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「マイコプラズマ肺炎」と「肺炎」の違いを医師が解説 10・20代に発症者が多くなる?

 公開日:2024/12/24
「マイコプラズマ肺炎」と「肺炎」の違いを医師が解説 10・20代に発症者が多くなる?

最近話題に上がることが多い「マイコプラズマ肺炎」。とくに子どもや若い世代に多く見られ、初期症状が風邪と似ているため、見過ごされがちです。しかし、適切な治療を怠ると重症化する可能性もあります。本記事では、マイコプラズマ肺炎と風邪の違い、感染拡大の背景、さらに予防方法や治療法について感染症専門医の忽那賢志先生にお話を伺いました。

忽那 賢志

監修医師
忽那 賢志(大阪大学大学院医学系研究科 感染制御医学講座教授)

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山口大学医学部を卒業後、救急医療などの現場で経験を積み、その後、感染症を専門とするようになる。2009年から奈良県立医科大学感染症センターで研修し、2010年には市立奈良病院で勤務。2012年より国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。主な著書に「感染症診療とダニワールド」(シーニュ、電子書籍)、「みるトレ 感染症」(医学書院)、「症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z」(中外医学社)、「専門医が教える 新型コロナ・感染症の本当の話」(幻冬舎)など。

マイコプラズマ肺炎の概要 風邪とどのような違いがあるのか

マイコプラズマ肺炎の概要 風邪とどのような違いがあるのか

編集部編集部

マイコプラズマ肺炎は普通の肺炎とどのように異なるのですか?

忽那 賢志先生忽那先生

マイコプラズマ肺炎は、通常の肺炎とは発症の仕方や対象年齢層が異なります。最初は風邪のような喉の痛みや軽い発熱から始まり、咳が長引くのが特徴です。軽症の場合、自然に回復することもありますが、適切な治療が必要なケースも少なくありません。通常の肺炎が高齢者に多い一方で、マイコプラズマ肺炎は10代や20代の若年層や子どもに多く見られます。とくに、子どもの肺炎ではマイコプラズマが原因である頻度が高いことを医師は念頭に置いています。風邪との違いは、咳が長引き、治りにくい点にあります。

編集部編集部

最近「マイコプラズマ肺炎が流行している」と聞きますが、なぜ感染が広がっているのでしょうか?

忽那 賢志先生忽那先生

コロナ禍では、感染対策の徹底や人の移動制限があり、マイコプラズマ肺炎はほとんど見られませんでした。しかし、対策が緩和され通常の生活に戻る中で、人と人の接触が増えたため感染が拡大しています。さらに、数年間にわたり感染が少なかったことで免疫を持つ人が減少しているのも要因の一つです。そのため、現在はマイコプラズマ肺炎の感染リスクが高まっていると言えます。

編集部編集部

感染しやすい人やリスクの高い人の特徴を教えてください。

忽那 賢志先生忽那先生

とくに感染しやすい体質があるわけではありませんが、若年層、とくに子どもや10代・20代の人に多く見られます。一方、重症化しやすいのは高齢者や、慢性の呼吸器疾患や心疾患を持つ人です。こうした方々は、症状が軽度でも早めに医療機関を受診することが重要です。

マイコプラズマ肺炎の見分け方と注意点

マイコプラズマ肺炎の見分け方と注意点

編集部編集部

風邪と似た症状があると聞きますが、どうやって見分けるのでしょうか?

忽那 賢志先生忽那先生

マイコプラズマ肺炎は、風邪と症状が似ていますが、主な違いは「咳が長引く」という点です。風邪の場合、症状は通常1週間以内に改善しますが、マイコプラズマ肺炎では乾いた咳が数週間続くことがあります。この長引く咳が重要なサインです。自己判断で風邪だと思い込み、放置すると重症化する可能性があります。少しでも疑わしい場合は早めに医療機関を受診するようにしましょう。

編集部編集部

どのタイミングで病院に行くべきでしょうか?

忽那 賢志先生忽那先生

一般的に風邪は1週間程度で回復しますが、それ以上続く場合や、発熱、息苦しさ、胸の痛みといった症状が見られる場合は受診をお勧めします。また、高齢者や慢性疾患を持つ方は、早期受診を強くお勧めします。肺炎は進行すると治療が難しくなる場合があるため、油断せずに対応することが大切です。

編集部編集部

重症化した場合にはどのような症状が出ますか?

忽那 賢志先生忽那先生

重症化した場合には、通常の肺炎と同様の症状、たとえば呼吸困難や高熱、胸の痛みが見られます。ただし、マイコプラズマ肺炎は特定の抗生物質でしか治療できないため、ほかの肺炎用の抗生物質が効かない場合があります。この点が診断や治療を難しくするポイントです。正確な診断のためには、医療機関での検査が必要です。

マイコプラズマ肺炎の治療と予防

マイコプラズマ肺炎の治療と予防

編集部編集部

マイコプラズマ肺炎の治療法について教えてください。

忽那 賢志先生忽那先生

軽症の場合は自然に回復することもありますが、ほとんどの場合は抗生物質が必要です。マイコプラズマ肺炎の場合は、効く抗生物質が普通の肺炎とは種類が違うことに注意が必要です。普通の肺炎だと思って処方された抗菌薬が効かないということが起こりうると思います。そのほか、症状を和らげるために、咳止めや解熱剤が処方されることもあります。早期診断と適切な治療を受ければ、通常は数週間で回復します。

編集部編集部

一度完治しても、再び感染することはありますか?

忽那 賢志先生忽那先生

マイコプラズマ肺炎に一度感染すると免疫がつきますが、その効果は永久ではありません。数年後には再感染のリスクがあります。ただし、一度感染すると免疫ができるため、しばらくは再感染しにくいだろうと言われています。

編集部編集部

予防の方法についても教えてください。

忽那 賢志先生忽那先生

現在、マイコプラズマ肺炎に特化したワクチンはありません。そのため、感染対策として咳エチケットや手洗いが非常に重要です。咳やくしゃみをする際には口元を覆い、手指をこまめに洗うことで感染を広げない努力が求められます。また、免疫力を高めるため、規則正しい生活やバランスの取れた食事を心がけることも予防に役立ちます。

編集部まとめ

マイコプラズマ肺炎は、風邪と似た症状から始まり、軽症の場合は自然治癒することもありますが、放置すると重症化するリスクがあります。とくに子どもや若年層が感染しやすい一方、高齢者や基礎疾患を持つ方は重症化しやすいため注意が必要です。正確な知識を持ち、早めの診断・治療を心がけることで、重症化を防ぐことができます。予防には、日常生活での手洗いや咳エチケットの徹底が鍵となります。今年の流行を受け、適切な対策を講じて健康を守りましょう。

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