その鼻詰まり、「鼻中隔弯曲症」が原因かも? 症状・治療法も医師が解説!

いつも鼻が詰まって息苦しい、もしかすると「鼻中隔弯曲症」かもしれません。鼻の内部で仕切りとなる「鼻中隔」がゆがむことで鼻の通りが悪くなるこの状態は、意外と多くの人が抱えていると言われています。今回は、鼻中隔弯曲症の原因や症状、治療法について「中尾形成外科」の中尾先生がわかりやすく解説します。

監修医師:
中尾 崇(中尾形成外科)
鼻中隔弯曲症と鼻詰まりの関係性

編集部
そもそも鼻中隔弯曲症とは、どういう状態なのでしょうか?
中尾先生
鼻の中には左右を分ける壁があり、これを鼻中隔と言います。本来、鼻中隔はまっすぐですが、多くの人は成長過程で弯曲します。多少であれば問題ないのですが、曲がりが強いと片側または両側の鼻腔が狭くなって空気の通りが悪くなり、鼻詰まりが慢性化します。風邪やアレルギー性鼻炎と違い、症状が季節や体調で変わらず常に起こっていることが特徴的です。
編集部
鼻詰まりの人は鼻中隔弯曲症の可能性がある、ということですか?
中尾先生
鼻詰まりを起こす原因は多岐にわたり、アレルギーや副鼻腔炎、ポリープなどもその一例です。そのなかでも鼻中隔の変形は非常に多く、日本人の半数以上に認められると言われています。そのため、「普段から片方の鼻だけ詰まる」「横になるとどちらかが詰まる」といった特徴がある場合は、鼻中隔弯曲症の可能性を疑ってもいいと思います。
編集部
鼻中隔弯曲症は、日常生活にどのような影響を与えるのですか?
中尾先生
鼻呼吸がしにくくなるため、口呼吸になりやすくなります。口呼吸は喉の乾燥やいびきの原因となり、睡眠の質を下げます。その結果として、日中の集中力低下や疲労感にもつながる可能性があります。鼻詰まりは「我慢すればいい」と軽視されがちですが、長期的には健康全般に悪影響を与えるので要注意です。
編集部
鼻中隔弯曲症が自然に治ることはありますか?
中尾先生
残念ながら骨や軟骨の形の問題なので、自然に治ることはありません。成長期に形が変わることはあっても、成人後は元に戻ることは期待できません。症状が軽ければ生活上の工夫で対応できますが、重い場合は専門的な治療が必要となります。
鼻中隔弯曲症の原因と鼻詰まり以外の症状

編集部
鼻中隔が曲がる原因はなんですか?
中尾先生
鼻中隔は軟骨と骨によって構成されており、顔の発育とともにこれらも成長します。しかし、それぞれの成長スピードが異なるため、バランスが崩れてしまって弯曲が強まると考えられています。また、生まれつきの骨格も原因の1つです。そのほか、鼻をぶつけた外傷で変形することもあります。ほかの鼻疾患と合併することで、鼻詰まりが目立つようになる人も少なくありません。
編集部
鼻詰まり以外には、どのような症状が出るのでしょうか?
中尾先生
代表的なのは、頭痛や後鼻漏(鼻水が喉に流れること)、いびき、慢性的な喉の痛みなどです。鼻の空気の流れが乱れることで、副鼻腔炎を起こしやすくなる人もいます。また、通りが悪いと無意識に口呼吸になり、むし歯や歯周病のリスクも高まります。そのほか、風邪を引きやすくなる、頭痛に悩まされやすくなるなども考えられるでしょう。
編集部
睡眠にも影響するのでしょうか?
中尾先生
はい。鼻が詰まると十分に空気が入らず、いびきや睡眠時無呼吸症候群の一因となります。睡眠中に酸素が不足すると脳や心臓に負担がかかり、高血圧や動脈硬化といった生活習慣病のリスクも高まります。単なる鼻詰まりと放置せず、睡眠の質に影響していないか注意が必要です。
編集部
鼻中隔弯曲症は子どもにも起こるのですね。
中尾先生
はい、子どもでも生まれつきや成長に伴って弯曲が起こります。小児期は鼻腔が狭いため軽度の弯曲でも詰まりやすく、口呼吸が習慣になると歯並びや顎の発達に影響を及ぼすこともあります。小児のいびきや口呼吸は放置せず、耳鼻科でのチェックをおすすめします。
鼻中隔弯曲症の治療法と注意点

編集部
鼻中隔弯曲症の治療には、どのような方法がありますか?
中尾先生
軽度であれば点鼻薬や抗アレルギー薬で炎症を抑え、症状を和らげることができます。しかし、根本的に曲がった鼻中隔を治すには「鼻中隔矯正術」という手術が必要です。内視鏡を用いた比較的負担の少ない手術が一般的で、麻酔下でおこなわれます。
編集部
手術のメリットについて教えてください。
中尾先生
最大のメリットは、鼻の通りが格段に改善して、呼吸が楽になることです。その結果、睡眠の質が上がり、頭痛やいびきが軽快します。また、スポーツや日常生活で息苦しさを感じにくくなり、生活全体の快適さが増す人も多くいらっしゃいます。
編集部
手術のリスクや注意点はありますか?
中尾先生
術後、しばらく鼻が腫れて詰まった感覚が続いたり、出血のリスクがあったりします。ただし、重大な合併症は稀です。日帰りまたは数日の入院でおこなわれ、多くの人が1〜2週間で普段の生活に戻ることができます。
編集部
鼻中隔弯曲症の治療を考える上で大事なことは?
中尾先生
鼻中隔弯曲症自体は命に関わる病気ではありませんが、生活の質に直結します。薬でコントロールできるのか、手術が必要かは症状の程度や生活への影響などを考慮して総合的に判断します。自己判断せず、耳鼻咽喉科でしっかりと相談することが最も重要です。
編集部
手術を受ければ、鼻中隔弯曲症は完全に治るのですか?
中尾先生
気をつけたいのが、鼻が見た目にも曲がっている場合です。鼻詰まりがあり、かつ見た目にも鼻が曲がっている場合は、通常の鼻中隔矯正術ではしっかり治すのが困難です。鼻の中だけでなく、見た目の曲がりも正す必要があります。そのような場合には、形成外科にご相談ください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中尾先生
鼻中隔矯正術は、曲がった鼻中隔をまっすぐに整えることで、慢性的な鼻詰まりを改善できる治療です。手術後には「こんなに空気が通るのか」と驚く人も多く、睡眠の質や日中の集中力の向上にもつながります。薬や一時的な処置で改善が得られない場合には、根本的な解決法として有効であり、鼻詰まりに長く悩んでいる人におすすめできる治療です。
編集部まとめ
鼻づまりが続くと、睡眠の質や生活の快適さに大きく影響します。鼻中隔矯正術は根本から改善をめざせる治療法の1つ。長引く症状に悩む人は鼻中隔弯曲症が疑われるので、一度専門医に相談してみてはいかがでしょうか。
医院情報

| 所在地 | 〒105-0001 東京都港区虎ノ門 5-12-1 虎ノ門ワイコービル 1階 |
| アクセス | 東京メトロ「神谷町駅」 徒歩1分 |
| 診療科目 | 形成外科、美容外科、美容皮膚科 |



