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痩せている人も「脂肪肝」になるってホント? “隠れ脂肪肝”とは?【医師解説】

 公開日:2026/05/04
痩せている人も「脂肪肝」になるってホント? “隠れ脂肪肝”とは?【医師解説】

「太っていないから脂肪肝とは無縁」と思っていませんか?:じつは、痩せている人でも脂肪肝になるケースは少なくありません。生活習慣や体質が影響して起こる“隠れ脂肪肝”について、原因やリスクを三田医院院長の奥山秀平先生に聞きました。

※2025年12月取材。

奥山 秀平

監修医師
奥山 秀平(三田医院)

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1999年3月杏林大学医学部卒業。杏林大学第3内科(消化器内科、糖尿病代謝内科)入局。国立横浜病院(現国立横浜医療センター)消化器内科、焼津市立総合病院代謝内分泌内科、杏林大学第3内科(消化器内科)聖路加国際病院消化器内科を経て2025年5月三田医院を開院。

痩せている人でも脂肪肝になる?

痩せている人でも脂肪肝になる?

編集部

脂肪肝は太っている人だけの病気ではないのですか?

奥山 秀平先生奥山先生

痩せている人でも脂肪肝になる場合があります。脂肪肝は肥満の人に多い病気と思われがちですが、「Lean MASLD(リーン脂肪肝)」と呼ばれ、近年注目されています。特に日本人は遺伝的に、痩せていても脂肪肝になりやすい傾向にあります。

編集部

痩せていても内臓脂肪はたまるのですか?

奥山 秀平先生奥山先生

はい。見た目は細くても、内臓周囲に脂肪が蓄積するケースは多く見られます。特に注意が必要なのは、20代の頃にかなり痩せていた人が年齢とともに体重が増加し、現在は標準体重となっているケースです。

編集部

標準体重でも注意が必要な理由はなぜですか?

奥山 秀平先生奥山先生

増加した体重の内訳が脂肪である可能性が高いためです。たとえば、若い頃のBMI(体格指数)が18程度だった人が、現在BMI22になっている場合、数値上は肥満に該当しません。しかし、運動習慣がないまま体重が増えていると、その増加分の多くは筋肉ではなく脂肪である疑いが強まります。その結果、見た目は痩せていても、実際には脂肪肝を合併している場合が多いといえます。

編集部

BMIが正常でもリスクはあるのですか?

奥山 秀平先生奥山先生

リスクはあります。BMIの数値だけでは、脂肪肝のリスクは判断できません。むしろ、20代の頃に比べて現在のBMIが増加している場合は、脂肪肝を合併している可能性が高いと言えます。

編集部

男性と女性で差はありますか?

奥山 秀平先生奥山先生

飲酒量やホルモン、体脂肪のつき方によって男女差が出る場合もあります。通常の脂肪肝は男性に多く見られます。一方で、痩せている人の脂肪肝は、男性だけでなく女性にも多いとされています。

「痩せているのに脂肪肝」の原因は?

「痩せているのに脂肪肝」の原因は?

編集部

痩せているのに脂肪肝になる“体質”は本当にあるのですか?

奥山 秀平先生奥山先生

はい、あります。痩せ型脂肪肝には、遺伝体質が大きく関係していると考えられています。特に日本人は、肝臓で脂肪をエネルギーへ変える能力が遺伝的に弱い人が多いと判明しており、体型がスリムでも肝臓に脂肪が蓄積しやすい傾向にあります。また、筋肉量が少ないと基礎代謝が低下し、脂肪燃焼が十分に行われなくなるため、痩せていても内臓脂肪が増えやすくなります。

編集部

食事の内容が原因になるケースはありますか?

奥山 秀平先生奥山先生

はい。痩せている人の中には「量は食べないものの、糖質に偏りがち」という人が少なくありません。白米、パン、麺類、甘い飲み物、お菓子など、脂肪よりも糖質を多く摂る食習慣は、肝臓で中性脂肪を作りやすい状態を招きます。

編集部

食事の摂り方も関係しますか?

奥山 秀平先生奥山先生

食事の時間が不規則であったり、朝食を抜いたりして血糖値が急上昇する“ドカ食い”につながる場合も、脂肪肝の原因になります。痩せていても、食事内容によって肝臓へ負担がかかるケースは多いといえます。

編集部

そのほかの原因はありますか?

奥山 秀平先生奥山先生

筋肉量や運動習慣も関係しています。痩せている人は「脂肪が少ないから大丈夫」と運動を軽視しがちです。しかし実際には、筋肉量が少ないと脂肪を燃やす機能が弱くなり、肝臓に脂肪が蓄積しやすい状態になります。慢性的な運動不足も、脂肪肝の大きなリスクです。

編集部

食事や運動以外の原因はありますか?

奥山 秀平先生奥山先生

ホルモンバランスの乱れや、腸内環境の悪化によって脂肪肝になるケースもあります。女性は閉経後にエストロゲン(※1)が減少すると脂肪代謝が低下し、肝臓に脂肪がつきやすくなる場合があります。一方男性も、更年期を迎えてテストステロン(※2)が不足すると、内臓に脂肪がつきやすくなります。

編集部

加齢以外に影響を与える要素はありますか?

奥山 秀平先生奥山先生

腸内細菌の働きが低下すると、食べ物から吸収されるエネルギーの使い方が変化し、肝臓に脂肪をため込みやすくなると知られています。ストレスや睡眠不足によるホルモンの乱れも、大きな影響を与えます。

脂肪肝が疑われるときには?

脂肪肝が疑われるときには?

編集部

脂肪肝にはどのような症状がありますか?

奥山 秀平先生奥山先生

脂肪肝の多くは、自覚症状がほとんどありません。健康診断の血液検査(ALT・ASTの上昇、およびASTよりALTが高い値となる※3)や、腹部エコーで肝臓が白く見えることで、初めて気づく人がほとんどです。ただし、放置すると炎症が進行し、MASH(マッシュ/代謝異常関連脂肪肝炎)や肝硬変、肝がんへ進展するリスクがあるため、早期の対応が必要です。

編集部

どのような検査を受ければよいですか?

奥山 秀平先生奥山先生

血液検査(ALT、AST、γ-GTP※4)と腹部エコーが基本です。より詳しく調べるために、肝硬度測定(エラストグラフィ)や超音波減衰法、MRI検査、肝生検などを行う場合もあります。

編集部

疑わしい場合はどう対処すればよいのでしょうか?

奥山 秀平先生奥山先生

糖質の摂りすぎを避ける、間食を減らすなど食習慣を見直すほか、運動習慣を身につける対策が効果的です。筋肉量を維持しながら脂肪を減らす意識が大切です。

編集部

痩せていても定期的に健診を受けるべきですか?

奥山 秀平先生奥山先生

はい。体型だけではリスクを判断できないため、定期的な検査が非常に重要です。特に若い頃より体重が増えた人は要注意です。ご家族に脂肪肝と診断された人がいる場合も、気をつけたほうがよいでしょう。

編集部

最後に、メディカルドック読者へのメッセージをお願いいたします。

奥山 秀平先生奥山先生

体型やBMIだけで健康状態を判断するのは危険です。たとえBMIが正常範囲内でも、健康診断で異常を指摘された場合はそのまま放置せず、早めに医療機関を受診してください。ASTよりALTが高い場合は、栄養の摂りすぎによる脂肪肝の可能性が高い状態です。腹部エコーも、脂肪肝発見の重要な手がかりになります。自己判断せず正確な評価を受ける姿勢が、将来の肝臓病を防ぐ第一歩です。

編集部まとめ

「標準体重だから安心」と思いがちですが、体内で起きている変化は外見だけではわかりません。ASTやALTの異常、エコー所見は、体からの大切なサインです。早めに医療機関で確認する意識が、将来における大きな病気を防ぐ近道になります。

医院情報

三田医院
所在地 東京都港区芝5-3-10
診療科目 肝臓内科、消化器内科、内科
診療時間 月・火・木・金:午前 9:00~14:00
月・火・木・金:午後 16:00~18:30
水:15:00~18:30
休診日 水曜午前・土曜・日・祝

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