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「肺がんの生存率」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】

 更新日:2024/03/19
「肺がんの生存率」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】

「肺がん」は日本のがんの死亡原因の第一位となっているがんの種類で、早期発見と治療が大切です。日本人のがんの中で一番多いとはいっても、名前は聞くが詳しくは知らないという方も多いでしょう。

肺がんには4つの種類と大まかに0−4に分けられたステージと呼ばれる病気の進行レベルを表す指標があります。どのステージで病気が発見され、どの肺がんの種類かによって生存率も大きく影響します。

肺がんの種類・ステージによって、どれほどの生存率があるのでしょうか。この記事では肺がんの生存率について、また症状・治療法・早期発見のポイントなども併せて解説します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

肺がんとは

肺がんは気管支や肺胞と呼ばれる酸素と二酸化炭素の入れ替えを行う細胞が、何らかの理由によってがん化したものです。
大まかに非小細胞肺がん・小細胞肺がんに分けられ、非小細胞肺がんはさらに腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんの3種類、全体では4種類に分けられます。
肺がんの中では肺腺がんが最も多く、肺がんの約50%以上を占めていて、ついで扁平上皮がん・小細胞肺がん・大細胞がんが続きます。また肺がんは進行すると、血液やリンパ液を介して肺内の別の部位や骨・脳・肝臓・副腎に転移する可能性があるため、注意が必要となるでしょう。
また肺がんは喫煙と大きな関係があり、喫煙者は非喫煙者と比べて男性で4.4倍、女性で2.8倍肺がんになりやすいといわれています。
しかし、自分は喫煙をしていない、周りに喫煙者がいないなら肺がんにならないというわけではありません。ほかにもアスベストに長期間晒されるような状況下にあった時には肺がんになる危険性が高くなるといわれています。

小細胞肺がん

肺がんの治療は小細胞がんかそれ以外かによって治療法が大きく異なります。小細胞がんは、化学療法や放射線療法が効果的ながんですのでそれらでの治療を行います。手術はごく早期に手術によってがんをとり切ることができる場合に行われます。

非小細胞肺がん

非小細胞肺がんは小細胞肺がん以外の3種類、つまり腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんです。非小細胞肺がんの治療法を選ぶ際には、他に病気があるか・肺の機能はどのくらい残っているか・治療に耐えられる体力は残っているかなどを判断してから選択されます。
非小細胞肺がんの患者さんは特定の遺伝子に異常が認められることがあり、その遺伝子異常に対する薬での治療が行われることもあるでしょう。他にも、手術療法・放射線治療・化学療法などを組み合わせて患者さん個人の体力に合わせた治療が選択されています。

肺がんのステージ別生存率

肺がんにはがんの進行レベルを分類した0−4のステージがあり、ステージによってがんの生存率も異なります。また生存率は5年生存率が使用されることが多く、5年先生存している可能性を示すものです。
生存率には実測生存率と相対生存率の2種類があり、前者はがん以外の原因で亡くなったケースを含み、後者はがん以外の原因で亡くなったケースを除きます。ではここで、肺がんのそれぞれのステージとその生存率について解説しましょう。

肺がんステージ0(0期)

上皮内がん、つまりがんが粘膜内にとどまっており、リンパ節への転移がないものをステージ0と呼んでいます。ステージ0の場合の5年生存率は97%と統計では示されています。

肺がんステージ1(I期)

がんが肺の中だけにあり、他の臓器への転移がない状態をいいます。ステージ1はさらにIAとIBの2つに分類されます。全年齢で5年生存率は73.1%となっています。

肺がんステージ2(II期)

肺がんが近くのリンパ節に転移している状態、もしくはリンパ節への転移はないが、肺の中のがん細胞が大きく3cmを超える状態をいいます。5年生存率46%となっています。

肺がんステージ3(III期)

肺がんが、肺の周りの心臓を囲む胸膜や胸壁に転移が見られ、首や食道近くのリンパ節に転移している状態をいいます。5年生存率は25.3%となっており全体の約1/4です。ステージIIと比べると大きな差があることがわかります。

肺がんステージ4(IV期)

原発の肺がんが、肺の他の場所もしくは脳・骨・肝臓・副腎などの遠く離れた臓器にも転移がある状況をいいます。ステージⅣでは5年生存率は6.4%となっており、予後はかなり厳しい状況であることがわかります。

肺がんの一般的な症状

肺がんのステージ0・Iの場合にはがんの組織が肺内のみに限定されており、ほとんどの場合症状が現れません。ステージIIの場合にもほとんど症状がないことが多いです。ステージIIIになると、

  • 胸の痛み
  • 息苦しさ
  • 発熱
  • 咳や痰
  • 食べ物の飲み込みにくさ(嚥下(えんげ)障害)
  • 声が出にくい(嗄声(させい))
  • 顔や首・腕の腫れ(がん細胞が大きな静脈の血流を邪魔している場合にのみ)

などの症状が現れます。またステージIVでは、肺以外の臓器にも転移している可能性があるため、転移した臓器に関連した症状がみられます。

  • 骨に転移:痛み・骨折
  • 脳に転移:頭痛・めまい
  • 肝臓に転移:黄疸・腹水
  • 吐き気・嘔吐
  • 食欲不振・体重減少
  • 混乱(意識の混濁など)・精神機能の障害

もしも、上記のような症状が見られる場合には、早急に医療機関へ受診してください。

肺がんの進行速度はどれくらい?

肺がんの進行度合いは先ほどのステージ分類で表されますが、進行速度にはいくつかの要因があります。

  • 原発巣、つまりおおもととなる肺がんの組織の大きさや広がりの程度
  • 心臓が収納された両肺の真ん中部分にある胸腔内や鎖骨の上あたりのリンパ節への転移があるかどうか
  • がんができた場所、つまり原発巣から離れた臓器(脳・骨・肝臓・副腎など)やリンパ節への転移の有無

ステージ別の生存率を1年・2年・3年・4年・5年と追っていくと早期に発見された方が、つまりステージが低い段階で発見された方が生存率も高く、経年を追っても生存率が高いことがわかります。

  • ステージI:1年生存率95%/2年生存率約84%/3年生存率約82%/4年生存率約77%/5年生存率約73%
  • ステージII:1年生存率約84%/2年生存率約68%/3年生存率約58%/4年生存率約51%/5年生存率約46%
  • ステージIII:1年生存率約69%/2年生存率約47%/3年生存率約36%/4年生存率約29%/5年生存率約25%
  • ステージIV:1年生存率約39%/2年生存率約20%/3年生存率約12%/4年生存率約9%/5年生存率約6%

このようにいかに早期発見が大切なのかがよくわかります。早期発見に関しては後述の質問を参考にしてください。

肺がんの治療方法

肺がんの治療はどのような方法があるのでしょうか。がん組織を手術で切り取る手術療法を始め、放射線治療・薬物療法などのよく知られた治療法の他、分子標的治療やCAR-T細胞療法についても解説しましょう。

手術療法

手術療法はがんがある部位を外科的に切り、取り除く方法です。手術は年齢や体力などのほかの要素も重要な指標となるため、総合的に判断して行われます。
手術法には通常の肺切除術と皮膚を小さく何箇所か切開し肺がおさまっている胸腔内にカメラを入れて画像を見ながら行うハイブリッド胸腔鏡手術の2つの方法があります。
それぞれにメリットとデメリットがあり、また個人によって対象となるかの判断が必要ですので、担当の医師と話し合うようにしましょう。小細胞肺がんの場合には右肺を3つ・左肺を2つに区切る、「肺葉」と呼ばれる大きな塊ごと手術で取り除かれることが多いです。手術療法の後には薬物療法も併用して行われます。

放射線療法

放射線療法は、がんのある部位に放射線を当ててがん細胞を攻撃する方法です。細胞障害性抗がん剤と呼ばれる細胞の増殖を障害するタイプの抗がん剤が使用可能な場合には、放射線療法と合わせて化学放射線療法を行います。

薬物療法

薬物療法は薬でがんを治したり、進行を遅らせたり、症状を抑えたりするものです。小細胞肺がんの場合には主に2種類の薬が使われています。

  • 細胞障害性抗がん剤:細胞が増える仕組みの一部を邪魔してがん細胞を攻撃します。デメリットはがん細胞以外の正常な細胞も影響を受けます。
  • 免疫チェックポイント阻害剤:免疫ががん細胞を攻撃する力をサポートする薬です。

がんが進行している場合には、双方の薬を同時に投与する場合もあります。

分子標的治療

がんの研究によるとがん細胞には正常の細胞と比較してある一定の遺伝子やタンパク質の異常が認められたり増量が見られたりすることがわかってきました。異常が見られる遺伝子をがん遺伝子と呼んでおり、これらによりがん細胞が増殖して臓器などの組織や身体の機能に異常をもたらすことがわかっています。
分子標的治療ではがん遺伝子から作られるタンパク質の働きを抑え、がん細胞が作られにくい環境を整えるように働く治療法です。
そのために、がん細胞の一部や胸水と呼ばれる肺に溜まった水を抜いて遺伝子検査を行い、ターゲットとなる遺伝子が特定できればそれに対する分子標的治療を行うことが可能です。
ただし日本ではまだ承認されていない薬もあり、全てのがん遺伝子に対する薬があるわけではありません。また、治療を行う施設も限られているため、担当の医師とよく相談しておくようにしましょう。

CAR-T細胞療法

CAR-T細胞療法は患者さん自身の白血球の1種である免疫を司るT細胞を取り出し、がん細胞を攻撃するようにCAR(キメラ抗原受容体)遺伝子を作って患者さんに戻すという免疫療法です。

肺がんの生存率についてよくある質

ここまで肺がんの生存率・症状・治療法・早期発見などを紹介しました。ここでは「肺がんの生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

肺がんの罹患率について教えてください

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

肺がんの罹患率は日本のがん患者の第1位となっている大変症例数の多いがんです。人口10万人あたりの罹患率は約100人(男性約137人、女性約65人)となっています。男性女性ともにがんの上位5位以内には入っています。

肺がんを早期発見するためにはどうしたらよいですか

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

40歳を過ぎたら年に1度がん検診を受けるようにしましょう。大抵の自治体ではがん検診の費用を公費で負担するようになっているため、1部の自己負担で検診を受けることができます。がん検診は問診とレントゲン検査、50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×年数)が600以上の場合には喀痰検査を行います。検査結果で精密検査が必要になった場合には、必ず受けるようにしてください。

70代の肺がんの生存率について教えてください

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

70歳の肺がんの生存率はステージ分類・肺がんの種類・治療法によって異なります。またそれだけではなく、その人個人の健康状態や体力などにも大きく左右されます。70歳以上の肺がん患者さんは約3割といわれており、最近の高齢化によりその割合は増加中です。70歳代の肺がん患者さんの場合、まずは肺切除が必要となっても手術に耐えられるのか、術後肺がんだけではなくほかの病気などにより生存率に影響が及ぶこともあります。70歳以上の肺がん外科手術後の5年生存率は42.9%で、69歳以下・80歳以上とほとんど差は見られませんでした。70歳以上の外科手術後のステージIの5年生存率54%、ステージIIの5年生存率40.2%、ステージIIIの5年生存率25.3%で、69歳以下の生存率と大差がなかったとの報告があります。肺内転移があるステージIVに関しては比較した症例群に差があるため、一概にはいえませんが26.7%と若干良好な結果です。

編集部まとめ

今回は肺がんの生存率をはじめとして症状・病気の進行度合い・治療法について解説しました。日本人の肺がんの多さに驚いた方もいるのではないでしょうか。

生存率に関するデータはやはり早期発見の重要さを示していますので、健診などを積極的に受けるようにしましょう。

治療に関しても最近では遺伝子検査を用いた治療法も使われており、今までの治療法とは違った角度からのアプローチも試みられており治療効果も挙げられています。

ご自身もしくはご家族や身の回りで今回の記事内にある、気になる症状や異常について心当たりがある場合にはなるべく早く医療機関を受診するようにしてください。

肺がんと関連する病気

「肺がん」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 肺の良性腫瘍
  • 肺結核
  • 閉塞性肺疾患

肺がんに対する健診では胸部のレントゲンによる異常な影などから、精密検査を受ける過程で発見されることが多いため、これらの病気との鑑別が重要です。また喫煙により肺がんを思わせるような症状が出現する閉塞性肺疾患のような病気もあります。禁煙など肺疾患の予防と定期的な検診を行って早期発見・早期治療で寛解を目指しましょう。

肺がんと関連する症状

肺がんと関連しているもしくは似ている呼吸器関連の症状は、6つほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 血痰
  • 呼吸困難
  • 胸痛

これらの呼吸器症状は呼吸器疾患に伴って現れやすい症状であり、肺がん特有ではないものの肺がんかどうかの検査が行われる可能性が高い症状です。また合わせて喫煙歴があるとその疑いも濃厚になります。このような症状がある、もしくは疑わしい場合には、早めに医療機関を受診されることをお勧めいたします。

この記事の監修医師