ワンオペ育児の孤独感がつらい… ママ医師が教える「心を守るメンタルケア」

ワンオペ育児に直面している母親たちは、孤独感や疲労感で精神的に追い詰められることも少なくありません。ワンオペ育児の孤独感は、どのように対処していったらよいのでしょうか? 今回は、実際に4児の母でもある精神科医の竹田先生(ウィーミート永田町)に、ワンオペ育児中のメンタルケアの方法や、専門家への相談方法などについてお話を伺いました。

監修医師:
竹田 美香(ウィーミート永田町)
ワンオペ育児の現状と孤独感

編集部
実際のところ、ワンオペ育児で悩んでいる母親は多いのでしょうか?
竹田先生
多いと思います。育児をしている母親の多くが「1人で全部やらなければ」と感じており、孤独感や疲労感を抱えています。家事や育児、仕事の全てを1人でこなそうとしてプレッシャーを感じている人も少なくありません。
編集部
パートナーや親などと分担せずに、全てを1人でやるのは大変ですよね?
竹田先生
もちろん、全てを1人でやるというのは必然的に量が増えて大変ですよね。しかし、ワンオペ育児のもっとも大きな問題は仕事量の多さではありません。育児の負担が物理的に増えるだけでなく、話を共有できる人がいない、相談できる人がいないという孤独感が大きな問題です。誰かに愚痴をこぼすことすら難しく、「自分だけが頑張らなければ」と思い込んでしまう人も多くいらっしゃいます。
編集部
たしかにそうかもしれません。
竹田先生
孤独感が長く続くと、気持ちが沈みやすくなったり、不安やイライラが増えたりします。睡眠不足や疲労と重なると、日常生活に支障が出ることもあります。育児そのものがつらく感じられたり、子どもへの関心が薄れてしまったり、子どもが可愛いと思えなくなったりすることも少なくありません。
編集部
先生ご自身も4人のお子さんの母親だと伺いました。
竹田先生
はい。私も子どもを育てる中で「妊娠中は検診などで人・社会とのつながりが多かったのに、出産後は急に1人きりになった」と思ったことがありました。赤ちゃんのことは皆が気にかけてくれる一方で、「産後のお母さん自身のサポートは少ないのでは?」と感じたこともあります。私自身も「母親だからしっかりしなきゃ」と力が入りすぎて、近くに誰かがいても緊張してしまったり、不安で苦しくなったりすることがありました。そんな経験があるからこそ、同じような悩みを抱えている人に寄り添いたいと思っています。
ワンオペ育児の孤独感への対処法

編集部
孤独を感じたとき、まずどんな対処法がありますか?
竹田先生
まずは「1人で抱え込まないこと」が大切です。家族や友人に少しでも頼れる部分はお願いしたり、自治体や地域の子育て支援サービスを利用したりするのも効果的です。短時間でも預けて自分の休息時間を確保するだけで、気持ちが大きく楽になります。
編集部
「人に預けて自分は休む」というのに抵抗があります。
竹田先生
たしかに、最初は心理的なハードルを感じる人もいます。でも、一時預かりや家事支援サービスは、赤ちゃんと自分の安全を守りながら休息するための手段です。自分が休むことで気持ちに余裕が生まれ、結果的にお子さんや周りにも良い影響があるということを知っておいてほしいです。
編集部
それでも抵抗がある場合、どうしたらいいでしょうか?
竹田先生
どうしても人にお願いするのが難しければ、まずは家族や友人に話を聞いてもらったり、似たような境遇の人と触れあったりするところから始めてはいかがでしょうか。愚痴をこぼしたっていいと思います。「誰かに頼っていいんだ」と思えるだけでも、気持ちが軽くなります。さらに、必ずしも話を聞いてもらわなくても「家の中に自分以外の大人がいる」という状況だけでも、少し冷静になれたり、リラックスできたりするのではないでしょうか。
編集部
日常でできるセルフケアには、どんなものがありますか?
竹田先生
なるべく“やめること”を頑張ってください。例えば、洗い物するのが面倒なら、紙皿を使ってやらないようにする。「スキマ時間」ができたら、好きなお茶を飲む、リラックスできる音楽を聴くなどの小さな息抜きを意識してみてください。日記やメッセージアプリでその日の思いや育児の様子を書き出すことも、気持ちの整理に役立ちます。
子育てでつらくなったら医療機関へ

編集部
それでも気持ちが沈んだままの場合は、どうしたらいいでしょうか?
竹田先生
専門家に相談するのがおすすめです。出産後は、助産師さんや看護師さん、産婦人科の先生に相談できますが、1カ月健診まではなかなか受診の機会がありません。自治体の育児相談などもありますが、曜日や時間が限られていたり、予約制だったりすることが多いかもしれません。そんなときは、精神科や心療内科に気軽に相談してみるのもおすすめです。
編集部
受診の目安などはありますか?
竹田先生
目安としては「生活に支障をきたし始めたら」ということになるかと思いますが、生活に支障をきたさないように頑張りすぎてしまうのもよくないので、気分が落ち込んだり、不安になったりといったちょっとした変化でも、できるだけ早く相談していただきたいですね。怒りを抑えきれない、動きたいのに動けないなど、「自分の気持ちがコントロールできないと感じたら」というのも、1つの目安になると思います。
編集部
でも、受診するのも大変そうです。
竹田先生
そういう人にはオンライン診療が便利です。自宅でスマートフォンを使って医師と面談でき、通院の負担や赤ちゃんの預け先の心配もなく受診できます。初めての人も、予約サイトで日時を選び、問診票を入力するだけで簡単に利用でき、医師の判断より必要に応じて薬の処方もオンラインで対応可能です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
竹田先生
母親としての日々は、まるでいくつもの仕事を同時に背負っているようなものなのに、「それが普通」と思い込んで、自分を追い込んでしまう人が少なくありません。本当は頑張りすぎているのに、それに気づけないこともあります。私たちが「それは考えすぎです」とか「もっと頑張って」とたしなめることはありません。もし「つらい」「孤独だ」と感じることがあれば、どうぞ安心して相談してくださいね。
編集部まとめ
ワンオペ育児は本当に大変ですが、決して1人で頑張らなくていいのです。周りのサポートやサービス、必要に応じてオンライン診療なども取り入れながら、無理せず少しずつ前に進みましょう。自分を責めず、「今は心が疲れている」と感じたら専門家に相談することも大切です。そうすることで、少しずつでも育児を続ける力を取り戻せます。



