糖尿病の「1型」と「2型」の違いはご存じですか? 発症しやすい人の特徴や進行リスクも医師が解説!

糖尿病と一口にいっても、いくつかの型があります。代表的なものは「1型糖尿病」と「2型糖尿病」で、そのうち日本で圧倒的に多いのが2型糖尿病です。それぞれ発症の原因や治療法も異なるため、糖尿病を予防するためには理解を深める必要があります。そこで今回は「八木医院」の八木先生に、1型糖尿病と2型糖尿病の特徴について詳しく教えていただきました。

監修医師:
八木 孝(八木医院)
糖尿病の1型と2型の違いとは?

編集部
糖尿病には1型と2型がありますが、何が違うのですか?
八木先生
そもそも、糖尿病は血糖値の高い状態が続く病気ですが、病態メカニズムによって1型と2型に大きく分類されます。1型糖尿病は、主に自己免疫のトラブルが原因となって、インスリンを作る膵臓のβ細胞が壊され、インスリンを出す力が弱まったり、インスリンが出なくなったりします。一方、2型糖尿病は、遺伝的要因に生活習慣が加わることでインスリンの効きが悪くなったり、出にくくなったりします。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
八木先生
食べ物などで糖分を取り込むと血糖値は上昇しますが、膵臓から分泌されるインスリンの働きによって、糖が細胞の中に取り込まれ、血糖値は正常に戻ります。しかし、インスリンの働きが悪くなったり、出にくくなったりすると、糖は細胞の中に取り込まれなくなり、血糖値が高い状態が続きます。この状態が長く続くと、糖尿病を発症します。この流れは1型も2型も同じですが、そもそも「なぜ、血糖値が下がらなくなるのか」という原因が両者で異なるのです。
編集部
1型糖尿病の場合には、インスリンを作る膵臓のβ細胞が壊されるのが原因ということでした。
八木先生
はい。β細胞が壊れる理由として多いのは、免疫機能のトラブルです。免疫反応が誤作動を起こし、自分の細胞を攻撃してしまい、それによってβ細胞が破壊されてしまうのです。そのため、インスリンが出にくくなったり、まったく出なくなったりして、血糖値が高くなってしまいます。
編集部
2型糖尿病の場合には?
八木先生
遺伝的要因によるインスリンの分泌低下に、食べ過ぎや肥満、糖質の摂り過ぎ、運動不足などの生活習慣が加わってインスリンの働きが悪くなったり、出にくくなったりして、血糖値が高い状態が続くようになります。
編集部
2型は遺伝的要因に生活習慣が加わって発症するとのことでしたが、1型は遺伝するのですか?
八木先生
通常は遺伝しませんが、疾患の発症に関わる遺伝子が研究で報告されています。これらの遺伝子を持っている患者さんの場合には、同じ家族で発症するケースがみられます。
1型糖尿病は子どもや青年、2型糖尿病は中年に多い

編集部
患者さんの属性も異なるのですか?
八木先生
一般に1型糖尿病は子どもや青年に多く発症する一方で、2型糖尿病は中年以降に多く発症するとされています。これは、2型は食べ過ぎや肥満など生活習慣が大きく関与しているためです。ただし、現在は生活習慣の変化により、子どもを含めて若い人が2型糖尿病を発症する例も増えています。
編集部
発症してからの経過は、両者で異なるのですか?
八木先生
まず、両者では症状出現の進行が異なります。1型糖尿病の場合、症状が数日~数カ月と短期間で出現することが大半です。多くみられる症状としては、「尿の回数が増える」「のどがよく渇く」「疲れやすくなる」などが挙げられます。一方、2型糖尿病の場合には、多くは年単位で進行していくため気づきにくいという特徴があります。
編集部
そのほか、1型糖尿病と2型糖尿病で違う部分はありますか?
八木先生
進行すると症状自体はそれほど大きな違いはなく、個人差によるところも大きいとされています。気をつけたいのは、1型糖尿病と2型糖尿病が混同されている症例もあり得るという点です。両者は症状が似ているため、「2型糖尿病と診断されたけれど、後日、1型糖尿病だと判明した」というケースもあります。
編集部
日本ではどちらが多いのですか?
八木先生
日本における糖尿病患者のうち、圧倒的に多いのは2型糖尿病です。日本人の糖尿病患者のうち1型糖尿病は約3%であるのに対して、2型は約90%とされており、国民病とも呼ばれています。それぞれの患者数を比較してみると、厚生労働省の研究班は「日本の1型糖尿病の患者数は10〜14万人と推定される」と公表しています。一方で「2型糖尿病の患者数は1000万人以上」と推定されており、「40歳以上では約10%の人が2型糖尿病を発症している」という報告もあります。
糖尿病が進むとどうなるのか?

編集部
糖尿病が進行すると、どうなるのですか?
八木先生
血糖値が高い状態が続くと全身の血管が傷つき、やがて動脈硬化が進行していきます。その結果、三大合併症と呼ばれる神経障害、網膜症、腎症や、大血管障害とされる心筋梗塞・脳梗塞などといった重篤な合併症を引き起こします。これらの合併症が生じると健康寿命が短くなってしまうことから、合併症が生じないように糖尿病をコントロールすることが重要です。
編集部
1型糖尿病の場合には?
八木先生
インスリンがほとんど分泌されなくなってしまった1型糖尿病では、体外からインスリンを補充するインスリン療法が治療の中心になります。インスリンの補充量を評価するために自分で血糖値をこまめに測定する必要があります。近年はセンサーを貼り付けることで都度、血を出さずに血糖値を推測できる装置も普及したため、治療の安全性が高まりました。インスリン分泌が低下していることが病態の中心ですが、肥満が重なると治療が困難になるため、適正な体重コントロールは必要です。
編集部
2型糖尿病の場合には?
八木先生
2型糖尿病の場合には、まず食事療法と運動療法を基本として、生活習慣の改善に努めます。肥満のある人は減量をおこなうことでインスリンの効きが良くなり、血糖値の改善につながることがあります。しかし、それでも改善がみられなければ、内服治療やインスリン療法をおこなう必要があります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
八木先生
糖尿病を発症した患者さんの多くは、振り返ると過去の健診で糖尿病の疑いを指摘されています。せっかくの健診なので無視せず医療機関を受診しましょう。予備群の段階で介入することで糖尿病を発症する前に対応できる場合もあります。糖尿病の治療はライフスタイルのほか、併存する疾患、インスリン分泌能力、インスリン抵抗性など様々な要素が影響するため、患者さん一人ひとりにあったオーダーメイドの医療が重要だと考えます。糖尿病専門医は様々な提案ができると思うので、ご相談いただければと思います。その際は、ご家族と受診されるのもおすすめです。
編集部まとめ
「糖尿病は治らない」という認識が広まっていることもあり、健診で「糖尿病の疑いあり」と指摘されると、怖がって精密検査を受けない人もいるかもしれません。しかし、早期に治療を開始すれば健康な人と同じような生活を送ることはできますし、合併症を予防することもできます。血糖値が高いと指摘されたら、早めに専門医を受診しましょう。
医院情報
所在地 | 〒152-0035 東京都目黒区自由が丘3丁目8−4 |
アクセス | 東急東横線「自由が丘駅」 徒歩4分 |
診療科目 | 内科、内分泌内科、糖尿病内科 |