便を柔らかくするのも便秘対策には効果的です。
また、便秘薬を使用して無理やり排便すると、便秘が慢性化してしまいますので使いすぎないようにしましょう。
長時間座り続ける
長時間座り続けることも、いぼ痔の原因になります。肛門クッションは柔らかい組織でできているのですが、長時間座ったままおしりを圧迫し続けるとうっ血し、いぼ痔になりやすくなります。
いぼ痔の原因は、血液がうっ血しているところにいきみなどの圧力が加わり、肛門クッションの一部が腫れこぶ状になることです。
デスクワーク・長時間の運転・飛行機での移動など、座っている時間が長い人は注意が必要です。
小まめに横になるのが1番ですが、難しい場合は小まめに立ち上がりストレッチをするなど、肛門への負担を軽減させる工夫が必要です。
冷え
いぼ痔の原因には生活習慣が深くかかわっています。
肛門クッションの柔らかい組織には毛細血管が縦横に張り巡らされているのですが、肛門への負担が大きくなると血管が太くなって折り曲がっていきます。
さらに冷えにより血流の流れが悪くなると、脈瘤のようにふくらんでいき、徐々にできあがるのがいぼ痔です。
身体が冷える原因には、食生活による身体の内側からの冷え、筋肉量不足による血行不足などがあげられます。
冷たいものをよく飲む、運動する機会が少ない人は生活習慣を見直しましょう。飲み物を温かいものに変える、毎日湯船につかるだけでも身体の冷えは軽減されます。
筋肉量不足には、大きい筋肉が集中している下半身を鍛えるのがおすすめです。運動習慣のない人は、意識して階段を使うなど手軽に取り入れられるものから始めてみましょう。
毛細血管の血流が良い状態を保つことが大切です。
重い物を持つ
便秘や下痢でいつもより強くいきんだり、重いものを持ち上げたりすると、腹圧がかかりいぼ痔の原因になります。
腹圧がかかる習慣は、本人が気付いていない場合が多く、習慣化してしまっている場合がほとんどです。
腹圧がかかると、肛門周囲の血管が圧迫され血栓(血のかたまり)ができることがあり、血栓性外痔核の原因になります。特に、血栓性外痔核は再発する可能性が高い痔核の種類なので、重症化する前に治療することが大切です。
軽度ないぼ痔の場合は、腹圧を与えないように生活習慣を見直し、悪化するのを防ぐ「保存療法」で痛みを抑えることができます。
重いものを持つ時は、肛門に負担をかけすぎないように心がけましょう。
いぼ痔の種類は?
いぼ痔には大きく分けると「内核痔」・「外核痔」の2つの種類があり、できる場所や症状が違います。
それぞれについて詳しく解説していきますので、自分のいぼ痔がどれに当てはまるのかチェックしましょう。
内痔核
いぼ痔には大きく分けると二つの種類があります。1つ目が内痔核とよばれる、肛門の奥側(歯状線より上)にできたいぼ痔です。
直腸の粘膜部にできるもので、一般的にいぼ痔とは内痔核のことをいいます。内痔核の進行度は、脱出の程度により4段階に分けられています。
自分の症状がどの段階に当たるか確認しましょう。
- 第1度:痔が肛門内にあるが、肛門の外へ脱出しない状態。
- 第2度:痔が大きくなり排便時に肛門外へ脱出するが、排便後は自然に戻る状態。
- 第3度:排便時に肛門外へ脱出した痔を、自分の指で押し込まないと戻らない状態。
- 第4度:痔が常に肛門外に脱出したままで、指などで押し込んでも戻せない状態。
また、直腸粘膜には痛みを感じる神経がないので、初期段階では痛みはほぼありません。
外痔核
もう1つが、外痔核と呼ばれる肛門の出口側(歯状線より下)にできたいぼ痔です。
肛門の周囲の静脈叢がうっ血することによって発症します。外痔核の症状は、急な腫れや刺激で皮膚が破れた時の出血と、激しい痛みです。
うっ血による外痔核のほかに、血栓性外痔核があります。便秘や下痢でいつもより強くいきんだり、重いものを持ち上げたりした時にできる血栓(血のかたまり)によるものです。
この2つは症状がよく似ていますが治療方法が異なるため、専門医に相談の上、適切な治療を受けてください。
いぼ痔の症状は?
いぼ痔になると、腫れなどの軽度なものから痔該の脱出まで、さまざまな症状が現れます。なかには、ポリープや癌など大きな病気が隠れている場合がありますので、軽視してはいけません。
具体的な症状と原因を解説していきますので、当てはまる症状がある方は、早めに医師に相談しましょう。
腫れ
便秘や下痢などで腹圧をかけ続けると、肛門クッションの部分が腫れてきます。初期段階では自覚症状がなく、徐々に痛みを感じはじめ、やがていぼ痔になります。
放っておくと、大きな腫れとともに激しい痛みを感じるようになりますので、少しでも違和感があれば1度専門医に相談してみるのがいいでしょう。
また、腫れの症状がある場合は、「痔ろう」の可能性があります。痔ろうとは肛門外にトンネル状の穴ができる病気です。
肛門と直腸の境目には、肛門陰窩というくぼみがあるのですが、肛門陰窩が細菌に感染すると肛門腺が炎症を起こしてしまいます。
やがて炎症によってたまった膿が、出口をもとめて肛門括約筋にトンネル状の穴を作ります。
痔ろうになると、腫れが大きくなるだけでなく激しい痛みがあり、悪化すると座ることもままなりません。
肛門周辺の熱感や発熱が見られる場合もあります。
比較的多量の出血
直腸の粘膜にできる内痔核は、出血しやすいのが特徴です。
直腸の粘膜は非常に軟らかいので、便が通過する時の摩擦によって傷つき、出血しやすくなります。肛門からの出血は、症状の程度によりほかの痔や病気の可能性があるので注意が必要です。
いぼ痔の場合は、ぽたぽた垂れる程度の出血があります。ぽたぽた垂れる以上の出血・痛みを伴い、飛び散るような出血の場合、きれ痔の可能性があります。
出血した時の血液の状態にも気をつけてください。粘液混じりの出血・茶または黒っぽい色の出血がある場合、ポリープやがんからの出血が考えられますので、早めに受診しましょう。
排便時の異常、便の状態からさまざまな病気が分かります。排便時に便の状態を確認する習慣をつけましょう。
痔核の脱出
内痔核の場合、痔核の脱出の症状があります。
排便時に痔核が脱出していても、自分では気が付かない軽度なものから、排便の度に自分で戻さなければならないほど重い症状もあります。
脱出の度合いにより第1度~第4度まで分類され、最も重い第4度になると常に痔核が外に出ていて、自分では戻すことができません。激しい痛みで、座ることもままならず、歩いている時に脱出してしまうこともあります。
痔核の脱出には激しい痛みだけではなく、出血と感染のリスクがありますので、早めに対策をとりましょう。また、痔核の脱出には、他の病気の可能性もあります。
直腸の粘膜が脱出してしまう直腸脱や直腸腫瘍の場合も同じ症状がありますので、自分で判断せず、病院で検査をしましょう。
受診の目安は?
いぼ痔の症状は幅広く、肛門周辺の腫れといった軽度なものから、痛みを伴う出血まであります。
自己判断でいぼ痔だと思っていても、実はポリープやがんなどの大きな病気が隠れている可能性があります。
そのため、自分の症状がどの段階なのか自分で判断するのは危険です。いぼ痔の症状が長く続くようなら、少しでも早く肛門科を受診することが大切です。
最近では、プライバシーに配慮した肛門外来専門のクリニックも増えているので、病院にいくのが恥ずかしいという人は専門のクリニックに行く方法もあります。
症状に合わせた適切な治療法を行うためにも、しっかりと検査をしましょう。
病院での手術の種類は?
いぼ痔の手術は、症状に合わせて異なります。ここでは、代表的な4つの方法について解説していきます。
- ジオン注射
- 結紮切除術
- 結紮切除術
- ゴム結紮療法
症状に悩んでいても手術が不安で病院にいくのを躊躇っている方は、参考にしてみてください。
ジオン注射
いぼ痔を切らずに注射だけで治療できるのが「ジオン注射療法」です。ジオン注射療法は内痔核の治療に有効な治療法で、外痔核には用いることができません。
ジオン注射には四段階注射法が用いられます。四段階注射法とは、1つの痔核に対し4ヶ所に分けて注射する方法で、必要な部分に薬剤が十分浸透するので効果が早いのが特徴です。
最初に痔核上側の粘膜下層・痔核中央の粘膜下層・痔核中央の粘膜固有層・最後に痔核下側の粘膜下層と順番に注射していきます。
注射される薬剤は、出血や脱出を改善する硫酸アルミニウムカリウム水和物と、その働きを調節するタンニン酸を有効成分としたものです。
硫酸アルミニウムカリウム水和物の効果により、早い段階で痔核への血液量が減少し、翌日には出血が減少します。徐々に痔核が小さくなり、数日で脱出回数が減ったことを感じるでしょう。
1週間~1ヶ月経過すると、内痔核を支えていた組織が元の位置に癒着して固定され、脱出および肛門周辺の腫れはなくなります。
内痔核には痛みを感じる神経がないので、治療中も痛みを感じることはなく、日帰り手術ができるので人気があります。
結紮切除術
痔核が大きい場合や、症状が重い場合は手術が適応されます。結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)は、あらゆるいぼ痔の症状に対応しているため、現在、最も行われている手術方法です。
「結紮切除術」とは、痔核を切除し根部血管を結紮(糸で縛る)する手術方法です。痔核に通じる血管を糸で縛って血流を止めた後、メスで痔核を切り取ります。
痔核を完全に取り除くわけですから、他の治療法に比べて再発の可能性も少なく、確実な治療法です。主に第2〜4度の内痔核、外痔核に適しています。
施術自体は数十分で終わりますが、術後の経過観察に1週間程度の入院が必要です。基本的に手術の翌日から入浴を再開するなど、普段通りの生活を送ることが可能です。
手術で痔核を完全に取り除いたとはいえ、引き続き肛門に負担をかけない生活を心がけましょう。
術後2週間程度は激しい運動や長時間座り続ける、アルコールを飲むことは控えましょう。
ゴム結紮療法
主に第2~3度の内痔核に適用されるのが「ゴム輪結紮法」です。
「ゴム輪結紮法」は、その名の通り痔核の根元を小さなゴム輪で縛り血流を止めることで、徐々に痔核をえ死させる治療法です。
治療には専門の器具が使われ、痔核はゴム輪と一緒に1週間ほどで自然と脱落します。外科治療になりますが、手術ほどの負担はなく、治療後の痛みが少ない治療法です。
痔核が大きすぎても小さすぎても行えません。主に脱出が始まった第2度の痔核に有効です。また、他に治療中の病気があり抗凝固薬を使っている人は行えません。
いぼ痔を放置するとどうなる?
いぼ痔の症状があっても、病院に行くのをためらう人も多いと思います。
ですが、いぼ痔に当てはまる症状には、痔核だけでなくポリープや直腸がんなどの可能性が潜んでいますので放置してはいけません。
また、脱出していると思っていたものが、痔核ではなく直腸脱だったという場合もあります。
肛門周辺のトラブルには、大きな病気が隠されている場合が多いです。
脱出を放っておくと、痛みが激しくなるだけでなく出血や感染のリスクが上がってしまいますので、早めに検査することが大切です。
症状が軽ければ軽いほど楽な治療法で治せるので、痛みや術後の生活などに不安がある人は、できるだけ早めに病院に行きましょう。
まとめ
いぼ痔の原因には、排便習慣や生活習慣が深く関わっています。
排便時に無理やりいきんだり、長時間座り続けたりするような無意識の生活習慣がいぼ痔をできやすくします。
また、いぼ痔には内痔核と外痔核があり、それぞれの症状に合った治療法についても説明してきました。
肛門周辺のトラブルは、恥ずかしさもあり、なかなか人に話せないかもしれません。
しかし、ポリープやがんなど大きな病気が隠れている場合がありますので、自分で判断するのは危険です。
この記事を読んで思い当たる症状がある人は、早めに専門医に相談しましょう。
いぼ痔にならないために、肛門に負担をかけない生活を送ることも大切です。
この記事がみなさんのお役に立てれば幸いです。
参考文献
- いぼ痔(内痔核)とは?症状・治療方法について|医療法人 愛知会 家田病院
- 痔・肛門疾患|日本臨床外科学会
- 痔核(いぼ痔)|医療法人 小野会 おの肛門科・胃腸科・外科
- 症状一覧|医療法人 小野会 おの肛門科・胃腸科・外科
- 肛門からの出血の状態で、大腸・肛門の病気が分かりますか?|一般社団法人 日本大腸肛門病学会
- ジオン注射(ALTA療法)|医療法人 維誠会 かねこ消化器内視鏡肛門外科クリニック水戸院
- いぼ痔(内痔核・外痔核)|医療法人 維誠会 かねこ消化器内視鏡肛門外科クリニック水戸院
- 3大疾患の診断と治療|日本臨床外科学会
- 痔核の治療|一般社団法人 日本大腸肛門病学会
- 肛門外科|医療法人 維誠会 かねこ消化器内視鏡肛門外科クリニック水戸院
- 痔ろう|医療法人 維誠会 かねこ消化器内視鏡肛門外科クリニック水戸院
- 痔のQ&A|医療法人 維誠会 かねこ消化器内視鏡肛門外科クリニック水戸院
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