中高年に多い「股関節痛」の原因はご存じですか? 主な疾患・治療法を整形外科医が解説!

「歩き始めや立ち上がるときに股関節が痛む」「長時間歩くのがつらくなる」といった股関節の違和感や痛みは、中高年に多くみられる症状です。様々な疾患が原因となりますが、放置すると症状が進行し、歩行が困難になるケースもあるため、早めの対策が重要です。今回は、中高年の股関節痛の主な原因や適切な治療法について、「はにゅう整形外科」の羽生先生に解説していただきました。

監修医師:
羽生 亮(はにゅう整形外科)
中高年の股関節痛の原因

編集部
股関節の痛みは、なぜ中高年に多いのですか?
羽生先生
加齢に伴い、関節の軟骨がすり減ることでクッション機能が低下し、骨同士が直接こすれるようになるためです。また、長年の負担が蓄積し、炎症を起こしやすくなるという理由もあります。特に女性は、ホルモンの影響で関節の構造が弱くなりやすいため、股関節の疾患を発症しやすい傾向にあります。
編集部
股関節の痛みの主な原因はなんでしょうか?
羽生先生
代表的な疾患として「変形性股関節症」があり、一次性と二次性の2つに分けられます。一次性は原因不明の関節症で、加齢、体重増加、肉体労働、スポーツなどによる過負荷が関係していると言われています。その一方、二次性は、出生後から乳児期までの股関節の形成に異常をきたす「発育性股関節形成不全」や「関節リウマチ」「大腿骨頭壊死症」などが原因となるものを指し、変形性股関節症の80%以上を占めています。いずれも初期のうちに適切な治療をおこなうことで、進行を抑えることができます。
編集部
変形性股関節症について、もう少し詳しく教えてください。
羽生先生
股関節の軟骨が徐々にすり減り、炎症や痛みを引き起こす疾患で、女性に顕著です。発育性股関節形成不全については。左股関節に多く発症します。また、近年では「CALM1」や「GDF5」という遺伝子も関係していると言われています。
変形性股関節症の症状

編集部
変形性股関節症の主な症状は?
羽生先生
最初は、歩き始めや立ち上がりの際に軽い痛みを感じる程度ですが、進行すると日常生活動作で股関節のこすれを感じたり、痛みが出たりしてつらくなります。さらに進むと安静時や夜間にも痛みを感じるようになります。また、痛みだけでなく、関節の動く範囲(可動域)が狭くなったり、関節そのものが変形したりして、足の長さに差が出るなどの症状もみられます。
編集部
では、関節リウマチによる股関節痛とはどのようなものですか?
羽生先生
免疫の異常により関節に炎症が起こり、腫れや痛みを引き起こすのが関節リウマチです。通常は手指などの小さな関節から痛み始めることが多いのですが、股関節が痛くなることもあります。進行すると関節の変形が進み、股関節の可動域が制限されることがあります。ただ、関節リウマチの場合は股関節の治療だけではなく、自己免疫疾患なので関節リウマチ自体の治療も初期からおこなうことが大切です。
編集部
大腿骨頭壊死症とは、どのような病気ですか?
羽生先生
股関節の骨折や脱臼などの外傷、ステロイドの大量服用、アルコールの過剰摂取、膠原病などにより大腿骨の先端部分(骨頭)に血流が行き届かなくなり、骨が壊死する病気です。初期は無症状であることもありますが、進行すると股関節の強い痛みや可動域の制限が生じます。
編集部
股関節痛がある場合、どのタイミングで病院を受診すべきですか?
羽生先生
軽い痛みであっても2週間以上続く場合は一度、整形外科を受診して、検査することをおすすめします。特に、歩行時の痛みが強くなったり、関節の可動域が狭くなってきたりした場合は、早めに受診しましょう。
編集部
股関節痛で受診したら、どのような検査をするのでしょうか?
羽生先生
医師からの問診や触診、可動域の確認などのほか、レントゲンによる画像検査をおこない、必要に応じてエコーやCT・MRIなどでより詳しく骨や軟骨の状態を調べます。関節リウマチが疑われる場合は、血液検査もおこないます。また、腰椎や骨盤の仙腸関節からも似た症状が出ることもあるので、それらの除外診断をおこなうこともあります。
女性に多い変形性股関節症の予防法・治療法

編集部
変形性股関節症の治療には、どのような方法がありますか?
羽生先生
初期であれば、運動療法や体重管理、痛み止めの薬などで症状の緩和を図ります。下肢の長さの差が出てくるとインソールを作成して補正します。薬やリハビリテーションで症状が改善しない、日常生活に支障が出るほど痛みが強い場合は再生医療を検討します。また、関節の変形が進行している場合は、人工股関節置換術や骨切り術などの手術療法をすることもあります。
編集部
変形性股関節症を予防する方法はありますか?
羽生先生
先述したとおり遺伝的要因もあるので、必ず予防できるという方法はありません。ただ、適度な運動で股関節周りの筋肉を鍛え、かつ体重を適正に保つことは有用です。特にプールでの歩行運動やストレッチは、関節に負担をかけずに筋力を維持できるためおすすめです。長時間のあぐら座位などを避けることも、変形性股関節症の予防と関係すると言われています。
編集部
ほかにも予防法はありますか?
羽生先生
以前から注目されているのが、貧乏ゆすりのような「ジグリング」という座ったままおこなえる運動療法です。まだ詳細なメカニズムは不明ですが、股関節に負荷をかけることなく、持続的に動かすことで関節液が循環しやすくなります。その結果、関節軟骨に栄養が供給されやすくなり、変形性股関節症の発症や進行を予防する可能性があると考えられています。ジグリングは病気の進行度や年齢などにかかわらずおこなうことができるので、多くの人にとって取り入れやすい運動療法の1つと言えるでしょう。
編集部
気軽に実践できますね。
羽生先生
そうですね。しかし、若い頃からジグリングをやっていたとしても、変形性股関節症を完全に予防することは難しいので、早期発見・早期治療が重要になります。痛みや違和感があれば、先延ばしせずに整形外科を受診しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
羽生先生
股関節周囲の痛みは中高齢者にはよくある症状ですが、早期に診断して適切に対処することで、進行を予防することが期待できます。また、「股関節が痛い」と思っても、原因が股関節由来とは限りません。医療機関を受診することで原因を明らかにし、早期に治療することが大切です。
編集部まとめ
中高年の股関節痛は、変形性股関節症をはじめとする様々な疾患が原因となることがあります。痛みが軽いうちに適切な治療や予防をおこなうことが、進行を防いで快適な生活を維持することにつながります。「歩くときに違和感がある」「最近股関節の痛みが増してきた」などと感じたら、早めに整形外科を受診し、自分に合った対策を始めることが重要です。
医院情報

| 所在地 | 〒343-0823 埼玉県越谷市相模町3-139-1 |
| アクセス | JR「南越谷駅」 バスで10分 JR「越谷レイクタウン駅」 バスで20分 |
| 診療科目 | 整形外科 |




