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鼻水が長引く人は「どれぐらい続く」と病院へ行くべきですか? 治療法も医師が解説

 公開日:2025/05/17

季節を問わず鼻の不調が続くと、「単なる風邪なのか、それとも別の病気なのか?」と不安を感じる人も多いでしょう。長引く鼻づまりや鼻水、嗅覚の低下はなぜ起こるのでしょうか? そこで、一年中鼻の不調が続く原因や適切な対処法について、「渋谷駅前耳鼻咽喉科」の森安仁先生に解説してもらいました。

森 安仁

監修医師
森 安仁(渋谷駅前耳鼻咽喉科)

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筑波大学医学群医学類卒業。その後、東京大学医学部附属病院や虎の門病院、近畿大学病院などで耳鼻咽喉科の経験を積む。2024年、渋谷駅にある「渋谷駅前耳鼻咽喉科」の院長に就任。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定・専門医、補聴器相談医。

鼻の不調が続くのはなぜ?

鼻の不調が続くのはなぜ?

編集部編集部

一年中鼻の調子が悪いのはなぜですか?

森 安仁先生森先生

鼻の不調が続く原因として、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、鼻中隔弯曲症などが考えられます。特に、3カ月以上症状が続く場合は慢性副鼻腔炎の可能性があり、治療が必要です。また、花粉症のほかに通年性アレルギー性鼻炎を併発すると、ハウスダストやダニがアレルゲン(アレルギー症状の原因)となって、一年中鼻炎症状が続くようになってしまいます。

編集部編集部

慢性副鼻腔炎とはどのような病気ですか?

森 安仁先生森先生

慢性副鼻腔炎は、鼻の奥にある副鼻腔に炎症が長期間続く病気で、鼻づまりや黄色・緑色の鼻水、後鼻漏(鼻水が喉に流れ込む)などの症状が特徴です。顔の痛みや頭痛を伴うこともあり、放置すると嗅覚障害が生じることもあります。急性副鼻腔炎では通常、症状が2~3週間程度で改善し、発症時に熱が出ることも多いのですが、慢性副鼻腔炎の症状は3カ月以上続くことも多く、熱が出ることは稀です。

編集部編集部

アレルギー性鼻炎との違いは何ですか?

森 安仁先生森先生

アレルギー性鼻炎は、花粉やダニ、ハウスダストなどに対する過敏反応によってくしゃみや透明な鼻水、鼻づまりが起こる病気です。慢性副鼻腔炎と異なり、鼻水はさらさらしており、目のかゆみを伴うことが多いのが特徴です。

慢性副鼻腔炎にも種類がある? 医師が解説!

慢性副鼻腔炎にも種類がある? 医師が解説!

編集部編集部

慢性副鼻腔炎にも種類があるというのは本当ですか?

森 安仁先生森先生

そうですね。慢性副鼻腔炎はいくつかの病態に分類されます。主なものとして、「好酸球性副鼻腔炎」「細菌感染をベースとした慢性副鼻腔炎」「副鼻腔真菌症」などがあります。それぞれ原因や症状が異なり、治療方法も変わるため、正確な診断が重要です。

編集部編集部

それぞれについて教えてください。まずは好酸球性副鼻腔炎から。

森 安仁先生森先生

好酸球性副鼻腔炎は、血液中の好酸球という免疫細胞が関与して炎症を引き起こすタイプの慢性副鼻腔炎です。鼻茸(ポリープ)ができやすく、嗅覚障害を合併することが多いのが特徴です。さらに、気管支喘息や好酸球性中耳炎を併発することもあります。手術で一時的に改善することはありますが、6年以内に約半数が再発するとされており、長期的な管理が必要な疾患です。

編集部編集部

では、細菌感染をベースとした慢性副鼻腔炎というのはどんな病態ですか?

森 安仁先生森先生

風邪などがきっかけで鼻の粘膜が腫れ、副鼻腔の換気が悪くなることで細菌が繁殖し、炎症が慢性的に続くタイプの副鼻腔炎です。膿のような黄色や緑色の鼻水、鼻づまり、後鼻漏(鼻水が喉に流れる)などの症状が現れます。

編集部編集部

副鼻腔真菌症についても教えてください。

森 安仁先生森先生

副鼻腔真菌症は、鼻の中で真菌(カビ菌)が繁殖して起こる副鼻腔炎です。原因は明確ではありませんが、免疫抑制剤の使用や糖尿病が関与している可能性が指摘されています。病態は「浸潤型」と「非浸潤型」に分かれ、浸潤型は周囲の組織を破壊するため、早期の治療が必要です。

慢性的な鼻の不調、どうしたらよい?

慢性的な鼻の不調、どうしたらよい?

編集部編集部

どんな場合に耳鼻科を受診すべきですか?

森 安仁先生森先生

1カ月以上鼻づまりや鼻水が続く場合や、匂いが分かりにくくなった場合は耳鼻科を受診することをおすすめします。ただし、市販の点鼻薬を使って鼻づまりを抑えている場合、2週間以上使用すると逆に悪化する可能性があるため、2週間たっても改善がみられない方は速やかに受診しましょう。ほかには、顔の痛みや頭痛がある場合も、副鼻腔炎の可能性があるため、早めに専門医に相談すると良いでしょう。

編集部編集部

耳鼻科を受診した場合、どのような検査がおこなわれるのですか?

森 安仁先生森先生

耳鼻科では、内視鏡を使って鼻の奥の状態を確認するほか、必要に応じてCTMRIをおこなうこともあります。アレルギーが疑われる場合は、血液検査でアレルゲンを特定することも可能です。

編集部編集部

通年性アレルギー性鼻炎だった場合、どのような治療法がありますか?

森 安仁先生森先生

アレルゲンが特定され、除去できるものであれば、まずはそれを除去します。薬物療法であれば抗アレルギー薬の内服やステロイド点鼻薬、点眼薬を用います。ダニ・スギアレルギーであれば、舌下免疫療法も効果が高いとされていますが、3~5年と治療期間が長くなります。これらの薬物治療が効かない場合には、外科的治療が検討されます。

編集部編集部

慢性副鼻腔炎だった場合、どのような治療法がありますか?

森 安仁先生森先生

抗菌薬や去痰薬、点鼻ステロイド薬などの薬物療法や鼻洗浄が最初におこなわれ、これらをおこなっても改善しない場合には手術療法が検討されます。病状によって手術の種類は異なりますが、基本的には鼻の穴から内視鏡を用いて手術しますので、顔に傷ができることはありません。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

森 安仁先生森先生

長引く鼻詰まりや鼻水症状で困っている人は、耳鼻科で診断を明確にすることで、内服・点鼻薬やレーザー手術などの治療で症状の改善が期待できます。鼻呼吸ができ、嗅覚が改善すると、日々の生活に彩りが生まれます。市販薬で症状が改善しないからと諦めてしまうのではなく、一度、専門医での治療を検討してみましょう。

編集部まとめ

鼻の不調が長引く場合、単なる風邪ではなく、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎の可能性があります。症状が続く場合は、自己判断せず、早めに耳鼻科で適切な診断と治療を受けることが大切です。快適な日常を取り戻すためにも、専門医に相談してみてはいかがでしょうか。

医院情報

渋谷駅前耳鼻咽喉科

渋谷駅前耳鼻咽喉科
所在地 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3丁目28−15 渋谷S.野口Bldg.
アクセス JR「渋谷」駅 新南口より徒歩1分
診療科目 耳鼻咽喉科

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