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近年「乳がん」を発症する人が増えている『年代』をご存じですか? 医師が詳しく解説

 公開日:2026/03/11
乳がんは“若くてもなる”って本当? 20代・30代が知っておきたいこと

乳がんは「年齢が上がってからの病気」と思っていませんか? じつは20代・30代でも発症することがあります。若いうちから知っておきたいリスクと対策について、ピンクリボンブレストケアクリニック表参道の島田先生に聞きました。

※2025年10月取材。

島田 菜穂子

監修医師
島田 菜穂子(ピンクリボンブレストケアクリニック表参道)

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筑波大学医学専門学群卒業。筑波大学附属病院、東京逓信病院放射線科で、乳腺外来を開設。1998年アメリカワシントン大学ブレストヘルスセンター勤務、2005年イーク丸の内副院長を経て、2008年にピンクリボンブレストケアクリニック表参道を開設。診療の傍ら、乳がん啓発や診療環境の改善を目指し、2000年に認定NPO法人乳房健康研究会を発足し、日本でピンクリボン活動を始動。ピンクリボンウオークの開催、講演、出版、ピンクリボンアドバイザーの教育などをおこなっている。日本医学放射線学会放射線専門医、日本乳癌学会乳腺専門医、日本がん検診・診断学会認定医、認定スポーツドクター、認定産業医、サウナスパ健康アドバイザーなどの資格を有する。東京2020オリンピックでは聖火ランナーも務めた。

乳がんはどの年代に多いのか?

乳がんはどの年代に多いのか?

編集部

乳がんはどの年代に多い病気ですか?

島田 菜穂子先生島田先生

日本では、乳がんの発症が最も多いのは40〜50代です。特に40代後半は発症のピークで、乳がんになる危険性は30代半ばから40代にかけて急増します。

編集部

60代や70代は乳がんのリスクが少ないのですか?

島田 菜穂子先生島田先生

いいえ、じつは近年、年代の高い人で乳がんを発症する人が増えています。以前は40代後半に発症のピークを迎えたあと、発症率は年齢とともに下がっていました。しかし、現在は発症率が下がらず高い状態が続いていて、60代で2回目のピークを迎えています。つまり、30〜70代後半くらいまでの長い間、乳がんのリスクがあるということです。

編集部

20代や30代で乳がんを発症することは珍しいのですか?

島田 菜穂子先生島田先生

40代以降に比べると発症される人は少ないのですが、近年では20〜30代の発症も少しずつ増えています。特に若い人は検診を定期的に受けているケースが少なかったり、乳腺の密度が濃いため検査画像で病変が隠れてしまったりするため、進行してから気づくケースも少なくありません。

編集部

若い人の乳がんは特徴があるのでしょうか?

島田 菜穂子先生島田先生

若い年代で発症する乳がんは、血縁に乳がんの人が多いなど、遺伝的な要因が関わっているケースが多く見られます。乳がんにはいくつかの種類がありますが、特に遺伝子の異常を伴う乳がんの人に多いのが「トリプルネガティブ乳がん」です。このタイプは進行が速く、早期に発見して治療することが重要です。

編集部

自覚症状はあるのですか?

島田 菜穂子先生島田先生

しこりや乳頭からの分泌物、乳房の形の変化などが見られることもありますが、初めのうちは症状がないケースも少なくありません。そのため、普段から自分の乳房の状態を把握するためにセルフチェックをおこない、何か変化を感じたら「気のせい」と放置せず、早めに乳腺外科に受診しましょう。

若年層でも乳がんになるのはなぜですか?

若年層でも乳がんになるのはなぜですか?

編集部

若年層の乳がんは、遺伝が関係することが多いのですね。

島田 菜穂子先生島田先生

はい。母親や姉妹など、血縁者に乳がんや卵巣がんの既往がある場合、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC ※)の可能性があります。母親や姉妹に限らず、父方・母方のいずれの血縁者にも乳がんを発症した人がいる場合は、早めに検診を受けることをおすすめします。

※ 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)は、生まれつき特定の遺伝子(主にBRCA1またはBRCA2)に変化があることで、乳がんや卵巣がんを発症するリスクが通常より高くなる体質

編集部

女性の血縁者に乳がんや卵巣がんの経験者がいたら要注意ですね。

島田 菜穂子先生島田先生

それだけでなく、BRCA2遺伝子変異がある家系では、男性の前立腺がんや大腸がん、膵臓がんを若年で発症する傾向があり、このような人が血縁者に多い場合も注意が必要です。特にBRCA遺伝子の変異による乳がんは、通常より若い年代で発症する傾向があるため、早めに検診を受けることをおすすめします。検診開始の目安は、血縁者の発症年齢より10歳若い年齢です。

編集部

遺伝以外に、乳がんの原因には何がありますか?

島田 菜穂子先生島田先生

現在、乳がんの発症原因ははっきり分かっていませんが、一般的に乳がんは女性ホルモンの影響や遺伝的要因、生活習慣などが複雑に関わって発症するといわれています。特に初潮が早い人や出産経験のない人、夜勤などで生活リズムが乱れがちな人はリスクが高い傾向にあります。

編集部

生活習慣も乳がんの発症に影響しますか?

島田 菜穂子先生島田先生

影響があると考えられています。脂質の多い食事、過度の飲酒、喫煙、閉経後の肥満や脂質異常症、運動不足、ストレス、睡眠不足などはホルモンバランスを乱し、乳がんリスクを高める要因となります。規則正しい生活を心がけ、特に閉経後は体重管理が予防の基本です。

編集部

妊娠・出産は乳がんと関係がありますか?

島田 菜穂子先生島田先生

一般に、初産の年齢が高いことや、出産や授乳の経験がない人は、乳がんの発症リスクがやや上がることが分かっています。ただし、これはあくまでも統計上の話です。妊娠や出産経験がない人が必ず乳がんになるわけではありませんし、妊娠や出産の経験があれば乳がんにならないというわけでもありません。誰でも乳がんになりうるという意識を持って、自分でセルフチェックをおこない、定期的な検診を受けること、そして変化に気づいたらすぐに受診すること、乳房を意識する生活(ブレスト・アウェアネス)がとても大切です。

乳がんを予防するため、20代・30代が知っておくべきこと

乳がんを予防するため、20代・30代が知っておくべきこと

編集部

20代・30代でも検診を受けたほうがよいですか?

島田 菜穂子先生島田先生

現在、日本における自治体の乳がん検診は平均リスクの人を基準にガイドラインが制定されており、40歳以上の人を対象に、2年に1度のペースで実施されています。精度の高い検診が実施されていますが、若い人やハイリスクの人、乳腺が発達している人(高濃度乳房)にとっては、検診開始年齢や検診間隔、おこなう検査内容が必ずしも十分とは言えません。乳がんの発症を確実に予防する方法は今のところありませんが、早く発見することで大切な乳房も命も守ることができます。そのためには、自覚症状がないうちから定期的に検診を受け、早期発見を心がけることが大切です。特に家族に乳がんの既往がある人は、自治体からの検診案内を待たずに、若い年代から自ら乳腺専門クリニックなどで検診を始めることをおすすめします。

編集部

「家族に乳がんの既往がある」以外で、特に検診を受けた方がよい人は?

島田 菜穂子先生島田先生

避妊や生理不順、PMS(月経前症候群)、子宮内膜症の治療、不妊治療、更年期障害の治療などでピルなどの女性ホルモン剤を長く使っている人は、乳がんを発症するリスクが高くなるとされています。また、乳がんの80%は女性ホルモンが進行を促すタイプであり、乳がんに気づかない状態で女性ホルモン剤を使用してしまうと、がんを進行させてしまう可能性があります。そのため、女性ホルモン剤をこれから使用する人は、必ず治療前に乳がん検診を受け、乳房に異常がないことを確認してから治療を開始しましょう。これらの薬剤を使っている間も、また、長期間使用していた人も、ぜひ検診を継続してほしいと思います。

編集部

その際にはどの検査を受けたらよいでしょうか?

島田 菜穂子先生島田先生

20〜30代では乳腺が発達しているため、マンモグラフィよりも超音波検査(エコー)の方がより小さなしこりを検出しやすい場合があります。ただし、石灰化という微細なカルシウムの沈着がしこりの発生に先行して起きる乳がんもあり、この石灰化は超音波検査やMRI検査などでは発見できず、マンモグラフィ検査でないと検出できません。したがって、症状があるときや初回の検診では、乳腺専門クリニックなどでマンモグラフィ検査とエコーの両方を受けることをおすすめします。その結果を基に、自分に適した検査や頻度を乳房の主治医と相談しながら決め、その後はその方針に沿って無理なく継続するようにしましょう。

編集部

そのほか、乳がんを予防するために日常的にできることはありますか?

島田 菜穂子先生島田先生

乳がんの早期発見には、日常的なセルフチェックが欠かせません。セルフチェックは異常や病気を発見するためだけではなく、普段の状態を知り、「何か変わったことはないかな?」と気づくためにおこなうものです。セルフチェックを続けるには、日頃から無理なく自分の乳房を意識できる習慣をつくることが大切です。「シャワータイムには乳房を手で洗う」「風呂上りに乳房にボディクリームを塗る」など、毎日の動作のなかに取り入れておくと、何気ないタイミングの中でも、異変に気づきやすくなります。

編集部

そのほか、日常的にできる予防策はありますか?

島田 菜穂子先生島田先生

バランスのよい食事、適度な運動、十分な睡眠が基本です。過度な飲酒や喫煙を避け、ストレスを溜めない生活を心がけましょう。また、女性ホルモン剤を使用するときは使用開始前・使用中・使用後のいずれも、必ず定期的に検診を受けるようにしましょう。

編集部

乳がんと向き合うために大切な考え方を教えてください。

島田 菜穂子先生島田先生

「自分は大丈夫」ではなく、「誰にでも起こり得る病気」と意識することが大切です。早期発見であれば、治療にかかるお金や時間も少なく、体への負担も小さくできるため、将来の妊娠や仕事への影響も最小限にできます。乳房を意識する生活習慣(ブレスト・アウェアネス)を心がけ、定期的な検診と日々のセルフチェックを続けることが、自分の未来を守る行動につながります。

編集部

最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあれば。

島田 菜穂子先生島田先生

乳がん検診を受けない理由として、「症状がない」「時間がない」「費用がかかる」といった声をよく耳にします。しかし、進行した乳がんの治療には非常に多くの時間とお金がかかります。検診にかける時間と費用は、将来の負担を減らすための大切な投資です。乳がんはサブタイプと呼ばれる性質の違いによって治療方法や進行スピードが異なりますが、どのタイプであっても共通して言えるのは、早期に発見できれば、たとえ進行が速いとされるタイプでも高額な薬物治療を回避し、治療にかかる時間も短くできるということです。命を守るだけでなく、キャリアや出産、趣味など、自分が望む将来のライフスタイルを諦めずに済みます。ぜひ、積極的に乳がん検診を受けてほしいと思います。それからもう一つ、乳がんのリスクを低減するには運動習慣も重要です。研究により、週1時間のランニングや週2時間のウォーキングなど、7メッツ程度の運動(安静時の7倍のエネルギーを消費する高い強度の身体活動・運動)で乳がんの発症リスクが約25%低減することが科学的に証明されています。しかも発症だけでなく、再発のリスクも軽減してくれます。「忙しくて運動の時間が取れない」という場合には、通勤時に少し回り道をしたり、大股で速足で歩いたりといった、日常の中で工夫するだけでも運動効果は上がります。ぜひ、自分に無理のない方法で運動習慣を取り入れてほしいと思います。

編集部まとめ

特に近年では、若くして乳がんを発症する人が増えていることもあり、「若いから大丈夫」という油断は禁物です。早期に発見できれば治療もスムーズに進めることができますし、その後の人生を有意義に過ごすこともできます。まずは自分のリスクを正しく見極め、必要に応じて検査を受けるようにしましょう。

医院情報

ピンクリボンブレストケアクリニック表参道
所在地 東京都渋谷区神宮前4-3-13 FPG links OMOTESANDOⅢ
診療科目 外科、婦人科、放射線科
診療時間 午前: 月~金 10:00~14:00 土日 9:30~13:00 (予約制)
午後: 月金 15:30~19:00 火水 15:30~20:00 木 15:30~17:30 土日 14:00~18:00 (予約制)
休診日 第1木曜日・祝

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