大流行の「マイコプラズマ肺炎」昨年の25倍…学会が注意喚起 “大人も注意すべき症状”とは
マイコプラズマ肺炎の感染者数が増加している状況について、日本呼吸器学会などの5つの学会が提言を公表して、注意を呼びかけました。このニュースについて中路先生に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
日本呼吸器学会などの提言とは?
日本呼吸器学会など5つの学会が公表した提言の内容について教えてください。また、現在のマイコプラズマ肺炎の感染状況についても教えてください。
中路先生
日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本化学療法学会、日本環境感染学会、日本マイコプラズマ学会が、マイコプラズマ肺炎についての提言を公表しました。
提言では「マイコプラズマ肺炎が学校で流行を起こしやすいことや、家庭内で子どもから大人に感染することも多い」と紹介しています。また、「飛まつによって感染が広がることから、マスクの着用や換気といった対策が有効」とも伝えています。さらに、咳などの症状があり、周囲に同じような症状の人がいる場合は、医療機関の受診を勧めています。ほかには、抗菌薬に耐性がある菌についても取り上げており「抗菌薬を投与しても数日以内に症状が改善しない場合は、再び医療機関に相談してほしい」としています。
マイコプラズマ肺炎の感染状況について、国立感染症研究所は、2024年10月14〜20日の1週間に全国約500の定点医療機関から報告された患者数を明らかにしています。報告によると、マイコプラズマ肺炎の1医療機関あたりの患者の報告数は、全国平均で2.01人となっています。これは昨年の同時期の約25倍の患者数です。また、8週連続で増加している状況となっています。1医療機関あたりの患者数の報告数が最も多くなったのは青森県で、4.83人でした。次いで佐賀県で4.67人、愛知県で4.47人、京都府で4.00人、東京都で3.84人と続いています。
マイコプラズマ肺炎とは?
感染者数が増加しているマイコプラズマ肺炎について教えてください。
中路先生
マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することで発症する呼吸器の感染症です。報告された感染者の8割は14歳以下ですが、成人の感染報告もあります。マイコプラズマ肺炎は、周期的に大流行を起こすことが知られており、日本では4年周期での流行が報告されています。
マイコプラズマ肺炎は、感染者が咳をした際のしぶきを吸い込むことや、感染者との接触によって感染します。感染してから発症するまでの潜伏期間は2~3週間と長いことが特徴です。発症すると発熱や全身の倦怠感、頭痛、咳などの症状がみられ、熱が下がっても咳が長引く傾向にあります。
マイコプラズマ肺炎の治療には、抗生物質やマクロライド系などの抗菌薬が用いられます。しかし、最近は抗生物質が効かない耐性菌も増えてきています。マイコプラズマ肺炎の感染を防ぐためには、普段から手洗いをすることが大切とされています。
日本呼吸器学会などの提言への受け止めは?
マイコプラズマ肺炎の感染拡大をめぐって公表された提言についての受け止めを教えてください。
中路先生
マイコプラズマ肺炎の多くは軽症ですが、潜伏期間が長く、気がつかないうちに感染を広げてしまう場合があるため、注意が必要です。また、集団生活をする学校で流行を起こしやすく、家に持ち帰って周囲の大人にも感染が広がることもあるため、マスクの着用や部屋の換気などの基本的な感染対策が重要であると考えます。
まとめ
マイコプラズマ肺炎の感染者数が増加している状況について、日本呼吸器学会などの5つの学会が提言を公表して、注意を呼びかけました。手洗い・うがい、飛沫感染を防ぐためのマスク着用など、できる対策は十分におこないましょう。