痛みの原因は筋膜? 『慢性的な痛み』を緩和する「ハイドロリリース」【医師監修】

首や肩、腰などの痛みが続いているものの、画像検査でははっきりした異常が見つからず、治療に悩む人は少なくありません。近年、エコー機器の普及により、筋膜やその周囲を走行する神経・血管の動きが、痛みや機能障害に関与していることが分かってきました。今回は、ハイドロリリースという治療法について、医療法人ベネヴォラ 磯見整形外科医院院長の磯見先生に詳しく聞きました。
※2026年2月取材。

監修医師:
磯見 卓(医療法人ベネヴォラ 磯見整形外科医院)
ハイドロリリースとは、どんな治療?

編集部
ハイドロリリースとは、どのような治療法でしょうか?
磯見先生
ハイドロリリースは、エコーで患部を確認しながら、生理食塩水などの液体を注入し、筋膜やその周囲組織における滑走性の改善を図る治療です。筋肉や関節に明らかな異常がなくても、筋膜の動きが悪くなることで痛みが生じる場合があり、特に神経の滑走障害を伴うと患者さんは強い痛みを感じる傾向にあります。ハイドロリリースは、そうした病態に対して行われる治療で、ここ数年注目されている方法です。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
磯見先生
肩や腕に慢性的な痛みがある場合、押すと痛みが広がる硬いしこりのような部位が見られることがあり、これを「トリガーポイント」と呼びます。エコーを用いた研究から、こうした部位は筋膜と関連があることが分かってきました。筋膜は全身を覆う結合組織で、滑走障害が生じると動きが悪くなり、凝りや痛みの原因になります。ハイドロリリースは、滑走障害に対してアプローチする治療です。
編集部
なぜ、この治療法が注目されるようになったのですか?
磯見先生
エコー機器の普及により、筋膜や神経、血管の走行や動きをリアルタイムで確認できるようになったことが大きいと思います。これまで評価が難しかった滑走障害などを視覚的に捉えられるようになり、痛みの原因の一つとして筋膜に注目が集まるようになりました。
編集部
治療は、どのような流れで行われるのでしょうか?
磯見先生
エコーで患部を確認しながら、滑走障害が見られる部位に生理食塩水や薬液を注入します。筋膜は何層にも重なった構造をしているため、層と層の間に液体を入れるようなイメージです。こうした操作によって組織の動きを改善し、筋膜の滑走障害に関連した痛みの緩和を目指します。
どんな症状に向いている?

編集部
ハイドロリリースは、どのような症状で検討されることが多いのでしょうか?
磯見先生
ハイドロリリースは、首や肩、腰の慢性的な痛みから、肩関節の拘縮、手足の痛みや違和感まで、ほぼ全身の症状を対象としています。いわゆる「ぎっくり腰」の痛みの緩和が期待できる場合もあります。特に、画像検査では明確な損傷が見つからないにもかかわらず、「動かすと痛い」「同じ姿勢を続けると症状が強まる」といったケースに有用です。
編集部
急性の痛みより、慢性的な症状に向いている治療ですか?
磯見先生
必ずしも慢性に限るわけではありませんが、経過が長く、原因のはっきりしない痛みがある場合に選択されることが多い印象です。急性期の強い炎症が主因の場合は、別の治療を優先することもあります。
編集部
年齢や性別による向き、不向きはありますか?
磯見先生
年齢や性別で明確に制限されず、筋肉や骨格系の痛みの治療に幅広く用いられます。ただし、症状の背景や体の状態には個人差があるため、診察や評価を行った上で適応を判断することが重要です。
編集部
すべての痛みに対して、効果が期待できる治療ではないということですね。
磯見先生
そのとおりです。痛みの原因は一つではないため、筋膜や神経の滑走障害が関与していない場合には十分な変化が得られないこともあります。治療を選択する前に、原因を丁寧に見極めることが大切です。
治療を受ける際の注意点

編集部
ハイドロリリースの治療には、どのくらい時間がかかるのでしょうか?
磯見先生
処置自体は外来診療中の数分程度で終了します。注射時に軽い刺激を感じることはありますが、処置後に強い痛みが残るケースはほとんどなく、ほかの外科的治療と比べて体への負担が少ない治療だと考えています。
編集部
治療を受ける際に、あらかじめ知っておいた方がよい点はありますか?
磯見先生
一度の治療で症状が改善するとは限らない点を理解しておく必要があります。症状や部位によっては、複数回の治療を行ったり、ほかの治療と組み合わせたりすることもあります。当院では、ハイドロリリースと並行してリハビリテーションを行い、筋肉や関節の動きをスムーズにしながら全身のバランスを整えていきます。また、姿勢の癖や生活習慣、特定の筋肉への偏った負担にも着目し、理学療法に加えて、日常生活で実践しやすい動作の工夫や体操についても指導しています。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
磯見先生
ハイドロリリースは、エコーの進歩により今まで見えていなかった筋骨格の状態が可視化できたことで可能になった、近年注目されている治療です。体への負担が少なく、早期に痛みの和らぎを実感できることが多いため、痛みの軽減や関節の動きの改善に役立つ方法だと考えます。痛みや動かしにくさを感じる人は、この治療法を取り入れると症状が緩和されるかもしれません。
編集部まとめ
ハイドロリリースは、エコーを用いて筋膜やその周囲組織の滑走障害に着目した治療法です。幅広い痛みが対象となり、短時間で行うことができる上に、痛みの緩和が期待できます。気になる人は、近くのハイドロリリースを実施している医療機関に相談してみるのもいいかもしれません。
医院情報

| 所在地 | 神奈川県逗子市久木8-20-17 |
| 診療科目 | リハビリテーション科、整形外科 |
| 診療時間 | 午前: 月火木金土 9:00~11:30 午後: 月火木金 15:00~18:00 |
| 休診日 | 水・日・祝 |



