『糖尿病』と『腎臓病』の深い関係とは? 透析を防ぐ初期症状と検査【医師解説】

糖尿病と腎臓病は、一見別の病気のように思えますが、実は深く結びついています。血糖値の高い状態が続くと腎臓に負担がかかり、気づかないうちに機能が低下してしまうことも……。糖尿病と腎臓病の関係性について、春日部大西毎日腎クリニックの大西先生がわかりやすく解説します。
※2025年12月取材。

監修医師:
大西 剛史(春日部大西毎日腎クリニック)
糖尿病と腎臓病にはどのような関係がある?

編集部
糖尿病と腎臓病は、なぜ深く関係しているのですか?
大西先生
糖尿病は血糖値が高い状態が長く続く病気で、その影響を特に受けやすい臓器の一つが腎臓だからです。腎臓は、血液をろ過して老廃物を尿として排出する役割を担っていて、高血糖が続くと細い血管が傷つきやすくなります。結果、腎臓のフィルター機能が徐々に低下し、「糖尿病性腎症」と呼ばれる状態に進行します。
編集部
糖尿病性腎症は、人工透析が必要になる原因の上位だと聞きました。
大西先生
はい、日本では人工透析を新たに開始する原因として、糖尿病性腎症が常に上位を占めています。腎臓は一度大きなダメージを受けると、元の状態に回復させることが非常に難しい臓器です。そのため、血糖値のコントロールが不十分な状態が長年続くと、自覚症状がないまま腎機能が少しずつ低下し、気づいたときには透析が必要な段階まで進行してしまうこともあります。
編集部
糖尿病の人は、必ず腎臓病になるのでしょうか?
大西先生
糖尿病があるからといって、必ずしも全員が腎臓病になるわけではありません。血糖値・血圧・脂質などを適切に管理し、定期的に検査を受けている人の場合、腎症の進行を防げる事例も多くあります。血糖コントロールがきちんとおこなわれていない時期があった人は注意が必要です。また、「症状がないから大丈夫」と治療や検査を後回しにすると、知らない間に腎臓へのダメージも蓄積します。糖尿病性腎症は、予防と早期対応が可能な合併症であるという知識を持っておくことが重要です。
どのようにして腎臓がダメージを受けるのか?

編集部
高血糖はどのように腎臓を傷つけるのですか?
大西先生
高血糖状態が続くと、血液中の糖が腎臓の細い血管を傷つけます。腎臓の中には糸球体と呼ばれる血液をろ過するフィルターがあり、この部分が阻害されると、本来尿に漏れないはずのタンパク質が排出され、腎機能を低下させます。これが糖尿病性腎症の始まりです。
編集部
血糖値以外にも腎臓に影響する要因はありますか?
大西先生
あります。特に重要なのが高血圧です。糖尿病と高血圧が重なると、腎臓の血管への負担はさらに大きくなります。また、脂質異常症や喫煙、肥満、塩分の多い食生活なども腎症の進行を早める要因です。腎臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、多少のダメージでは症状が出ません。そのため、知らず知らずのうちに病状が進んでいることも少なくありません。
編集部
腎臓は一度悪くなると元に戻らないのでしょうか?
大西先生
残念ながら、腎臓の機能は一度大きく低下すると、完全に元の状態に戻すことは難しいとされています。ただし、早い段階で対処できれば、病気の進行を食い止めたり、悪化のスピードを緩やかにしたりすることは可能です。また糖尿病がある人でも、腎不全の原因が糖尿病そのものではない場合、治療によって腎機能が元の水準まで回復するケースもあります。
編集部
糖尿病性腎症は、どのくらいの期間で進行しますか?
大西先生
腎臓の病気の進行スピードには個人差があります。初期のうちはほとんど進んでいないように見えても、ある時期を境に急速に悪化することがあります。特に糖尿病のある人は、そうでない人に比べて腎機能の低下が早く進みやすいとされています。さらに、タンパク尿が出ている場合は、進行のスピードが一層速くなることが知られています。問題は、腎機能が低下しても痛みやはっきりした自覚症状がほとんど出ない点です。「まだ大丈夫」と思っているうちに病気が進み、気づいたときには治療の選択肢が限られてしまうこともあります。
どんな症状が出たら要注意? 受診の目安は?

編集部
糖尿病性腎症の初期症状について教えてください。
大西先生
初期の糖尿病性腎症では、ほとんど自覚症状がないものの、タンパク尿が出る、むくみが生じる、血圧が上昇するといった変化が見られることがあります。さらに病気が進行するとだるい、息苦しい、体重が増えるといった変化が起きることもあります。
編集部
症状がないことも多いのですね。
大西先生
はい。そのため、「症状がない=腎臓は大丈夫」と考えるのは非常に危険です。初期段階では、尿検査で一定量以上のタンパクが出ていないか、血液検査で腎機能が保たれているかを確認することが重要です。
編集部
進行すると、血液検査でどのような異常を指摘されるのでしょうか?
大西先生
貧血、カリウム値の異常、骨の異常(骨粗しょう症)が指摘されやすくなります。また、副甲状腺ホルモンの異常などが見られることもあります。この状態を放置すると、心不全も起こしやすくなるので注意が必要です。
編集部
糖尿病の人は、どれくらいの頻度で検査を受けるべきですか?
大西先生
糖尿病のある人は、3カ月に1回の定期的な検査を受けることが勧められています。こまめな検査は負担に感じるかもしれませんが、腎機能の変化を早く見つけ、将来の透析を防ぐためには欠かせない大切なステップです。症状が出にくい病気だからこそ、検査による早期発見が、治療の選択肢を守ることにつながります。
編集部
医療機関を受診すべきタイミングを教えてください。
大西先生
糖尿病と診断された時点で、症状の有無にかかわらず受診・(尿検査を含め)検査をすることが基本です。また、むくみが続く、尿の泡立ちが気になる、急に血圧が上がったなどの変化があれば、早めに医師に相談してください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
大西先生
糖尿病は、血糖値だけの病気ではありません。腎臓や目、骨など、全身のさまざまな臓器に影響を及ぼす疾患です。そのため、糖尿病だけに気を配るのではなく、合併症も含めた抜け漏れのない治療と定期的なチェックが大切になります。通院や検査を負担に感じることもあると思いますが、きちんと病気と向き合うことにより、将来の生活の質が守られます。困ったことがあったら、ぜひ医師に相談し、積極的に治療に臨んでほしいと思います。
編集部まとめ
糖尿病は自覚症状が少ないまま、静かに体へ影響を及ぼしていきます。通院や検査は手間に感じるかもしれませんが、早期の対策が将来の透析や視力低下といった大きなリスクを遠ざけます。血糖値だけでなく、体全体を守るという視点で、主治医と一緒に治療を続けていきましょう。
医院情報

| 所在地 | 埼玉県春日部市緑町4丁目14-18 |
| 診療科目 | 内科、小児科、皮膚科 |
| 診療時間 | 午前: 月〜日 9:00〜12:30 午後: 月〜日 14:00~17:30 |
| 休診日 | なし |




