中高年の体の痛み、諦めていませんか？ 保険適用の「ハイドロリリース」とは？【医師解説】

梶谷先生

超音波診断装置（エコー）を用いて、痛みの原因となっている神経や筋膜、腱の周囲に薬液を注入し、回復を図る治療法です。なんらかの原因で組織の滑走障害（組織同士の滑りが悪くなる状態）や、組織の癒着などが起こって動きが悪くなっている部位をリリースする（剥がす）ことで、「動き」と「痛み」の両方の改善を図ります。

梶谷先生

私の見解では「神経の本来の機能を取り戻す」という感覚を持っています。神経や筋膜などの周囲組織が滑走障害や癒着を起こして動きが悪くなると、痛みが出やすくなります。そこに薬液を注入することで組織が剥がれ、滑らかに動くようになるため、痛みの根本的な原因にアプローチできるのです。

梶谷先生

生理食塩水や、ごく少量の局所麻酔薬を使用することが多いです。障害などで激しい痛みを伴う場合などに少量のステロイドを併用することもありますが、基本的には体に優しい薬剤を使用しておこないます。

梶谷先生

個人によって痛みの感じ方に差はありますが、細い針を使いますし、エコー下で正確に目的の場所に打つことができるため、通常の筋肉注射よりも痛みは少ないと思います。なぜなら、神経そのものではなく、神経の周りに打つため痛みを感じにくいのです。もちろん、治療中に強い痛みがある場合は無理に進めず、状況を確認しながら慎重に対応します。

梶谷先生

肩こり、腰痛、膝痛、足のしびれ、頭痛や首の痛みなどほぼ全ての痛みやしびれ、筋力低下に対応できます。神経や筋膜、腱などの痛みであれば、かなりの高い確率で効果が期待できます。

梶谷先生

そうですね。野球肩やテニス肘、腸脛靭帯炎（ランナー膝）など、スポーツによる局所的な痛みにも有効です。再発予防のためには、ハイドロリリースだけでなく運動療法と組み合わせるのが理想的です。

梶谷先生

もちろんです。坐骨神経痛などに対しても高い効果が期待できます。肩関節周囲の神経や坐骨神経を治療することで、動かしにくさが改善され、さまざまな日常生活動作がしやすくなることも期待できます。

梶谷先生

そうですね。ハイドロリリースによる治療のメリットはいくつかありますが、まずは、幅広い症状に対し効果が期待できること、そして、症状の根本にアプローチするので効果が持続しやすいこと、そして、エコーを見ながらおこなうので、患者さん側も視覚的に理解し、納得しながら治療を受けられることです。我々医療者側も、エコーを見ながら治療し、効果を確認することで、「ここがこうだったから痛かったのか」とより確信を持つことができます。

梶谷先生

まず問診と触診、エコー診療で痛みの場所を特定します。その後、エコーで滑走不良や癒着を確認し、ピンポイントで薬液を注入します。時間は5〜10分程度で、外来で受けられます。

梶谷先生

すぐに楽になる人もいます。数日かけて徐々に改善するケースも多いですが、基本的には即時的な効果が期待できる治療です。1回で効果が不十分な場合は、数回繰り返したり、別の部分に注射をしたりすることなどで、効果が高まることもあります。

梶谷先生

治療後、まれに内出血や一時的なだるさを感じる人もいますが、重い副作用は非常に少ないといわれています。妊娠中の人や出血傾向のある人、いわゆる「血液サラサラ」のお薬を飲んでいる人などでも治療は受けられますが、事前にそのことを医師に知らせてもらいたいです。

梶谷先生

超音波エコー機器があり、専門的な知識をもつ医師が在籍している整形外科などで受けられます。ホームページなどで「ハイドロリリース」と明記されていることが多いので、確認してみてください。たとえば当院のように、理学療法士やトレーナーが在籍していたり、連携をおこなっていたりする医療機関では、ハイドロリリースだけでなく治療後の身体づくりもサポートしてもらえることが多いです。

梶谷先生

ハイドロリリースというと、「よくわからない治療」「保険がきかないのでは？」という疑問を持つ人もいるかもしれませんが、実際には日本整形外科学会でも発表され注目されている治療法で、保険適用が可能です。スポーツによる障害で悩む人はもちろん、痛みを「もう歳だから仕方ない」と諦めてしまっている中高年の人も、ぜひ一度、ハイドロリリースをおこなっている医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。リハビリテーションに力を入れている整形外科ですとより効果が高まると思います。