【女性に多い】『バセドウ病』で“目が飛び出てくる”症状は治せるの!? 医師が解説

動悸や手の震え、汗が止まらない……。こうした症状の背景に、甲状腺ホルモンの過剰分泌による「バセドウ病」が隠れていることがあります。果たして、どのような病気で、どんな治療法があるのでしょうか? 日本甲状腺学会認定甲状腺専門医の榎本圭佑先生に、バセドウ病の基礎知識から治療の流れ、そして目の症状について聞きました。
※2025年11月取材。

監修医師:
榎本 圭佑(天王寺甲状腺えのもとクリニック)
バセドウ病って? 医師が解説!

編集部
バセドウ病とは、どんな病気なのでしょうか?
榎本先生
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、全身の代謝が異常に活発になる病気です。免疫の異常により、体内で「TSH受容体抗体(TRAb)」という抗体が作られ、甲状腺を刺激し続けてしまうのが原因です。女性に多く、特に20〜40歳代で多く見られます。
編集部
どんな症状が出ることが多いのでしょうか?
榎本先生
動悸、手の震え、発汗、暑がり、体重減少、目の突出などが代表的です。代謝が過剰になることでエネルギーを消耗し、食べても体重が減る人もいます。イライラ、不眠、集中力の低下など精神的な変化を感じる人もいます。
編集部
なぜ女性に多いのですか?
榎本先生
自己免疫疾患は、女性に多い傾向があります。女性ホルモンの影響や免疫反応の違いが関与していると考えられていますが、バセドウ病が“なぜ女性に多いのか”は、詳しくはわかっていません。遺伝的な体質に加え、ストレスや出産、感染、喫煙習慣などをきっかけに発症することもあります。
診断のための検査

編集部
バセドウ病はどのように診断されますか?
榎本先生
血液検査で甲状腺ホルモン(FT3、FT4)とTSHを測定し、さらにTSH受容体抗体(TRAb)の有無を確認します。超音波検査で甲状腺の腫大や血流の増加を確認し、アイソトープ検査(シンチグラフィ)でヨウ素摂取率が高いことが確認されると診断が確定します。
編集部
バセドウ病では甲状腺自体が腫れるのですか?
榎本先生
はい。TRAbの刺激により甲状腺が全体的に大きくなり、柔らかく腫れることが多いです。痛みはありませんが、首が太く見える、のどに違和感があるなどの変化に気づく人もいます。
編集部
甲状腺ホルモンの値だけではわからないのですね。
榎本先生
そうですね。甲状腺ホルモンが高くなる病気には、バセドウ病以外にも「無痛性甲状腺炎」や「亜急性甲状腺炎」「中毒性結節」なども知られています。血液中の抗体(TRAbなど)や尿中ヨウ素、核医学・放射線(シンチグラフィ)の検査で鑑別できますが、経過を追って確定する場合もあります。
バセドウ病の治療と経過についても知りたい!

編集部
バセドウ病の治療はどのようにおこないますか?
榎本先生
主に3つの方法があります。①抗甲状腺薬による薬物療法、②放射性ヨウ素(アイソトープ)内用療法、③手術(全摘出もしくは亜全摘出術)です。初期治療としては薬物療法を選ぶことが多く、2〜3年かけてホルモンのバランスを整えます。
編集部
薬だけで治る人も多いのでしょうか?
榎本先生
はい、大多数の人は薬でコントロールがつきますが、薬から卒業できる(寛解/かんかい)のは3~4割です。治療終了後も再発することがあります。再発や薬の副作用が強い場合には、放射性ヨウ素治療や手術を検討します。
編集部
日常生活で注意すべきことはありますか?
榎本先生
喫煙は症状を悪化させる大きな要因です。特に目の症状(甲状腺眼症)を悪化させやすいので、禁煙することが重要です。また、ストレスや睡眠不足も免疫異常を助長するため、規則正しい生活を心がけてください。
目の症状「甲状腺眼症」は元に戻るの?

編集部
バセドウ病の人の中には、目が飛び出すように見える人もいます。これはなぜ起こるのでしょうか?
榎本先生
「甲状腺眼症」と呼ばれる状態で、自己免疫反応が眼の奥にも及ぶために起こります。眼窩(がんか)内の脂肪や筋肉が腫れて、目が前に押し出されて見えるのです。ひどい場合はまぶたが閉じにくい、物が二重に見えるといった症状が出ます。
編集部
目が飛び出てきたら、治療で元に戻るのでしょうか?
榎本先生
軽症であれば、バセドウ病自体のコントロールによって自然に改善することもあります。ただし、炎症が強く組織が線維化(組織が炎症や損傷を受けた後、線維組織が異常に増殖・蓄積して硬くなる現象)してしまうと、元に戻すのは難しくなります。ステロイド治療や放射線外照射療法で炎症を抑え、必要に応じて眼の奥の“脂肪を取る”もしくは“骨を削る”減圧手術をおこなうこともあります。最近では“テプロツムマブ”と言う抗体医薬が使われることもあります。
編集部
目の症状を悪化させないためにできることはありますか?
榎本先生
繰り返しになりますが、禁煙が最も重要です。喫煙者は眼症の発症リスクが約5倍に上がると報告されています。また、ホルモン値を安定させること、ストレスをためないこと、睡眠をしっかり取ることも再発予防になります。前述の甲状腺機能亢進に対する放射性ヨウ素(アイソトープ)内用療法は甲状腺眼症を悪化させるので注意が必要です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
榎本先生
動悸、手の震え、発汗、暑がり、体重減少、目の突出などは、甲状腺疾患の症状かもしれません。正しく診断がつけば、薬のみで改善できることも多いので、これらの症状を感じたら、迷わず甲状腺専門医を受診ください。
編集部まとめ
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される自己免疫疾患で、動悸や体重減少などの全身症状に加え、目の突出などの特徴的な症状を伴うことがあります。薬物療法で治まるケースも多いですが、治療が遅れると症状が固定してしまうことも。とくに眼の異常を感じたら早めに受診することが大切です。
参考文献
バセドウ病(一般社団法人日本内分泌学会)
バセドウ病のアイソトープ治療について(腫瘍・免疫核医学研究会)
医院情報

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| 診療科目 | 内科、外科、耳鼻咽喉科 |
| 診療時間 | 午前:月〜金 9:30〜12:30 土 9:30〜15:30 午後:月〜金 15:00〜18:00(水木は手術のみ) 夜診:火 18:00〜20:00 |
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