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~実録・闘病体験記~ 「3日に1日は動けなかった」私の全身性エリテマトーデス

 更新日:2023/03/27
~実録・闘病体験記~ 「3日に1回は動けなかった」私の全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデス(SLE)。日本では約6~10万人の患者さんがいて、難病に指定されています。闘病者・エリさんのように、全身性エリテマトーデスは若い女性に発症しやすい傾向です。高校2年生の時に、全身性エリテマトーデスと診断され、治療を続けてきたエリさんに、発症の経緯とその後の暮らしについて語っていただきました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年8月取材。

難病daysエリさん(仮称)

体験者プロフィール
難病daysエリさん(仮称)

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愛媛県在住、1982年生まれ。夫と娘と三人暮らし。診断時は高校2年生。1999年に全身性エリテマトーデス(SLE)を発症し、プレドニゾロン30mg投与で治療開始。10年の間に再燃を繰り返し10回程度入院。その後軽快し、2017年出産。2019年よりプラケニル投与を開始し、2022年現在プレドニゾロン5mgまで減量。現在は家事育児に専念しつつ、難病の啓発活動をしている。

村上 友太

記事監修医師
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

風邪だと思っていたら全身性エリテマトーデスだった

風邪だと思っていたら全身性エリテマトーデスだった

編集部編集部

病気が判明した経緯について教えてください。

難病daysエリさん(仮称)難病daysエリさん

14歳のときに、風邪で血液検査をしたときに、白血球の数値が異常に低い(1500/μL程度)ことがわかったのです。大きな病院に行くと「再生不良性貧血」と診断されました。そのころは自覚症状がなく、普通の中学生活を送っていましたね。

編集部編集部

そこから変化があるのは?

難病daysエリさん(仮称)難病daysエリさん

17歳のときです。学校から帰ると、全身に赤い斑点ができていました。翌日、近所の内科を受診すると、皮膚科に行くように言われ、さらにそのあと大学病院を紹介されました。大学病院の皮膚科を受診すると、すぐに入院となりました。39度ほどの熱が出て関節が痛く、和式トイレで用を足すこともままなりません。熱が高いときは、テレビも見ていられず、横になっていました。夜は紅斑がかゆくて眠れません。なかなか告知をしてもらえなかったので自分では風邪だと思っていましたが、入院して2か月経ったころに、「あなたは再生不良性貧血ではなく、全身性エリテマトーデスという病気だよ」と説明を受けました。

編集部編集部

病気や治療、今後について医師からどのような説明がありましたか?

難病daysエリさん(仮称)難病daysエリさん

「ステロイドというお薬を、ずっと飲み続けることになります。病気自体は治ることがないので、うまく付き合っていかなければいけません。でも、退院すれば普通の暮らしはできます」と言われました。ほかにも、「日常生活で無理をすると悪化してしまうので、絶対に無理をしないように。ストレスもこの病気を悪化させるので、ストレスを溜めてはいけない。海水浴やスキーなど日光に当たるようなことをしてはいけない。登山やマラソンなど、疲れる競技をしてはいけません」と説明されました。

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

難病daysエリさん(仮称)難病daysエリさん

私は病気や障害とは無縁だと思っていたので、ドラマの登場人物のような、どこか別の違う人の話のように聞こえました。けれど、薬を飲むだけで普通の生活ができるなら、どうってことはない、とにかく治療を頑張って早く退院したい、頑張ろうと前向きにとらえていました。

全身性エリテマトーデスによる生活の変化と葛藤

全身性エリテマトーデスによる生活の変化と葛藤

編集部編集部

全身性エリテマトーデスを発症後、生活に変化はありましたか?

難病daysエリさん(仮称)難病daysエリさん

今までの普通の生活とは程遠いものでした。とにかく疲れやすく、学校に行くのは2日連続が限界で、2日行けば1日は休まなければならないほどです。月曜日、火曜日に学校に行くと水曜日には倦怠感で起き上がることができない。倦怠感が出ると、強烈な眠気と、3歳の子供が2人くらい乗っているような強烈な体の重さを感じました。何度も何度も学校を休まなければならなかったので、休んだ日は「みんなは頑張っているのに」という罪悪感と「自分が怠けているだけじゃないだろうか。本当は学校に行けたんじゃないか」という情けなさで、一日中泣いていました。

編集部編集部

そのような状態がずっと続いたのですか?

難病daysエリさん(仮称)難病daysエリさん

「普通の生活をできる日はいつ来るのだろう?」とずっと思っていましたが、大学を卒業しても、「普通の生活だ」と自分が思える日はついに来ませんでした。人生の半分は倦怠感で寝込んでいるし、少し学校の取り組みを頑張るとすぐ入院してしまう。そのような状況では、就職活動もできませんでした。

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

難病daysエリさん(仮称)難病daysエリさん

2017年に妊娠出産も経験しまして、目立ったSLEの悪化はありませんでした。2019年にプラケニルという新薬の投与を開始してからは、軽快状態が続いています。とにかく倦怠感を感じることが極端に少なくなったので、本当に普通の生活ができていると思います。精神症状は発病当初から2020年ごろまでひどく、1か月の間に何度も無気力状態になっていたのですが、SLEが軽快し、ステロイドを減量していくにつれ、症状がなくなっていきました。

闘病中の心の支えは母の存在

闘病中の心の支えは母の存在

編集部編集部

これまでの心の支えはなんでしたか?

難病daysエリさん(仮称)難病daysエリさん

母の存在です。苦手な車を運転し、病院や学校への送迎をしてくれ、毎回嫌味を言われてもめげずに学校への欠席の連絡をしてくれていました。私が留年するかもしれないときには、学校へ赴き、学年主任に直談判をして留年を阻止してくれたこともあります。学校を休むことに罪悪感を感じていた私に「今は休む勇気を持て」と言ってくれた言葉がありがたかったです。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

難病daysエリさん(仮称)難病daysエリさん

学生生活中の自分には、とにかく無理をしないように言いたいです。病気になる前と同じ生活をしようと頑張ると、かえって遠回りになります。病気になる前の60~70%くらいのペースで、毎日同じことを継続できるようになったほうがいい。そして、好きなことをするのはストレスの発散になるので、やめないでいい。こんなところです。

編集部編集部

あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。

難病daysエリさん(仮称)難病daysエリさん

SLEになったばかりのころは「風邪かな?」と感じる程度の症状でした。私は未成年だったので、親元にいましたが、もし大人だったら無理して仕事して、重篤な状態になっていたかもしれません。紅斑や熱の症状が続くようでしたら、すぐに病院を受診してください。

編集部編集部

医療従事者に伝えたいことはありますか?

難病daysエリさん(仮称)難病daysエリさん

不安な時に寄り添っていただき、感謝しています。看護師さんたちのおかげで、入院生活はいつも快適でした。病気になったころは、診察室で長い間、主治医に話を聞いてもらいました。検査の数値の内容も、いつも分からなくなってしまうのですが丁寧に教えてくださってありがたいです。当時はステロイドには偏見が多く「今すぐステロイドをやめたほうが良い」と民間療法を勧めてくる人もいました。今のように情報がなかった時代なので、自分の受けている標準治療が正しいかどうかも分からず、心が揺れ動きました。そういった中でも懸命に寄り添い治療をしてくださっている医師を信じることが、心の支えになりました。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

難病daysエリさん(仮称)難病daysエリさん

生活リズムと心を整え、薬をきちんと飲むことしか私たち患者にはできないと思います。病気になる前と比べて何%くらいの稼働率で動けているのか。これは人によって違うのですが、それを生活しながら見つけていくことが「無理をしない生活」につながると思います。私のように急に新薬で軽快状態になる場合もありますので、標準治療と医学の発展を信じて前向きな気持ちで治療に取り組んでいただきたいと思います。

編集部まとめ

全身性エリテマトーデスは、倦怠感や発熱、痛みなどによって毎日の生活の質が低下するだけでなく、命に関わるような症状を引き起こす可能性のある病気です。エリさんは難病である全身性エリテマトーデスによって通常の生活を送ることが困難であったにも関わらず、病気とうまく向き合いながら前向きに生きようとされていることが印象的でした。エリさんの病気に対する姿勢に、同じように全身性エリテマトーデスと戦っている方も励まされるのではないでしょうか。エリさんから、とにかく無理をせず、生活リズムと心を整えることが治療を受けるためのベースになること、標準治療と医学の発展を信じることの大切さを教えていただきました。

この記事の監修医師