「糖尿病網膜症」の症状はご存じですか? 予防のための眼科検診の頻度・注意点も医師が解説!

糖尿病の重大な合併症である「糖尿病網膜症」は、場合によっては失明することもあります。そのため、糖尿病患者は定期的な眼科検診が不可欠です。では、眼科検診を受ける際には、一体何に注意したらいいのでしょうか。「秋野眼科医院」の秋野先生に詳しく教えていただきました。

監修医師:
秋野 邦彦(秋野眼科医院)
糖尿病の合併症「糖尿病網膜症」の症状

編集部
なぜ、糖尿病患者は眼科検診を受けることが必要なのですか?
秋野先生
糖尿病の三大合併症の1つに、糖尿病網膜症という疾患があります。糖尿病網膜症を放置すると視力が低下するだけでなく、進行すれば失明することもあるため、定期的に眼科検診を受けることが大切です。そのため、できる限り早期発見して、進行を予防することが重要となります。
編集部
糖尿病網膜症について、もう少し詳しく教えてください。
秋野先生
血糖コントロールが悪い状態が長く続くと、細い血管が少しずつダメージを受け、変形したり詰まったりします。それが網膜の血管で起きると、糖尿病網膜症を発症します。
編集部
血管に異常が起こると、どうなるのですか?
秋野先生
網膜の隅々まで酸素や栄養素が行き届かなくなり、網膜が酸欠状態に陥ります。すると網膜は新しい血管を作って、酸素や栄養素を取り込もうとします。しかし、新しい血管は非常に脆く、あちこちで破綻して出血します。そして、出血したところにかさぶたのような膜を張り、これが網膜を引っ張って「網膜剥離」を起こすことがあるのです。
糖尿病患者の眼科検診

編集部
糖尿病患者は、どのような検査を受けたらいいのでしょうか?
秋野先生
まずは定期的に「眼底検査」を受けましょう。眼底検査とは、レンズや鏡などを使って眼球の奥を詳しく調べる検査です。眼底には網膜、視神経、血管などがあり、これらの状態を確認します。
編集部
検査はどのようにしておこなわれるのですか?
秋野先生
一般的には、眼底を眼底カメラで撮影して検査します。眼底検査をおこなうことで、糖尿病網膜症を早期発見することができます。日本眼科医会の発表によると「糖尿病網膜症を発症するまでの期間は1~20年」と個人差がありますが、平均すると15年で約40%の人に発症するとされています。そのため、自覚症状がなくても、必ず眼底検査を受けるようにしましょう。
編集部
そんなに多くの人が発症しているのですね。
秋野先生
怖いのは発見が遅れることによる失明です。最近のデータによると、11年間で約3000人が糖尿病網膜症により失明していることが判明しています。2019年の調査によれば、糖尿病網膜症は日本人の失明原因の第3位です。できるだけ早期に発見できれば失明を免れる可能性があるので、定期的に検査を受けることが大切なのです。
編集部
そのほかには、どのような検査を受けるべきですか?
秋野先生
視力検査や眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査(さいげきとうけんびきょうけんさ)も重要です。眼底検査を受ける際には、瞳孔を開かずに写真を撮影する検査だけではなく、散瞳薬を使用して瞳孔を開き、隅々まで詳細に見る検査を受けましょう。
編集部
自覚症状がなくても検査を受けた方がいいのですね。
秋野先生
そのとおりです。糖尿病網膜症は、たとえ糖尿病が未治療でも約10年間は発症しないと言われています。しかし、見えづらいといった症状が出現するときには、かなり病期が進んでいるため、自覚症状がなくても定期的に検診を受けて疾患の早期発見につなげましょう。
眼科検診を受ける際の注意点

編集部
眼科検診を受ける頻度はどれくらいですか?
秋野先生
現在の状況により異なりますが、糖尿病網膜症を発症していない人の場合は、年に1~2回を目安に検診を受けることをおすすめします。「単純糖尿病網膜症」と呼ばれる網膜の毛細血管が弱くなり始めた状態の人は、年2〜4回を目安に受けるといいでしょう。血糖値の値によっては、もう少しこまめな通院をお願いすることもあります。
編集部
眼科検診を受ける際の注意点はありますか?
秋野先生
眼科検査を受けるときには、糖尿病手帳を持参するようにしましょう。糖尿病手帳には内科医と眼科医の両方が記入することができるので、両科で連携がとりやすくなります。手帳はかかりつけの医療機関でもらえるので、もし持っていない場合には医師に相談してみましょう。
編集部
ほかにも気をつけることはありますか?
秋野先生
眼底検査では瞳孔を開く目薬を使用することが多いため、車の運転や仕事に支障が出ない日を選んで検査を受けるようにしましょう。
編集部
日常で気をつけることはありますか?
秋野先生
糖尿病網膜症を発症させないためにも、日頃の血糖コントロールが重要です。「糖尿病の薬を飲んでいるから大丈夫」と油断せず、食事や運動などの日常的な生活習慣の改善を心がけましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
秋野先生
未治療の糖尿病でも、約10年間は糖尿病網膜症を発症しないとされていますが、特に30~40代は一度発症すると進行が早いとされています。病期が進行すると治療を開始しても元通りの視力には戻らないことも多く、後遺症が残ってしまうこともあります。そのため、できるだけ早期に発見し、進行を抑制することが重要です。年1回程度、人間ドックなど全身の健康診断を受けるのと同様に、眼科検診も年1回受けるようにしてください。
編集部まとめ
糖尿病を発症すると合併症は全身に及びます。特に失明はQOLを大きく低下させる重篤な合併症です。そうした事態にならないよう、糖尿病と診断されたらできるだけ早めに眼科を受診し、定期的に検査を受けるようにしましょう。
医院情報
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診療科目 | 眼科 |