抗がん剤治療による「まつ毛・眉毛脱毛」をケアする『医療アートメイク』とは?【医師解説】

抗がん剤治療による頭髪やまつ毛、眉毛の脱毛に代表される外見の変化は、日常生活や対人関係にも影響を及ぼす場合があります。こうした外見の変化に対する支援の一つである「アピアランスケア」や、その一環の「医療アートメイク」について、日本大学病院 乳腺・内分泌外科の小関淳先生に解説してもらいました。
※2026年3月取材。

監修医師:
小関 淳(日本大学病院)
がん治療による外見の悩みを和らげる「アピアランスケア」とは

編集部
アピアランスケアについて教えてください。
小関先生
アピアランスケアとは、がんやその治療に伴う外見の変化から生じる苦痛を軽減する支援です。厚生労働省は「医学的・整容的・心理社会的支援を用いて、外見変化に起因する苦痛を軽減するケア」と定義しています。
編集部
抗がん剤による脱毛などですか?
小関先生
脱毛のほか、皮疹や色素沈着、爪の障害なども含まれます。抗がん剤治療の副作用として脱毛が起こり、頭髪がほぼすべて抜けてしまうケースも少なくありません。外見が変わる不安を抱える人は多い傾向にあるため、外見の悩みを軽減し、QOL(生活の質)を上げる目的でアピアランスケアを行うのです。
編集部
どのような人が相談しに来るのですか?
小関先生
がん治療中の人をはじめ、治療前後の不安を抱える人も相談対象です。例えば治療前の「どのような外見変化が起こるのだろう」「今から準備できるものはないか」といった不安や、治療後の「いつか戻ると言われたが戻らない」といった悩みにも対応しています。特に入院や外来フォローが終わった後は相談先が分からず一人で悩む人も多い傾向にあります。そんな人たちの困りごとを整理し、利用できる支援につなげる役割を担います。
編集部
相談にはどのような医療者が関わるのですか?
小関先生
主に医師や看護師などの医療従事者です。医師が診察し、治療内容や全身状態、使用薬剤などを確認したうえで、適切な支援方法を一緒に整理します。医療機関でのアピアランスケアは、がん治療の状況に合わせて安全性に配慮しながら提案できる点が強みです。外見の悩みだけでなく、仕事や外出など生活上の負担も含めて支援し、必要なら他職種や相談窓口へつなげます。
まつ毛・眉毛の脱毛と医療アートメイク

編集部
抗がん剤治療では、髪の毛だけでなく、まつ毛や眉毛も抜けると聞きます。
小関先生
はい。まつ毛や眉毛が抜けるケースは少なくありません。まつ毛や眉毛が薄くなると表情の豊かさがなくなったり、疲れて見えたりして顔の印象が大きく変わるため、人と会うのに抵抗を感じる人もいます。その都度アイブロウペンシルなどで眉を描くことも可能ですが、脱毛の悩みに対するアピアランスケアの一環として「医療アートメイク」という選択肢もあります。
編集部
医療アートメイクについて、もう少し詳しく教えてください。
小関先生
医療アートメイクは、医師の管理下で専門知識を持つ医療従事者が行う医療行為です。真皮の深い層に色素を入れるタトゥーとは異なり、アートメイクは皮膚のより浅い層に色素を入れるため、肌のターンオーバーの影響などで1~2年ほどで徐々に薄くなり、分からなくなる傾向にあります。患者さんによって色の抜け方が異なるため、一般的には一度施術したあと、2~3カ月ほど経過を見てリタッチ(色の補充や形の修正)を推奨しています。永久的に残らないため、その時の好みや流行に合わせて眉の形を変えられるメリットがあります。施術前に医師が診察を行い、治療内容や皮膚の状態、感染リスク、注意点などを確認します。そのうえで専任の看護師が施術を担当し、施術後の経過やケア方法も含めて、医療として安全に進めていきます。特にがん治療中の人の場合は、施術の可否やタイミングを医師が確認するため、より安心して受けられます。
編集部
まつ毛の脱毛に対しては、どのように考えればよいですか?
小関先生
アイラインの施術で目元の輪郭を補い、表情の印象を整える方法があります。医療アートメイクで「まつ毛」を作るわけではありませんが、つけまつ毛などほかの工夫との組み合わせも可能です。頭髪の脱毛にはウィッグ、眉の脱毛には眉の医療アートメイク、まつ毛の脱毛にはアイラインの医療アートメイクなど、困りごとに応じて現実的な選択肢を整理し、無理なく続けられる方法を一緒に検討します。
編集部
さまざまなアピアランスケアがあるのですね。
小関先生
ほかにも、乳房切除や乳輪乳頭切除を受けた人に対する乳輪乳頭の医療アートメイクもあります。どのアピアランスケアも医師が診察し、治療の状況や体調を確認したうえで適応を判断します。
自費診療と受診時の注意点

編集部
医療アートメイクをする際の注意点はありますか?
小関先生
免疫が下がっている時期と重ならないよう、施術のタイミングを医師と相談して決める必要があります。医療アートメイクの施術後は、しばらくの間その部位から感染が起こりやすくなる可能性があります。特に抗がん剤治療を受けている患者さんの場合は免疫が低下している場合もあるため、通常のアートメイク後以上に感染対策へ注意しなければなりません。医療アートメイクは比較的浅い層に色素を入れる施術であり、感染のリスクは低いとされていますが、理論上のリスクの一つとして知っておくべきです。
編集部
医療アートメイクについて、ほかに知っておくべき点はありますか?
小関先生
医療アートメイクは保険適用ではなく自費診療です。医療機関ごとに料金設定は異なります(相場は1回あたり5~7.5万円)。目的や不安点、治療状況も含めて確認し、納得したうえで進めてください。また、「アートメイク」という名称から女性のみと思われがちですが、男性も受けられます。不安な人はぜひご相談ください。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージをお願いします。
小関先生
医療アートメイクのほかにも、さまざまなアピアランスケアがあります。がんだからといって治療による見た目の変化を「仕方ない」と考えるのではなく、前向きに過ごすための選択肢としてアピアランスケアを検討してみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
抗がん剤治療によるまつ毛・眉毛の脱毛は、多くの人にとって外見だけでなく心理面にも大きな影響を与えます。がん治療に向き合う人たちが、前向きに、自分らしく生きていくことができるようになれば幸いです。
医院情報
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| 診療科目 | リハビリテーション科、内科、呼吸器外科、呼吸器科、外科、小児科、形成外科、循環器科、心臓血管外科、放射線科、整形外科、泌尿器科、消化器科、産婦人科、皮膚科、眼科、精神科、耳鼻咽喉科、脳神経外科、麻酔科 |
| 診療時間 | 午前: 月~金 8:00~11:00 土 8:00~11:30 (初診受付時間/科目毎時間・曜日あり/一部予約制) 午後: 月~金 13:00~15:00(初診受付時間/科目毎時間・曜日あり/一部予約制) |
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