マンモグラフィで「がん」が“見逃されやすい人”の特徴とは? 発見の対策を医師が解説

乳腺が白く写る「高濃度乳房(デンスブレスト)」は、マンモグラフィ検査で病変が隠れてしまうことがあります。では一体、どうすれば見逃しを防ぐことができるのでしょうか?検診を補完する方法について、ピンクリボンブレストケアクリニック表参道の島田先生に聞きました。
※2025年10月取材。

監修医師:
島田 菜穂子(ピンクリボンブレストケアクリニック表参道)
乳腺と脂肪の割合を示す「乳腺濃度」とは?

編集部
乳腺濃度とは何ですか?
島田先生
乳腺濃度とは、乳房の中で「乳腺」と「脂肪」がどのくらいの割合で構成されているかを示す指標です。乳腺が多く脂肪が少ない状態を「高濃度乳房(デンスブレスト)」と呼びます。日本人女性は欧米人に比べ乳腺が発達している人が多く、40代までは約8割がデンスブレストに該当するといわれています。
編集部
乳腺濃度はどのように分かるのですか?
島田先生
マンモグラフィ検査の画像で確認できます。画像診断医が、脂肪の多い「脂肪性」から乳腺の多い「高濃度乳房」までの4段階に分類します。このうち、「不均一高濃度乳房(乳腺内の脂肪組織が40〜50%前後)」と「高濃度乳房(乳腺内の脂肪組織が10〜20%前後)」と判断された場合には、検査結果に“デンスブレスト”と記載されます。不均一高濃度乳房の場合、マンモグラフィ検査の画像は「黒い部分と白い部分が混ざっているけれど、白い部分が多い」という状態になります。一方、高濃度乳房の場合、乳房全体がほぼ真っ白に見えます。
編集部
乳腺濃度が高いと何が問題なのですか?
島田先生
マンモグラフィ検査の画像では、乳腺もがんも同じように白く写ります。そのため乳腺濃度が高い人では、白地の背景(乳腺)の中から白い影(がん)を探すことになり、まるで雪原の中の白うさぎを探すような状況で、がんが乳腺に紛れて見つかりにくくなります。
編集部
乳腺濃度は年齢で変化しますか?
島田先生
はい。加齢とともに乳腺が脂肪に置き換わるため、閉経後は乳腺濃度が低下し、マンモグラフィ検査で黒く写る部分が増えていきます。ただし、閉経後でも女性ホルモン補充療法を受けている人、体型がやせている人、もともと乳腺が発達している人では、比較的濃い状態が続く場合もあります。
検診で見過ごされることもある?

編集部
デンスブレストだと、がんが見逃されることがあるのですか?
島田先生
はい。乳腺とがんが同じように白く写るため、特に小さながんや初期のしこりはマンモグラフィ検査で識別しづらく、残念ながら見逃されるリスクがあります。これを「マスキング効果」と呼びます。
編集部
マンモグラフィ検査の結果が正常でも安心できない、ということですか?
島田先生
マンモグラフィ検査で「異常なし」とされても、デンスブレストの人ではがんが隠れている可能性があります。症状がある場合や家族歴がある場合は、結果に関わらず追加検査を受けることが大切です。
編集部
医療機関によっては、乳腺濃度を教えてもらえないこともあると聞きました。
島田先生
日本では乳腺濃度を本人に知らせるかどうかが、地域や医療機関によって異なります。マンモグラフィ検査を受けても、必ず乳腺濃度の結果を通知されるとは限りません。関心がある場合は、自分から医師や技師に「私の乳腺濃度はどうですか?」と尋ねるとよいと思います。
見逃しリスクをどう補完するか?

編集部
デンスブレストの人はどのように検診を受ければよいのでしょうか?
島田先生
マンモグラフィ検査だけでなく、超音波を併用することが有効です。2つの検査を組み合わせることで見逃しリスクを大幅に減らせます。特に40代の女性では、両方を定期的に受けることが理想的です。
編集部
両方、検査を受けた方がよいのですね。
島田先生
はい、現在日本ではJ-STARTという大規模比較試験がおこなわれています。簡単にいうと、「マンモグラフィ検査と超音波を組み合わせて検診を受けている人」と「マンモグラフィ検査だけの人」の数年後の死亡率減少効果を比較する研究です。まだ最終結果は出ていませんが、中間報告では、「マンモグラフィ検査と超音波を組み合わせて検診を受けている人」の方が「マンモグラフィ検査だけの人」よりもがんの発見率は1.5倍、早期がん発見率は1.8倍と報告されています。この中間報告からも、マンモグラフィ検査と超音波を組み合わせて検診を受けることが有効だといえます。
編集部
検診の頻度はどのくらいが理想ですか?
島田先生
自治体の検診は、国全体の乳がん死亡率を下げることを目的におこなわれており、費用対効果も考慮してガイドラインが作られています。したがって、一人ひとりの乳がんをより早く発見するためという視点でのガイドラインではないことを理解しないといけません。40歳以上の女性は2年に1回の乳がん検診が推奨されていますが、これは「平均的なリスクの人」に向けたものです。デンスブレストの人、家族に乳がんの既往がある人、ピルを長期に服用している人、不妊治療や生理不順の治療などで女性ホルモン剤を長期に使用している人は、毎年の検査をおすすめします。
編集部
自分でできるセルフチェックも意味がありますか?
島田先生
乳がんの早期発見には、普段から乳房の状態を把握しておくことが大切です。入浴時に手で触れたり、クリームを塗る際に変化がないか確認したりするだけでも効果があります。このように、日常的に自分の乳房に意識を向ける習慣を「ブレスト・アウェアネス」と呼びます。普段の状況を知っていれば、わずかな変化にも気づきやすくなります。変化に気づいたら早め受診し、早期発見・早期治療につなげていきましょう。
編集部
検診で“異常なし”といわれても、セルフチェックを続けた方がよいですね。
島田先生
検診での「異常なし」は“現時点では異常が見つからなかった”という意味です。乳腺濃度の高い人では、がんが隠れている可能性もありますし、進行の早いタイプの乳がんは次の検診までの間に発生し進行することもあります。だからこそ、検診結果に関わらずセルフチェックを続け、検診も必ず継続することが重要です。特にデンスブレストの人は乳がんの発症リスクが高くなることが欧米の研究データから明らかになっています。まずは自分のリスクを正しく知り、変化を感じたらすぐ受診しましょう。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあれば。
島田先生
乳がんの早期発見には、まず自分の乳房の状態を知ることが大切です。ブレスト・アウェアネスを心がけ、日常的に状態をチェックすること。そして、自分のリスクを正しく評価し、必要な検診を定期的に受けることが重要です。自治体の検診だけでは不十分だと感じる場合は、自分に合った追加の検診を上手に活用することも大切です。自分は少しハイリスクかもしれないと感じる人は、乳腺専門クリニックなどで乳房のかかりつけ医を持つことをおすすめします。セルフチェックで変化に気づいたときも、かかりつけ医がいればすぐ相談できて安心です。みずから積極的に行動して、早期発見のチャンスを逃さないようにしましょう。
編集部まとめ
乳がんから自分を守るには、自分のリスクを正しく評価することが欠かせません。デンスブレストはそのリスクの一つですが、医療機関によっては乳腺濃度を教えてもらえないこともあります。まずは自分から医師に尋ね、自分がデンスブレストかどうかを知ることが大切です。そして自分の乳房を意識する生活習慣(ブレスト・アウエアネス)を心がけましょう。
医院情報
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