『がん治療』によって生じた外見の変化を補う「アピアランスケア」とは?【医師解説】

抗がん剤治療などに伴う脱毛や術後の変化は、治療とは別の苦痛につながる場合があります。がん治療に伴う外見の変化に、医療面や見た目のケア、心、社会生活の面から寄り添う「アピアランスケア」と、眉毛などの脱毛に対する医療アートメイクについて、小関淳先生(日本大学病院)に解説してもらいました。

監修医師:
小関 淳(日本大学病院)
アピアランスケアとは?

編集部
アピアランスケアとはどのような取り組みですか?
小関先生
アピアランスケアとは、がんやがん治療に伴う外見の変化による苦痛を軽減するための支援です。脱毛や色素沈着、術後の傷あとなど幅広い変化を対象とし、医学的・整容的・心理社会的支援を組み合わせながら、患者さんらしい生活を支える目的があります。
編集部
抗がん剤による脱毛は聞いた経験があります。
小関先生
がん治療における代表的な治療方法の一つである抗がん剤では、副作用として脱毛が生じる場合があります。多くのケースで、投与開始から2〜3週間ほどで抜け始め、その後は頭髪がほぼ全体的に抜けてしまいます。
編集部
外見が変化した人のケアやサポートを行うのですね。
小関先生
はい。外見の変化は社会生活や対人関係にも影響を及ぼすため、外見変化への対策は重要ながん患者支援の一つです。厚生労働省がアピアランスケアを『医学的・整容的・心理社会的支援を用いて、がんやその治療に伴う外見変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケア』と定めている背景もあり、最近ではアピアランスケアに特化した部門を設ける医療機関も増えています。
編集部
どのような人が相談しているのでしょうか?
小関先生
がん治療中の人にくわえ、治療前に副作用が不安な人や治療後しばらく経っても外見が回復せず悩んでいる人などもいます。治療終了後を含め、時期も性別も関係なく相談してもらうことができます。
医療アートメイクとは? 眉毛の脱毛への選択肢

編集部
アピアランスケアはどのような職種の人が対応するのでしょうか?
小関先生
医師の管理のもと、専門知識を持つ医療従事者が対応します。がん治療の内容や全身状態を踏まえ、安全性に配慮しながら選択肢を提案できる点は、医療機関で行うアピアランスケアの特徴です。がん治療とアピアランスケアを同じ医療機関で実施できると連携も取りやすく、患者さんの安心につながります。
編集部
医療アートメイクについても教えてください。
小関先生
医療アートメイクは、医師の管理下で医療従事者が行う医療行為です。皮膚の浅い層に色素を入れ、眉毛や乳輪・乳頭などを再現します。以前はエステサロンなどでも行われていましたが、現在は医療機関でのみ施術が可能です。当院でも、医療アートメイクをアピアランスケアの一環として実施しています。
編集部
眉毛も抜けてしまうのですね。
小関先生
抗がん剤は髪の毛が抜けるものとイメージしている読者が多いかもしれませんが、抗がん剤治療を受ける人は、眉毛も抜けてしまうケースが多い傾向にあります。眉毛は顔の印象を大きく左右するため、アートメイクで再現し、外出への不安を軽減させ、見た目の回復だけでなく気持ちの安定にもつながる可能性があります。
アピアランスケア、相談のタイミングや考え方

編集部
どのタイミングで相談するのがよいのでしょうか?
小関先生
抗がん剤治療中にまつ毛や眉毛が抜けてしまった場合にくわえ、乳房切除術の前や抗がん剤治療前、医師から説明を受けた段階でも相談可能です。また、治療後数年経過してから外見の変化が元に戻らず、不安を感じた場合なども対象になります。悩みが続くようであれば、一人で考え込まず早めに相談してください。
編集部
医療機関で幅広い範囲まで支援してくれるのは非常に心強く感じます。
小関先生
今後ますます広がっていくべき分野だと考えています。2021年版の『がん治療におけるアピアランスケアガイドライン』では、化学療法による眉毛脱毛に対するアートメイクについて「がん患者のQOL(生活の質)が改善するという十分なエビデンスも、逆に合併症やMRI検査への影響などの害を示すエビデンスも、いずれもほとんどない」と記載されています。今後はQOL向上などに関してもエビデンスが確立されるとよいと考えています。
編集部
費用についても気になります。
小関先生
医療アートメイクは現在、保険適用がないため自費診療です。施術前に医師の診察を行い、適応やリスクを確認します。医療機関ごとに料金設定は異なる(相場は1回あたり5~7.5万円)ため、内容や回数について十分に説明を受け、理解・納得したうえで意思決定をする必要があります。
編集部
リスクとはどんなものでしょうか?
小関先生
医療アートメイクの施術後しばらくの間、感染が起こりやすくなる可能性があります。抗がん剤治療を受けている人は免疫が低下している場合もあるため、より一層感染対策に気をつける必要があります。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージをお願いいたします。
小関先生
医療アートメイクのほかにも、傷あとを専用テープでケアしてきれいな修復を促す「傷あとケア」や、抗がん剤治療の際に頭皮を冷やして血流を抑え、抗がん剤の影響を受けにくくし脱毛軽減を目指す「頭皮冷却療法」などのアピアランスケアもあります。頭皮冷却療法は専用装置を用いた機械式の冷却であり、従来の氷嚢や保冷剤による方法とは異なるものです。がん治療におけるアピアランスケアガイドラインでも推奨されている方法の一つです(主に乳がん患者さん向けにガイドラインで推奨されている)。「がんがよくなるなら脱毛は仕方がない」「手術したのだから傷あとは仕方がない」とあきらめるのではなく、がん治療中や治療後も少しでも前向きに過ごせるよう、アピアランスケアの選択肢を多くの人に知ってもらえると幸いです。
編集部まとめ
がん治療による外見の変化は、身体的な問題だけでなく心理面にも影響を及ぼします。アピアランスケアは医学的・整容的・心理社会的支援を通じて患者さんの負担を軽減する取り組みです。医療アートメイクは自費診療ではあるものの、眉毛などの脱毛に対する選択肢の一つとなっています。まずは正しい情報の取得が第一歩といえるでしょう。
医院情報
| 所在地 | 東京都千代田区神田駿河台1-6 |
| 診療科目 | リハビリテーション科、内科、呼吸器外科、呼吸器科、外科、小児科、形成外科、循環器科、心臓血管外科、放射線科、整形外科、泌尿器科、消化器科、産婦人科、皮膚科、眼科、精神科、耳鼻咽喉科、脳神経外科、麻酔科 |
| 診療時間 | 午前: 月~金 8:00~11:00 土 8:00~11:30 (初診受付時間/科目毎時間・曜日あり/一部予約制) 午後: 月~金 13:00~15:00(初診受付時間/科目毎時間・曜日あり/一部予約制) |
| 休診日 | 第5土・日・祝・10/4(創立記念日)・年末年始(12/30~1/3)・ゴールデンウィーク(5/3~5/6) |




