血液透析中に“よく起こる5つの症状”をご存じですか? つらい症状の原因を医師が解説

血液透析は腎臓の機能を補う生命維持に不可欠な治療ですが、治療中に血圧が下がったり、足がつったり、頭痛が起きたりすることがあります。「どうしてこんな症状が出るの?」「何か予防する方法はないの?」と不安を感じている患者さんやご家族も少なくないのではないでしょうか。血液透析中のトラブルは、体の急な変化によって起こる自然な反応であり、多くは適切に対処できます。今回は、血液透析中に起こりやすいトラブルの原因や、病院と自宅でできる予防・対応策について、おばら内科腎クリニックの小原先生に詳しく解説していただきました。

監修医師:
小原 功裕(おばら内科腎クリニック)
まず知っておきたい血液透析と体の仕組み

編集部
はじめに、血液透析はどのような治療でどんな目的があるのか教えてください。
小原先生
血液透析とは、腎臓の働きが低下したときに、体の中の不要な物質や余分な水分を機械で取り除く治療です。通常、腎臓は血液をろ過し、体のバランスを保っていますが、腎不全になるとそれが難しくなります。血液透析によって人工的に血液をきれいにし、体の機能を維持することが目的です。1回の治療に4〜5時間ほどかかり、週3回程度おこなうのが一般的です。命を支える大切な治療です。
編集部
血液透析中は、体の中でどんな変化が起きるのでしょうか?
小原先生
血液透析中は、体内の水分や塩分、不要な物質を一気に取り除くため、血液の成分バランスや血圧が変動します。健康な腎臓では24時間かかる調整を数時間でおこなうため、体には急な変化が起きやすいのです。そのため、血圧の低下やだるさ、足のけいれんなどが生じることがあります。血液透析は命を支える重要な治療である一方で、体への負担も伴うことを理解しておきましょう。
編集部
血圧低下やこむらがえり、頭痛など、血液透析中によくみられるトラブルにはどんなものがありますか?
小原先生
血液透析中の代表的なトラブルには、血圧の急な低下、こむらがえり(足がつること)、頭痛、吐き気、腹痛などがあります。いずれも血液透析による水分や体の中のミネラルの変化、血液の流れの急な変動が関係しています。体調や食事量、血液透析前の体重変化によって症状が起こりやすくなり、同じ方でも日によって状態が異なることがあります。
血液透析中に起こるトラブルの主な原因

編集部
なぜ血液透析中に血圧が下がることがあるのでしょうか?
小原先生
血液透析中に血圧が下がる主な原因は、短時間で多くの水分を取り除くことにあります。血液の量が減ると心臓が全身に血液を送り出しにくくなり、一時的に血圧が低下します。また、食事や睡眠不足、室温なども影響します。特に高齢の方や心臓に持病がある方は、血圧を調整する体の機能が低下しているため、血液透析中の血圧変動が起こりやすい傾向にあります。
編集部
頭痛や腹痛、足のつりなどの症状はどんな仕組みで起こるのか教えてください。
小原先生
頭痛は、血液透析で血液中の水分量や塩分濃度が急に変化し、脳の血管が広がることが原因とされています。腹痛や吐き気は、血圧低下によって腸への血液の流れが減るためです。また、足のこむらがえりは、カリウムやカルシウムといった体の中のミネラルバランスの変動が関係しています。これらは血液透析中の体の変化に伴う自然な反応ともいえます。
編集部
トラブルが起きやすい人や時間帯に特徴はありますか?
小原先生
水分や塩分を多く摂ってしまい、体重増加が多く血液透析で取り除く水分の量が多くなる方ほど、血液透析中の変動が起こりやすい傾向にあります。また、血液透析の後半になるほど血液量が減るため、血圧低下やこむらがえりが起こりやすくなります。血液透析前の体調を整えること、水分補給を上手に制限することが、トラブルの予防につながります。
トラブルを防ぐためにできること

編集部
病院やクリニックでは血液透析中のトラブルをどのように防いでいるのですか?
小原先生
医療従事者は、血液透析前後の血圧や体重、取り除く水分の量を細かく管理し、患者さんごとに安全な設定をおこなっています。血液透析中もこまめに血圧や脈拍を確認し、異変があれば水分を取り除くスピードを調整します。また、体調に合わせて血液透析液の成分を変えたり、横になる姿勢を調整したりして、できるだけ負担を軽くする工夫がなされています。医師・看護師・血液透析機器の専門スタッフが連携し、安全を支えています。
編集部
血圧低下などが起きた際、血液透析中にどのような対応がおこなわれますか?
小原先生
血圧が下がった場合は、水分を取り除くのを一時的に止めたり、塩分を含んだ点滴を入れて血液量を回復させたりします。足のけいれんが強い場合には、血液透析液の温度を下げる、体の向きを変える、けいれんを抑える薬を使うなどの対応が取られることもあります。多くのトラブルは適切に対処すれば改善しますので、症状を我慢せず早めにスタッフへ伝えることが大切です。
編集部
自宅での過ごし方や食事・水分管理で気を付けるポイントを教えてください。
小原先生
血液透析前に体重が増えすぎないよう、水分や塩分の摂取を控えることが基本です。特に塩分を摂り過ぎるとのどが渇き、水分を多く飲んでしまいます。また、十分な睡眠とバランスの取れた食事で体調を整えることも大切です。血液透析の日は軽めの食事を心がけ、血液透析後は急に立ち上がったり動いたりするのを避けましょう。日々の体調を記録しておくと、変化に早く気づくことができます。
編集部まとめ
血液透析治療を受けながら日々を過ごすことは、決して楽なことではありません。しかし、血液透析中のトラブルの多くは、その仕組みを理解し、水分・塩分管理や体調管理を心がけることで予防や軽減が可能です。症状が出た時には我慢せず医療スタッフに伝え、日頃から体調の変化を記録しておくことも大切です。医療チームと協力しながら、安心して治療を続けられる環境を一緒に作っていきましょう。本稿が読者の皆様にとって、より安全で快適な血液透析生活を送るための一助となれば幸いです。
医院情報

| 所在地 | 〒354-0021 埼玉県富士見市鶴馬 2-17-36 |
| アクセス | 東武東上線 「鶴瀬」駅 徒歩8分 |
| 診療科目 | 内科、腎臓内科、糖尿病内科、小児科、人工透析 |




