“高血圧”の治療が上手くいかない原因をご存じですか? 「二次性高血圧」のせいかも【医師解説】

薬を飲んでも血圧が下がらない……。そんなとき、原因は生活習慣だけでなく、ホルモンの異常による「二次性高血圧」かもしれません。見逃されやすいこのタイプの高血圧について、原因や治療のポイントなど、永島メディカルクリニックの永島先生に教えてもらいました。

監修医師:
永島 秀一(永島メディカルクリニック)
二次性高血圧とは? 高血圧治療がうまくいかないのはなぜ?

編集部
高血圧の治療をしてもなかなか効果が出ない人がいます。それはなぜですか?
永島先生
それはもしかしたら「二次性高血圧」のためかもしれません。
編集部
二次性高血圧とは何ですか?
永島先生
通常の高血圧は生活習慣などが原因として起こり、一般に「本態性高血圧」と呼ばれています。一方、高血圧は特定の病気やホルモン異常によって起こることがあり、まとめて「二次性高血圧」と呼ばれています。原因が明確に存在するのが特徴で、高血圧患者の10人に1人程度が二次性高血圧であると言われています。
編集部
なぜ、二次性高血圧だと治療がうまくいかないのですか?
永島先生
二次性高血圧の多くが本態性高血圧として治療をされているためです。本来、二次性高血圧である場合には、原因となっている疾患を治療することが必要です。そうすることで効率よく血圧を下げられる可能性がでてきたり、場合によっては血圧が正常化したりすることもあります。
編集部
どんな人に二次性高血圧が疑われますか?
永島先生
たとえば、若くして突然高血圧になった人、数種類の薬を使用しても血圧が下がらない人、夜間も血圧が高い人の場合には二次性高血圧が疑われます。特に20〜40代の高血圧では、二次性の病気が背景にあることが少なくありません。
編集部
放置するとどうなるのですか?
永島先生
本態性高血圧と同様に、二次性高血圧でも放置すると腎不全、心筋梗塞、脳卒中などの合併症リスクが高まります。通常、高血圧の治療は長期にわたっておこなわれるため、体に負担がかかり続けてしまいます。
二次性高性血圧の原因は? どんな人に起こりやすい?

編集部
二次性高血圧の原因には何がありますか?
永島先生
代表的な原因には、以下のようなものがあります。 ・慢性腎臓病(CKD) ・腎血管性高血圧症 ・原発性アルドステロン症(副腎腫瘍からのホルモンの過剰分泌) ・褐色細胞腫(副腎腫瘍からのホルモンの過剰分泌) ・クッシング症候群(副腎腫瘍からのホルモンの過剰分泌) ・甲状腺機能亢進症 (甲状腺ホルモンの過剰分泌) ・睡眠時無呼吸症候群(SAS) ・肥満 など
編集部
睡眠も関係するのですか?
永島先生
はい、特に睡眠時無呼吸症候群(SAS)は見逃されがちな疾患ですが、じつは二次性高血圧の原因として非常に多いことがわかっています。夜中にいびきをかく癖がある人や、日中の眠気がある人が高血圧を指摘された場合には、一度専門医を受診して検査を受けた方がよいでしょう。
編集部
二次性高血圧の原因で多いものは何ですか?
永島先生
特に多いのは腎臓の疾患です。慢性腎臓病を発症すると腎臓の機能が低下して体内の水分や塩分の調節がおこなえなくなり、血液量が増加して血圧が上昇します。また、腎血管性高血圧症では、腎臓に血液を送る腎動脈で狭窄が起こることがきっかけとなって血圧が上昇します。
編集部
副腎のホルモン異常とはどういうことですか?
永島先生
副腎は血圧を調節するホルモンを分泌しています。なかでもアルドステロンというホルモンが過剰に出る原発性アルドステロン症は、二次性高血圧の大きな原因になります。
編集部
そのほか、二次性高血圧の原因になることはありますか?
永島先生
ステロイド薬や経口避妊薬、漢方薬の一部(甘草など)は血圧を上げる作用があります。また、解熱鎮痛薬も腎機能に影響して高血圧を悪化させることがあります。常用している薬があれば受診時に、必ず医師に伝えましょう。
二次性高血圧の治療法は?

編集部
二次性高血圧を防ぐことはできますか?
永島先生
すべてを予防することは難しいですが、定期的に健康診断や血液検査を受けたり、日常的に血圧をチェックしたりすることで早期発見が可能です。特に、生活改善をしても血圧が改善しない人は早めに医療機関を受け、医師と相談しましょう。
編集部
治療方法はどうなりますか?
永島先生
原因により異なります。たとえば慢性腎臓病の場合には食事療法、薬物療法、生活習慣の改善などが必要になりますし、原因となる副腎の腫瘍摘出手術や、摘出ができない場合には内服薬による治療が中心になります。また、睡眠時無呼吸症候群の場合にはCPAP療法という医療機器による治療が推奨されます。いずれにしても原因に即した治療法をスムーズに開始することが肝心です。
編集部
高血圧の薬を飲み続けるだけではダメなのですね。
永島先生
原因が明確な場合、原因に即した薬物療法、生活習慣の改善、ときに原因となる腫瘍の摘出手術などで高血圧が改善されることもありますし、症状が改善されれば服薬を中止することもできるかもしれません。いずれにしてもまずは専門医による精密検査が必要です。
編集部
何科を受診すればよいでしょうか?
永島先生
高血圧治療がうまくいかない人は、循環器内科、内分泌内科、腎臓内科などの専門科を受診するとよいでしょう。特に若い人や薬を何種類も飲んでも改善しない人は、二次性高血圧を疑って専門医を受診することをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
永島先生
日本高血圧学会が2025年8月に改訂した「高血圧管理・治療ガイドライン2025」によると、日本における高血圧の患者数は約4300万人と推定されています。その10%が二次性高血圧に該当すると考えれば、想像以上に二次性高血圧の患者さんは多いことになります。特に若い人で高血圧を指摘された場合には、自分では気づきにくいこともあるため、早めに医療機関で相談されることをおすすめします。症状の早期発見と対処は、将来的な健康維持にもつながりますので、気になる場合は一人で悩まず積極的に受診するようにしましょう。
編集部まとめ
二次性に限らず、高血圧は自覚症状が少ないまま進行することがあります。日頃の血圧測定や生活習慣の見直しが大切です。気になる人は早めに医療機関で相談し、将来のリスクを減らしましょう。
医院情報

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| アクセス | 「南中野」バス停より徒歩5分 |
| 診療科目 | 内科、糖尿病・内分泌内科 |




