【闘病】「膝の痛み」の正体は『骨のがん』だった… コロナ禍に罹患で“精神科”にも入院

話を聞かせてくれたna_iさん(仮称)は、「ちょっと膝が痛いな」「腫れてるな」と思って病院を受診したところ、骨肉腫と診断されたそうです。思いがけない展開に驚きつつも、家族や医療スタッフに支えられながら手術と抗がん剤治療を乗り越えました。そこで、受診から診断・治療、その後の不安定な日々や現在の生活について聞かせてもらいます。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年6月取材。

体験者プロフィール:
na_iさん(仮称)
1987年生まれ。石川県在住。第二子出産後2020年に足の痛みから受診し骨肉腫と診断される。約7カ月の入院治療後「無再発で経過しており、寛解状態」と診断され、現在は通常通りの生活で定期検査のみ。

記事監修医師:
柏木 悠吾(医療法人社団橘会橘病院)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
「運動不足?」から一転、診断結果は「骨肉腫」

編集部
最初に不調や違和感に気づいたのはいつですか? どういった状況だったのでしょうか?
na_iさん
2020年2月くらいです。歩いているときに「左膝が少し痛いな」と感じました。その後、立ち上がるときにも少し強い痛みを感じるようになりました。
編集部
そこから受診されたのですか?
na_iさん
すぐには受診しませんでした。痛みが気になりつつも、その前年に出産していたこともあり、「出産の前後で足に負担がかかっていたのかな」と様子をみていたのです。家族からも「運動不足じゃない?」と言われていたので、「それもあるかも。運動しないとなぁ」くらいに思っていました。そんなある日、入浴時にふと自分の足を見ると、左膝が腫れていたのでビックリしました。すぐに近くの開業医を受診し、レントゲンとMRIの検査をしたところ、「おそらく骨肉腫です」と言われ、すぐ大学病院の紹介状を書いてもらい、翌日に大学病院を受診しました。
編集部
告知はどのような形でしたか?
na_iさん
大学病院で骨の検査や病理検査や全身の検査をし、最初は「すべての結果が揃ってから結果報告」という予定でしたが、一部の検査ですぐに骨肉腫という診断になってしまったので、すぐ告知という形になりました。
編集部
骨肉腫と聞かされたときどのように感じましたか?
na_iさん
最初は私一人で聞きましたが、すぐに主人に連絡し、一緒に聞いてもらいました。すでに近医で「骨肉腫の可能性が高い」と言われていたので、告知自体は落ち着いて受け止められました。当時は治療ですぐに治る病気だと思っていて、「場合によっては命を落とすかもしれない病気」とは知らなかったというのも大きいかもしれません。そのときちょうど、2人目を出産した後でしたが、3人目を望んでいましたので「抗がん剤治療後も妊娠できますか?」と先生に聞いていました。今思うと病気とは違う質問をしていました。
編集部
どんな病気なのでしょうか?
na_iさん
骨肉腫はその名のとおり骨に腫瘍ができる病気で、いわゆる「骨のがん」です。
2人の子育て真っ最中に長期入院!

編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
na_iさん
「抗がん剤治療を全11回と手術をおこなう」と説明がありました。基本は手術前に抗がん剤5回→手術→手術後に抗がん剤6回、というスケジュールになることと、その間はずっと入院していなければならず、コロナ禍で外泊もできないためかなり長期の入院になると聞きました。途中、画像検査などで化学療法の効果判定をおこない、抗がん剤の回数や組み合わせの変更があるかもしれないとも言われました。
編集部
そのときの心境について教えてください。
na_iさん
実感がわきませんでした。ただ、上の子が2歳4カ月、下の子が9カ月で母乳をあげていた時期でもあり、実感がわかないなりに、子どもたちのこれからについて、不安に思ったのを覚えています。
編集部
実際の治療はどのように進みましたか?
na_iさん
抗がん剤を2~3回やった後に画像検査をしたところ「腫瘍のサイズが変わっていないので、薬を変えてみます」と先生から説明があり、変更になりました。そして薬を変えて手術前の残りの抗がん剤治療をした後に再度画像検査をしたところ、腫瘍がかなり小さくなっていました。本来であれば抗がん剤を5回おこなって手術なのですが、薬の効果が高かったので「このままあと2回抗がん剤を続けて、さらに腫瘍を小さくしてからの手術の方がいい」と説明を受け、手術後6回するはずだった抗がん剤を、手術前に先に2回受けました。その結果さらに腫瘍が小さくなり、「手術後は人工骨になるかもしれない」と言われていたのですが、切除した自分の骨を液体窒素につけて腫瘍を死滅させ、また自分の骨を戻すという方法が可能となり、人工骨を入れずに済みました。
編集部
手術後の治療はいかがでしたか?
na_iさん
手術後に精神がかなり不安定になり、残りの抗がん剤治療が受けられない状態になってしまいました。大学病院にある精神科を受診し、薬をもらいながら定期的にカウンセリングも受けました。そのおかげもあって状態が落ち着いたため2回の抗がん剤治療の後、治療は終了になりました。当初の予定では抗がん剤治療は後4回でしたが、2回の治療後の検査で「無再発で経過しており、寛解状態」という結果だったため「あと2回受けなくても大丈夫」と説明を受けました。その後、少しの間ですが精神科に入院し、自宅退院となりました。
コロナ禍だったから早期発見できた

編集部
受診から、現在にいたるまで、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。
na_iさん
骨肉腫とわかったときはコロナ禍で、入院時は面会も外泊も外出もできない状況だったこともあり、精神的にも本当につらかったです。一方で、実家の母の仕事がコロナで休みになっていたため、母に子どもを預けて受診することができたので、コロナ禍じゃなかったら「発見がもっと遅れていたかもしれない」とも思います。当時は子どもが小さかったので、母の存在がなければ足の痛みや膝の腫れくらいでは病院に行こうとしなかった気がします。
編集部
病気の前後で変化したことを教えてください。
na_iさん
骨肉腫になる前は、子育てなどが大変で日々のことを考える余裕はありませんでした。しかし、病気になって、長期に入院していると精神的に参ってしまっていたので、退院後しばらくすると、ただただ「家族との慌ただしくもあり平凡な何気ない毎日」が本当に幸せなんだと思うようになりました。もう一つ、少しでも身体に不調があればすぐ病院を受診するようになったのも大きな変化です。
編集部
今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?
na_iさん
結果は転移もなく早期発見だったと思いますが、「足が痛いなぁ」と思ってから病院を受診するまで、やや時間がかかってしまったので、そこは少し後悔しています。痛いなぁと思ったらすぐ受診しないといけないと思いました。あれ以上受診を先延ばししていたら転移していたかもしれないと思うと本当に怖いです。
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
na_iさん
現在は「無再発で経過しており、寛解状態」という状態で、6カ月に1回定期検査に行く以外は通常通り生活しています。走る、正座するなども問題なくできています。私生活では、治療終了1年後くらいに3人目を授かり、無事に出産出来ました。
編集部
医療機関や医療従事者に望むことはありますか?
na_iさん
医療機関や医療従事者には本当に感謝しかないです。あえて言うなら、抗がん剤の影響で「毛が抜けます」としか聞いていなかったので、髪の毛やまつ毛など、体の毛がほぼ抜けてショックでした。お風呂やベッドなど本当に髪の毛だらけになり「テレビでは見たシーンは本当なんだ」と思いました。個人差はあるにせよ「どれくらいの期間にどのくらい抜ける」などしっかり聞いていたら、もっとショックも少なかったかもしれないと思います。また、お風呂も、私が入った後は掃除しないと次の人が入れないくらいの抜け毛でしたので、時間帯なども少し配慮してもらえたら嬉しいなとも思いました。長期の入院や全身麻酔での精神的なダメージなど(人それぞれだと思いますが…… 手術の説明はしっかりありました)前もってのカウンセリングなどあったらよかったなぁと思います。
編集部
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
na_iさん
本当に早期発見は大事です。そして、異変に早く気づくためには、自分の普段の体の状態を把握しておくことも大事だと思います。さらにもう一つ、最初の病院を選ぶのも大事だと思いました。私はMRIの検査ができるクリニックを受診しました。そこでMRIの検査をスムーズに受けることができ、骨肉腫の可能性に気づいてもらうことができました。大学病院でも精密検査がスムーズに受けられ、診断の確定をしてもらい、早期に治療が受けられたと思いますので、本当に最初に受診する病院の医師や設備なども重要だと思います。
編集部まとめ
治療中から治療後にかけて、精神的に不安定な時期もあったというna_iさん。それでも少しずつ日常を取り戻し、今では3人目のお子さんにも恵まれ、家族との穏やかな時間を過ごしています。「あれ以上受診を先延ばししていたら転移していたかもしれない」と語るna_iさんの言葉からは、早期発見の大切さと、病を乗り越えた強さが感じられました。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。




