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『脊柱管狭窄症』の治療法「内服薬」「注射」「リハビリ」「手術」 それぞれのメリット・デメリット

 更新日:2025/11/12
『脊柱管狭窄症』の治療法「内服薬」「注射」「リハビリ」「手術」 それぞれのメリット・デメリット

脊柱管狭窄症の治療には、内服薬や注射といった保存療法からリハビリテーション、さらには手術までさまざまな選択肢があります。「それぞれの方法にどんなメリット・デメリットがあるのか」「症状や状態に応じた治療選びのポイントは?」などを、リペアセルクリニック札幌院の黄金先生に聞きました。

黄金 勲矢

監修医師
黄金 勲矢(リペアセルクリニック札幌院)

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2006年3月札幌医科大学医学部医学科卒業。札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、済生会小樽病院、北海道立江差病院、滝川市立病院、University of California, San Francisco, Department of Orthopedic Surgery、札幌医科大学医学部整形外科学講座助教・講師などを経て、2024年5月医療法人美喜有会リペアセルクリニック札幌院院長。日本再生医療学会、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医。

脊柱管狭窄症の治療法、それぞれのメリットとデメリット

脊柱管狭窄症の治療法、それぞれのメリットとデメリット

編集部編集部

内服薬での治療にはどんなメリットとデメリットがありますか?

黄金先生黄金先生

内服薬は、痛みやしびれを和らげるために処方されます。消炎鎮痛薬や神経の血流を改善する薬が中心で、自宅で続けやすいのが大きな利点です。ただし、内服薬での治療はあくまで症状を抑えるもので、根本的な原因を治すわけではありません。また、長期服用で胃腸障害や腎機能への影響といった副作用が出る可能性もあるため、定期的なチェックが必要です。

編集部編集部

注射治療にはどんな特徴があるのでしょうか?

黄金先生黄金先生

注射治療、特に神経根ブロックや硬膜外ブロックは、狭窄で圧迫された神経周囲に薬を直接届けるため、痛みを即座に軽減しやすいという大きなメリットがあります。日常生活を取り戻す助けになる一方、効果は一時的なことが多く、数週間から数カ月で症状が出現することがあります。また頻回の注射は合併症リスクがあるため、慎重に回数を検討する必要もあります。

編集部編集部

手術治療のメリットとリスクは?

黄金先生黄金先生

手術は、狭くなった脊柱管を広げて神経の圧迫を取り除く唯一の根本治療といえます。歩行障害が改善し、再び長い距離を歩けるようになる患者さんも多くいます。ただし、手術には出血や感染、合併症のリスクが伴いますし、入院やリハビリテーション(以下、リハビリ)も必要になります。また、高齢者や持病のある人ではリスクが高くなるため、慎重な判断が求められます。

編集部編集部

リハビリにはどのような効果がありますか?

黄金先生黄金先生

リハビリは、腰や下肢の筋肉を鍛え、関節や神経の負担を軽くすることを目的としています。ストレッチや体幹強化、歩行訓練などを通して、症状を和らげながら再発予防にもつながるのがメリットです。ただし、効果が出るまでに時間がかかることや、自己流では悪化させる恐れもあるため、専門家の指導のもとで続けることが大切です。

そもそも脊柱管狭窄症はどのような疾患なのか?

そもそも脊柱管狭窄症はどのような疾患なのか?

編集部編集部

脊柱管狭窄症とは、そもそもどんな病気ですか?

黄金先生黄金先生

脊柱管狭窄症は、背骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が加齢などで狭くなり、神経が圧迫される病気です。代表的な症状は、歩くと足がしびれたり痛んだりして休むと回復するというもので、これを間欠性跛行(かんけつせいはこう)といいます。進行すると日常生活に大きな支障をきたします。高齢者に多い疾患ですが、中年以降から注意が必要です。

編集部編集部

なぜ脊柱管が狭くなってしまうのですか?

黄金先生黄金先生

原因の多くは、加齢に伴う椎間板や靱帯の変性です。椎間板が膨らんだり、靱帯が厚く硬くなったりすることで管の中が狭くなり、神経を圧迫します。さらに、骨の変形や「すべり症」が加わると症状が悪化しやすくなります。生活習慣や遺伝的な要因も影響しますが、誰にでも起こりうるため“背骨の老化現象”といっても過言ではありません。

編集部編集部

症状にはどんな特徴がありますか?

黄金先生黄金先生

典型的なのは、一定距離を歩くと足に痛みやしびれが出て、休むと改善する間欠性跛行です。腰痛よりも下肢の症状が目立つことが多いです。進行すると歩行距離が短くなり、日常生活が制限されます。さらに重度になると排尿障害や強い神経障害が出ることもあります。

編集部編集部

一般的な腰痛とはどう違うのでしょうか?

黄金先生黄金先生

一般的な腰痛は筋肉や関節の炎症によることが多く、安静にすると改善するケースが多く見られます。一方、脊柱管狭窄症は神経が圧迫されて起こるため、足のしびれや間欠性跛行といった特徴的な症状を伴います。腰痛としびれがセットになって長引く場合は脊柱管狭窄症を疑い、専門的な検査が必要になります。

治療法の選択と注意点

治療法の選択と注意点

編集部編集部

治療法はどのように選ばれるのですか?

黄金先生黄金先生

症状の強さや生活への影響度、患者さんの年齢、全身状態を考慮して決めます。軽症なら内服やリハビリ、中等度で強い痛みがあるなら注射、中等度以上で日常生活が著しく制限されている場合は、手術が検討されます。いずれも「患者さんが何を優先したいか」を踏まえて、医師と一緒に治療方針を決めていくことが大切です。

編集部編集部

手術を受けるべきタイミングはありますか?

黄金先生黄金先生

薬や注射、リハビリを続けても改善が得られず、歩行距離が短くなり日常生活が大きく制限されているとき、また排尿障害や強い神経障害が出た場合は、手術が望ましいタイミングです。早すぎても遅すぎても適切な効果が得にくいため、経過観察と相談を繰り返しながら最適な時期を見極めます。

編集部編集部

内服薬やリハビリなどの保存療法だけで治ることはありますか?

黄金先生黄金先生

完全に「治る」というより、保存療法で症状をうまくコントロールしながら生活できる人は多くいます。特に軽度であれば、筋力強化や姿勢改善、適切な薬の使用で日常生活を問題なく過ごせることも少なくありません。ただし、進行を完全に止めることは難しいため、定期的な経過観察が不可欠です。

編集部編集部

治療を進めるうえで注意すべき点は?

黄金先生黄金先生

それぞれの治療には長所と短所があり、症状や生活スタイルに合わせた最適解を探す必要があります。また治療法を選択する際には、自分の希望や不安を率直に医師へ伝えることが、納得できる治療選択につながります。

編集部編集部

最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあれば。

黄金先生黄金先生

腰部脊柱管狭窄症で普通にできていたことが少しずつ難しくなり、思うように体が動かせないことに、悔しさやもどかしさを感じている人も少なくないと思います。この病気には個人差が大きく、すぐに手術が必要になるケースもあれば、生活習慣の工夫やリハビリ、薬の服用や注射で十分に症状を和らげることができるケースもあります。今後も無理なく焦らずにできることから続けていきましょう。

編集部まとめ

脊柱管狭窄症を発症したからといって、必ずしも手術が必要なわけではありません。しかし根本的な治療を目指すなら手術が必要です。症状やライフスタイル、「治療後何をしたいのか」といったことを考えながら、最善の治療法を選択したいですね。

医院情報

リペアセルクリニック札幌院

リペアセルクリニック札幌院
所在地 〒060-0042 北海道札幌市中央区大通西5丁目10 ザイマックス札幌大通ビルB1F
アクセス 地下鉄南北線「大通」駅より徒歩4分
JR「札幌」駅南口より徒歩17分
診療科目 整形外科

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