ヨーグルトが男性更年期障害に良いって本当? 腸内細菌ケアのススメ【医師解説】
男性更年期障害は、加齢やストレスによって男性ホルモン「テストステロン」が低下し、身体や精神に多様な不調を引き起こします。近年、腸内細菌がこの男性更年期障害に関わる可能性も報告されています。そこで専門家の堀江重郎先生に男性更年期障害の症状、腸内細菌の役割、治療法、そして予防策について解説してもらいました。
監修医師:
堀江 重郎(順天堂大学医学部泌尿器科学講座主任教授)
男性更年期障害とは?
編集部
男性更年期障害とは、どのような症状が表れるのでしょうか?
堀江先生
男性更年期障害では、テストステロンの低下により倦怠感、集中力の低下、不眠、筋力低下、体重増加などが生じます。また、精神面ではイライラ、不安感、落ち込みが見られます。ただし、これらの症状はすべての男性に出現するわけではなく、個人差が大きいのです。症状が進むと、生活習慣病やうつ病のリスクも高まるため、早期に専門医に相談することが重要になります。
編集部
なぜ男性更年期障害は環境の影響を受けるのですか?
堀江先生
女性の更年期障害は閉経という遺伝的要因が主ですが、男性の場合、社会的環境の変化やストレスによる影響が大きくなります。例えば退職、転職、社会的なつながりを失うことは、テストステロンの低下を招きやすくなります。一方で、趣味やコミュニティへの参加がストレス軽減につながり、ホルモンバランスの維持に役立ちます。
編集部
男性更年期障害はどのように診断されるのですか?
堀江先生
診断には、症状を評価する質問票「AMSスコア」と血液検査によるテストステロン濃度の測定が組み合わされます。ただし、テストステロン濃度には個人差があるため、ホルモン濃度だけでなく、全体的な症状を考慮した診断が求められます。
腸内細菌とホルモンの関係
編集部
腸内細菌が男性更年期障害に影響するという話を聞きました。
堀江先生
腸内細菌には、ホルモンの材料を作り出す役割があります。一部の動物研究では、腸内細菌がテストステロンの分泌に関与していることが報告されています。ただし、人間での研究はまだ初期段階ですので、直接的な因果関係はまだ明確ではありません。
編集部
腸内環境を整えるためにはどうすればいいですか?
堀江先生
腸内環境を整えるためには、発酵食品(ヨーグルト、納豆、味噌など)を摂取することが効果的です。さらに、ビタミンDを含む魚類(特に鮭)や亜鉛を多く含む貝類も腸内細菌を活性化させます。これらを意識した食生活は、全身の健康維持にもつながります。
編集部
漢方薬の役割について教えてください。
堀江先生
漢方薬は、腸内細菌の調整を通じてホルモンバランス維持のサポートをします。「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」や「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」は、更年期症状を和らげることに役立ちます。ただし、漢方薬は体質に合わせて処方されるべきですので、やはり専門の医師に相談してください。
治療と予防のための具体的アクション
編集部
男性更年期障害の治療法にはどのようなものがありますか?
堀江先生
軽症の場合、生活習慣の見直しが基本になります。例えば運動(有酸素運動や筋力トレーニング)を取り入れることで、テストステロンの自然な分泌を促します。また、趣味を持つことやストレス管理も重要です。重症の場合は、テストステロン補充療法を検討します。
編集部
テストステロン補充療法のリスクはありますか?
堀江先生
テストステロン補充療法には、副作用として精子の一時的な減少やホルモンバランスの過剰調整のリスクがあります。しかし、適切に管理すれば、安全性は高い治療です。また、治療中は定期的に血液検査を受けることでリスクを最小限に抑えられます。
編集部
男性更年期障害を予防するには、どのような生活習慣が必要ですか?
堀江先生
予防には、社会的なつながりの維持が非常に効果的です。趣味のサークルや地域活動に参加することで孤立を防ぎ、精神的な健康を保てます。また、腸内環境を整える食事や十分な睡眠、定期的な健康診断も重要です。
編集部まとめ
男性更年期障害は、適切な対策で症状を緩和できる可能性が高いようです。腸内細菌との関係についてはさらなる研究が進んでいますが、腸内環境を整えることが全体の健康維持に役立つことは間違いありません。本記事を参考に、日々の生活に少しずつ健康習慣を取り入れてみてください。