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「インフルエンザ」のA型・B型の違いをご存知ですか? 症状・感染経路などを医師が解説

 公開日:2024/12/23
「インフルエンザ」のA型・B型の違いをご存知ですか? 症状・感染経路などを医師が解説

毎年流行するインフルエンザですが、「A型」「B型」「新型」といった名前を耳にすることは多くても、それぞれの違いを詳しく知る人は少ないかもしれません。特に新型や鳥・豚インフルエンザについては、ニュースで話題になるものの、実際のリスクや特徴について誤解されることも多いようです。本記事では、インフルエンザの型の違いや特徴、それぞれの感染リスク、さらに予防のポイントについて、専門家の忽那賢志先生にお話を伺いました。

忽那 賢志

監修医師
忽那 賢志(大阪大学大学院医学系研究科 感染制御医学講座教授)

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山口大学医学部を卒業後、救急医療などの現場で経験を積み、その後、感染症を専門とするようになる。2009年から奈良県立医科大学感染症センターで研修し、2010年には市立奈良病院で勤務。2012年より国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。主な著書に「感染症診療とダニワールド」(シーニュ、電子書籍)、「みるトレ 感染症」(医学書院)、「症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z」(中外医学社)、「専門医が教える 新型コロナ・感染症の本当の話」(幻冬舎)など。

インフルエンザにはどんな種類があるの?

インフルエンザにはどんな種類があるの?

編集部編集部

インフルエンザには、A型、B型、新型などさまざまな型があると聞きますが、具体的にどのような種類があるのでしょうか?

忽那 賢志先生忽那先生

インフルエンザは現在、A型、B型、C型、D型の4つに分類されます。それぞれが遺伝子レベルで異なり、流行の仕方や対象とする生物に特徴があります。特に注目されるのはA型とB型です。A型は変異が多く、動物から人への感染を引き起こす可能性が高いため、パンデミックの原因になりやすいと言われています。一方、B型は主に人間に感染し、A型ほどの大規模な流行にはなりにくいですが、症状が長引くことがあります。新型インフルエンザという言葉もよく耳にしますが、これはA型の中で大きな遺伝子変異が起き、新たなウイルスとして注目されるときに使われる名称です。

編集部編集部

それぞれの型は何を基準に分けられているのですか?

忽那 賢志先生忽那先生

主に遺伝子の違いで分類されています。中でもA型にはウイルスが細胞に侵入するために使う道具のようなもの「ヘマグルチニン」と「ノイラミニダーゼ」という構成成分があり、それらの組み合わせによって、H1N1やH3N2のように細かく分類されます。これらの成分は非常に変異しやすく、新たな流行株が頻繁に生まれます。一方、B型は変異が少ないため、A型のような細かい分け方はされません。それでも、再感染することは可能で、一度感染して免疫ができても時間の経過とともに感染するリスクが戻ってくるのが特徴です。

編集部編集部

鳥や豚から感染するインフルエンザについても気になります。人にも感染する可能性があるのでしょうか?

忽那 賢志先生忽那先生

A型インフルエンザは鳥や豚などの動物に感染するだけでなく、これらの動物を介して人に感染することがあります。動物の間でウイルスの変異を繰り返しながら、最終的に人にも感染できる形になることがあり、これがパンデミックの原因になることもあります。たとえば、鳥から豚、豚から人への感染、さらには鳥から直接人への感染が報告されています。さらに、動物由来のインフルエンザが人間に感染すると、同時に異なるウイルスが体内で混ざり合い、新たな遺伝子を持つインフルエンザが生まれることもあります。このように、インフルエンザは非常に適応能力が高く、私たちが目を離せない理由の一つです。

A型とB型、どんな違いがあるの?

A型とB型、どんな違いがあるの?

編集部編集部

A型とB型では、症状や流行時期に違いはありますか?

忽那 賢志先生忽那先生

症状に関しては、A型とB型の間で大きな違いはないとされています。ただし、流行時期については違いが見られます。一般的にA型は冬の初めから春先まで流行し、2月から3月には収束することが多いといわれています。一方、B型はその後も残りやすく、4月や5月になっても散発的な感染が見られることもあります。このため、インフルエンザのシーズンが終わったと思って油断していると、B型に感染してしまうことも少なくありません。

編集部編集部

感染力や重症化リスクについての違いはありますか?

忽那 賢志先生忽那先生

感染力や重症化リスクについては、基本的にA型とB型の間に大きな違いはないと考えられています。ただし、B型については一部の抗ウイルス薬が効きにくい可能性が指摘されています。そのため、B型の流行時には、治療が難航するケースがA型よりも若干多いかもしれません。いずれにせよ、インフルエンザそのものの病原性はどちらの型でも同じように注意が必要です。

編集部編集部

ワクチンはすべての型に効果があるわけではないと聞きます。それでも接種が推奨されるのでしょうか?

忽那 賢志先生忽那先生

ワクチンには「感染を防ぐ効果」と「重症化を防ぐ効果」の2つの役割があります。毎年の感染予防効果は30~70%と幅があり、完全に感染を防ぐことは難しい場合もあります。しかし、重症化予防には非常に効果的であり、高齢者や基礎疾患を持つ人がインフルエンザによる重篤な症状を避けるために重要です。ワクチンを接種することで、自分自身だけでなく周囲の人たちを守る効果も期待できます。

インフルエンザを予防するためにできること

インフルエンザを予防するためにできること

編集部編集部

インフルエンザが毎年異なる型で流行する理由を教えてください。

忽那 賢志先生忽那先生

インフルエンザウイルスは「抗原性」という性質が少しずつ変化していくため、毎年異なる流行株が登場します。A型の場合、H1N1やH3N2という2つの主要な流行株のどちらかが流行する傾向があります。一方、B型の流行株は山形株またはビクトリア株のどちらかになります。

編集部編集部

流行の予測はどのようにおこなわれるのですか?

忽那 賢志先生忽那先生

流行予測は、南半球の流行状況が大きな手がかりになります。たとえば、日本が夏の時期にはオーストラリアなどの南半球は冬を迎えています。そのため、半年先の北半球の流行を予測することが可能です。また、熱帯や亜熱帯地域のように、1年を通じて緩やかに感染が続く地域のデータを参考にしながら、次の流行株を予測します。この予測に基づいて、ワクチンの株が決定されます。

編集部編集部

日常生活で予防できる方法はありますか?

忽那 賢志先生忽那先生

基本的な予防策は、ワクチン接種が第一です。それ以外では、コロナ対策と同様に混雑した場所を避けたり、手洗いや咳エチケットを徹底したりすることが重要です。特に、症状がある人は周囲に感染を広げないためにマスクを着用することを心がけてください。また、十分な睡眠とバランスの良い食事で免疫力を高めることも効果的です。

編集部まとめ

インフルエンザの型の違いや特徴について、専門医の忽那先生に解説していただきました。普段なんとなく耳にする「A型」「B型」「新型」といった言葉の背後には、遺伝子の変化や流行の背景といった重要なポイントがあります。特に動物から人への感染リスクや、流行予測に南半球のデータが使われている点は新たな発見だったのではないでしょうか。日常の予防策はシンプルですが、毎年続けることが大切です。今年の流行に備え、ワクチン接種や手洗いの徹底を心がけましょう。

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